« 入り口は大好きな1冊の写真集から
果てしなくディープなアート写真の世界
| トップページ | 80年代の気分が現代に蘇る
トミオ・セイケ「ポートレート・オブ・ゾイ」第II章 »

2007年9月 2日 (日)

夏休みに読んだ1冊
優れた写真作品の作り方

Blog
夏休みに"Image Makers, Image Takers"というインタビュー集を読んだ。アート・フォト・サイトの今週の写真集でも紹介した本だ。
英文のエッセーは文章が難解で辞書なしでは趣旨がわからくなる。その点、インタビュー形式だと英語でも比較的すんなりと読める。気になる作家の部分からピックアップして読めるのもいい。
私は外国人によるインタビュー本が好きだ。質問がシンプルであくまでも写真家が中心だ。日本人の場合、インタビューする側が自分の意見を主張したり、個性を出そうとする場合が多い。難しい仕事なので有名な専門家がインタビュアーを勤めるからかもしれない。写真集にも同じような傾向があると思う。
この本のインタビュアーはジャーナリスト、評論家のアン・セリーナ・イエガー氏。「優れた写真作品制作にはシャッターを押す以外に何が必要か」という彼女の素朴な疑問を世界的に成功している写真家に投げかけている。厳選されたイメージも約200点収録されている。
本は二部構成。第1部ではアート、ドキュメンタリー、ファッション、広告、ポートレート分野の写真家20人に、キャリアのきっかけ、作品製作の動機や発想法を訊いている。実はインタビューされている写真家セレクションがこの本を購入したきっかけでもある。 以下のように、まさに最前線で活躍しているトップ・フォトグラファーばかりなのだ。
トーマス・ディマンド、ウィリアム・エグルストン、ボリス・ミハイロフ、
スティーブン・ショアー、マリー・エレン・マーク、マーティン・パー、
ユージン・リチャード、セバスチャン・サルガド、デビッド・ラシャペル、
デビッド・シムス、マリオ・ソレンティ、エレン・ヴォン・アンワース、
ティナ・バーニー、アントン・コービン、リネケ・ダイクストラ、ランキン。

実は第2部がかなり面白い。作者は、ロベルト・ドアノーが「写真は見てくれる人のために制作されることを忘れてはいけない」と発言していることを引用して、写真家とともにそれを見せる人の重要性を主張している。編集者、キュレーター、ギャラリスト、エージェンシーディレクター、アートブック発行者がどのような価値基準で写真を評価、セレクションして仕事をするか探求している。欧米では関連分野の専門家が写真家の能力を引き出す役割を果たしている、と考えられている。彼らはタイトルの「Image Makers, Image Takers」の、
「Take」、つまり写真家のイメージを取り上げて世の中に紹介しているのだ。表舞台にあまり出てこないが、彼らの写真家との共同作業があってはじめて写真の仕事が展開する。これらの人々に注目したインタビューは非常に珍しい。作者が業界内のビジネス・システムをよく理解していることがわかる。
質問項目は、新人写真家へのアドバイス、撮影哲学が必要か、作品の発想法、などの同様な質問が写真家、キュレーターたちに投げかけられており、それらの個別の回答を読み比べてみるのも面白い。以下に面白いと思った箇所を少しだけピックアップしてみよう。
訳が下手でニュアンスが伝わらなかったらお許しください。

(アン・セリーナ・イエガー)
・彼らの多くは何かを探求したり、問いを投げかける手段として写真を使用している。
・写真を見ることは時たま見逃される。写真家と見る側の目は、筋肉のように鍛えられなければならない。
・ヨゼフ・アルバースは、見る人が能力を持っていれば、写真の中に写真家の個性を見つけだすことができる、と言っている。
・アンドレ・ケルテスは、誰でも見ることができるが、必ずしも見て知ることができるとは限らない。最高レベルの写真はただのきれいなイメージをはるかに超えている、と言っている。
・カルチェ=ブレッソンは、私にとって写真撮影は叫びであり、自分自身を自由にする行為だ。決して、個人のオリジナリティーを主張したり証明するためのものではない、と言っている。
(スティーブン・ショアー)
・若い作家に会って、彼の主要な目的がチェルシーのギャラリーでの個展開催と聞いて驚いた。私の若いときとあまりにも違うのだ。私は写真、世の中、自分自身を理解しようとしていた。そのために写真を撮影しながら常に様々な疑問点を探求していた。
・偉大な写真家の作品は、個人的な探求の結果に生まれたものだと私は信じている。
・日常の中で非日常を見つけだすには、意識的な注意が必要だ。心の状態が作品に反映されたり、カメラの選択などの制作方法に影響を与える可能性があると思う。
(カミラ・ブラウン)
・キュレーターの仕事は、人々が作品の背景のアイデアに思いを馳せるようにさせることだ。作品が見る人を考えさせ興味を持てばそれはアートとしての価値があることだ。優れた展覧会は思いや考えを呼び起こす、答えよりも多くの疑問点が湧き上がるものだ。
(インカ・グラーヴ・インゲルマン)
・写真で重要なのは、よく知られた視点を再解釈しているか、また全く新しい組み合わせをを作り出しているかだ。テーマはまねできるけれども、その見方や解釈は誰も盗むことができない。
(ルドルフ・キッケン)
・写真家がアーティストになるには、堅実さと持続が重要だ。長期的にはただ美しい、衝撃的なだけの写真は見飽きてくる。
(ダイアン・ダフォー)
・優れた写真家は、ただ撮影するのではなく、なぜ撮影しているかを認識している人だ。
(キャシー・ライアン)
・人が覚えている優れた写真は感情レベルで共鳴している。それは対象の深い理解を与えるとともに、何か新しい見方を提供してくれる。
・写真は100%問いかけだ。優れたパワーを持つ写真は言葉を超える。

様々な意見や考え方があり、新たな疑問点もわいてくるかもしない。一方で、エッセンシャルな面では共通点も数多くあることがわかるだろう。アート写真ファンはもちろん、この分野でのキャリア形成に興味ある人には格好の参考書だろう。

|

« 入り口は大好きな1冊の写真集から
果てしなくディープなアート写真の世界
| トップページ | 80年代の気分が現代に蘇る
トミオ・セイケ「ポートレート・オブ・ゾイ」第II章 »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/170909/16317998

この記事へのトラックバック一覧です: 夏休みに読んだ1冊
優れた写真作品の作り方
:

« 入り口は大好きな1冊の写真集から
果てしなくディープなアート写真の世界
| トップページ | 80年代の気分が現代に蘇る
トミオ・セイケ「ポートレート・オブ・ゾイ」第II章 »