巨大化するアート写真
現代アートが写真を変える!
Naoki の巨大作品(左2点) 大きさも額装も大変好評だ
昨年NYのギャラリーを回って感じたのは作品サイズが巨大化していること。現代アート系は大きいことが約束事のようになっているが、アート写真系でもやたら大きい作品が目に付いた。現地ディーラーによると、ハンプトンあたりの別荘用にと大きな作品の需要が高いといっていた。
現代アートはカラーが中心、アート写真の場合ではどんなインテリアにも合わせやすいモノクロ巨大作品が求められるようだ。現代アート系はデジタル処理したインクジェットものが中心だったがアート写真系は銀塩にこだわっていたのが印象的だった。やはり、伝統があるのでコレクターはデジタルに抵抗感があるのだろう。巨大な銀塩写真は近くで見ると鮮明さがやや欠けるくらいに引き伸ばされていた。また表面が波打つ作品も見受けられた。作家やコレクターによっては印画紙に裏打ちすることを嫌うのだ。従来、タイプCプリントやダイトランスファーを利用していたカラー作家の近作はほとんどデジタルになっていた。ウィリアム・エグルストン、ジョール・マイヤービッツ、オリーボ・バルビエリなどだ。
一方、部屋が狭い日本では、圧倒的に小さいサイズの写真が求められてきた。大きな作品を買うのは一部の資産家コレクターだけだった。しかし、ここ数年日本でも売れる作品サイズが大きくなってきたのだ。昨年に写真展を開催して人気があった、テリー・ワイフェンバックやマイケル・デウィックは作品サイズが約20X24インチ(約50X60cm)で、24X30インチ(約60X76cm)のフレーム入りだった。このサイズが受け入れられるか半信半疑だったが顧客の抵抗感はまったくなかった。
今回の「渋谷・カワイイ・スタイル」ではついに1メートルを超える巨大作品を制作。発想を転換して版画を制作する工房にプリント制作と、裏打ちを注文してみた。フレームもマットを使わないで、1cmの深さをとって直接に作品をセット。よく現代アート作品で利用される額装方法だ。オーディエンスの反応が気になったが、作品、フレームともに評判は非常に良い。
どうもサイズに対する先入観を持っているのはギャラリー・サイドのようだ。現代アート作品に見慣れてたコレクターにはサイズへのこだわりはあまりないようだ。アーティストにとって大きいサイズのほうが自分のメッセージが表現しやすいのならOKなのだ。ただし、単純に大きくすればよいわけではない。既成の大きなフレームに裏打ちせずに直接作品をいれたり、アクリルで作品を挟んだだけのものでは真のコレクターはなかなか受け入れてくれない。 (作品と額が一体だと、アクリルが傷つくと作品の価値も減ずるから)従来、写真ギャラリーが大きい作品を見せる場合は、展示にアクセントをつける意味合いが強かった。実際に売れるのは小さいサイズと思っている場合が多いのだ。しかし、大きな作品を実際に販売するには、プリント、フレームなどに相当の費用をかけてきちんとしたもの制作する必要がある。コストはプリント制作費だけではない。大きいと作品が重力でしなるので、バックボードに貼り付けないと表面をフラットに保てない。銀塩写真だとドライマウントという加工を行うのが一般的。しかし、作業を行う業者が少なく費用が非常に高いのだ。フレームも作品サイズが大きいと太い枠を使用するので重くなるし、特注品になるので値段も割高になる。大きな作品は魅力的だ。しかし販売価格が現代アートと比べて安いアート写真では、コストがギャラリストと作家の悩みのたねになる。
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