« 2006年7月 | トップページ | 2006年9月 »

2006年8月30日 (水)

レジャー多様化の幻想

週末に福島方面に短い旅をした。東京をたまに離れると日本のいろいろなことが見えてくる。
途中、栃木県沼田市の「吹割の滝」を観光。立ち寄ったドライブインのトイレの張り紙が印象的だった。「不況で厳しい経営を強いられています。どうかアイス1本でもいいから買っていってください」と書いてあった。レジャーの価値観が変化し、名所での集客に頼っていた国内観光地の経営には明るい未来像が見えないのだろう。
旅行中、吹割の滝と同じく日本の滝百選に選ばれている、福島県須賀川市近く阿武隈川の「乙字ヶ滝」も訪れた。こちらは日本の未来の観光地の姿を暗示しているかもしれない。とにかく土産物屋や休憩所などの観光施設が全くないのだ。非常に潔いたたずまいで気持ちよかった。松尾芭蕉も訪れた名所で夏休みシーズンなのに、滝に涼を求める観光客は誰もいなかった。
人間は人工物の概観を手がかりに時代の流れを意識する。それらが何もなく、芭蕉の歌碑と自然だけが残っている場所に立つと、意識は時を飛び越えて江戸時代に行ってしまう。

Blog_2 
芭蕉も訪れた「乙字ヶ滝」 

福島の山間部には自然が満喫できる気持ちが良い遊歩道が整備されている。羽鳥湖周辺のパノラマが楽しめる展望台や、途中に旧日本軍の見張り台跡などもあり気軽に山の散策が楽しめる。しかし、 ここでも誰とも出会わなかった。観光客はいったいどこに行ったのだろうか。

Blog_1_1
「Ex Japanese Army Watch House」の立看板

観光地も勝ち組、負け組みが明確になってきたのか。ブランド力のある日光、華厳の滝周辺は混雑し、クルマも渋滞、知名度がない場所には人もクルマもほとんどいないのだ。
家族連れで賑わっていたのが、佐野のアウトレット、羽鳥湖近くのオートキャンプ場と温泉、今市市郊外のハンバーグ専門のファミレスだった。レジャー多様化といわれる一方で、一極集中が起きているようだ。

職業柄、どうしても作品のテーマのことを意識してしまう。歴史散歩、都市部への集中が生む矛盾、高速道路で結ばれ個性が失われ画一化する地方、レジャー多様化の幻想などが思い浮かんできた。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2006年8月11日 (金)

名古屋のレア・ブック専門店

ギャラリーの仕事は、写真展終了後のほうが忙しい。
開催時は、いつ来るか予想できない顧客に対応するためにできるだけギャラリーにいるようにするのだ。会期が終了すると、普段出来ない各種打ち合わせ、営業活動などがどうしても集中してしまうのだ。地方都市への出張も多くなる。

先日、名古屋市に出張した際に洋書中心のセレクトショップ"ONE on ONE"を訪れた。前から行きたいと考えていたがなかなか名古屋に行くチャンスがなかった。
実はオーナーのM氏は10年以上前から知っている。彼はアート写真と写真集のコレクターで、以前ギャラリーが広尾にあった時代は客としてよく顔を出してくれていた。外資系企業に勤めていたのが、昨年ついに自らの膨大なコレクションを生かして理想の専門店を地元でオープンしたというわけだ。
彼のポップでモダンな好みはよく知っている。洋書、和書、雑誌、DVDなどの幅広いが一貫した店内の品揃えを見て、まるで彼の脳の中を覗いているような印象だった。しかし、本当に好きな貴重本はどうやら店頭に出してないようだった。また在庫のネット販売も行ってないという。昔に安く買ったレアブックをネットで安く売るような安易な仕事はしない、という本を愛するブック・ディーラーのプライドを感じた。ネット時代は価格ではなく情報力で勝負しなければ生き残れない。M氏の持つ膨大な情報は、お客さん好みの本をアドバイスするソムリエやコンシェルジェのような役割をはたすだろう。

"ONE on ONE"での私の収穫は、北島敬三の"ニューヨーク"(白夜書房,1982)と洋書の"White Towers"(MIT PRESS, 1986)だ。ずっと捜していた絶版写真集で、値段も東京やネットよりかなり安い掘り出し物だった。

Blog_01_2

ショップの場所は名古屋市中区栄3-13-1 南呉服町ビル3F、プリンセスガーデンホテルの近くだった。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

« 2006年7月 | トップページ | 2006年9月 »