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2007年10月25日 (木)

ヴァリュー・フォー・マネー!
トミオ・セイケ「ポートレート・オブ・ゾイ」オンライン・ショップ完成!

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(C) Tomio Seike

トミオ・セイケの傑作「ポートレート・オブ・ゾイ」シリーズのデジタル・アーカイヴァル・プリントがウェブで買えるようになりました。東京で現在開催中の写真展は11月に名古屋に巡回しますが、それ以外の地域のお客様はぜひご利用ください。
http://www.artphoto-site.com/zoe.html

初めて写真を買うときは何を買っていいのか悩むものです。海外有名写真家の作品は最低でも20万以上します。一方で国内作家の作品は安いものの、真剣にアート写真に取り組んでいる人が非常に少ないことから質の高い作品の選択肢が少なく、なかなか気に入ったものがみつかりません。
ちなみに海外中心に活躍するセイケ氏の銀塩写真の近作は45万円以上。それを考えると、5万円から購入できる「ポートレート・オブ・ゾイ」シリーズのデジタル・アーカイヴァル・プリントは非常にお値打ち。評価の定まった有名写真家の作品をリーズナブルな値段で購入できる絶好の機会なのです。
それも、1枚のネガから制作される作品数はオリジナルのゾイ・シリーズと同じ22枚。そのうち10枚を、デジタル用に振り分けているのです。値段のはるかに安いデジタル作品をエディションの中にいれることは、作家にとってワン・イメージからの収入減少を意味します。
またデジタルでも本シリーズは作家本人が全て手作業で制作しています。手間は銀塩とたいして変わらないのです。それでも、できるだけ多くのお客様に手頃で質の高いアート写真の入手機会を提供することで、まだまだ発展途上の日本のアート市場が立ち上がるきっかけになれば、というセイケ氏の格別のご配慮から実現したのです。

デジタル写真の将来性に疑問を持つ方もいるでしょう。メーカーは確かに耐久性保障はしているものの、何十年後にどのような状態になるかは誰もわかりません。その意味では銀塩写真の耐久性は歴史が証明しています。一方で、現代アートの盛隆で、アート写真でもますますコンテンツの重要性が問われるようになっています。十数年前のように銀塩写真自体の美しさだけで作品が評価されることは少なくなりました。デジタルプリントでも作家と作品自体に魅力があればアートとしての価値が十分に認められるようになり、この傾向は今後も続くでしょう。ちなみにアーヴィング・ペンのような巨匠クラスになるとデジタルプリントでも何百万円もします。結局は、作品を購入する人が作家の世界をどれだけ愛でることができるかなのです。その意味では、もし「ポートレート・オブ・ゾイ」シリーズとトミオ・セイケの世界が好きな方なら、今回のデジタル・アーカイヴァル・プリントは非常にヴァリュー・フォー・マネーではないでしょうか。

一方、アート写真の購入経験があり、トミオ・セイケ作品の価値を知っているコレクターの方には、本シリーズの銀塩写真が絶対にお勧めです。$2,000.(約21万円)ですが、実は今回の展示作はすべて今回が世界初公開。彼の作品を積極的に購入する欧米のコレクターは誰も本作品をまだ見ていないのです。オリジナルのゾイ・シリーズでは、数多くのイメージがエディション22枚まで売り切れています。最後のプリント価格は$6000(約63万円)まで跳ね上がります。その人気シリーズの未発表作を、世界に先駆けて購入できるのは非常に恵まれたことなのです。まして、今回はデジタルを10枚制作するので銀塩作品は僅か12枚しかないのです!
オンラインでは銀塩写真は購入できませんが、興味のある方はギャラリーへお問い合わせください。

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2007年10月20日 (土)

ルネ・グルーブリィのサイン入り限定写真集をゲット!

セイケ氏が"Portraits of Zoe"を制作するときに影響を受けたという、ルネ・グルーブリィの写真集を入手したことは前回書いた。その後、昔にウィーリー・ロニスの写真集を購入したパリの古書店から、新品同様の本があるという別の連絡が舞い込んだ。1954年の本で新品同様?よく本の情報を見てみると、2002年刊とある。どうもオリジナルの再版らしいのだ。それも600部限定、作家のサイン入りという。早速、セイケ氏に報告したところ、ぜひ見てみたいという。オリジナル版と再版を見比べるのは結構興味深い。値段は限定本の新品同様なので、前回入手のオリジナル版より高くなったがサイン入りということもあり注文した。

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待つこと約2週間、先週末に写真集が到着した。パリからにしてはずいぶん早かった。本は同じくペーパー判だが、非常にモダンなデザインになっていた。表紙の写真は同じが、なんと半透明のダストジャケットをまとっており、それに紫色で作家名とタイトルがプリントされている。フォーマットは違うが、ブルース・ウェーバーの1988年Knopf刊の写真集と同じ感じのものだ。ページの紙質は違うものの写真印刷の感じはオリジナルに近い。イメージによっては情報量が多く感じるものも散見された。このあたりはセイケ氏に見てもらい判断を伺ってみたい。中身には、"Private re-edition"、スイスで制作と記載されているので、グルーブリィ本人が個人的に限定数だけ制作したようだ。グリーンのペンでサインと番号が記入されていた。サム・ハスキンスも同じように絶版本のプライベート版を作っている。欧州では作家品人による再版は珍しいことではないのかもしれない。
Birgit Filzmaierという人による序文には色々と興味深いトピックが書かれていた。いくつか紹介すると、本作はグルーブリィと妻のリタとの南仏、パリへのハネムーンのときに撮影されたとのこと。彼は、ドキュメントではなく、感情、喜び、雰囲気をヴィジュアルにしようと試みたらしい。本の編集は彼自身が手がけ、この旅行の写真をセレクトし並べ直して、一日の思い出の記録のようにしたかったという。1954年のオリジナルの発行部数はドイツ版が700部、英語版300部だったことも判明した。当時の状況も詳しく書かれていた。グルーブリィはスイスよりも写真先進国の米国での評判が高く、なんとU.S.カメラの1955年版の掲載作品がMoMAのエドワード・スタイケンの目に留まったそうだ。彼は1953年に「ザ・ファミリー・オブ・マン」のイメージ探しでスイスを訪れたときにグルーブリィと会って、写真集掲載作品をMoMA用に購入したそうだ。そして1955年開催の伝説の「ザ・ファミリー・オブ・マン」写真展にも、他のスイス人作家のロバート・フランク、ワーナー・ビシュフなどとともに参加したという。

実はU.S.カメラの1955年版も米国書店のオンラインショップで発見し入手した。
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これは、なんと10ドルだった。巻頭には、その後のアート写真の発展に多大な影響を与えた、ロバート・フランクやリチャード・アヴェドンなどが紹介されている。その本にルネ・グルーブリィが紹介されているのは非常に興味深い。前回も書いたが彼の"The Eye of Love"のアプローチはまさに現在のアートとしてファッション写真と同じ、彼はそのさきがけなのだ。編集したのは、U.S.カメラを創設したトム・マロニー氏。調べてみると、彼は米国のフォトジャーナリズム発展に貢献した人物ということ。当時から作家の自己表現の手段として、写真を理解していたことは明らかだ。たぶん、セイケ氏以外にもU.S.カメラを通してグルーブリィに影響された人が数多くいるのではないだろうか。

写真集の素晴らしいことは、本になった作品は世界中の人が見てくれる可能性があり、 時間が経過しても将来に再評価される場合があることだ、というようなことをマーティン・パーが書いていた。もし写真集がなかったら、スイスの若い写真家の作品が語られることはなかっただろう。作家にとって写真集出版がキャリア上、どれだけ重要か改めて感じさせられた。

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2007年10月 3日 (水)

アートフォトブックスのさきがけ
ルネ・グルーブリィの写真集をゲット!

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先日のトークイベントで、トミオ・セイケ氏が影響を受けた作家として紹介したのがスイス人写真家ルネ・グルーブリィ(1927生まれ)だ。現在ギャラリーで展示中のゾイ・シリーズ誕生の背景に彼の写真集「The eye of Love」があるという。これはグルーブリィが恋人と旅して、様々な状況で自然体の彼女の姿を撮影したもの。
私はどうしてもそのオリジナル写真集が見たくて、海外の複数ブックディーラーに問い合わせを行った。1954年刊の知名度が低い本なので入手はかなり困難だと覚悟していた。
それがなんとイギリスのグロセスター州の古書店から在庫があると連絡をもらった。現在、ポンド高で、航空便送料や保険を入れるとかなり高くなったが迷わず注文、昨日現物が無事送られてきた。なにせ50年以上前のペーパーバック、全体的にかなり傷んでいた。古書の評価ではFairの状態。
セイケ氏は昔この本の現物を見たことがあるが、印刷が悪く購入しなかったそうだ。たしかに、印刷の質はよくない。私は、マーティン・ムンカッチの写真集「Nude」に、紙質や印刷の感じが似ていると感じた。しかし、写真集としてのレイアウトはすごく斬新だ。 表紙には写真が文字なしで全面に使われている(上のイメージ)。僅か20数枚だが、モノクロ写真のレイアウトもシンプルですごくいい感じなのだ。これには少しばかり驚かされた。この作品がセイケ氏のゾイ・シリーズを発想する原点になっていることがよくわかる。 またその後に取り組んでいたヌード・シリーズにも影響を与えていることもまちがいないだろう。Basil Burtonという編集者の序文が時代を感じさせて興味深い。50年代は写真の価値観が大きく変化している。絵画的な表現から脱して、写真独自の表現を追及することがやっと一般化してきた。また記録ではない、作家のパーソナルな視点を表現するメディアへと展開してきた時期なのだ。この写真集はその先駆けで、ルネ・グルーブリィの作品集と意識されて制作されているのだ。

トミオ・セイケ氏のファンならこの入手困難な写真集の中身を見たいだろう。古くて非常に傷みやすいが、私がギャラリーにいるときはできる限り現物をお見せしたい。興味のある人は店頭で声をかけてください。土曜の午後ならだいたいギャラリーにいます。

トミオ・セイケ写真展"ZOE"開催案内は以下をご覧ください。
http://www.artphoto-site.com/gallery_exh_074.html

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2007年10月 2日 (火)

10月14日まで開催中!ハービー・山口写真展
「1989年東欧 真冬に咲いた花」

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(C)Herbie Yamaguchi

今年ブリッツ(アート・フォト・サイトギャラリー、目黒)で開催した個展でも一部展示した「1989年東欧 真冬に咲いた花」シリーズの写真展を中目黒のキャスパーズ・ギャラリーで10月2日から14日まで開催します。モノクロ約30点を展示、私たちはプロデュースを担当しています。駅から徒歩10分の目黒川沿いの素敵なギャラリーです。中目黒はハービー氏の地元、仕事がないときはご本人もできる限り来廊する予定です。

動乱期の東欧を撮影した本シリーズは、「ピース」などが好きなハービー・山口ファンにはやや異質かもしれない。しかし、彼の作品をロンドン時代からずっと見ている人には非常に評判が良い。何が違うのか?
古くからのファンは何が写っているかではなく、一貫している作家の世界観への共感があるのだ。東欧のドキュメント写真のように感じる作品にも、「静かなシャッター」や「代官山17番地」につながるく同じ作家性を感じ取っているわけだ。
日本人はモチーフ(何が写っているか)で作品を購入する人が多いといわれるが、欧米アートファンのように作家性を愛でる人も増加しているのだ。自分が好きな写真家の作品なら、たとえ題材が好みと違っていても絶対に見たほうが良い。作家の新たな面が発見できてさらに好きになれるからだ。
ちなみに案内状のイメージに見覚えがある人がいるのではないだろうか。これは、常盤貴子と豊川悦司が出演したテレビドラマ、"愛していると言ってくれ"のオリジナル・サウンドトラックのCDジャケットに使用された写真なのだ。主題歌はドリカムのヒット曲「Love Love Love」だった。「どんな状況でも人間の持つ本源的な優しい気持ちは変わらない」ハービー氏が写真で訴え続けているメッセージが理解されたからこそ、ジャケットの顔に選ばれたされたのだろう。
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*愛していると言ってくれ オリジナル・サウンドトラック
音楽:中村正人、ドリームズ・カム・トゥルー


以下が、プレスリリース用の原稿。ぜひご参考になさってください。
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ハービー・山口は1986年に初めてベルリンを訪れる。東ベルリンに通じる検問所でプラカードを掲げて何かを訴えている若い女性がいた。彼女との出会いが本作のプロローグとなる。「父が東側に住んでいて、私に会いたいと手紙を出したという理由で投獄された。父を助けて欲しい!」 彼は人間の運命を引き裂く東西を分断する壁の存在に深い関心を持つようになる。
1989年冬、ベルリンの壁崩壊のニュースを聞いたハービー・山口は再び東欧に旅立った。時代が変わるという直感が写真家を突き動かしたのだ。ウィーンから、ベルリン、プラハ、ワルシャワ、ブタペストを相次いで訪れる。プラハ到着の翌日には共産党政権が崩壊するビロード革命に遭遇している。しかし、彼の目指したのは歴史の転換点をドキュメントすることではなかった。
社会情勢が急変する中でも作品テーマは不変。どんな状況でも、未来を信じられれば人間は優しい気持ちになれること伝えようとしている。緊張の中に垣間見られる人々の緩んだ表情から、壁の崩壊で見えてきた未来の希望が読み取れる。
その後、彼は何度となくこの地を訪れている。しかし1989年の冬のような身震いするようなポジティブな表情とは二度と出会うことはなかったそうだ。
自由が実際に訪れると、希望や夢は現実となる。現代の日本人と同じように、いまや彼らも自らの力で目標を見つけだすことが求められるのだ。

現在のグローバル化経済の原点が「ベルリンの壁」崩壊だ。70年代の英国でパンク・ムーブメントを実体験したハービー・山口はここでも歴史の一場面に立ち会っていた。本展では1986年、1989年に東欧で撮影された、一部未発表を含む約30点のモノクロ作品が展示されます。

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