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2006年5月30日 (火)

マイケル・デウィック写真展「ザ・サーフィング・ライフ」

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(C)Michael Dweck

5月30日から新たな企画展であるマイケル・デウィック「ザ・サーフィング・ライフ」がスタートする。見所のヒントはポストカードの使用イメージ、もしくは彼の写真集「THE END:MONTAUK」の表紙のイメージにある。掲載映像を見ていただければわかるように、オール・ヌードの若い女性がサーフボードを抱えて砂浜を走っている写真だ。マイケルによると、この象徴的なイメージを含めて、写真展で展示される写真のモデルたちはすべてモントークという町のローカル・サーファーとのことだった。
最初は彼の写真集をみて、プロのモデルをモントークで撮影したファッション写真と見間違えた人が非常に多かったそうだ。もし人の多いロング・ビーチやマイアミ・ビーチを裸の女性がサーフィンをしていたらみんな驚いてしまうだろう。ポイントは、マイケルが撮影したモントークという町は、地元の人だけがサーファーを楽しんでいる古きよきアメリカがいまだ残っていた場所ということだ。他人の視線を気にする必要がないので、水着を付けないでサーフィンが出来るほど自由な環境なのだ。
モントークというのはニューヨーク州のロングアイランドの東端で、ニューヨーク市マンハッタンから100マイルほどにあるイーストコーストのサーファーズ・パラダイスだそうだ。みんなが仲間同士で、そのコミュニティーの中でよそ者を寄せつけずに、自分たちだけのルールを守り自由気ままに生きるなんて現代のアメリカでも夢のような話だ。
1975年以来この地を訪れているマイケルは、90年代になり、ヤッピーたちがマンハッタンから大挙してモントークを訪れ、町の魅力が失われていくことに危機感をいだくのだ。そして古き良きモントークとその象徴たるサーファーたちをドキュメントしたのが本展「ザ・サーフィング・ライフ」なのだ。
多くのアメリカ人はマイケルの写真に完全に魅了されてしまったようだ。それは今はなき、しかし彼らが幼少時代に垣間見た理想のアメリカンシーンの残り香をマイケルの写真の中に見出すからにほかならない。
日本人には関係ないだろうか。いや、マイケルの追い求めていたのは多くの日本人が戦後に抱いていた理想的なアメリカンシーンと重なってくるのだ。21世紀のいま、そんなアメリカなんて幻想だったかもしれないと思い始めていた私たち日本人も、アメリカ人同様に懐かしさに駆られてしまう。テーマのサーフィン自体が戦後の日本人が憧れたアメリカ文化の象徴そのものだ。ブルース・ウェバーが日本で受け入れられるのとまさに同じ構図なのだ。ブルースのファンなら間違いなく、マイケルの写真に共感してしまうだろう。
モントークは、美しい男女が周りの目を気にしないで自由に好きなことに集中できるような理想郷だったことをマイケルの写真が教えてくれるのだ。グローバリズムそして、地域コミュニティーの崩壊は日本だけの状況ではない。一人の人間にとっての幸せって何なんだろうと考えさせられる写真展だ。

本展ではモノクロ中心の34点のオリジナル・プリントが展示・販売される。マイケルのサイン・プレート付き写真集も会場で限定数販売される予定だ。
出来るだけ多くの人に見てもらい、何かを感じてもらいたいと思う。

マイケル・デウィックオフィシャルサイト

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2006年5月25日 (木)

"レアブック・コレクション"終了

写真集のコンシェルジェ

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5月12日から渋谷パルコ・ロゴス・ギャラリーで開催していた"レアブック・コレクション"が終了した。天候が悪い日が続いたものの、週末には一日200名を超える来場者があった。来場してくれた人に心より感謝したい。
今回のイベントでは若い人にあまり知られていないビジュアル本を紹介したいという思いがあった。最初は好きな1枚の写真から興味をもつのだが、それが広がっていくにはどうしても全体の流れを紹介するアンソロジーの写真集が必要になる。昨年の同じイベントでは、ファッション写真に興味があるものの、系統だって歴史や変遷を知る写真集が新刊では入手できない、という意見が多く聞かれた。
今年は資料的にも価値ある、"Appearences"、"Shots of Style"、"The History of  Fashion Photography"などアンソロジー系を出来るだけ安く仕入れることに心がけて出品した。またデビット・ベイリー、ブルース・ウェバー、ピーター・リンドバークなどの有名写真家の写真集とともに知名度が低く過小評価されている作家、Michael Cooper、 John Cowan、 Paul Himmer、 Ronald Traeger、 John Rawlings、 Clifford Coffin、Lillian Bassmanなどの本も用意した。
想定していた通り、かなりの数の若い人々が熱心に説明を聞いてくれて、悩みぬいた末にこれらの本を購入してくれた。決して安い写真集ではないけれども、間違いなく将来の自分への貴重な投資になると思う。またアマチュア写真家の中にも熱心な人が多く、自分の好きな写真集を探し求めて購入してくれた。その入り口が好きな映画、音楽、都市など、様々だったのが印象深かった。ぜひそれらの中から本当に好きな作家を見つけだして、興味をさらに展開させて欲しい。
私の経験では写真集を買うアマチュア写真家の作品は確実にレベルアップする。逆にプロの写真家が写真集に興味を示さないのが気になった。
ビジュアルに興味ある人は、予算の範囲内で興味ある写真集を出来るだけ買うべきだといつも主張している。自分が良いと思うものは、実はマスコミ情報に影響されている場合が多い。イメージが多く複製されているとか、写真家や評論家が評価しているとかで購入すると後で後悔することが多い。最初は良いと思うもののやがて飽きてしまうのだ。本当に自分にとって良い写真はいつ見ても飽きがこないし、常に新たな発見があるものなのだ。自分の好みに合った写真や写真家は多くの写真集を所有して見ることで次第に明確になってくる。好みが判りさえすればマスコミ情報も有効利用できるのだ。
そのために情報を整理整頓して、系統だって顧客に提供することがギャラリストの仕事の一環だと思っている。今回のイベントでは写真集のコンシェルジェのような役割を目指したつもりだ。

80年代が懐かしい? 横木安良夫のカラー作品

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渋谷パルコ・ロゴス・ギャラリーで開催していた"レアブック・コレクション"と同時開催した横木安良夫写真展"Daydream Beliver"も大好評だった。従来の横木氏のファンの方はもちろん、会場で作品を気に入って購入してくれた人も多かった。
今回はいくつかの実験要素を含んだ写真展だった。挑戦的な値段設定とともに、80年代以降のカラー作品が評価されるかどうかを確かめたかった。結果は売れた作品の約半数はカラー作品だった。特に横木氏の専売特許ともいえる80年代の後半から制作開始した懐中電灯を使用したイメージが好評だった。ライトが揺れ動く様が、当時の浮ついていたバブル経済の気分を象徴していると思う。
つい最近だったような気がする80年代も、すでに20年昔だ。そろそろ懐かしむ対象に入ってきた気配を感じる。欧米では入手可能なこの時代の作品が日本では売られていないのだ!
今後のギャラリーの企画として、横木氏の80年代のカラーによるファッション作品も面白いのではないかと感じた。なお、"Daydream Beliver"シリーズは出来るだけ早い機会にオンライン・販売を開始する予定だ。

最後にお出でいただいた全ての人に改めてお礼を申し上げます。

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2006年5月15日 (月)

レアブック・コレクション2006はじまる

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5月12日から渋谷パルコ・ロゴス・ギャラリーでの"レアブック・コレクション2006"がスタートした。普段、見られないラルティーグやカルチェ=ブレッソンなどのレア・ブックが多数展示されている。写真集は今週末にかけて追加する予定にしている。
壁面で展示している横木安良夫写真展も好評だ。デジタル・プリントだが、8X10サイズで限定50部、最初の10枚の値段を6300円という低価格に設定している。額装しても8400円。展示数は60点以上、撮影年も60年~現代、カラーとモノクロを混在させた展示にしている。モチーフも渋谷を共通テーマに、ポートレート、ストリート、オブジェ、ファッションなど多様だ。アート写真を初めて買う人におすすめしたい。気に入った1枚が必ずあると思う。

私は夕方から夜にかけてはだいたい会場にいるので写真集やオリジナルプリントに対する質問があれば気軽に声をかけて欲しい。毎日、夜の9時までいるのでやや疲れ気味、眠たそうにしていてもご勘弁いただきたい。

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2006年5月 4日 (木)

5月の写真展などのスケジュール(2)

Blog_005 吉野和彦 写真展
"UN-CONSIOUS VISION"
-無意識のはざまへ-

ギャラリストの主な仕事は、写真展の企画、プロデュースだ。それは、自らのギャラリーだけにとどまらない。通常はレンタル中心だが、期間限定で企画展を行うギャラリーも数多い。しかし、単純に写真家から会場使用料をとらない写真展が企画展ではない。作家の訴えかけたい世界観を3次元のギャラリー空間で方向付けをしなければならないのだ。これには、どうしても経験が必要になる。
今回は今年の3月にオープンした、中目黒のキャスパーズというギャラリー(CASPER'S Gallery)の企画をお手伝いした。吉野和彦という、アート・フォト・サイト・ギャラリーで数年前に個展を開催した写真家だ。日本では珍しく、コンストラクテッド・フォトに取り組んでいる。
彼はオブジェを自作して、それに花を重ね合わせる写真を8X10の大型カメラで撮影し、カラー作品を発表している。約10年くらい継続しているシリーズは大きく分けて二つの作風に分けられることが気になっていた。
初期作品は、オブジェと花とが見事にコーディネートされ、ありそうもないが、あるかもしれないような物体が出来上がっていた。その微妙なバランスが次第に崩れてくる。今度は自作のオブジェが前面に押し出されてきて、花を圧倒するようになるのだ。
それを、"UNCONSICOUS VISION"(無意識のはざまへ)とまとめてみた。

案内状には以下のように、書いてある。
「花とオブジェで時間の経過を表現している作品は、一方で“無意識”と“意識”との間を行きかう人間の感覚を表しています。本展では、作品をこの二つのグループに分類して現代人が抽象世界と現実社会とのはざまで漂う様を表現しています。」

入り口から、無意識的、意識的な作品を左右の壁に対比して展示する。奥には二つが融合した最終形の作品を展示する。ギャラリーの一番奥に小さなスペースがあり、そこにはこのシリーズの原点である、箱のなかの花の作品と、箱が変化していく過程の作品を展示する。旧作中心に全30点作品を展示、床面には撮影で使用された自作オブジェ類もおかれる予定だ。

会期は5月9日から21日まで、中目黒方面にお出でのときはぜひお立ち寄りください。キャスパーズは中目黒の目黒川沿いにある、素敵なレンタル・ギャラリーだ。展示は、現代アート、絵画、イラストなどの作家が中心だが、 もちろん写真もOKだ。全スペース借りると1週間で23万円だが、部分貸しも行っている。 奥のスペースは10点くらいの作品展示には最適だと思う。場所が中目黒の一等地なので、フリーの客がイメージ重視で数十万円もする高額なアート作品でも買ってくれるそうだ。
吉野の作品は現代アートに近い印象のある写真だ。中目黒の感性豊かなお客様にどのように受け入れられるか楽しみだ。

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