« 2008年6月 | トップページ | 2008年8月 »

2008年7月29日 (火)

外国人に通じないので要注意
外人作家のカタカナ表記

Blog
graniphのTerriのTシャツ

現在、写真展開催中のアメリカ人作家のテリー・ワイフェンバック。今回、現地の責任者と相談して上記のカタカナ表記にしたのだ。実はいままで、彼女の写真集などが紹介される場合、テリ・ワイフェンバッハと書かれることが多かった。2000年メタローグ刊の写真集ガイドブックや最近のスタジオ・ボイスの写真集特集にもそのように書かれている。実は、私どもで昨年開催したグループ展では、この読み方を採用していた。また、graniph社は彼女のイメージを使用したT-シャツを製作しているが、こちらは、テッリ・ワイフェンバフとなっている。個人的にがこれが一番オリジナルに近い響きだと思う。さらにさかのぼると、約10年くらい前にいまは閉廊した原宿のバーソウ・フォトギャラリーで写真展「In your dreams」が開催されたときは今回と同じテリー・ワイフェンバックだった。今回の写真展を契機に最初の読み方に戻されたということなのだ。

同じような例は数多くある。先日来廊された東京都写真美術館のK氏とはその話題で盛り上がった。ニュー・トポグラフィックスの代表作家のルイス・ボルツがいる。彼の場合も、Baltzがはたしてバルツなのか、ボルツなのかかなり議論があったらしい。たぶん日本語には正確な読みは存在しないのだろう。K氏は来日した本人にどちらの方が原音に近いかと聞いてもらい、ボルツにしたそうだ。リチャード・ミズラックも80年代に最初に日本に紹介された時は、ミズラッチと言われていた時期もあったそうだ。ロバート・メイプルソープも、最初はマップルソープと書かれていた時があったのだ。今年来日したジョエル・マイロウィッツも、マイエロヴィッツ、マイヤービッツ、メイロヴィッツなど様々な日本語表記がある。

外国に行くと写真家の名前で苦労することが多い。私たち日本人は外人の名前はアルファベットではなくカタカナの発音で覚えているようだ。現地のギャラリー関係者と英語のコミュニケーションはできても写真家の名前が出ると相手の眉間にしわが寄ることが多い。そんな時は瞬く間に自分の英語力に自信をなくしてしまう。覚えている名前を発音するときは、それを自分なりに英語っぽい響きにして言うのだが日本語にない発音のときは絶対に正しく言えない。アンドレ・ケルテスなどど日本語読みしてもまず通じない。
いままではカタカナにする場合、オリジナルに近い発音よりも、読みやすく単純化する傾向があったと思う。場合によっては日本語で元音とかけ離れた新しい読み方を作り上げていることもあるのではないか。

私の経験だと、写真展が開催された場合は作家の読み方がオリジナルに近くなることが多い。写真集などの紹介と違い、個展になるとキュレーター、ギャラリストと作家が直接コミュニケーションするので読み方にも気を使うのだと思う。ネットで外人写真家の日本語名を調べる場合は、美術館やギャラリーの使用している表記を信用した方がベターだと思う。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2008年7月22日 (火)

一足早い夏休みの読書
「貧乏するにも程がある」長山靖生著

Blog

今週の連休は少し早いが夏休みの読書で気分転換をした。私は、複数の本を同時並行して読み続ける癖がある。今回は途中まで読んでいた複数の本を一気に読み終えた。

今回紹介するのは、「貧乏するにも程がある」(光文社新書2008年刊)。著者の長山靖生氏は歯科医のかたわら執筆活動を行っている作家。以前、独自のコレクター論を展開した「おたくの本懐」(ちくま文庫)を読んだことがあった。本書は、「芸術とお金の不幸な関係」というサブタイトルに惹かれてタイトル買いした1冊。主に純文学のことを書いてあるが、ビジュアルで表現するアート写真分野にも十分に当てはまる内容だと思う。特に最終章の「マイナスがプラスになる世界は」読み応えがある。ワークショップで参考になりそうな箇所がいくつもあった。

好き嫌いの感覚は誰でも持っているが、それが他人と共有されるかどうかは別問題だ、ということを思い出した。コレクターは自分の好きなものを買っていればよい。アマチュア写真家は同じく自分の好きな写真を撮影すればよい。そして、多くの人は自分が良いと感じるものは他人も同じはずだと考えがちなのだ。しかしこれは大きな誤解だ。他人が選曲したベストCDに違和感を感じた経験は誰でもあると思う。もし実際のビジネスになるとある程度の人が作者の「好き」に共感してお金をだしてくれないと成立しない。しかし、プロのアーティストやギャラリストであっても自分の感覚を妄信して失敗することは多い。アート関係者が常に思い悩むのはこの点なのだ。

アート作品にとって一番重要なのは、それが見る人の心を動かすかどうかにつきる。やや抽象的だが、それはアーティストが世の中や人生に対して自分なりのゆるぎない考えを持っていて、正直に追求しているかということだ。普通の人はそんなことよりも日常生活を優先しているので、アーティストは魅力的な存在なのだ。つまり、もし作品制作者が日常を優先した人生を送っているのなら見る側は魅力を感じないのだ。現代アートのコンセプトも万能ではない。作品コンセプトはメッセージを伝える手段。コンセプトだけを作り上げても見る人に感動をあたえることはできない。若いアートスクール出身者がはまる落とし穴だ。

本書はやや文章が難解なので時間をかけて読んだほうがよいと思う。結局、成功するアートのエッセンスは、純文学もアート写真も同じようなものだと教えてくれる。気になる複数の箇所には線を引いたので、本当の夏休みになったらじっくり再読しようと思う。

| | コメント (4) | トラックバック (0)

2008年7月15日 (火)

デジタル化進行でコモディティー化する写真
戦略なくして売れない時代へ

Blog
Photograph by Ryo Ohwada "World of Round"

先日、ナディッフが恵比寿に新しいギャラリー兼ブックショップをオープンさせた。駅から広尾方面に少し歩いたところになんと新築のビルが建っていた。1階と地下が書店で、2階と3階がギャラリースペース。4階は喫茶とスナックとのこと。ほとんどのギャラリーは現代アートの展示、2階のG/Pギャラリーでは、上田義彦氏の写真展が開催中だった。写真美術館ともほど近いので、今後ナディッフを中心に恵比寿はアートの街として注目されるかもしれない。(ナディッフの詳細はコチラ

開館記念の合同オープニングパーティーに同行した写真家N氏の知り合いのインテリア・スタイリストと話す機会があった。彼女は、カフェやショップなどの商業施設にインテリアとともにアートを紹介しているという。しかし写真は全くダメらしい。写真を施主にすすめると、社員で写真が上手いのがいるので彼のものを使えばよい、などといわれたこともあるそうだ。一般では、写真は自分で撮影するものという認識が強いことが改めて感じさせられるエピソードだ。特に写真がデジタル化してからは、アマチュアでもフォトショップで画像を直せるし、高品位のプリントも手軽に制作できる。プロ写真家のアドバンテージは急激になくなってしまったのだ。特に、風景と花はアマチュアが好んで撮影するモチーフなのでよほど何か別にアピールするものがないと売ることは難しい。もはや、プロ写真家で技術を持っているだけではだめで、現代アート同様にますます作品コンセプトを構築する知的さが必要になっているのだ。 これは、写真家出身の人が一番弱いところだ。

このような大きな状況変化が起きているのに、まだ写真家のなかには、仕事以外のプライベート写真がアート作品だと勘違いしている人もいる。自分が良いと感じる写真は、見る人も同じで売れると思い込んでいる。これは作家ブランドが既に確立した人のみに当てはまることなのだ。世の中には上手い写真、よい写真、きれいな写真は数多く存在する。顧客は写真が上手いと思っても、アートとして購入するかどうかは別問題だ。ワークショップでよく引き合いに出す、感嘆と感動は違うということにつきる。
ギャラリーが苦労するのはこのような認識を持たない人との仕事だ。彼らは、世の中にどうしても伝えたいメッセージがあるのではなく、販売自体が目的化している場合が多い。見る人に新しい視点を提供するのがアートの役割なのに、結果的に自分の主観を押し付けることになっているのだ。顧客とのコミュニケーションがとれてないので、当然作品は売れない。そしてその原因を見つけ出す努力はしないので作家になる可能性はその時点で閉ざされてしまう。写真家として才能がある人が作家を目指さないのは非常に残念だ。

最近は現代アートの影響でコンセプトが重要なことは多くの人が理解している。しかし、たとえば自分の作品はエコとか自然保護とか意識している、それがコンセプトだというような作家希望のアマチュアが多い。しかし、エコ的な考え方が重要なのは、子供でも知っているあまりにも当たり前のことだ。たとえば都会に住む人がたまに田舎で自然を撮影して、自然保護やエコがテーマといわれてもあまりにも抽象的すぎる。もっとパーソナルな視点でテーマを絞り込まなくてはならないのだ。

外人と日本人とは作品への時間のかけ方が大きく違う。外国人写真家はひとつのプロジェクトに何年も時間をかけて取り組んでいる。一方日本人写真家はあまり時間をかけない。どうも短期での結果を求めがちで、感覚重視の傾向が強い気がする。優れた作品テーマは、突然浮かんでくるものでない。ひとつのひらめきがあり、それが時間をかけ試行錯誤の上で優れた作品へと練り上げられていくものだろう。デジタル化が進行した現在では、上手い写真は誰でも撮れるもの。表現として一種コモディティー化している。作品制作の継続を通しコンセプトを磨き上げることができる人のみがアーティストとして生き残ることができるのだろう。

| | コメント (2) | トラックバック (0)

2008年7月 8日 (火)

ギャラリーのホームページがリニューアル!!
どうぞご覧ください!

Gallery_exh_083_4
(C)Terri Weifenbach/RAM

今年から、90年代に使用していたブリッツにギャラリー名を戻している。実はホームページを立ち上げたときに、検索時の結果に名前が先に表示されるという単純な理由で"A"が頭につくアート・フォト・サイトをギャラリー名にしたという経緯がある。当時は誰もがネットの果てしない可能性を夢見て様々な挑戦を行っていたのだ。しかし、特にアートに関してはネットでの直接販売は当初に考えていたよりも市場規模が大きくないことがわかってきたのだ。
当時はオークション大手のササビーズもイーベイと組んでオンラインオークションをはじめたが、高額商品への入札が少なくしばらくして中止してしまった。
アートは個別性の強い商品、値段が安いだけで消費される日常品とは違うのだ。購入者は、単にモノとしてのアートを買うのではなく、ギャラリーやオークションというシーンも消費しており、その場を楽しんでいる面もあるのだ。
またネット販売は当初ランニングコストが低いと思われていたが、情報更新、在庫管理や発送に案外手間がかかることが次第にわかってきた。コモディティーでないアート作品の場合、業者が優れた作品を常に割安で仕入れることは難しい。ネットは値段勝負なので粗利が少ない。アートのネット販売は案外、利益率が低いビジネスなのだ。

しかし情報提供の手段としてネットはとてつもなく有効。ネット情報をきっかけにギャラリーに顧客が集まり、作品販売につながるのだ。実際、わたしどもでも顧客の大半はネット情報がきっかけでギャラリーに来てくれる。最近はブログでの書き込みも一般客への重要な情報伝達手段になりつつある。ネット以前は、案内状と紙媒体でしか写真展情報を伝えることができなかった。

いままでギャラリーのウェブサイトはアート写真総合情報サイトであるアート・フォト・サイトのおまけのような存在だった。ギャラリーが昔の名前に変更されたのを期にリニューアル準備を続けていた。やっと大枠が完成したのでこのたびアップしたということだ。現在、アート・フォト・サイトとギャラリーとの情報の整理整頓が進行中。情報量が膨大なのでかなり時間がかかっています。ギャラリーの次はアート・フォト・サイトのリニューアルも検討中です。ご期待ください!

New Web Site はこちらから

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2008年7月 1日 (火)

ルクセンブルク大使館にみる
アート写真の展示方法

Blog1

ルクセンブルグ大使館でハービー・山口の写真展"Timeless in Luxembourg"を7月4日まで開催中だ。作品を展示しているホールは北欧モダンのインテリア。この空間に16x20インチサイズの黒色フレームで展示されたモノクロ写真は絶妙にマッチしている。展示するフレームサイズは非常に重要だ。空間に比べて多少小さめに感じるものを選んだ方が違和感を感じない。今回は壁に加工ができないので、天井のレールから銀色のワイヤーでフレームを吊るしている。白色の背景だとワイヤーはすごく気になるので顧客にはすすめていないのだが、茶系統の壁面だと色が溶け合い全く違和感を感じない。濃い色の背景ならワイヤーで吊るしても目立たないのでOKなのだ。これは新たな発見、写真の飾り方の参考になると思う。 また会場は写真展専用でないので、スポットライトは数点しかついていない。しかし、窓越しの間接光が写真をナチュラルに照らしているので鑑賞に問題は感じない。一般のお宅もギャラリーではない。写真を飾ったインテリアというと、すぐにギャラリーのような空間を考えてしまう人は多い。しかし特にスポットライトを増設しなくても写真は素敵に飾れるのだ。今回の展示はその好例だろう。米国のインテリア雑誌の写真展示例でも、案外スポット照明がない部屋が多いのだ。

会場に入るのに、ドアフォンを鳴らす必要がある。慣れない大使館で少し勇気がいるが、セキュリティー上仕方ないようだ。"写真展を見に来ました"といえば親切に対応してくれる。大使館の人と目があったら、"ハロー"と声をかければよい。彼らはみんなバイリンガルで英語でOKだ。

Blog2
本展では、ハービー・山口のモノクロ作品とともに、空間での写真の飾り方も見て欲しい。
写真展は、7月4日(金)まで開催。オープン時間は午後1時から5時。 場所は市ケ谷駅の近くです。
http://www.luxembourg.or.jp/jpn/index.html

| | コメント (0) | トラックバック (0)

« 2008年6月 | トップページ | 2008年8月 »