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2007年3月26日 (月)

いるべき時に、いるべき場所にいる幸運

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(C) Pamela Hanson/Staley Wise

成功している写真家のキャリアを振り返ると、奇跡的なトピックがその節目で出てくることが多い。
次回、写真展を行う女性写真家のパメラ・ハンソンもありそうもないことがきっかけでプロデビューを果たしている。彼女はアーサー・エルゴートのアドバイスでパリに渡る。細かい仕事をこなし、地道な営業活動を続けながらチャンスを捜していた。彼女は、仕事がないときでもいつ依頼がきても対応できるように準備を怠らなかったそうだ。ある日、予定していた写真家の急なキャンセルでマリー・クレールの仕事が舞い込むことになる。それをきっかけでメジャーデビューを果たし、以後20年以上に渡って、ファッション写真の最前線で活躍を続けている。彼女は、80年代のパリという、いるべき時にいるべき場所にいたこと、それと幸運と才能の組み合わせで成功を掴んだと、当時を振り返っている。成功の訪れは、才能、幸運、時間、場所の関数のようなものなのだ。

これは現在作品展を開催しているハービー・山口にも当てはまる。若くしてロンドンに渡ったことが彼のキャリアの出発点だ。ニューヨーク、パリ、米国西海岸でもなくロンドンを目指したことでパンク・ムーブメントを実体験することができた。世界の注目を浴びていた70年代後半のロンドンという時代背景があったからこそ、彼の写真は輝きを増しているのだ。いまや伝説となっている、地下鉄でのジョー・ストラマーとの出会いなど普通ではありそうもない出来事。これがきっかけで、本展で「The Big Love:やさしいパンク・スピリッツ」と呼んでいる、目的ができ自分が好きになるとまわりにやさしくなれる、というライフワーク的なテーマが展開していく。
帰国後の代表作「代官山17番地」も同じ構図だ。今度は80余年の歴史を持つ同潤会アパートをキャンバスに、世紀末の東京を同じスタンスで撮影している。「1989年東欧 真冬に咲いた花」でも東西の冷戦終結という東欧での歴史的な出来事を背景に撮影している。「静かなシャッター」、「ピース」では、グローバル経済の洗礼を受け戦後の価値観が大きく変わる日本で、その影響を受けている人々のなかに希望の光を見出している。
写真家として成功するには、いるべき時に、いるべき場所にいることが必要のようだ。 彼らは自分の直感と才能を信じて行動した結果、幸運を呼びよせているのだ。

ハービ・山口写真展「The Big Love:やさしいパンク・スピリッツ」は3月31日(土)まで開催中。その後、4月6日より、名古屋に巡回します。パメラ・ハンソン写真展「ボーイス&ガールス」
は4月17日(火)から開催します。

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2007年3月14日 (水)

ハービー・山口写真展後半に突入!
「1989年東欧 真冬に咲いた花」を展示する

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先週から作品の一部入れ替えを行った。写真展後半の中心にしたのが、「1989年東欧 真冬に咲いた花」からのセレクションだ。

本シリーズは、ハービー・山口が1986年と1989年に東欧のドイツ、チェコ、ハンガリーなどを訪れたときに撮影された作品。2回目はベルリンの壁崩壊前後の政情が不安定だった時期だ。

彼はシリアスなテーマのものはできるだけ軽く表現したいと語っている。本シリーズのみを展示すると、東西の壁の崩壊をテーマに撮影した記録写真と理解されてしまうだろう。しかし彼が目指したのは決してドキュメント写真ではない。撮影場所が社会情勢が急変する中でもその作品テーマは不変。どんな状況でも人間の持つ本源的な優しい気持ちは変わらないこと表現している。
本展では、あえてロンドン、代官山17番地、ピース、静かなシャッター、ととともに東欧シリーズを展示した。他作品と一緒に見ることで彼のテーマが普遍なことをギャラリー内で理解して欲しかったのだ。

本シリーズでは彼の高い実力が遺憾なく発揮されている。
2回の訪問で撮影された女の子のポートレートを見比べると表情が明らかに変化しているのが感じられる。緊張感で表情が固い1986年と比べ、1989年では緊張の中に垣間見られる緩んだ表情から、壁の崩壊で見えてきた未来への希望が読み取れる。彼のスタンスが不変だから被写体の変化が明らかになるのだ。
また遠めからのカップルの後姿をとらえたショットも印象深い。彼が好んで撮影するショットだが、その横にはベルリンの壁が象徴的に横たわっている。
夜間に撮影された1枚では、街灯で石畳と路面電車の線路が照らし出されている。そして線路は闇の中に立つベルリンの壁の中に消えている。
路面電車の運転席を撮影した写真は、行き止まりの線路の写真とは対照的。壁が崩れ線路の先に未来への希望が続いていることを暗示しているかのようだ。
どの作品もじっくりと鑑賞することで色々な想念が浮かび上がってくる。せひ多くの人に見て感じていただきたい。
70年代後半のロンドンのパンク・ムーブメント、そして本展の東西の冷戦終結と、ハービー・山口は歴史が動く現場に立ち会っている。代官山での同潤会アパートの取り壊しも同じスタンスだろう。そして時代性を取り込んで上で、自分のライフワークとするテーマで作品を制作しているのだ。

2008年の年初には、彼のもうひとつの大作、「タイムレス・イン・ルクセンブルク」を中心にした作品展企画を検討している。彼の世界をどのように見せることができるかいまから楽しみだ。

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