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2008年5月23日 (金)

Glance of lens ~レンズの一瞥~
横木安良夫写真展開催中!

Guide434

横木安良夫の写真展が5月28日まで四谷のポートレート・ギャラリーで開催されている。最近発売された、スナップショットのことを記した新刊本発売記念展だ。この本は、スナップ写真の歴史や、ロベルト・ドアノーやフィリップ・ロルカ=ディコルシアが関わった肖像権の裁判の記述などが記してある。それらを踏まえて横木のスナップ論が展開されていて読み物としても興味深い。文庫版で値段も手頃、ストリートで撮影する人には格好の参考書だろう。
会場のポートレート・ギャラリーは写真館協会が持っている展示スペースだ。私も初めて訪れたが、昭和レトロの雰囲気漂うやや狭い美術館くらいの広い空間だ。
作品は彼の長いキャリアの中からスナップ系作品約60点がセレクションされている。すべて額装されきちんと並べられた作品は横木にしてはやや大人しい印象か。"Teach Your Children"などで膨大な数の写真展示を覚えている人はもっと多くを見たいかもしれない。しかしそれは短期間開催の出版記念展で、本収録作品の展示が中心なのでやむを得ないところだろう。スナップとして撮影された写真も写真家がキャリアを積み重ねることで、1点の作品としても存在感が増してくることがよくわかる。写真イメージに白や赤いロゴが重なった案内状、チラシなどの秀逸なデザインは原耕一氏が担当。これが写真展にライブ感を与えている。
本展ではフレームにアクリルがないのでインクジェット作品のクオリティーが直接に吟味できる。スナップであるがゆえ当然全ての撮影条件は違うわけで、作品のトーンを合わせるのに非常に苦労したそうだ。どうしてもプリンターの特徴が強く反映されがちになるようだ。

今回は、横木の発案でポートフォリオ・セットを制作してみた。
サイズは、8X10と11X14インチ。それぞれ、作家自選の10枚のサイン入りインクジェットプリントが特製ケースに入れられている。エディションは各30点。販売価格は、10.5万円と15.75万円(税込み)。サンプルは会場で展示中です。

○横木安良夫ギャラリートーク
(with タカザワケンジ氏)
5月24日(土)午後6時~8時

会場ホームページ

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2008年5月17日 (土)

「レア・ブックコレクション2008」
今年も渋谷パルコで開催中です!!

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毎年5月に渋谷パルコのロゴス・ギャラリーで行っている「レア・ブックコレクション」。 今年は5月16日から28日まで開催します。今回もファッション、ドキュメンタリー、ポートレート系中心に人気の高いレアブックス約120冊を展示、販売します。今年の見所についてまとめました。

ウィリアム・クラインの「ニューヨーク」のオリジナル、ヴィジョネア18号「ルイヴィトン特集」、東松照明の「11時2分NAGASAKI」など高額なものもあるが、1~2万円くらいの品揃いも豊富にそろえた。今回は5回目の開催となるが、ほぼ毎回品揃えするものもいくつかある。私たちは、海外の古書市場の値段をベースに販売価格を決めているが、アーヴィング・ペンの「フラワース」、ケイト・モス・ブック、リリアン・バスマン「フォトグラフス」などファッション系写真集は古書市場での価格が高くなっている。どうも海外での写真展開催がきっかけになることが多い印象だ。昨年、ニューヨークのペース・マクギルでアービング・ペンの花の写真展が行われてから「フラワース」の値段は上昇した。リリアン・バスマンも今年、ニューヨークのスタレー・ワイズで写真展が開催されている。現地ギャラリストはあまりに入手が困難なので、新刊が検討されていると言っていた。ケイト・モスは彼女の活躍、話題性が直接人気につながっている。
今回は、ファッション系でも作品レベルが高いが比較的過小評価されている写真集を多くセレクションしている。それらは当然値段もまだ安い。知らない作家でも、ジャケットが気になったらぜひ中身を見て欲しい。自分好みの作家が見つかるかもしれない。作家としての評価が上がると写真集相場も上がるだろう。
ファッション写真がアートとして本当に認識されるようになったのは90年代になってから。それ以前の写真家はまだまだ再評価される余地が十分にある。写真集でも自分の目利きを市場で試すことができるのだ。
今回は、ファッション、コマーシャル分野で活躍する日本人写真家の写真集にも注目してみた。60年~70年代の日本人写真家の写真集価格は急騰している。この時期の、森山大道、川田喜久治、東松照明、細江英公などの写真集は海外での人気がすさまじい。それにくらべて80年代以降に主流になったコマーシャル系で活躍した写真家の写真集は写真史ではほとんど評価されていない。現在まだ調査は続行中なのだが、コマーシャルがベースで日本独自のアート写真になりえる可能性を持った写真家によるいくつか写真集をセレクションしてみた。これらの本の値段もまだまだ非常に安い。コレクションする分野として未開拓であるがゆえに面白いと思う。
このフェアーでは毎回壁面に展示する写真作品に趣向を凝らしている。今回は日本で数少ないファッション写真家NAOKI氏のミニ写真展を企画した。これは、ギリシアのシフノス島で新進気鋭モデルの瀬畑茉有子を起用して撮影されたフォト・ストーリー。作品テーマは、21世紀日本の理想の女の子像。彼女は、理想的なボディースタイルを持っているが、日本人的な目鼻立ちのごく普通の女の子。彼女のような、強い個性がなく、つかみどころのない印象の女の子は見る側の想像力で様々に変化する可能性を秘めている。もはや絶対的な理想像がない現代社会では、何気なく自然に感じる女の子こそが男女共に憧れの対象になりえるのではというコンセプトだ。彼女の存在は90年代に英国で登場したケイト・モスを思い起こさせる。それまでのグラマナスで長身、整った顔立ちというスーパーモデルとは違い、スリムで普通っぽい女の子がスターになった背景には欧米社会の価値観が変化したからなのだ。そしてニューエコノミー時代が訪れ価値観の多様化が進む中彼女の人気も高まっていった。日本社会も遅れながらも欧米化が進んでいる。最近はグラビア人気が大きく低下しているという。社会状況の変化から、瀬畑茉有子は21世紀日本におけるケイト・モスになりえる可能性を秘めていると期待している。
ぜひ、多くの方に写真を見ていただき、感想を聞いてみたい。

私はだいたい夕方から夜は会場にいます。写真集コレクションのアドバイスを希望される方は気軽に声をかけてください。多くの方と出会えることを楽しみにしています。

内容については以下のパルコのウェブサイトをご参照ください。
http://www.parco-art.com/web/logos/rarebook_2008/

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2008年5月13日 (火)

The AIPAD Photography Show New York
米国市場の広がりと多様性を実感

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写真のアート・フェアーで最近有名なのが11月に開催されるパリ・フォトだ。観客動員数も非常に多い。しかし、ここの特徴は多くの人が美術館の展覧会に行く感覚であること。
アート写真の販売の場所として一番伝統のあるのがニューヨークで開催されるThe AIPAD Photography Show だ。AIPAD(The Association of International Photography Art Dealers.Inc)という業界団体が主催し、今年で28回目の開催となる。今回も4月10日~13日までに行われ、全世界から、ギャラリスト、ディラーなどの75の業者がパーク・アベニュー・アーモリーが集合した。昔は、ミッドタウンのヒルトンホテルなどで開催されていたが、市場拡大と作品サイズの巨大化で会場が手狭になり、最近は広いこの地で開催している。入場料は1日券が25ドルだった。

まず会場の雰囲気が日本のアート見本市とはまったく違う。前の週に行ったアート・フェアー東京とは全く別世界なのだ。この施設は19世紀後半に完成した州兵の施設だったところ。天井がドーム状で高く、柱がない広大なスペースだ。とにかく通路の幅が広くて会場スペースに余裕がある。そしてかなりの厚みの絨毯敷きなのだ。高額なアート作品を販売する場所としての雰囲気作りが見事に演出されている。壁面も短期イベントに関わらず作品に合った色味の壁紙が丁寧に張られているブースも数多くある。ミッドダウンの高級ギャラリーがそのまま引っ越してきたという感じ。つまりそれだけの投資ができるほどの売り上げが期間内にあるということだ。各ギャラリーの得意分野がうまく生かされ、作品の品揃えも豊富だ。タルボットなどの19世紀写真から、近代写真、現代アート系まで、160年あまりの写真の歴史を会場内の作品でだいたい網羅している。若手作家は現代アート系のカラーによる巨大作品が目立つが、一方で小振りのモノクロ写真作品も数多く展示されている。
アート写真といっても、市場の発展にともない非常に多様化している状況がよくわかる。ここでは日本で全く無名な新人、中堅写真家が作家として活躍しているのだ。値段の幅も、とてつもなく広い。無名写真家による古写真が100ドル以下で売られている一方で、たぶん十万ドルくらいはするだろう、ロバート・フランクのヴィンテージ・プリントもある。MoMAやメトロポリタン美術館で展示しているような歴史的な作品でも、モダンプリントなら普通に売られているのだ。多くのギャラリーは、オークションなどでも取り扱われる有名作家の作品とともに、ギャラリーで売り出し中の新人、中堅作家を同時に展示している。在庫の有名作を売ることで経費を捻出するとともに、新人作家の価値を演出する心理的効果を狙っている。近年相場が大幅上昇しているので長年業務を行っているギャラリーは優良在庫をもっているのだ。値札はモダンプリントだと付いている場合が多く、ヴィンテージプリントは興味がある顧客との個別交渉になる。
日本からは大阪の老舗ピクチャー・フォト・スペースが長年出展している。ここは展示作品の傾向が明確なので顧客を掴んでいる。今回ディレクターの相野氏はリー・フリードランダーの素晴らしいヌード作品を中心に展示していた。

Blog2
写真を真剣に見る行為は体力を消耗する。わずか数時間だったが久しぶりに膨大な写真と対峙したので時差ぼけも手伝ってぐったりしてしまった。
今回は色々な予定をこなしながらの訪問だったが、本来はじっくりと数日くらい時間をかけて見て回るのが良いだろう。見るだけでも十分に楽しいフェアーなのだか、もし具体的に作品購入を考えるのならより興味がわいてくるだろう。フェアー内だけでも日本では考えられない膨大な選択肢があるのだ。実は私が一番楽しかったニューヨーク訪問は、ギャラリーの在庫作品を買いに来た時だった。現在のアート写真相場はかなり上昇したが、現代アートなどと比べるとまだまだ割安の優良作品が数多くある。写真を買いに行くなら、ニューヨークはアート・フェアー、ギャラリー、オークション、ミュージアムが全て揃ったアート写真シティーなのだ。

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