「フラワー・パワー」参加作家の解説
ロン・ヴァン・ドンゲン
花と共に生きる庭師兼アーティスト
(C)Ron Van Dongen/RAM
ロン・ヴァン・ドンゲンは米国北西部のオレゴン州ポートランドに住んでいる。ポートランドは各種調査機関のアンケートで、”最も住んでみたい都市”の上位に常にランクインする美しい自然景観に恵まれた場所だ。花や植物をモチーフに作品制作するには理想的な土地なのだろう。彼は、自分が撮影する花木をすべて自邸裏庭で種や苗木から育てている。自らを写真家兼、庭師と呼び、日々庭で泥にまみれて草木の世話をし、数多くの花の成長と変化を見つめている。それは散歩できれいな花を見つけたり、切り花を買うのとは次元が違う。花に注がれる愛情はたぶん愛するわが子に対するものに近いのだろう。撮影に選ばれた花は庭から切り出され自宅スタジオに持ち込まれる。自然光を使い、強い影や強烈なハイライトをできるだけ避ける。気まぐれな光が花を最も美しく照らす決定的瞬間を待ち続けるのだ。花を育て撮影までの一連の行為が彼自身の癒しになっているという。作品制作を通して彼は自然のゆらぎとシンクロする。ゆらぎを取り込んだ彼の写真作品は、忙しい現代人を癒し、生きる力を与えてくれる。「フラワー・パワー」参加作家のなかでは一番ストレートに花を撮影しているが、生き難い現代社会でどのように正常を保ちながら生き抜くかというテーマは共通なのだ。
ヴァン・ドンゲンは1961年ベネズエラ生まれ。オランダの大学で生物学などの学位を修得。しかし写真に魅了され、その後サンフランシスコ・アート・カレッジで写真を学んでいる。最初はポートレート写真家を志し、その技術修得のために植物を撮影していた。それらの作品がギャラリーで評判を呼び次第に花に専念するようになる。重要なのは被写体ではなく、良い写真を撮ることだと気付いたからだという。当初はヴューカメラとポラロイドポジネガ4X5インスタントフィルムを使用したモノクロ作品が中心だった。白い花を白バック、濃い色の花を黒バックで撮影した独自な色味の作品を発表する。
彼の写真サイズは大判だ。サイズが大きな役割を果たしている。それはメイプルソープやペンの花とも通じるが、彼の花はパーツを画面全体にクローズアップされている場合が多い。 花の持つフォルムの美しさを極限まで引き出そうとしているのだ。
初期作品ではモノクロにより花の姿を抽象化しようとしている。それは非常に洗練されモダンで、ラルフ・ローレン氏が魅了された理由がよくわかる。モノクロの花のイメージは”Alba Nero”1999年刊、”Vulgaris” 2000年刊、”Nudare”2001年刊の超大判写真集三部作にまとめられ世界的な評価を得る。初期写真集は発行部数も少なかったことからすでに高価なレア・ブック扱いになっている。近年、カラーでの作品制作にシフト。4x5ポジフィルムで撮影しデジタルイメージを作成。作品は高品位のデジタル出力だ。ペーパーは、"Hahnemuhle Fine Art Photo"を使用している。
2006年にはカラー作品の写真集”EFFUSUS”を発表している。
(C)Ron Van Dongen/RAM
アート写真市場では1920年代に活躍した、タルボット、ブロスフェルドなどから、カニンガム、ペン、メイプルソープにつながる写真によるボタニカル・アートの継承者と評価されている。作品は世界中のギャラリーで取り扱われており、ヒューストン美術館、エルトンジョン・コレクションなどにも収蔵。モノクロ作品はラルフ・ローレン、ポール・スミスのコンセプト・ショップにも飾られている。現在はギャラリーでの活動が中心だが、今後はオークション出品も期待されている有力な次世代作家だ。ライフワークの植物のポートレート写真はモノクロからカラーにシフトすることで新たな展開を見出した。今後、花以外の新たな作品展開が非常に楽しみだ。
写真展「フラワー・パワー」、年初は1月8日(火)からオープン。
2008年1月19日まで開催。(日、月曜休廊)
写真展についての詳細はこちらでご案内しています。
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