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2008年11月 4日 (火)

悪化する消費者心理
不況でどうなるアート市場?

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半年くらい前はインフレが懸念されていた米国経済。現在はその逆で、かつての日本のようなデフレ到来が心配されている。消費者心理が悪化してその影響が徐々にアート市場、特にセカンダリーにでているようだ。
10月中旬のニューヨーク・アート写真オークションでは不落札率が高まった。クリスティーズの複数委託者による入札では落札率がなんと53%だった。アーヴィング・ペン、ピーター・ベアード作品の多くが不落札で、落札された作品も多くが落札予想価格の範囲内かそれ以下だった。最近の日本経済新聞にも、20世紀中国美術の変調を伝える記事がでていた。10月開催の毎日オークション「絵画・版画・彫刻」でも落札率60.1%、アンディー・ウォーホールや森山大道など多くが不落札だった。

暴走する資本主義に対する問題提起は世界中の数多くのアーティストたちが様々なアプローチから取り組んでいた。アンドレアス・グルスキー、ジェフ・ブラウスやクール・ジャパンのアーティストなど、 表現方法は全く違うものの経済発展至上主義に対するアンチテーゼの眼差しが見え隠れしていた。
アーティストは自分の世界にのめりこむものだが、一流のアーティストはその一方でそんな自分を客観視して世の中を見渡せることができるのだと思う。彼らは、忙しい社会生活のなかで思い込みにとらわれている一般人は気付かない世の中の違和感のような何かを感じ取ることができるのだろう。
いままで続いていた不自然な状況の転換がサブプライムローン破綻から急激に起こるとはやや予想外だった。しかし彼らの警告が正しかったことが今回の金融危機で証明されたのだ。

欧米では金融マンが高額な現代アート作品を購入し、金融業界がアートイベントを支援していたのは皮肉としかいいようがない。私も一時期同じ業界にいた経験があるので彼らのメンタリティーは痛いほどよくわかる。毎日厳しい目標達成のプレッシャーと戦い、完全にヒステリー状態で働いているのだ。彼らの精神を安定化させる手段のひとつとしてアートが求められたのだと思う。アート作品が売れた背景には現代社会のニーズがあったのも事実なのだ。
わたしはよく雑誌などで取り上げられるアートのパワーなどという抽象的な概念には懐疑的だ。しかし、今回は現代社会でのアート・パワーの可能性を実感した。今後の社会は従来の凝り固まった価値観が問い直されより不安定になるだろう。不安心理の高まりから新しい生き方の指針を多くの人が求めるようになる。好況期には興味を持たなかった人々もアーティストや美術関係者の発言に耳を傾けるようになると思う。

今後逆資産効果が働きアート作品への需要が減退することは明らかだ。過去の上昇相場で好きな作品が買えなかった人には、今後絶好の買い場がくるだろう。 特にオークションなどでは作品選別が厳しくなるのはまちがいない。アート市場への影響は景気実態から遅れて顕在化する。希少な作品の相場は大きくは下落しないが、中間価格帯作品の値段はこれから数年かけてたぶん5年位前に戻るのではないか。

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作家を目指す人はこの状況にどのように対応すればよいのだろうか。従来の価値観の再検討は新人作家には有利に働くかもしれない。好景期は市場が上昇するので売れる有名作家ばかりが注目されがちだ。上記のように、不況期は値段や市場性よりも作家のメッセージの対する世間の関心が高まる。高額作品よりも売れやすい価格の作家がより注目される面もある。

来年以降、厳しい経済状況になることはまちがいない。しかし、作家はそれを自分の存在をアピールするチャンスだととらえてほしい。私どものギャラリーも来年は新人作家の育成と彼らの売り込みに力を入れていきたいと考えています。

*画像はニューヨークのオークションハウス、フィリップスとクリスティーズ。

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コメント

Mr.Fukukawa

私も情勢の悪化を懸念してNYのギャラリーとの契約を今年は更新しませんでした。

貴ギャラリーの来年に向けた取り組みで取り上げて頂く機会があれば幸いです。

投稿: Rei Niwa | 2008年11月 5日 (水) 21時52分

Rei Niwa さま
コメント、ありがとうございます。
今後もアート写真市場の動向を含め、ギャラリーの情報についてもできるだけご紹介していきたいと思います。よろしくお願いいたします。

投稿: Yoshiro Fukukawa | 2008年11月 6日 (木) 13時58分

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