高橋和海 写真展「ムーンスケイプ」終了
確認された優れた写真集への需要
(C)Kazuumi Takahashi
高橋和海写真展「ムーンスケイプ」が先週末に無事終了した。観客動員数は、前回のNaoki展、前々回のMichael Dweck展とほぼ同じくらいだった。来廊してくれた皆様、ほんとうにありがとうございました。
本展のアピール点は、月と海を対比して見せることで、私たちが普段忘れがちな自然の大きなリズムを意識してもらうこと。予想通りミニマムな構図と静謐なイメージから禅的な印象を持つ人が多かった。
来廊してくれたある有名な書道家が、作品コンセプトを直感的に見抜いてくれたのは非常に嬉しかった。優れた書との共通点を感じてくれたようだ。大きくプリントしたタイプCプリントの映りこみを数名の来廊者に指摘されたが、高橋の作品への強いこだわりは多くの観客を魅了したと思う。途中にあったパルコのイベントでも一部作品を展示したが、それが好評でギャラリーに来てくれた人も多かった。
彼は作品制作、営業等をとても迅速、ていねいに行ってくれた。疑問点なども積極的に聞いてくれたので、非常に仕事がやりやすかった。広告分野で仕事を行っている人は、なにかギャラリーが指示を出してくれるものだと勘違いしている人が多く仕事が遅くなる。アートは広告と違い写真家本人がすべてにおいてイニシアティブをとらないと何も動かないし結果も出ないのだ。
高橋氏は長年学校で写真を教えているので、彼のかつての生徒や現役学生の来廊が目だって多かった。しかし、いまの若い人は現実的に生きているのだろう。特にポートフォリオを見て欲しいというようなアート写真に興味を持つ人はいなかった。確かにこの厳しい経済状況と、日本のアートを取り巻く環境の中で、若くからアーティストを目指すなどは無謀なことだと思う。しかしギャラリー関係者としては、若手がアーティストに興味を持たないのは複雑な気持ちだ。
かつてスタジオ・マンはプロ写真家を目指す人の修行する場だった。いまでは、スタジオに永久就職する感覚だという。昔はプロを目指すギラギラした男性が圧倒的に多かったが、いまは女性の比率が高いという。そういえば、最近は写真家のアシスタントも女性が非常に多い。社会的な責任を感じる男性は写真の世界にもはや夢が描けないのかもしれない。
本展は産経新聞朝刊オピニオン欄の「写眼」というコラムで紹介してもらった。案内状でも使用したイメージが大きめに扱われた。実は、新聞にインフォメーションとして掲載されても反応が鈍いことが多い。しかし今回は全国から大きな反響があった。さすがに有力全国紙のコラムだ。特に関西地方からは、写真展が巡回しないかという、問い合わせをいくつももらった。 現在は予定はないので、関西圏のギャラリー関係者で興味ある人はぜひ問い合わせて欲しい。
米国Nazraeli Pressより限定1000部販売された写真集"High Tide Wane Moon"の人気は予想通りに高かった。当初用意していた冊数は完売。それでも希望者が多かったので作家所有の本当に最後の在庫を無理して提供してもらった。
作品の売り上げ数は、前回のNaoki 展には遥かに及ばないものの、ほぼ予想していた枚数が売れた。現在、商談中のものもあるのでもう少し伸びるかもしれない。厳しい不況でアートは不要不急の商品といわれているなか、どうにか最低限の売り上げは確保できたという感じだ。いくら不況でも優れた作品への需要はあるのだ。
いつも主張しているように、私は写真集のうちのフォトブックはアート写真のひとつの表現形態だと理解している。 "High Tide Wane Moon"の完売は紛れもなく写真集のアート作品が売れたということ。ただし、日本では多くの人が写真集の適正価格の相場観は持つようになったが、アート写真に関しては情報を持っていないということなのだ。ちなみに現在古書市場で"High Tide Wane Moon"は、発売当時の定価の2倍以上の値がついている。
高橋和海 写真展「ムーンスケイプ」は8月下旬に仙台のカロス・ギャラリーに巡回します。
9月5日、6日は写真家本人によるワークショップも開催予定です。
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