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2008年11月25日 (火)

アート・フェアーでお気に入りの1枚を捜す!
横浜アート&ホームコレクション

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今週11月28日(金)、29日(土)は横浜アート&ホームコレクションに参加します。
これは住宅展示場内でアート作品を展示販売するアート・フェアー。 今回が初めての試みなので、はたしてどれだけのお客様が来場するかはまったく不明。 冬のみなとみらいは風が吹いて冷える。会場が野外にあるので展示場間の移動はかなり寒いことが予想される。もうひとつの不安要素はモデルホームでの展示場所。室内の壁面を傷めることはできないので、多くの作品は床置きになりそうだ。和室も利用するので、和に合う作品は畳の上に展示する予定。その他作品は2階にある渡り廊下のようなスペースにイスの上に置いて見せることになりそうだ。はたしてお客様が見やすい展示になるかがやや心配だ。

主催者によると想定される来場者は横浜近郊に住むアートに興味を持つ一般の人。特にコレクターではないようだ。年齢層は若い層から中年層とのこと。どのような作品を展示するか迷ったがブリッツは取り扱っているプライマリー作家の作品をセレクションすることにした。世界金融危機に端を発した景気悪化で消費マインドはかなり悪化している。リーズナブルで販売価格が決まっている作品を紹介した方がよいだろうという判断もあった。オークション市況はかなり悪化しているので、セカンダリー商品の値段設定はかなり難しいと思う。

高額作品の売り上げは不況の影響を受けるだろう。それでも、アートがある心地よい空間での生活を求める人の欲求は決してなくならない。希望的観測だが、現代アートの価格急騰とは縁遠かった日本のアート写真市場では、状況はあまり変らないと思う。もともとそんなには売れていなかったのだ。またややセールストークになるが、特にすぐれた国内作家の作品はグローバルにもまだ割安感があることに変わりはない。
現在までに出展予定なのはギャラリー・コレクションから、パメラ・ハンソン、マイケル・デウイック、トミオ・セイケ、ハービー・山口、横木安良夫、NAOKI、中村ノブオ、吉野和彦、大和田良など。各作家の代表作品を展示予定です。価格は、約2万円から40万円くらいまでです。

今回は、大阪のディラーであるピクチャー・フォト・スペースさんと共同で参加する。彼らは、ジョエル・ピーター・ウィトキンなど優れたセカンダリーの名品を持ち込むと言っていた。プライマリー作品中心のブリッツとちょうど良いコンビネーションになると思う。

アートフェアーの魅力は数多くのギャラリーのおすすめ作品を一箇所で見れることだ。
アートを捜している人は、お気に入りの1枚に出会える絶好の機会だと思う。横浜近郊にお住まいの現代アート、写真ファンの人はぜひおいでください。
入場料は1000円です。詳しくは、以下をご覧ください。

http://www.yaf.or.jp/yahc/

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2008年11月18日 (火)

アート写真から見えてくる
アメリカの失った夢と現実

オバマ氏の大統領選キャンペーンにブルース・スプリングスティーンが登場した。アメリカの夢と希望を再び取り戻す、というようなメッセージを投げかけていた。スプリングスティーンの歌には、逃避、自由解放、孤独などアメリカの夢と希望が失われる状況をアピールしたものも多い。ではアメリカ人が失った夢と希望、そして現実はどのようなものなのか?
これは歴史、文化的背景が関係する感覚的なことなので日本人にはなかなか見えてこない。しかしアメリカ人写真家の作品を通してそれらの一部が見えてくることもある。

約20年以上に渡り、都市やハイウエイの周辺風景を撮影している写真家にジェフ・ブロウスがいる。彼の写真集「Approaching Nowhere」(Norton、2006年刊)の作品を見て、解説のエッセーを読んで感じたのは、アメリカ人が失ったもののひとつに西部開拓時代から受け継がれている移動神話があるということだ。それは道の先には、必ず良い人生があるというもの。上手くいかないことがあると人生を新たな地でリセットできるという意識がアメリカのダイナミズムの源泉になっていた。いま、経済のグローバル化などが言われているが、それはハイウエイが全国的に整備された70年代から90年代にかけて米国国内で既に起きたことなのだ。都市の一部が衰退する一方で郊外化が進み、いまや全米のどこにいっても同じような巨大資本のフランチャイズ・チェーン店が存在するようになったという。各地域の風景がどんどん画一化するに従い、 人々の生活や生き方の多様性が急激に失われた。いまや道の出発点の都市にも、道の先にも全く新しい生き方など存在しなくなったことをブロウスは訴えかける。移動神話、つまり社会にあった希望のイメージが失われたのだ。
 経済学的にみると、この状況はポスト工業社会にアメリカが移行したことにより起きたということだろう。人々が普通の商品やサービスへお金をかけなくなった。資本の原理が働き、最小コストでそれらを提供できる巨大企業が市場を席巻したのだ。
いま移動神話に代わる、何かの新しい可能性の提示をアメリカ人は求めているのだろう。

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Jeff Brouws写真集"Approaching Nowhere"2006 Norton刊

ポスト工業化社会移行に伴い起きているのがアメリカを支えた中間層の没落だ。IT 化が進んだことで、従来の事務労働が単純化され派遣社員などに置き換えられるようになった。新しい価値を生みだす労働者と熟練を必要としない単純労働者に分断されるようになってきた。経済のグローバル化でその流れは加速化している。

実は今年ブリッツで写真展を開催したテリ・ワイフェンバックも郊外に住む中間層の状況変化に注目している。彼女は美しい風景を撮影した作品が多いので意外に感じる人もいるかもしれない。しかし、彼女はナン・ゴールディンなどと同様に日々の生活での経験を作品化しているといわれている。たぶん、中間層が直面している問題は彼女の周りにも当たり前に存在しているのだろう。

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(C)Michael Dweck

現在、展示しているマイケル・デウイックの評価も現在のアメリカの気分と深くかかわっている。彼が一貫して追求しているのが、古きよき時代のアメリカン・イメージを現在に再構築することだ。デビュー作は、ロングアイランド先端のモントークが舞台。 アメリカが元気だった時代のサーファー・コミュニティーの気分を紡ぎだした。いまの社会の中で生き残る過去のライフスタイルを発掘する、写真により一種の考古学のようなものだ。
新作Mermaidsでは、理想のアメリカン・ガール像をマーメイドというファンタジーを通して現代人に提示している。彼の作品が熱狂的に受け入れられている背景には、いまより良かった過去を回顧するアメリカ人の心情があることはまちがいない。

すぐれた写真家は、自分のメッセージを強調するだけでなく、今という時代を意識して作品作りに取り組んでいる。ますます複雑化してわかりにくい経済、社会の中でアーティストそれぞれの視点を私たちに明らかにしてくれる。
彼らの作品は広義ではドキュメンタリーだ。しかし、現在を生きるアート写真家は作品グループでコンセプトを提示するとともに、1枚の写真の完成度にも深い配慮があることが特徴だ。アート作品として、ギャラリーや家庭で展示されることも意識しているのだ。

政府の役割を認めるリベラルのオバマ新政権となりアメリカはまた変化していくだろう。今後も写真家たちの発するメッセージに注目していきたい。アメリカで起きていることは日本の近未来図でもあり、写真家の警告は私たち日本人へのものでもあるのだ。

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2008年11月11日 (火)

ハービー・山口とヨーガン・シャドバーグ
1975年ロンドンでの出会い

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写真展に展示予定のヨーガン・シャドバーグ氏の作品
(C)Jurgen Schadeberg


来年、ハービー・山口とヨーガン・シャドバーグ(1931-)の二人展開催を予定している。 ヨーガン・シャドバーグというドイツ出身の写真家を知る人は少ないだろう。しかし、ロンドンで初めてハービー・山口の写真を認めたグループの一人というと、彼の著作を読んだ人はピンとくるのではないか。現在、ライカマスターとして知られるハービー・山口のライカとの出会いも彼らを通じてだったのだ。

ロンドンで二人が最後に会ってから約30年以上経過した2008年の春、ハービー・山口は全く偶然にヨーガン・シャドバーグの写真と再会する。彼の巡回写真展が銀座ライカギャラリーで開催されていたのだ。その写真をみたハービー・山口は直ぐに30年前の記憶が蘇ったという。
二人の交流が再び始まり、日本で写真を本格的に紹介して欲しいとヨーガン・シャドバーグはハービ・山口に依頼。そして2009年に二人展をブリッツで開催する運びとなったのだ。二人展はアドバイスを求められた私の全くの直感による提案だった。ヨーガン・シャドバーグは日本では無名なのでハービー・山口の知名度を通じて多くの人に写真を見てもらうきっかけをつくることが目的。しかし、若かりし好奇心旺盛だったハービー・山口はまちがいなく、ヨーガン・シャドバーグから何らかの影響を受けているはずだという予感があった。それは、写真スタイルだけではなく、その背景にある写真を撮影する精神のような何かという意味だ。最近、彼の写真集を入手してはじめて作品をまとめて見ることができた。彼は長年アパルトヘイトの厳しい人種差別下の南アフリカや、不況の英国などでドキュメントを続けてきた写真家なのだ。しかしその写真は、単なる記録を目指したドキュメントとは違う。彼は、厳しい状況でも希望や喜びを持って生きている人々を、被写体と同じ眼差しで撮影しているのだ。その人間愛の精神がまちがいなくハービー・山口にも伝わっていることを確信した。ヨーガン・シャドバーグは自由が制限されていた南アフリカで、日々の生活の中に生きる喜びを感じる人々に希望を感じて撮影した。ハービー・山口は、自由で選択肢が多すぎて苦しむ日本の若者のなかに希望の断片を見出して撮影しているのだ。

日時は未定ですが、ハービー・山口の大規模な写真展開催が来年に予定されています。
二人展はその写真展終了後に開催する予定です。
ヨーガン氏は1960年代のグラスゴーの写真を、ハービー・山口は未発表を含み70年代のロンドンの作品をセレクションする予定です。ヨーガン氏の写真家のキャリアについてはできるだけ近い機会にまとめて紹介したいと思います。

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2008年11月 4日 (火)

悪化する消費者心理
不況でどうなるアート市場?

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半年くらい前はインフレが懸念されていた米国経済。現在はその逆で、かつての日本のようなデフレ到来が心配されている。消費者心理が悪化してその影響が徐々にアート市場、特にセカンダリーにでているようだ。
10月中旬のニューヨーク・アート写真オークションでは不落札率が高まった。クリスティーズの複数委託者による入札では落札率がなんと53%だった。アーヴィング・ペン、ピーター・ベアード作品の多くが不落札で、落札された作品も多くが落札予想価格の範囲内かそれ以下だった。最近の日本経済新聞にも、20世紀中国美術の変調を伝える記事がでていた。10月開催の毎日オークション「絵画・版画・彫刻」でも落札率60.1%、アンディー・ウォーホールや森山大道など多くが不落札だった。

暴走する資本主義に対する問題提起は世界中の数多くのアーティストたちが様々なアプローチから取り組んでいた。アンドレアス・グルスキー、ジェフ・ブラウスやクール・ジャパンのアーティストなど、 表現方法は全く違うものの経済発展至上主義に対するアンチテーゼの眼差しが見え隠れしていた。
アーティストは自分の世界にのめりこむものだが、一流のアーティストはその一方でそんな自分を客観視して世の中を見渡せることができるのだと思う。彼らは、忙しい社会生活のなかで思い込みにとらわれている一般人は気付かない世の中の違和感のような何かを感じ取ることができるのだろう。
いままで続いていた不自然な状況の転換がサブプライムローン破綻から急激に起こるとはやや予想外だった。しかし彼らの警告が正しかったことが今回の金融危機で証明されたのだ。

欧米では金融マンが高額な現代アート作品を購入し、金融業界がアートイベントを支援していたのは皮肉としかいいようがない。私も一時期同じ業界にいた経験があるので彼らのメンタリティーは痛いほどよくわかる。毎日厳しい目標達成のプレッシャーと戦い、完全にヒステリー状態で働いているのだ。彼らの精神を安定化させる手段のひとつとしてアートが求められたのだと思う。アート作品が売れた背景には現代社会のニーズがあったのも事実なのだ。
わたしはよく雑誌などで取り上げられるアートのパワーなどという抽象的な概念には懐疑的だ。しかし、今回は現代社会でのアート・パワーの可能性を実感した。今後の社会は従来の凝り固まった価値観が問い直されより不安定になるだろう。不安心理の高まりから新しい生き方の指針を多くの人が求めるようになる。好況期には興味を持たなかった人々もアーティストや美術関係者の発言に耳を傾けるようになると思う。

今後逆資産効果が働きアート作品への需要が減退することは明らかだ。過去の上昇相場で好きな作品が買えなかった人には、今後絶好の買い場がくるだろう。 特にオークションなどでは作品選別が厳しくなるのはまちがいない。アート市場への影響は景気実態から遅れて顕在化する。希少な作品の相場は大きくは下落しないが、中間価格帯作品の値段はこれから数年かけてたぶん5年位前に戻るのではないか。

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作家を目指す人はこの状況にどのように対応すればよいのだろうか。従来の価値観の再検討は新人作家には有利に働くかもしれない。好景期は市場が上昇するので売れる有名作家ばかりが注目されがちだ。上記のように、不況期は値段や市場性よりも作家のメッセージの対する世間の関心が高まる。高額作品よりも売れやすい価格の作家がより注目される面もある。

来年以降、厳しい経済状況になることはまちがいない。しかし、作家はそれを自分の存在をアピールするチャンスだととらえてほしい。私どものギャラリーも来年は新人作家の育成と彼らの売り込みに力を入れていきたいと考えています。

*画像はニューヨークのオークションハウス、フィリップスとクリスティーズ。

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