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2007年11月30日 (金)

「フラワー・パワー」参加作家の解説
斎門富士男 理想郷(アルカディア)を求めて

Blog
斎門富士男の写真集(絶版)

斎門富士男の印象は人によって様々だろう。世界中を旅する写真家、写真集「Chinese Lives」、「StarKids」、などで知られるポートレート作家、エロチシズムを追及した作品を思い起こす人も多いだろう。私には彼が時代の最先端を走っていた90年代後半の活躍が印象に残っている。1996年の「CHINESE LIVE」以降、パルコ出版や光琳社出版などから次々と写真集を出版し、1998年パルコ・ギャラリーで開催された「StarKids」展はかなり話題になった。パルコがアート情報発信の担い手だった最後のころに行われた優れた写真展だった。また当時、彼は葉山の広大な土地を持つ邸宅に猫たちと暮らしており、その生活を紹介するテレビ番組を見た記憶もある。

彼は若いときから一貫して生きている証を追求してきた。その答えを捜しに世界中を旅し続けてきたのだ。18冊にも上る写真集はその軌跡なのだ。様々な分野の創作活動と試行錯誤の末、彼はいま“ヘブン感”つまり自分にとって心地よい写真撮影を心がけるようになったという。それを意識するようになったのは、40歳代になり伊東に移り住んでから。自邸裏庭には数多くの花が育てられており、仕事のないときはそれらを見て過ごすことが多いという。芽が生え、成長し、花が咲き、枯れていく、草木の短い一生を見届けるのは、忙しい写真家の仕事から離れる一種瞑想のような行為だろう。彼は花と、そのはかない一生を、ポートレート、エロチシズム、ドキュメント、風景などいままでの自分の仕事と重ね合わせるようになる。そして花が枯れるように、人生の先には終わりがあることを意識した。だからこそ花が咲くように、自分もいまを意識的に心地よく生きないといけない。斎門がヘブン感を追う背景にはこのような花がもたらした人生観がある。いつしか、夜間の花の撮影が彼のライフワークとなった。その最新作が今回展示されている「Night Flower’s Show」シリーズだ。

人生を真に楽しんでいる人などいない。誰しもが様々な悩みや問題を抱えながら暮らしている。アーティストの斎門だって社会生活を送っている、状況は一般人となんら変わらないだろう。だけど彼には写真がある。写真でヘブン感を追い求めることで瞬間的にでも本当の自分を取り戻そうとしているのだ。彼の写真は、人生の限界を意識することで毎日を気持ちよく生きることが重要だとわかるんだ、と訴えている。ヘブン感の追求とは、社会生活の中では自分自身に素直になり目的を持って生きていくことだ。そんな気持ちがこめられた彼の写真は見る人を元気にする。心がぶれたときは僕の写真をみて自分を取り戻して欲しい、というメッセージが込められているのだ。
彼は花自身の姿が際立つから夜間での撮影を好んでいる。「Night Flower’s Show」シリーズは漆黒の中で花が浮かんで見える宇宙感漂う非常に抽象的な作品だ。しかし、それは独立して存在するのではなく、「Chinese Lives」、「StarKids」、「Shanghai・Jin」、「Flamingo」など過去の全作品とつながっている。また今までの創作活動の到達点である。これらが理解できないと彼の作品の本当の魅力はわからないだろう。

多くの若い人は、彼の90年代後半の仕事を知らない。また写真集もいまやほとんどが絶版で入手困難だ。だから私どものギャラリーでは、彼のいままでの仕事の全貌を明らかにするために、2008年の4月~6月に斎門富士男写真展を計画している。個展では、彼が人生の理想郷(アルカディア)を探し求めてきた過程を本格的に振り返り、その魅力的な世界を提示したい。

写真展「フラワー・パワー」は2008年1月19日まで開催。
(日、月曜休廊、12月25日~1月5日・年末年始休廊)

写真展についての詳細はこちらでご案内しています。

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2007年11月20日 (火)

「フラワー・パワー展」開催!

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(C)Terri Weifenbach/RAM

国内外の複数の写真家によるグループ展、「フラワー・パワー」が始まった。この企画は2~3年前から考えていた。しかし、相応しいと思う作品を撮っている作家がなかなか見つからなかった。花を撮影している人は数多くいる。しかし、今回は単に花の写真の展示にはしたくなかった。
最も注目したのが個別作家のコンセプトだ。それを表現する一環としてイメージに花や草木が写っている作品を探した。しかし、花や草木が写っているだけで全く違うテーマの作品を無理やりまとめたのではない。それぞれの作家の持つコンセプトに現代人のもつ共通の悩みのようなものを感じたことが大きい。それは、つきつめるとこの生き難い社会でどのように正常を保ちながら社会生活を送るかということに尽きる。参加した作家たちは写真作品の制作を通して精神のバランスを保っているのだ。そのような写真は同じような境遇で生きる一般人のこころに何らかのメッセージを与えるのでは、と考えたのだ。

いまや誰の心にも同様に伝わる共通のイメージなど存在しない。心に突き刺さるイメージは人によって様々だ。だからグループ展の場合、見せる側もできるだけ幅広い作品をセレクションしなければならない。根底に横たわるメッセージに共通要素があれば、個別作家のイメージはヴァラエティーに富んだほうがよいのだ。もし会場で自分の心に何かを訴える作品があれば、ぜひ作家のコンセプトを読み解こうとして欲しい。もしそんな共感が持てる写真に出会えたら、それは必ず見る人に生きるパワーを与えてくれるはずだ。

今後、個別作家の解説を行っていく予定です。

写真展「フラワー・パワー」は2008年1月19日まで開催。
(12月25日~1月5日・年末年始休廊)

(参加アーティストと主な展示内容)
・テリー・ワイフェンバッハ 
代表作「Hunter Green」などから、瞑想感が漂う大判カラー作品。
・ロン・ヴァン・ドンゲン
最近取り組んでいるカラー作品。
・マイケル・デウィック
世界中でブレイクした「The Surfing Life」より。
・斎門富士男
妖艶な花を夜に撮影した「Night Flower’s Show」シリーズより。
・セイリー育緒
土門拳文化賞の受賞作「甘い蜜」よりモノクロ作品。
・大和田良
写真集「Prism」より大判作品。

写真展についての詳細はこちらでご案内しています。

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2007年11月14日 (水)

トミオ・セイケ写真展
後半の名古屋展へ巡回!

トミオ・セイケ写真展「ポートレート・オブ・ゾイ」の前半東京展が終了した。来廊してくださった皆様、本当にありがとうございました。
今回の特徴は、本展でギャラリーに初めて来たという人が非常に多かったことだ。そして会期終了が近づくにつれ来廊者が増えていった。特に最終日は休日と重なったこともあり、時間帯によっては非常に込み合った。また、プロの写真家の来廊者も非常に多いと感じた。やはり銀塩写真のマスターであるセイケ氏のデジタル作品に興味があったのだろう。1994年刊行の写真集の売り上げも予想以上だった。セイケ氏を知らなかった全く新しいファンが興味を持ってくれたようだ。

作品販売は、非常に魅力的な値段だったデジタル・アーカイヴァル・プリントに集中した。また案内状使用イメージなど数点のイメージの人気が非常に高かった。これは初めて写真作品を購入された人が多かったのと関係していると思う。最初は誰しも自分のビジュアルの好みが定まっていない。だから、既に売れている作品や、印刷物になっているイメージを選びがちになる。私も最初はそうだったので気持ちがよくわかる。作品を選ぶことはとても楽しいことなのだが、悩みだすと判断不能に陥ることもある。そういう時は代表作を選ぶことでまず間違いはない。経験豊かなコレクターのなかにも、代表作をおさえてから好みの作品を選ぶ人もいる。 作品を購入して一緒に生活していくことで自分の好みがだんだんわかってくるのだ。1枚作品を手に入れることは、アート写真のディープな世界に足を踏み入れたこと。自分の好みのビジュアル探しは一生をかけて取り組む価値あるライフワーク的な趣味なのだ。

11月17日(土曜)からは後半の名古屋展がスタートする。先週末は私も展示のお手伝いに行ってきたところだ。
Blog_2
静謐観漂う素敵なギャラリー空間になったと思う。東京展と同じくデジタル・アーカイヴァル・プリントを23点展示、サイン入り写真集も限定販売します。中部地区でもぜひ多くの人がトミオ・セイケ作品をきっかけにアート写真コレクションを初めて欲しい。
私が繰り返し主張している、セイケ作品のお値打ち感はこの地の人の方が理解してくれるのではないかと思っている。

名古屋展の詳細はこちらをご覧ください。

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