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2007年2月28日 (水)

写大ギャラリーの木村伊兵衛写真展

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写大ギャラリーは、東京工芸大学の中にある。

週末に中野坂上の写大ギャラリーへ木村伊兵衛展『ヨーロッパ/中国』展を見に行った。昨年来、木村伊兵衛はちょっとしたブームになっている。朝日新聞社からカラー作品によるパリの写真集が再版され、銀座のメゾンエルメス・フォーラムで「木村伊兵衛のパリ」展が開催、ライカ銀座店2階サロンでもモノクロ作品が展示されていた。
メゾンエルメスでは写真自体を見せるよりも、ギャラリーのテーマであるパリの雰囲気の演出が優先されていた。作品もカラーのインクジェット・プリントだった。しかし、木村伊兵衛が当時のパリの雰囲気を撮影していたことが発見できて非常に新鮮に感じたことも事実だった。
パリの写真集でエッセーを担当していた写真家マーティン・パー氏は、"木村は当時無名だったアジェのパリの残りかすを追い求めている。古い建物が崩壊し朽ち果てていくパリをノスタルジックに撮影している。カラーであることからアジェよりもロマンチックに感じられる。"と指摘している。たぶん、外国人の木村伊兵衛は日本人がイメージしていた古いパリを追い求め、そんな背景の中で、カッコいいなあと感じたシーンを撮影していたのではないだろうか。カルチェ=ブレッソンやドアノーとの交流を通してパリの先端文化に触れたことも背景にあるのだろう。

写大ギャラリーでの展示だが、欧州の写真はメゾン・エルメスでの展示と同じ1954年、1955年に長期欧州取材時のもの、中国での作品はその後の1963~71年に撮影されている。こちらはフレーム、ブックマットという、オーソドックスに写真を見せることを考えた展示だった。いままでだとライカ使いの写真家の銀塩写真を見せる写真展という印象だっただろう。 しかし、私は少し前にカラー作品や再版されたパリの写真集を見ているのでそれらとのつながりを意識してしまう。
本展だけを観るより、一連の写真展を観てつながりを意識したほうが面白く感じるはずだ。(残念ながら銀座での写真展は終了済み)好きなイメージがあって、色々な視点や背景がわかってくると写真はますます面白くなっていく。時代性を取り込んだ写真は広義のファッション写真だと考えている。もしかしたら、木村伊兵衛は日本で初めてアートになりえるファッション写真を撮った写真家かもしれない。

写大ギャラリー木村伊兵衛展『ヨーロッパ/中国』展
http://www.artphoto-site.com/guide164.html

写真集『木村伊兵衛のパリ』
http://www.artphoto-site.com/b_445.html

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2007年2月16日 (金)

名古屋雑感
日本文化は個性化、画一化に分断する

先週末は、デジタル・プリントのワークショップの為に名古屋出張だった。旅にでると新鮮なリアル経験が色々でき、ネット空間の仕事で凝り固まっている頭がほぐれてくる。普段はほとんどが日帰り出張で、駅とギャラリーの往復だけ。今回は1泊できたので、名古屋の街を見る時間があり、ホテルやギャラリーの回りを歩いてみた。
東京と比べて車道と歩道の幅がとても広く、あまり高層ビルがないので空間の広がりを感じる。食文化も、ひつまぶし、あんかけスパ、味噌煮込み、味噌カツなどと個性的。いつかも書いたがちょっとした異国気分が味わえる。
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ギャラリーオーチャードの前。高いビルがあまりなく、空間が広く感じる。

今回は地元の人との飲食の機会もあり、名古屋文化のユニークな点を伺うことができた。
印象的だったのは、親戚縁者の強い人間関係の話だった。
東京ではニートやフリーターが話題になるが、名古屋の中流以上の家では親戚が尽力してニートやフリーターを親族からださないようにするそうだ。みんなで協力して世間体を保っているということなのだろう。何代も家が続いている中部地方ではいまだ日本古来のコミュニティーが残っているようだ。
全国から人が集まる東京の多くは核家族。親類など近くいないことが一般的。いままでは会社組織が個人の拠り所となり、世間体を守る役割もしていた。しかし、いまや経済はグローバル化し、会社というコミュニティーも崩壊した。現代人は、すべてが自己決定、自己責任となった中で目に見えない他国の労働者と競争しながらストレスフルな人生を突っ走るしかない。東京でリアルな人間関係に疲れた人はネットに救いを求めるのだろう。利害関係のない頼るべき親戚縁者のつながりなどないからだ。しかし名古屋地方には帰れる繋がりがまだ残っているようだ。面倒な面もあるだろう。たぶん経済成長期には、よそものや自由を求める若者には住みにくい環境だったことが想像できる。しかし頼れる人間関係の拠り所があれば辛い状況でも精神的に救われのは明らかだろう。
中部圏が元気がいいといわれるのは、経済面とともに人間の不安を和らげるコミュニティーがまだ東京などと比べるとまだ残っているからではないかと感じた。名古屋の嫁入りはたいへんだといわれるが、それは一種の通過儀礼のようなもので、中に入ると案外みんな面倒見がよく心地よいのかもしれない。
名古屋圏の持つ独自文化は21世紀を生き抜くひとつのかたちなのかもしれない。

東京は文化や生き方の多様性が魅力。名古屋や大阪は独自の文化を持っている。大都市は個性的だが、一方で地方都市がますます無個性化している。経済優先が地方都市の文化を破壊する。これこそはグローバル化経済の弊害なのだろう。
ワークショップでは何度も言っているが、誰かはやくこれを作品テーマとして取り組んで問題提起をしてもらいたい。

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2007年2月15日 (木)

ハービー・山口氏来廊予定の変更

ハービー・山口氏のご来廊予定が変更となりました。
当初2月17日(土)のご予定でしたが、
2月16日(金曜日)の午後3時~5時くらいまで、および
2月24日(土曜日)の午後3時~5時くらいまで
となりました。よろしくお願いします。

2月17日にご予定されていた方には、ご迷惑をおかけしてまことに申し訳ございません。なお、今回の予定も、お仕事の都合で延期になる場合もありますので、予めご了承ください。

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2007年2月10日 (土)

古くない、違和感を感じない写真
自分が好きになれば、周りにもやさしい気持ちが広がる
ハービー・山口 写真展

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おかげさまで先週スタートしたハービー・山口写真展は好評だ。
本展では約30年くらいの間に撮影された作品が一堂に展示されている。「代官山17番地」、「peace」など、いまの彼を知っている人からは、昔の写真に全く古さを感じないといわれ、ロンドン時代が好きな人には、いまの日本での写真にも違和感がないといわれる。
つまり、彼の写真はずっとスタンスが変化していないという意見が会場から聞こえてくるのだ。
本展のサブタイトルは「やさしいパンクスピリッツ」だ。これで言いたいのは、まさに彼の写真の底流にはロンドン時代から一貫して骨太のパンクスピリッツが流れていることだ。

本展では有名ミュージシャンの写真はほとんど展示していない。彼の写真展ではかなり異例だと思う。有名人の写真があると、作家性がでている写真が見えにくくなる。今回は普段は見逃されがちなハービー・山口らしさがでている作品をセレクションし、できる限りシンプルな会場構成を心がけた。作品を選んで感じたのは、彼の写真には時代の気分と雰囲気が見事に写しこまれていることだ。特に70~80年代の作品には当時のロンドンが写っている。全体の一部としてパンクロッカーたちのポートレートをみれば、このシリーズの新たな評価軸が浮かび上がってくるのではないか。私は当時のロンドンを知っているので、どうしても多少の思い込みが入ってしまう。

先週の土曜日は、ハービー氏に急用ができ来廊されたのが5時過ぎになってしまった。 お待ちいいただい方々にはたいへんご迷惑をかけて申し訳ありませんでした。
次回は、2月17日(土)の午後3時~5時くらいまでに来廊される予定です。こちらもご本人の都合で変更になる場合がありますのでご了承ください。それ以外でも、時間があればできる限りギャラリーに顔をだされるそうです。ギャラリーの前に青いバイクが駐車していたらハービー氏は来廊中です。

ハービー・山口のオンラインショップが完成しました。会場にこられない方でも作品が購入可能です。詳しくはこちららどうぞ。
http://www.artphoto-site.com/biglove.html

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2007年2月 1日 (木)

ハービー・山口写真展
「The Big Love 」がスタート!!

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代官山17番地より"Tommorow"1995 (C)Herbie Yamaguchi

たいへん長らくお待たせしました!いよいよ2月1日からハービー・山口写真展がはじまった。実は1月スタート予定だったが、コニカ・ミノルタ・プラザでの写真展と重ならないようにと日程をずらしたという経緯がある。

今回の写真展のタイトルは「The Big Love 」とした。彼のロンドン時代の作品および、「代官山17番地」、「ピース」、「静かなシャッター」からセレクションし壁面ごとに展示しているが、すべての写真はこのキーワードでつながっている。その意味合いは以下に掲載したステーツメントを読んでいただきたい。
彼は一部には売れっ子ミュージシャンを撮影している音楽系のポートレート写真家と誤解されている。しかし作家志向を強く持つ写真家でもあるのだ。本展では、彼の写真の背景にあるメッセージに耳を傾けて欲しい。好きな作家の考えや情報が頭に入ると興味が倍増して、もっと写真が好きになるはずだ。期間は2ヶ月、途中で一部作品を入れ替える予定にしている。しかし、作家の本質を見てもらうことを意図したので、ミュージシャンのイメージはほとんど展示しない予定だ。

写真展のボディー・コピーには名作「市庁舎前のキス」で知られるロベール・ドアノーのメッセージを引用した。実はハービー・山口の写真や世界観はフランス人写真家のエドワール・ブーバーやウィリー・ロニスなどに近いと考えているからだ。日本のブーバ、ドアノーと呼ばれる日が将来くるかもしれない。
今回は作品を販売するのだが、その姿勢もフランス人写真家に似ている。彼らは自分の写真を多くの人に所有して欲しいと考えて、米国のように限定枚数を設定しない。ハービー・山口の主張もまさに彼らと同じ。今回はすべての作品をオープン・エディションで提供することになった。
11X14inch の銀塩写真は42,000円(税込み)と知名度が高い割りにかなりのお買い得価格だ。 主要作品は近日中にオンライン販売も開始する予定。また写真集「London Chasing The Dream」限定版、プリント付きのデッドストックが見つかったので、作家サイン入りで限定数だけ会場で販売します。

ご本人は2月3日(土曜日)の午後3時~5時くらいまでギャラリーにお出でになる予定。 (仕事の都合で延期になる場合あり)彼のオリジナルプリントに興味ある方は作家本人から直接作品の話が聞ける貴重な機会だ。

「The Big Love 」のステーツメントの内容は以下の通り。

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フランス人写真家ロベール・ドアノーは、「レンズは主観的だ。この世界をあるがままに示すのではない。私が気持ちよく感じ、人々が親切で、やさしさを感じる世界がある。私の写真はそんな世界が存在しうることの証明なのだ。」と自作を語っています。これはまさにハービー・山口の世界と重なります。

ハービー・山口は大学卒業後、1973年から約10年間ロンドンに在住します。彼はちょうど当時のパンク・ムーブメントを実体験し、コミュニティーの内側から撮影したロッカーたちの素顔のポートレートが高い評価を受けます。70年代から80年代のロンドンは不況で失業者が増え社会に閉塞感が蔓延していました。その中でパンクが登場しました。ハービー・山口の撮影した若者たちが魅力的なのは、彼らに音楽やファッションで自己表現し現状を打破するという目的意識があったからです。そして、日本で目的がみつからなかったハービー・山口は彼らの生き方を垣間見て、自らはカメラでメッセージを伝えることを決心しました。地下鉄でザ・クラッシュのジョン・ストラマーが「撮りたいものはすべて撮るんだ。それがパンクなんだ」だと語りかけたことは、彼のその後人生に大きな影響を与えます。帰国後、彼はパンクの精神を持って仕事に打ち込みます。自然でやさしい表情を引き出すポートレートは日本人ミュージシャンたちからも圧倒的な支持を受け、一流写真家としての地位を確立します。

今回、彼がいままでの作品を再セレクションして発表するのは、自らが体験し生きる指針を与えてくれたパンクの精神が困難な時代に生きる21世紀の日本人の生きるヒントになるのでは、という直感からです。ポートレートの名手ハービー・山口でも、目的を持たない人から良い表情は引き出せません。現代人が笑顔を取り戻すには、未来に希望を見出すしかありません。それは現状を打破するというパンク精神なしには起こりえません。彼は未来の果てしない可能性を信じている若者を好んで撮影します。それは希望の象徴としてなのです。中高年の顔をしかめている人も、若く未来を信じていたときには素晴らしい笑顔をしていたのを思い出してほしいのです。

「ザ・ビック・ラブ」とは、“未来の希望が見えて自分が好きになれば、周りにもやさしい気持ちが広がっていくんだよ”という意味です。この思いが込められているから彼の写真は見る人の心を揺さぶるのです。表面のやさしいイメージとは裏腹に確固たるパンクのスピリッツが流れています。本展が多くの人にハービー・山口の写真を“考えるきっかけになればと思います。彼の世界観が理解できると新たな写真の素晴らしさが見えてきます。

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写真展の案内は以下でご覧ください。
http://www.artphoto-site.com/guide165.html

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