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2009年1月27日 (火)

渋谷・カワイイ・スタイル
今週始まるNAOKI写真展の見所

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(C)NAOKI

先日、大手オークション・ハウスのアート写真担当者と会う機会があり、日本が招待国となった昨年のパリフォトの話を聞いた。日本のアート写真を世界に発信する大きなチャンスだったが、残念ながら現地コレクターたちには大きな盛り上がりがなかったそうだ。オークション専門家は、まず森山大道、荒木経惟に続く目新しい作家がいないことを指摘した。そして、目玉になるような彼らのヴィンテージ作品が出展されず、大判サイズによる最近の作品が大量に出たこともやや期待はずれだったらしい。
これは不況の影響でもある。いつでも買える、エディション数や流通量が多いモダンプリントへの需要は市況悪化時にはどうしても減退する。もともと欧米コレクターは作品の希少性、市場での流通量を非常に気にかけるのだ。しかし一方で、日本の新刊写真集は値段もとても手ごろなので非常に人気があったという。

欧米で商売するには彼らの価値観を知っている必要がある。欧米コレクターは外国作品に対して西洋にない独自性を求める傾向がある。文化が異なる国の、その違いが反映された作品を愛でるのだ。しかし21世紀の世界では独自の文化のみが継承されている国など存在しない。みんな欧米の影響を受けており、文化は混血化しているのだ。
日本も文明開化以来西洋の影響を受け、独自文化は衰退していった。戦後にその流れが加速化した。しかし、外人はいまでもフジヤマ・ゲイシャ的な日本らしさを求めるのだ。外国ギャラリーからは今でもヤクザの写真や刺青のヌード作品などに対する照会がある。戦後生まれの現代に生きる日本人は、西洋人が好む伝統的日本文化に違和感を感じる場合も多い。欧米で評価されている日本人写真家が国内一般客にあまり人気がない理由もここにある。いくら評判が良いと聞いても、自分が理解できないアート作品にお金をだしたくないからだ。

しかし、現代日本人でも親しみを感じる日本の伝統的な美意識も存在する。そのひとつが「カワイイ」という感覚なのだ。村上隆などの現代アート作家がフィギュア作品を制作したことで世界的に注目された感覚だ。
NAOKIは今回開催する個展で「カワイイ」をテーマに写真作品を制作している。理想像をイメージして制作する現代アートとは違い、写真は実際の人物を撮影する。理想的なボディーラインを持つモデルをキャスティングして、ファッション、ヘアメイクまで手がけることが可能なNAOKIだからこそ作りあげられた快作といえるだろう。今回の展示は彼の約25年のキャリアを回顧しつつ、21世紀最先端の日本のファッションイメージを提示する試みとなる。以下が、写真展の見所となる。

(会場内の掲示より)
・NAOKI  1980年代
若かりしNAOKIは1983年ごろからファッションの本場ミラノで写真家キャリアを開始します。彼は、世界から集まるデビュー前後のモデルたちを撮影していました。彼女たちの魅力を引き出した写真は瞬く間に評判となります。当時の新人モデルたちの間ではNAOKIに撮られることが成功へのパスポートという伝説が出来上がりました。

・NAOKI  1990年代
写真集「ORDINAL」(1995年刊)収録写真は、街の景色が大きく変貌したバブル崩壊後の東京で撮影されています。現在は既に消えてしまった、昭和の雰囲気が残る数々のシーンを背景に、彼が見出した無名時代の江角マキコなどを起用して取り組んだスナップショット的作品です。

・NAOKI  2000年代
現在進行形の「DOUBLE」シリーズは、渋谷のストリートやスタジオでモデルの瀬畑茉有子などを起用してコスプレ姿で撮影された作品です。NAOKIは「クール・ジャパン」を標榜する現代アート作家がテーマにする「カワイイ」という美意識を作品に取り入れています。現代アート作品では、理想化されたフィギュアを描きますが、NAOKIは写真でストレートに表現しています。おたく文化の背景にある「カワイイ」は日本古来の美意識で、「幽玄」、「侘び」、「さび」の延長上にあります。その不完全さ、未熟さを愛でる眼差しは成長と拡大を目指す新自由主義経済への疑問符を投げかける感覚です。グローバル化経済における市場万能主義の行き過ぎを世界にアピールする日本発のメッセージでもあります。
また、この感覚が反映された作品には、マンガやアニメに親しんでいる現代日本人もリアリティーを感じることができるのです。
(以上抜粋)

「渋谷・カワイイ・スタイル」は、1月29日(木)から開催。初期作品から9点、90年代作品から6点、最新作から15点を展示する。1メートルを超える大作も3点制作した。ぜひ多くの人にNAOKI・ワールドを見ていただきたい。
2月15日には、トークショー、3月15日にはファッション写真の現場を体験できるワークショップも開催予定。

詳細はギャラリーホームページをご覧ください。

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2009年1月20日 (火)

速報 写真集人気ランキング
何でロバート・フランク"The Americans"はすごいのか?

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アート写真コレクションの人気分野として確立しつつあるフォト・ブック。アート・フォト・サイトでは毎年写真集人気ランキングをネットでの売上高をベースに算出して発表している。
2008年の速報データが整ったのでその一部をご紹介しよう。

1位はダントツにロバート・フランクの歴史的な写真集"The Americans"だ。これは同書の刊行50周年記念版。今回のスタイドル版ではフランクが、デザイン、制作、紙のセレクションまで、全ての過程に参加。83点のイメージはヴィンティージ・プリントから新たに制作。スカロ、アパチャー、デルピエールなど、複数出版社から過去に何度も出版されているが、今回また新たに購入した人も多かったのではないだろうか。私にとっても4冊目の"The Americans"になる。この本についてはあらゆるところで書かれている。その評価はだいたい作家論的、社会学的、写真の方法論的な見地のものによるものだ。
彼は1955~1956年にかけて一万マイルにおよぶ全米をめぐる旅を行った。その実践を通して提示された視点は、米国ドキュメンタリー写真の伝統を受け継ぐとともに、当時の物質文明や国家権力に反発し自由に生きるというビートの精神と通じていたのことがまず重要なのだ。米国版の序文は当初、グッゲンハイム奨学金の推薦者でもあったウォーカー・エバンスが書いていたが、出版時はビート時代の代表作家ジャック・ケルアックになっていた。つまり彼は、現代的なアーティストの姿勢を持つ最初の写真家の一人だったということ。写真で表現する現在のアーティストの精神はすべて彼につながっているのだ。またフランクが、当時の華やかなアメリカのダークサイド・シーンを撮影したことは60年以降に起こる、公民権運動、性革命などを予感させるものでもあった。後にこの点が社会学的に高い評価を受けるようになるのも重要だ。このあたり関しては多くの人が語っているのでここでは詳しく触れない。
写真での作品制作も革新的だった。当時はアンセル・アダムス的な高いプリントクオリティーを愛でるモノクロ写真やフォトジャーナリスト的な決定的瞬間を重視した写真が中心だった。彼は写真を通じてパーソナルなメッセージを伝えようと試みた。35mmライカカメラを駆使し、自由なフレーミング、フォーカス、ライティングで撮影された写真は当時の常識からはかけ離れていた。そして写真のセレクション、編集、配列を自らが手がけ、写真集形式のダミー版を制作している。彼はすでに1946年の時点にスイスで撮影した写真を"40 Fotos"と呼ばれる写真集形式にまとめていた。その後の南米の旅でも作品を写真集にまとめている。当時の写真は記録性が重視だったので、撮影年や、撮影場所で編集されることが多かった。彼のように、イメージの流れの中で作品テーマを伝えるアプローチは決して一般的ではなかったのだ。
ロバート・フランクは作家の精神を持った写真家だった。現在では当たり前の、パーソナルな視点で時代的テーマを写真で追求し、写真集形式で発表したはしりの写真家だった。彼は写真が自己表現の手段に成りうることを実証したのだ。
だから彼の写真集"The Americans"と、ウィリアム・クラインの"New York"は現代写真のルーツと高く評価されているのだ。

ランキングのその他では、ティム・ウォーカーが大健闘。2冊の本がベスト10に入っている。昨年1位のスティーブン・ショアーも引き続きランクイン。その他、アニー・リーボビッツ、マイケル・デウイック、アンドレ・ケルテスがベスト10入りした模様。
現在、最終的な編集作業を行っています。2008年の最終順位は近日中にアート・フォト・サイトで紹介します。

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2009年1月13日 (火)

21世紀日本のファッション写真とは
NAOKI写真展、現在準備進行中!

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1月29日から本年初の企画展となる、NAOKI写真展「渋谷・カワイイ・スタイル」が始まる。
いまはちょうど会場レイアウト案がまとまったところだ。NAOKIは日本で数少ない欧米的な志向を持つ現役ファッション写真家だとプレスリリースなどで紹介している。つまり、彼はファッション写真を服の写真ではなく、時代を写しとったイメージだと理解しているのだ。

どんなビジネスも現場を知っていることが基本になる。ファッション写真の世界では、まさにそれが生命線だ。昨日は成人の日だったので、多くのマスコミがこの20年の世相の変化を特集していた。ファッションもバブル景気の高級ブランドから、現在の低価格、高品質、高デザインのユニクロ、H&Mなどへと状況は激変した。常に移ろう時代の最先端の気分や雰囲気を感じていることが、写真でファッションの未来像を提示できるかの基本要件になるのだ。
NAOKIは1950年生まれ。25年間に渡り、ミラノ、ロンドン、東京でファッションの最前線に立っている。いまでも名だたる高級誌からCawaiiなどの女の子の雑誌までを幅広く出がけている。業界のトップ・モデルから雑誌の読者モデルまで幅ひろい付き合いがある。編集者でも自分の雑誌の読者層しかフォローしていない場合が多い中、彼ほど豊富な情報と広い人脈を持つ写真家は他にはいないだろう。彼は現場での経験から、日本人がいま何にリアリティーを感じるかを熟知しているのだ。

伝説のアート・ディレクターであるアレキセイ・ブロドビッチは、写真家の創造的な時期は蝶の人生みたいな長さで、質の高い作品を作り続けられるのは8年~10年しかないと語っている。それは、経験を積み成功すると自分の思い込みが強くなるから起こるのだ。 周りの意見が頭に入らなくなり、情報収集も怠りがちになる。どうしても本人の感覚と現実とのギャップが大きくなり、写真がマンネリ化し時代遅れになるのだ。

何で業界25年以上のNAOKIは時代とずれないのだろうか?彼はもともとが画家志望の作家志向が強い写真家だった。しかし、いままでの日本のファッション界はコマーシャル中心で写真家に自由裁量が与えられることなどなかったのだ。だから彼は写真には割り切って取り組み、より自由があるアート・ディレクションやプロデュース業に精力を傾けてきたのだ。それゆえ長いキャリアで作品として発表されたのは、90年代の写真集「ORDINAL」などにとどまる。実は、今回のブリッツの写真展が商業ギャラリーでの初個展となる。NAOKIはやっと日本でも写真がアート作品として受け入れられる土壌ができてきたと判断したのだ。
彼はいままで作家として自分のやりたいことを封印してきた。いま新たに作品作りを始め、NAOKIの創作意欲は止めどなく高まるばかりのようだ。なんと先週末にも個展用の新作に取り組んでいた。ブロドビッチの説が正しいとするならば、彼の真の創造力はこれから先の10年に大いに発揮されると思う。

ファッションの現場を一番知っている写真家NAOKIによる、現代日本の最先端の気分と雰囲気が表現された作品群が「渋谷・カワイイ・スタイル」なのだ。写真展の内容については後日に紹介します。
写真展は、1月29日(木)から開催。2月15日には、トークショー、3月15日にはファッション写真の現場を体験できるワークショップも開催予定だ。こちらについても詳細は追ってご案内します。

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2009年1月 6日 (火)

あけましておめでとうございます!
2009年のギャラリー・スケジュール

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(C)NAOKI

2009年のブリッツ・ギャラリーのスケジュールです。
1月は約2週間、取り扱い作家によるコレクション展を行う予定。テリ・ワイフェンバック、パメラ・ハンソン、マイケル・デウイック、トミオ・セイケ、ハービー・山口、中村ノブオ、横木安良夫などの代表作を展示。複数作家の作品が見比べられる絶好の機会だ。2009年にアート写真コレクションを始めたいと考えている人はぜひ立ち寄っていただきたいと思う。
1月29日(木)から3月21日(土)までは、NAOKI写真展「渋谷・カワイイ・スタイル」を開催。知る人ぞ知る日本のファッション写真界の重鎮NAOKI氏の商業ギャラリーでの初個展となる。約25年にわたる彼の過去の作品を振り返るとともに、いまや世界語となった「カワイイ」をテーマにした最新作品を展示する。昨年11月の横浜アート&ホーム・コレクションで一部発表して非常に評判のよかった作品シリーズの全貌が明らかになる。トークイベント、スタジオを使用したワークショップも開催する。

その後の大体のスケジュールは、春に「ニュー・ジャパニーズ・フォトグラファー」展(仮称)を予定。これは、私がここ数年ずっと主張している、コマーシャル、ファッション分野で活躍する写真家による日本独自のアート作品を展示する試みの一環。現在、作家選定を試行錯誤を繰り返しながら行っている。日本では真剣に仕事としてアート作品に取り組む写真家が少ないのが大きな悩みだ。しかし、長きに渡り主張し続けていると少しずつだがギャラリーの考えに同調する人も集まってくるようになってきた。この企画はギャラリーの生命線と考えている。これからもずっと継続していくつもりだ。
夏から秋にかけては、トミオ・セイケの個展、秋から年末にかけてはハービー・山口とヨーガン・シャドバーグの二人展を行う。その他、レア・フォトブック関連のイベント、アート写真のワークショップ、アートフェアー参加も企画の合間に予定している。

本年もどうぞよろしくお願いします。
Blitz Gallery
Art Photo Site

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