The AIPAD Photography Show New York
米国市場の広がりと多様性を実感
写真のアート・フェアーで最近有名なのが11月に開催されるパリ・フォトだ。観客動員数も非常に多い。しかし、ここの特徴は多くの人が美術館の展覧会に行く感覚であること。
アート写真の販売の場所として一番伝統のあるのがニューヨークで開催されるThe AIPAD Photography Show だ。AIPAD(The Association of International Photography Art Dealers.Inc)という業界団体が主催し、今年で28回目の開催となる。今回も4月10日~13日までに行われ、全世界から、ギャラリスト、ディラーなどの75の業者がパーク・アベニュー・アーモリーが集合した。昔は、ミッドタウンのヒルトンホテルなどで開催されていたが、市場拡大と作品サイズの巨大化で会場が手狭になり、最近は広いこの地で開催している。入場料は1日券が25ドルだった。
まず会場の雰囲気が日本のアート見本市とはまったく違う。前の週に行ったアート・フェアー東京とは全く別世界なのだ。この施設は19世紀後半に完成した州兵の施設だったところ。天井がドーム状で高く、柱がない広大なスペースだ。とにかく通路の幅が広くて会場スペースに余裕がある。そしてかなりの厚みの絨毯敷きなのだ。高額なアート作品を販売する場所としての雰囲気作りが見事に演出されている。壁面も短期イベントに関わらず作品に合った色味の壁紙が丁寧に張られているブースも数多くある。ミッドダウンの高級ギャラリーがそのまま引っ越してきたという感じ。つまりそれだけの投資ができるほどの売り上げが期間内にあるということだ。各ギャラリーの得意分野がうまく生かされ、作品の品揃えも豊富だ。タルボットなどの19世紀写真から、近代写真、現代アート系まで、160年あまりの写真の歴史を会場内の作品でだいたい網羅している。若手作家は現代アート系のカラーによる巨大作品が目立つが、一方で小振りのモノクロ写真作品も数多く展示されている。
アート写真といっても、市場の発展にともない非常に多様化している状況がよくわかる。ここでは日本で全く無名な新人、中堅写真家が作家として活躍しているのだ。値段の幅も、とてつもなく広い。無名写真家による古写真が100ドル以下で売られている一方で、たぶん十万ドルくらいはするだろう、ロバート・フランクのヴィンテージ・プリントもある。MoMAやメトロポリタン美術館で展示しているような歴史的な作品でも、モダンプリントなら普通に売られているのだ。多くのギャラリーは、オークションなどでも取り扱われる有名作家の作品とともに、ギャラリーで売り出し中の新人、中堅作家を同時に展示している。在庫の有名作を売ることで経費を捻出するとともに、新人作家の価値を演出する心理的効果を狙っている。近年相場が大幅上昇しているので長年業務を行っているギャラリーは優良在庫をもっているのだ。値札はモダンプリントだと付いている場合が多く、ヴィンテージプリントは興味がある顧客との個別交渉になる。
日本からは大阪の老舗ピクチャー・フォト・スペースが長年出展している。ここは展示作品の傾向が明確なので顧客を掴んでいる。今回ディレクターの相野氏はリー・フリードランダーの素晴らしいヌード作品を中心に展示していた。
写真を真剣に見る行為は体力を消耗する。わずか数時間だったが久しぶりに膨大な写真と対峙したので時差ぼけも手伝ってぐったりしてしまった。
今回は色々な予定をこなしながらの訪問だったが、本来はじっくりと数日くらい時間をかけて見て回るのが良いだろう。見るだけでも十分に楽しいフェアーなのだか、もし具体的に作品購入を考えるのならより興味がわいてくるだろう。フェアー内だけでも日本では考えられない膨大な選択肢があるのだ。実は私が一番楽しかったニューヨーク訪問は、ギャラリーの在庫作品を買いに来た時だった。現在のアート写真相場はかなり上昇したが、現代アートなどと比べるとまだまだ割安の優良作品が数多くある。写真を買いに行くなら、ニューヨークはアート・フェアー、ギャラリー、オークション、ミュージアムが全て揃ったアート写真シティーなのだ。
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