コレクションは高度な知的遊戯
アート写真の情報提供
現在、渋谷パルコのロゴス・ギャラリーで開催中の「レアブックコレクション2009」。もう5年以上も行っているが、回を重ねるごとに日本でも確実の写真集コレクションが根付いていることを実感する。
私はコレクションは高度な知的遊戯だと思う。写真集を集める人は、写真家キャリア、作品コンセプト、本の評価など、ある程度の情報を既に持っている。写真史も自分好みの写真家周辺については把握しているのだ。それらの情報を持つ人が、現物と出会い、自分の持つ価格の相場観、状態などを考慮して総合判断を下すのだ。まったく知らない写真集を、中身がよかったから購入するようなことはアート系のフォト・ブックではあまりない。写真集の中身をページごとに丹念に見る人は、写真自体を見ているので購入しない場合が多い。写真集というモノを買う行為は実は情報を買う行為でもあるのだ。
だから私たちギャラリー関係者にとって、様々な情報提供が中長期的に重要な仕事となる。それは写真家や作品の情報提供だけにとどまらない。昔、NYのギャラリストは写真が売れないときに、写真を飾ったインテリアのイメージを盛んにインテリア雑誌に提案したという。彼らは、写真を飾るのは素敵だという情報提供を試みていたのだ。ニューヨークでも写真コレクターは昔からいたが、写真を部屋に飾ることが一般に浸透したからこそ市場規模が拡大した面もあるらしい。
今回多くの種類の写真を壁に飾ったのは同じような意図がある。自分の家に写真があるシーンを想像してほしいのだ。今回のようなイベントでは、もちろん売れればよいのだが、古い写真集やアート写真に実際に値段がついて売られているシーンを見てもらうことも重要と考えている。実際、ロベール・ドアノー、ハーブ・リッツ、ピーター・リンドバークなどのオリジナルプリント、ウィリアム・クラインの都市4部作やブロドビッチのポートフォリオの現物を初めて見たという人も多かった。パルコには普段ギャラリーにこない人もたくさん訪れる。そのような人に、写真や写真集がアートとして高額で売られていることを発見し、経験してもらうことが市場拡大のために重要なのだ。絶版になったレアフォトブック100冊以上や複数作家のオリジナルプリントを一堂に展示販売するような企画はあまりないと思う。
昔はデパートなどでの中小規模の写真展が盛んに行われていた。90年代中ばくらいまでは海外のギャラリーの主要な企画展は、デパートのギャラリー・スペースに巡回していた。そこで写真が売られていることを見て学生時代の私は強い刺激を受けたものだ。いま商売としてアート写真と関わるのはその時の経験があったからだ。
現在の写真展は、美術館で開催する大規模なものか、小規模のギャラリー以外でしか行われない。普通の人が販売されているアート写真やレア・ブックに触れる機会が極端に少なくなっているのだ。「レアブックコレクション2009」に、ふらっと立ち寄った人が何ならかの刺激を受けてアート写真に興味を持つきっかけになればうれしく思う。
イベントは、ほぼ半分の期間を経過した。おかげさまで写真集はかなりの冊数が売れてしまった。水曜日には追加納品する予定だ。しかし、特に2万円以内の目玉写真集はまだかなり残っている。渋谷方面にお出かけの際はぜひパルコ地下1階のロゴス・ギャラリーにお立ち寄りください。
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