マイケル・デウィック「マーメイド」展終了!
不況でどうなる2009年アート写真市場
(C)Michael Dweck
マイケル・デウィックの「アメリカン・マーメイド」東京展が終了した。来廊してくれた皆様、ほんとうにありがとうございました。
スタートしたのが10月中旬、まさに株価が世界中で急落している時だった。今回はエディション数が10点と少ないことから、販売価格はすべて30万円以上と日本では高め。最悪の結果も覚悟していたが、幸運にも前回「ザ・サーフィング・ライフ」並みの売り上げを確保することができた。この経済状況を考えれば上出来だろう。プリント付き特装版、ポスターはほぼ予想通りの売れ行き。写真集「Mermaids」が非常に多く売れたのが嬉しい予想外の出来事だった。これは作家のメッセージが見る側に伝わったことの現われだろう。コンセプチュアルな作品が受け入れられたのは、日本人のアート写真理解力がついてきた証拠だと思う。写真集は何度か追加注文をしたが、最終日前までにギャラリー店頭では売り切れてしまった。近日中に再入荷予定なので、予約された方はもうしばらくお待ちください。
昨今のマスコミは不況の報道一色だ。アート写真業界も有力ギャラリーのディレクターが辞任したりと影響が出始めてきた。しかし不況になっても日本は発展途上国に戻ることはない。いわゆる資本主義がポスト工業社会に移行して日本人は豊かな生活を手に入れた。現在、同時に進行した、グローバル化や規制緩和の行き過ぎのゆれ戻しが起こっているが、大きな流れに変化はないだろう。それは食べるためだけではなく、自分らしいセンスを重んじた生活を送るために働く社会が到来したことなのだ。不況になると、生活必需品の価格には非常にシビアになる。一方で自分らしい生活のこだわりは持ち続ける。アート写真もそのうちのひとつなのだ。
この点の変化が以前の景気後退期との大きな違いだと思う。一時代前のアート購入者はほとんどがブランド志向だった。不況になると他の一般商品同様に市場が一斉に縮小した。世代が交代して、日本もやっと欧米人と同じようにアートの理解力を持つ人が増加してきたのだ。それは上記の写真集「Mermaids」をコレクションしてくれた人たちのことでもある。彼らは、アート写真を通じて世の中の新たな視点を発見し、心の中に新たな感情が芽生えることに喜びを感じるのだ。アートが人生の重要な要素とする人は、不況でも自分の心を豊かにしてくれる、アート作品、写真集、展覧会などにはある程度お金を使うのだ。だから先進諸国ではアート市場は縮小しても決して消滅などしない。他分野のアートと比べて値段が安いアート写真は不況時でも市場の縮小幅は狭いと思う。
日本人写真家にとってもこれは朗報だろう。優れた作品を制作すれば、それを愛でて購入してくれる人が確実に増加しているのだ。しかし、購入者のヴィジュアルセンスは高く、選択基準は非常にシビアになっている。今年開催した写真展を振り返ると、値段が安い日本人作家の作品よりも、高価な外国人写真家の作品のほうが売れたのが特徴だ。多少値段が張っても、真摯な態度で制作されたオリジナルな作品が売れるのだ。感覚だけで撮影された写真はもはや通用しないだろう。
マイケル・デウィックは、現在の厳しい経済状況を自らの作品とかけて、"Now that your collectors have concerns about the global economy, what better place to escape to than underwater with some beautiful sirens of the sea."(不況期は水中に深くもぐって美しいマーメイドたちと戯れていればよい)と、ユーモアあふれるコメントを寄せてくれた。日本でもそのようなセンスに共感できる人が増加してきたのだと思う。なお、彼は現在二つの新プロジェクトに取り組んでいるとのこと。来年にはその一端を紹介できると思う。
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