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2007年5月27日 (日)

写真集コレクションでビジュアルセンスを磨く人、急増中!
"レアブック・コレクション2007"終了

Blog_16
5月11日から23日まで渋谷パルコ・ロゴス・ギャラリーで開催していた"レアブック・コレクション2007"が無事に終了した。天候にも恵まれ非常に多くの写真集ファンが来てくれた。
来場してくれた皆様、ありがとうございました。

今回はレアブックとともに壁面を使い多くのオリジナル・プリントを展示した。日本では写真集とアート作品を同時に見せるケースがない。物珍しさもあってか会場の評判は非常に良かった。多くの人に他にこのようなタイプのショップはありますかと聞かれた。ニューヨークにはギャラガーズのように両方を扱うショップはあるが、イメージしたのは海外のアート・フェアーだ。しかし実際のフェアーでは、ブック・ディラーとアート・ディーラーは扱い範囲が違うのでどうしてもどちらか一方が中心の展示になる。両方をバランスさせたディスプレイはあまりないかもしれない。また販売重視のアート・フェアーでは展示方法はいたってシンプルで味気ない。ロゴス・ギャラリーの洒落た展示用什器が使用できたことが会場の雰囲気作りに大いに役立ったと感じている。また多種多様なアートイベントを経験しているロゴス・ギャラリー・スタッフの洗練された接客も評判が良かった一因だと思う。

お蔭様で写真集の売り上げは過去4回のイベントで最高だった。単価の高い写真集が売れるようになったのが今年の特徴。写真集価格は海外古書市場での中心価格を基準に決めた。高い本は相場よりも多少安い値段をつけた。もし本当にその本を探している人なら絶対に心が動くレベルを意識したのだ。何回か来てから結局購入された人が多かったのは、たぶんネットで値段を調べられたのかもしれない。
高い本が売れるのは営業的には良いのだが、昨今レアブックの相場は急上昇している。売れてしまったら再度仕入れるのが非常に困難になっている。本当にレアな本は売れなくて逆に嬉しくもあり、非常に複雑な気持ちだった。私たちの仕入れは大半が海外業者だが、彼らによると最近の売り手はイーベイなどのネットオークションで直接売るので安い仕入れが難しいらしい。どうしてもレアな本ほど業者間価格も上昇気味になってしまう。買いたい人はネットで大体の相場を知っているので、高く売るのも簡単ではない。私たちはアート写真が本業なので、写真集は小さな利幅でも売ってしまうが、本だけを扱っている業者さんは商売がやりにくくなってたいへんだと思う。

4年ほどやっているので、毎回来場してくれるお客様が数多くいる。最初は自分の好きなイメージを捜して買っていた人が、しだいに写真を見る視点が洗練されて玄人好みの写真集を買うようになっていく。写真集を買うのは自分自身に投資することでもある。アートや写真の面白さは自分の持つ情報量により左右される。コレクションが増えるごとにヴィジュアルセンスが高まってくるのだ。自分なりの写真集コレクションの方法論を持つ人が確実に増えている感じがした。
今後コレクションを始めたい人はまず自分の好みを知ることが一番重要。失敗しても好きだと感じるものから買ってみて欲しい。無駄使いなくしてセンスは磨かれないのだ。写真史を勉強しよう、などと力んで教科書的な定番写真集を無理して買っても面白くないので決して長続きしない。
写真作品の方は期待していた売り上げはなかった。パブリシティーが写真集中心だったので、写真を売っていることの情報が興味を持つ人に届かなかったようだ。また展示作家が複数だったので作家のメッセージ面のアピールが弱かったとも思う。しかしアートフェアーを念頭に置いた企画だったので致し方ないだろう。日本では、写真集ほどに写真作品コレクションの盛り上がりはまだないようだ。しかし写真集とアート写真の中間にあたる、作家サイン入りのポスターは完売した。来場者の多くが熱心に写真を見入っていたのは事実。潜在的な顧客がいるという手ごたえは感じた。今後もアート写真の啓蒙活動が必要なことを再認識した。

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2007年5月21日 (月)

ハービー・山口のトーク・イベント・イン・名古屋

Blog_15
現在、名古屋で開催中のハービー・山口写真展のスペシャル・イベントが名古屋市内で開催された。私も鞄持ちでハービー氏に同行した。ハービー氏にとって名古屋は何十年か前にどこかのデパートで写真展が開催されて以来とのこと。彼の人気は中部地方でも同じ、本人に会えるとのことで約100名もの人が会場に来てくれた。

ハービー氏のトークの根幹をなすのは自らのキャリアを通して強化されてきた彼の人生観だ。(その詳細は過去のブログで何度も紹介しているのでご参照ください)それを様々なエピソードなどを交えてわかりやすく観客に語りかける。たとえば、宮崎駿氏の「クリエイティブな仕事する人は、若いこと、無名であること、お金がないこと、という共通する3つの条件を兼ねそろえている」という発言を、自らのロンドン時代に当てはめるとともに写真家を目指す若者へのアドバイスとして紹介する。それに続いて、自分の心に素直であることの重要性を強調し、受けを狙ったり、奇をてらってはいけないともいう。ロンドン時代にあれだけの有名ミュージシャンたちを撮影できたのは、彼が真っ直ぐな心を持って被写体と対峙していたからなのだ。
好意の返報性についても持論を展開され、特に大人は若者に優しい気持ちで接することが重要と述べている。ハービー氏がすごいのは、実際に自分でそれを実践していること。若い人にも笑顔を絶やさずに同じ目線で接するのだ。有名写真家に優しく対応してもらったら大体の若者はファンになってしまうだろう。私は彼のこのような態度に触れるごとに自分の修行の足りなさを実感する。
このような人生観とともに自分のキャリア形成や有名人との交流などを交えた軽快なトークが続く。途中、イメージと絶妙にマッチしたBGMが流れるスライト・ショーを挟みながら展開する。今回のイベント参加者も瞬く間にハービー山口の世界に引き込まれてしまった。休みなしの2時間のイベントだったが途中で席を立つ人は一人もいなかった。トーク終了後のサイン会も長蛇の列だった。

最近の写真展ではだいたいトークイベントが開催される。しかし、ほとんどは、写真家のキャリア紹介、撮影時のエピソード、有名人との交流、技術的な解説に終始する。自分の世界観を提示できる人は非常に少ないのだ。
私どものギャラリーがトークイベントを開催するのは見る人に作家の視点や生き方への共感を持ってもらうためだ。それなくして作品は絶対に売れない。今回、多くの名古屋の人がハービー氏の世界観に共感してくれたと思う。写真展の会期はあと1ヶ月。はたして何人の人が作品を欲しいと思ってくれるか楽しみだ。生活空間に好きな作家の作品があると、忙しい社会生活で見失いがちな自分を取り戻すきっかけを作っててくれるのだ。

名古屋での写真展は6月16日まで開催されています。
http://www.g-orchard.jp/orchard/exhi.html

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2007年5月16日 (水)

「レア・ブックコレクション2007」の見所
見比べて欲しい多種多様の
オリジナル・プリント展示

Blog_14
アート写真を買いたいが好きな作品を選べるお店やギャラリーが全くないという意見を常日頃聞いていた。お客様の好みは様々だが、ギャラリーの写真展は個展が多く、複数作家の作品をひとつの場所で見比べられる機会はほとんどない。欧米のオークションのプレビューやアート・フェアーのような機会が日本ではないのだ。だから今回は写真集以外にオリジナル・プリントの展示に力をいれた。
個展では慎重に考える作品レイアウトや構成は全く考えないで、複数写真家の売れ筋の代表作をセレクションして壁全面に展示した。参加しているのは、マイケル・デウィック、ハーブ・リッツ、マシュー・ロルストン、ロイス・グリンフィールド、横木安良夫、中村ノブオ、宮島周作、ハービー・山口、小林幹幸、押田隆好、大和田良など。メディアもモノクロ銀塩、カラー、デジタルなど様々、値段は1万円台から20万円台まで、中心価格帯は5万円。「ザー・サーフィング・ライフ」シリーズが世界的に人気のマイケル・デウィックの代表作もニューヨークと同じ価格で提供中。彼の直筆サイン入りポスターも限定数販売している。
写真作品のモチーフもポートレート、ファッション、風景、サーフィン、ストリート、ダンスなど多彩。写真集をある程度集めると次第に本物のオリジナルプリントが欲しくなるもの。アート写真コレクションに興味があるが購入経験のない人には初めての1枚を見つける絶好の機会だと思う。
同展は5月23日(水)まで開催中です。私は5月19日以外、夕方から夜にかけて会場にいます。アート写真や写真集に対する質問は大歓迎です!

「レア・ブックコレクション2007」詳細ページ
http://www.parco-art.com/web/logos/rarebook_2007/

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2007年5月11日 (金)

「レア・ブックコレクション2007」開催!!
捜し求めていたアート、写真集が見つけよう

Information_1 毎年ゴールデンウィーク明けに渋谷パルコのロゴス・ギャラリーで行っている「レア・ブックコレクション」。今年も5月11日~23日まで行います。
今回はパリの「パリ・フォト」やニューヨークの「ザ・フォトグラフィー・ショー」などのアート・フェアーのブース再現をイメージして開催します。「パリ・フォト」の様子は、雑誌エスクァイアやヒュージなどで紹介されていたので様子をイメージできる人も多いのではないでしょうか。4月に「アートフェアー東京」が行われましたが、写真関連商品の販売に特化したアート見本市と考えてください。
これまでフェアーはギャラリー、ディーラーが資産価値の高いアート写真の在庫を持ち寄って販売するのが一般的でした。最近は写真集がアートの一形態として認められコレクター が増加中で、写真集を展示販売する業者が増加しています。

今回はレアブック約120点、10作家のオリジナルプリント約30点を展示販売します。
手前味噌になりますが、かなり質の高い作品、写真集を集めることができたと思っています。販売価格も海外市場の相場を参考にできるかぎりリーズナブルにしたつもりです。一部状態が悪い特価本も用意しました。写真集コレクションに興味のある方はぜひおいでください。本や雑誌でしか見たことのなかった貴重本の現物が展示されています。またオリジナルプリントに関心のある方には、多くの国内外作家の作品を一度に見て比較できる貴重な機会です。モチーフはポートレート、ファッション、風景、サーフィン、ストリート、ダンスなど様々です。

私はだいたい夕方から夜は会場にいます。コレクションのアドバイスを希望される方は気軽に声をかけてください。多くの方と出会えることを楽しみにしています。

内容についてはパルコのウェブサイトで紹介しているのでご参照ください。
http://www.parco-art.com/web/logos/rarebook_2007/

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2007年5月 3日 (木)

ナイーブな心を持つ骨太な若手写真家たち
第32回木村伊衛兵写真賞

Blog_13 今回の木村伊衛兵写真賞は本城直季、梅佳代、両氏のダブル受賞だった。
審査委員の藤原新也氏のコメントが興味深かった。世界中を旅する同氏の現代日本の印象は、モノや情報が過剰で多くの人が暗い表情で精神的に不健康な人が多いといった感じのようだ。
そのような生き難い現代日本に生きる若者の心情を表しているのが本城、梅氏の写真というわけだ。彼は本城氏の写真を見て精神療法のひとつである箱庭療法を思い出したとのこと。箱庭療法は言葉で自らの思いを表現できない子供に特に有効といわれている。箱庭制作を通して隠されていた気持ちを明らかにできるそうだ。いまの若者は大人になりきれてなく、まだどこかに幼児のような全能感を持っている。 受賞者たちはそんな大人になりきれない現代の若者を象徴し、彼らは写真を通じてセルフカウンセリングを行っていると解説していた。確かに二人の受賞挨拶などでも、まだ大人になりきれていない若者に見られる典型的なナイーブさが感じられた。

実際、心理学的に箱庭作りは大人にも癒し効果があるらしい。本城氏は無意識のうちに写真で箱庭を制作しているのかもしれない。梅氏も、おもしろおかしい写真を撮影することで自らを癒している面もあるのだろう。ともにリトルモア刊の二人の写真集が売れている理由も、崖っぷち日本で現代人がヴィジュアルの癒しを求めていることの証なのだろう。

デジカメが普及し写真撮影が手軽になったいま、プライベートな写真撮影やブログでの公開は多くの人の趣味となっている。これらは写真撮影でのセルフカウンセリング的な側面があるのは確かだろう。しかし、ほとんどの写真は撮影者の自己満足でおわっている。本城、梅の両氏の写真は彼らの満足とともに、見る側にも癒しを与えているのだ。
一瞬、誰にでも撮影できそうな二人の写真だが、その違いについて審査委員の篠山紀信氏は、二人の写真は見る人を驚かし作品に引き込む力がある、と指摘していた。
本城氏は単に"あおり"の技法を実践しているのでない。ヘリコプターを使用したり、許可が下り難いビルの屋上から撮影し、誰も見たことのないヴィジュアルを徹底的に追求している。梅氏はただスナップをしているのではなく、24時間365日、求めるイメージを撮影するためにスタンバイし、動き回っているという。
時代性が反映されているとともに、凡人ではできない1枚のイメージへの強い執念が見る人を驚かし魅了する。二人は写真撮影に関しては決してナイーブな若者ではないのだ。

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