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2007年7月15日 (日)

マーティン・パー写真展
「ファッション・マガジン」
実感して欲しいファッション写真多様化の現場

Blog_19
私は80年代に英国に住んでいた経験がある。それゆえ、英国におけるレジャーの大衆化をテーマにしたマーティン・パーの初写真集"THE LAST RESORT"1986 Promenade Press刊, は非常に親近感を持って見ることができた。当時の英国にはインダストリアル・ペザントという言葉があった。直訳すると工業化された農夫で、生活は近代化したが自分の住む地域から全く外に出たことのない労働者階級の英国人が多いことを意味していた。それが変化してきたのが80年代になってから、その状況をユーモア溢れる視点で撮影したのが上記のデビュー写真集なのだ。彼の探求したマス・ツーリズムの虚像は、悪趣味で、のぞき的だと当時の英国ではかなりの論議が巻き起こった。作品の皮肉、ユーモア面が強調されるマーティン・パーだが、実は社会的背景の深い洞察を持った知的な写真家なのだ。

私は当時の社会的背景を知っていたので、この本をファッション写真の要素を持つ高度なドキュメント作品としてみていた。たぶん英国経験のない人にはこの本だけを見ても理解し難い作品だと思う。しかし、その後の彼の写真集を見て作品が好きになった人なら、その原点として興味が持てるのではないだろうか。"THE LAST RESORT"のペーパーバックのオリジナル版は非常に希少。しかしこの本は1998年にDewi Lewis から再版されているので、関心のある人はぜひご覧になってください。

彼の日本初個展「ファッション・マガジン」が東京都写真美術館で8月26日まで開催中だ。これはアートとしてのファッション写真に興味のある人にとって必見の写真展だ。写真展カタログとなる「ファッションニュースペーパー」もマスト・バイのアイテム。パーはカタログのなかで、「ドキュメンタリー、ファッション、アートと一見異なる分野の写真も、実は区別がつかないほどお互いに関連性を持っている」と述べている。また写真展のテーマは、"人生そのもの"とも言っている。アート写真は多様化し、もはや現代人の人生を表現している優れた写真作品はひとつのカテゴリーにとどまらないということを彼は示したいのだ。
これこそが、現在の欧米市場で人気の高い"広義のファッション写真"のこと。私があらゆるところで主張している、カッコイイ写真と同じ意味なのだ。個別作品の好き嫌いは別にして、約100点の作品展示とカタログを通してその広がりと多様性が実感できるはずだ。
そして日本のアート写真市場の問題点も浮き彫りになってくる。

会場では、ポール・スミスのTシャツを思わず購入してしまった。値段はTシャツとしては8400円と決して安くない。しかし写真展カタログ付だし、シャツというキャンバスの上にプリントされた一種の作品、そしてポール・スミスとマーティン・パーのダブルネームで十分価値があるのではと考えてしまった。

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