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2008年4月28日 (月)

写真展「地図のない旅」
斎門富士男 動き出す!

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(C)Fujio Saimon

斎門富士男の写真展が始まった。今回展示するのは彼のいままでのキャリアを網羅する作品群となる。彼が考えてくれた写真展タイトルは、「地図のない旅」。彼自身の人生を象徴した素晴らしい響きのものだ。

斎門はいままで作家として理想的なキャリアを歩んできた。90年代後半に、「CHINESE LIVE」を皮切りにパルコ出版や光琳社出版などから次々と写真集を出版し、当時のアート写真の情報発信地だったパルコ・ギャラリーで「StarKids」展などを開催している。彼のポートレート写真は非常に定評が高く、ロッキングオンなどの音楽雑誌で有名ミュージシャン、アーティストを撮影している。また、女性タレントのセクシー系の写真や写真集も手がけている。葉山の約1600坪もある大邸宅に多数の猫たちと生活していることも話題となった。
しかし、2002年からの一時期、バリ島に渡ったことで一般への露出が減るようになる。 業界内では相変わらず高い評価を受けているものの、作品を購入する一般顧客への知名度が落ちてしまったのだ。昨年彼も参加して開催したグループ展「フラワーパワー」で感じたのは、彼の花のポートレートと過去の一連の仕事との繋がりを知らない人が特に若い世代に多いことだった。考えてみれば、彼が大活躍していた時代から10年以上が経過しているのだ。また、彼の主要写真集を出していた光琳社が倒産したことで、現在入手できる本が少ないことも影響しているだろう。
以上の理由から、個展では彼のいままでのキャリアをテーマごとに見せる会場構成にするつもりだった。それなくして一般に作品は売れないと思った。

小さなギャラリーで彼のキャリアをコンパクトに見せるためには、展示枚数を増やすしかない。そのため今回は四つ切程度の小さめのプリント中心の展示を心がけた。壁面ごとにテーマを設け、「アメリカ人」、「中国人」、「風景」、「有名人ポートレート」、 「上海ドキュメント」、「薔薇」、「ヌード」、「写真集カヴァー」、「犬・猫」など約150点以上を展示した。当ギャラリー始まって以来の大量の展示枚数だ。準備には従来の5倍くらい時間がかかった。
特に「アメリカ人」、「中国人」のポートレートを各30点ずつ展示した壁面は個人的に気に入っている。写真集ページをめくるとどうもドキュメント写真の感じがしないでもない。壁面一杯にグリッド状に見せた方が、彼がカッコイイと感じた人を選んで撮影しているのがわかりやすい。これらは一種のファッション写真なのだ。

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本展を欧米のギャラリストが見たら、一見脈絡のない幅広い分野の作品展示は、コマーシャルっぽいと指摘するだろう。しかし、そのような反応は想定済み。欧米のアート写真の伝統や歴史を知らない日本人が親しみを感じるのは、一般大衆の目線を持ち広い分野で活躍している写真家の作品なのだ。最近は、優れたディレクションがなされた一部グラビア写真も日本独自のアート系ファッション写真になりえるとも考えている。

しかし、何度も主張しているように、日本ではコマーシャル写真イコールがアート写真という意味ではない。一番重要なのは作家の持つ生き方や世界観が明確で、それが作品に反映されていること。そして作品がポップなだけではなく、作家のメッセージが時代に合致しないと絶対に売れないのだ。斎門富士男の場合、彼がいままで生きてきた自由な人生がカッコイイ。これが全ての根底にあるのだ。
80年代の社会は若者には窮屈な時代だった。みんな自由に生きることに憧れていた。しかし、自由に生きて社会的にも認められる人などほとんどいない。彼は写真を通じて自分の気持ちに素直に生きてきた。邪念などない少年のように真っ直ぐな心を持ち続けてきた類まれな人なのだ。そのスタンスは経済状況が大きく変化したいまでも変わらない。現在では人生を客観視できるようになり、今という瞬間にヘブン感を追求し生きることを信条としている。
彼は照れながら、やせ我慢の人生だと言っている。しかしそんなぶれない人生、才能だけではなかなか実践できない。私を含め中途半端な人生を歩まざる得ない一般人は憧れてしまうのだ。だから彼の歩んできた生き方自体が写真展のテーマなのだ。

日本の一般人がリアリティーを感じる作品が提供され、それが実際に売れないと日本のアート写真の低迷は続くだろう。今回はギャラリーにとっても大きな挑戦になる。はたして、日本独自の価値観を持つアート写真が日本の顧客に受け入れられるか?そして、写真コレクションの未経験者が購入を検討してくれるか?斎門自身も積極的に協力してくれたおかげで非常に戦略的な値段設定と、風景などポピュラーイメージを多数含む豊富な選択肢提供が実現できた。
なんと作家自身製作のフジクリスタル・プリントを2.5万円から提供する。斎門カラーのヘブン感溢れる風景も3万円~購入できる。
作家自身が短期的な儲けを度外視して、中長期的な顧客作りを意識した結果実現した。
斎門富士男は作家として本気で動き始めたのだ!

写真展「地図のない旅」は6月7日まで開催。
営業時間午後1時~7時。休みは日、月曜。休廊日以外はゴールデン・ウィーク中も普段どおり営業します。詳しくは以下をご覧ください。
http://www.artphoto-site.com/gallery_exh_082.html

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2008年4月22日 (火)

メイキング・ア・ギャラリー・イン・神戸

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5月の連休明けに神戸栄町のギャラリーTANTOTEMPOがグランド・オープンを迎える。
オーナーとディレクターは約1年位前に、アート写真・マネージメント講座に参加してくれた。物件を見つけるのに多少の時間がかかったが、お二人のヴァイタリティーと行動力で構想わずか1年で念願のギャラリーオープンにこぎつけたことになる。以前触れたように、オープニング企画はハービー・山口の「The Big Love」に決まった。

先週末に作品の設営を手伝ってきた。ギャラリーはファッション・ブティックなどが入居する古い雑居ビルの3階にある。内装工事が終了したばかりの何もないホワイトキューブに写真を展示するのは何度行っても心がわくわくする。
ここは、横長のスペースを、ギャラリーとライブラリー兼カフェに2分している。入り口がちょうど物件の真ん中にあり、目の前にガラス越しのレセプション、外光がまぶしい左側がライブラリー、右側がギャラリーとなる。床は明るいナチュラル・ウッドのフローリング、棚やテーブルはダークブラウンに塗られている。古いビルなのだが天井がむき出しでかなり高い。漆喰調の白壁と相まって全体の雰囲気はニューヨーク・ソーホーのフォトギャラリーといった趣に仕上がっている。インテリアのデザインはギャラリー・ディレクター自らがこだわり抜いて行ったという。
受付にはクールデザインのマック24インチディスプレイが設置され、ここにギャラリーがセレクションした、若手作家のポートフォリオのスライドショーが常時流されるという。また、キーワード、テーマ、価格の検索で顧客好みの作品が見つかる仕組みを構築するという。
これはTANTOTEMPO pureというギャラリープロジェクト。カフェ横の横長のテーブルには、参加作家の現物作品も自由に見れるように工夫するという。もちろん、希望者は気に入った作品を購入できるシステムを目指している。才能のある若手写真家の作品を見つけ出して、幅広い顧客に買ってもらう。これこそがここの大きな特徴となる。ディレクターは既にめぼしい写真家にコンタクトしており、ほとんどが参加を表明しているという。どのようなコンテンツが集まり、展開していくか非常に楽しみな若手育成、市場啓蒙プログラムだ。
現在のところ、公募は行っていないが、将来的に作品を広く求めていくことになるそうだ。ちなみに若手といっても年齢制限は40歳までとのこと。

カフェ・スペースは写真集ライブラリーがメイン目的で設置されている。約150冊の写真集は洋書店ハックネットがセレクション。カフェ利用客は自由に閲覧することができる。一部のお勧め本は、在庫を置き購入可能にするという。提供する飲食物にもこだわりがあり、本邦初紹介のエスプレッソの豆を選び、パンは芦屋を中心に西宮、神戸に展開し、無添加パンの販売を行っている "ビゴの店" のものを使用するそうだ。

カフェ内で写真を展示するの地方都市でよく見られるスタイル。これだと、作品はあくまでもインテリア展示品の一部なってしまう。しかし、このギャラリーはギャラリーとカフェのスペースを完全に分離していることが特徴。レンタルとは違い、商業ギャラリー業務は短期的なキャッシュフローを生まない。カフェ事業で固定費用を捻出しようというのが、TANTOTEMPOのビジネス・モデルなのだ。今後、ギャラリーオープンを考えている人には参考になるだろう。
個人的には、カフェ兼ギャラリーではなく、同じ場所にあっても二つを完全に独立させた方が広報上有利だと思う。

さて、ハービー・山口の「The Big Love」写真展は5月10日~7月6日まで開催。5月11日(日)の午後2時からハービー・山口のトークショーを行います。私も同行する予定です。
詳しくは以下をご参照ください。
http://tantotempo.jp/

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2008年4月15日 (火)

ニューヨークで開催、アート写真オークション&フォトグラフィー・ショー

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クリスティーズオークションカタログより

先週ニューヨークへ行き、フォトグラフィー・ショーやオークションに参加してきた。久しぶりのニューヨークだったが、街の雰囲気はあまり変わっていなかった。気付いたのは、スターバックス・コーヒーがやたら増えていたことぐらいだ。
新聞の論調は、米国経済は完全に後退期に入ったというもの。証券会社ベア・スターズの救済合併などの影響で、チャリティーの大口資金が集まり難くなっていることなどが紙面を賑わしていた。また市場は経済実態よりも先行するので、不況期でもそのサイクルの後半になると株式は悪材料の多い中で上昇し始めることなども、過去の例を提示しながら書かれていた。しかし、経済の転換期は後で振り返ってはじめて明らかになるもの、見極めは決して簡単ではないだろう。

今回は別の訪問目的もありスケジュールが超タイトだった。オークションは4月10日にクリスティーズで開催されたGert Elferingコレクションセールなど一部に参加。このオークションは、日本でも話題になった、フランス大統領サルコジ氏の奥さんである元スーパー・モデル、カーラ・ブルーニのヌード写真が出品されたものだった(上の写真)。そのためアート写真のオークションでは珍しく、TVカメラが数台ならび、立ち見も出るほどの盛況だった。Gert Elferingコレクションからは3回目の入札になるが、今回もファッション系中心の優れた選りすぐりの135点が出品された。ほとんどの作品はきちんと購入先がきちんと記されている。これが重要で、来歴が確かで有名なコレクション収蔵作品となるとそれだけで価値が上がるのだ。

多くの関係者が気にしていたのは経済悪化の影響だった。私の受けた印象は、いまのところアート写真市場は景気後退の影響を大きくは受けていないというもの。多くの作品は、落札予想価格を上回って落札されていた。2月に開催されたクリスティーズのオークション結果はよくなかった。 多くが落札予想価格の下限以下でしか売れなかったのだ。関係者は出品作品のレベルが低かったからと解説していたが、どうやらその通りのようだ。つまり、いつでも買える、モダンプリントなどは景気の影響を受けるものの、来歴の確かな希少で優良作品に対するニーズは相変わらず衰えていないということ。全てのオークションのレビューは後日、アートフォトサイトで紹介します。

さて、例のカーラ・ブルーニだ。この写真はミッシェル・コントにより1993年に撮影されている。大きさは、32.5X22.5cmのモノクロ・プリントだ。エディションは付いてなく、作家から直接購入したものらしい。作品の落札予想価格は、3,000~4,000ドル。(約30~40万円)。しかし、入札開始価格はなんと10,000ドルだった。つまり、入札以前から複数の非来場者による高値の入札があったということだ。その後は、会場、電話での参加者が競り合って、 75,000ドルで落札された。会場内からは、日本人男性が買ったという声が聞こえたが、 結果は中国人コレクターだったらしい。私は本人を確認できなかった。
今年から、競売の手数料が2万ドルまでが落札価格の25%、50万ドルまでが20%となった。その結果、落札者は合計91,000ドル(約910万円)を支払うこととなった。
興味深いのは、カタログには新印象派の創始者で、点描表現を用いた表現を確立した画家ジョルジュ・スーラの、「Standing Model」(1886-87)というオルセー美術館収蔵の絵画が引用されていること。確かにカーラ・ブルーニのポーズは絵画に非常に似ている、欧米のアート写真は絵画の伝統と歴史も踏まえているのだ。

フォトグラフィー・ショーについては次回に触れたいと思います。

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2008年4月 8日 (火)

「アートフェアー東京2008」
現代アートがリードする写真表現

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週末に東京国際フォーラムで開催されていた「アートフェアー東京2008」へ行ってきた。

世界中から108の業者が参加して、古美術、日本画、洋画、現代アートまでを展示販売する日本最大のアート見本市だ。昨年は開催期間中に10億円を売り上げたという。他のアートフェアーでは考えられない多種のカテゴリーの参加者が揃うのがここの魅力なのだと思う。しかし、アート・カテゴリーごとのフェアーが一般的な欧米ギャラリー関係者には、浮世絵、陶器から現代アートまでが揃うイベントはややアバンギャルドすぎて感じられたかもしれない。外国ギャラリーのブースはやや浮いているようにも感じられた。

写真作品を取り扱うギャラリーもいくつかあったが、ほとんどがコンセプト重視の現代アート系。ギャラリー小柳が杉本博司、タカ・イシイギャラリーが森山大道、小山登美夫ギャラリーが蜷川実花などを展示していた。関東の写真専門ギャラリーの顔はなく、関西の、ピクチャー・フォト・スペース、アウト・オブ・プレイス、ザ・サード・ギャラリー・アヤ、MEMなどが参加していた。大阪のピクチャー・フォト・スペースは、ダイアン・アーバス、べロック、バーバラ・キャスティンなどのギャラリー・コレクションを中心に展示、奈良のアウト・オブ・プレイスは山本昌男などのモノクロ作品を展示。昨年は写真中心だったこのギャラリーも、今年は現代アート系の作品展示がメインになっていた。

今回のフェアーでは、明らかに現代アートの価値観で評価された写真作品の展示が中心だった。これらはコレクター向けで、一般客がリアリティーを感じるアート作品ではないと思っている。しかし、私が常日頃主張しているイメージとコンセプトを兼ね備えた時代性のある写真作品も、市場へのアピールが必要なことも実感した。このままではアート写真は現代アートに飲み込まれてしまい、一般からは遠い存在になってしまう。最近は、危機感を同じくした写真家や関係者が増加していると感じている。一般人がカッコイイ、おもしろいと感じる写真作品を紹介する手段がギャラリーの個展以外にないのか?
何らかの具体的アクションをみんなで起こす時期に来ているのかもしれない。

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2008年4月 1日 (火)

ハービー・山口「タイムレス・イン・ルクセンブルグ」写真展が終わる。
そして、名古屋、神戸に!

個展を開催して面白いのは、来廊者の顔ぶれでその作家のいままでのキャリア像がある程度見えてくることだ。仕事上の付き合いがある場合を抜きにして、本当に作家に対して親しみがないと、忙しい中なかなか写真展に来てくれないし、まして写真集やオリジナル・プリントを購入してくれない。自分のファンは数多くいると公言する写真家でも、あまりお客様が来ない場合もあるのだ。

ハービー氏は人気写真家なので、仕事関連の人や、カメラ、写真を趣味としている人は数多く来廊する。しかし、彼はハービー・山口の写真世界を愛する一般人ファン層も持っているのだ。福山雅治さん、山崎まさよしさんなどミュージシャンの写真を見たことや、ライカカメラがきっかけで、彼の写真が好きになった人も多い。中には、80年代にパルコ・ギャラリーで開催された写真展以来のファンの人などもいる。熱烈なファンの人は会期中になんと3~4回もギャラリーに足を運んでくれた。地方からわざわざ見に来たひとも非常に多かった。
本展には週末の多いときには1日100人近い人がわざわざ目黒のギャラリーまで来てくれた。昨年よりも動員数は増加しており、どうもファン層が拡大している気配を感じた。過去のイベントで何度も販売している、写真集「ロンドン・チェイシング・ザ・ドリーム」や「ピース」が今回も昨年の個展に近い冊数が売れたのだ。彼のファンなら当然既に持っていると考え、当初は限定数だけしか取り寄せていなかった。結果的に、期間中に何度も追加注文することになった。

ギャラリーで初めてハービー氏に会ったお客様は、思いもよらない彼のフレンドリーな態度に最初は戸惑うのが傍から見ているとよくわかる。彼は、会場内の人にとても気を使う。最後はいつも疲れ果ててしまうほどだ。
若いときに、作家と仲間内だけが集まっている写真展で強い疎外感を感じたとハービー氏は言う。だからこそ自分の個展では、作家と全てのお客さんが一体感を感じて欲しいのだ。会場内では誰にでも声をかけるし、見ず知らずのお客さん同志を紹介したりすることもある。社会的背景は違っても、同じ写真家が好きだということで人間同士は仲良くなれる。ハービー氏は自分の表現している世界観を会場でも実践しているのだ。そして最後はみんな笑顔一杯で帰って行く。
作品を販売するアーティストの場合、仕事関係の人脈よりも、一般客の人気の方が重要なのだ。それは結局、本人の地道な努力の継続で作られていくのだ。

本写真展は4月24日から名古屋のオーチャード・ギャラリー(アート・フォト・サイト名古屋)に巡回します。また、神戸で別の写真展を開催予定です。
実は5月の連休明けに神戸に新しい写真ギャラリー「TANTO TEMPO」が誕生します。関西圏での写真文化の啓蒙を目指して設立され、写真集ライブラリーやカフェを併設しているのが特徴。またオーナーが若手、新人の発掘に意欲的な新ギャラリーなのだ。そのオープニングの企画がハービー・山口氏の写真展「The Big Love」となった。昨年の私どもでの写真展のように、彼のベスト作品を展示することでその魅力的な世界観を展示する予定。ハービー氏もオープニング・イベント参加のために神戸入りされる予定です。内容は現在関係者で企画中。詳しいグランドオープン等の詳細が決まりましたらアートフォトサイトでご案内します。

最後に、ハービー・山口「タイムレス・イン・ルクセンブルグ」写真展に来場してくれた皆様、本当にありがとうございました。

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