PIE(フォトイメージングエキスポ)で開催
ハービー・山口トークイベント
PIE(フォトイメージングエキスポ)2008で行われたハービー・山口氏のトークイベントにお手伝いで行って来た。PIEのパンフレットや広告では当イベントの告知はほとんどされてなかった。しかしさすが知名度が高いハービー・山口氏、ノーリツ鋼機のブースは瞬く間に観客で一杯になった。彼のライフワークである「人の心を温かく、より平和にするような写真を撮る」がトークの骨子。PIEでは写真家による無数のトークショーが各企業のブースで開催されていたが、カメラ、テクニック以外が内容のものはたぶん他にはなかっただろう。
改めてトークを聞くと、彼の持つ世界観の背景には、ロンドン時代の経験が強く影響していることがわかる。つまり、戦後日本のような倫理なき利益追求の価値観ではなく、自らの伝統、文化を尊重した上で近代化を進める西洋的発想を彼は持っているのだ。消え行く代官山の同潤会アパートの撮影を思いついたのもこの視点があったからだろう。90年代のその他の日本人写真家にとって古いものが壊されるのはあまりにも当たり前の出来事だったのだ。またルクセンブルクのプロジェクトが成功したのも、写真家に現地人の思想への理解があったからだと思う。
ロンドン時代は世界とのつながりを感じたが、いまの日本では道が閉ざされている感じが強い、とも語っていた。国内外の情報の流れの閉塞感はアート写真だけでなく文化全般に関して当てはまると思う。根底には英語文化圏と日本語文化圏の違いがあるのだろう。
実は80年代から90年代中ごろにかけての日本の方が、海外の最新アート情報がいまよりも入ってきていた。しかしその後不況に突入し、さらに市場化経済が進行したことで、利益を生まないアート文化情報の担い手がほとんどいなくなった。海外のアート情報はあまり日本語化されなくなったのだ。現在はインターネットが情報収集の主要な手段になったが状況は同じ。英語圏と日本語圏のネット世界は全く個別に存在している印象が強い。
日本に住んでいても、英語力があるなしで入手できる情報量に膨大な差がでてきているのだ。
ハービー氏は、将来世界に自分の写真を発信していきたいとも語っていた。現状で課題となるのは、英語での情報発信という方法論だけではない。どのようなコンテンツを海外に提供するかが重要になる。現在の外国人コレクターは、 彼らが考える古典的日本イメージを求める傾向が強い。歴史と伝統を踏まえた西洋におけるアート写真の世界には、コンテンポラリーの日本人写真家の評価軸が存在しないのだ。やはり、日本独自のアート写真の価値観を体系化して、海外に紹介していくことが絶対に必要なのだ。ハービー氏のメッセージはグローバルに普遍的なテーマだ。理論武装ができればまちがいなく海外でも受け入れられるだろう。
PIEではカメラや写真が趣味の人がどれだけ多いかを実感した。メーカーは販売するためにハードの差別化を追求する。しかし、それもそろそろ限界に達してきたのではないか。ハードやIT技術の進化で優れたヴィジュアル作品の制作はもはや難しくなくなった。技術的な敷居が低くなったことで、いまや誰にでも写真表現の可能性が広がっている。写真はライフワークとして追求していく価値が十分にある奥行きのある趣味であり、極まれば作家の可能性も見えてくる表現分野なのだ。
もっと多くの人が、自己表現としての写真の可能性に気付いて欲しい。
・ハービー・山口 写真展「あの美しかった冬の光」は、3月29日まで目黒のブリッツ・ギャラリーにて開催。4月24日からは、名古屋に巡回します。
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