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2009年11月10日 (火)

(コレクション・ガイド)
アーティストのキャリア
どの時期の作品をコレクションすべきか?

Bs063
Irving Penn "PASSAGE"

今年は、アーヴィング・ペン、ウィニー・ロニスなど、戦後を代表する写真家がなくなった。有名アーティストは長生きの人が多い。上記の作家はともに90歳代だった。好きなアーティストのキャリアが長い場合、どの時期の作品を買ったら良いか悩むところだと思う。

優れたアーティストはキャリア初期に自分のスタイルを構築し、それが次第に認められて地位を確立させる。しかし、ワンパターンを続けると飽きられてしまうので、本質は変えずに新たなスタイルを提示し続けるのだ。そして年齢を重ねるとともに、作品表現の重点がヴィジュアからコンセプトへとシフトしていく。若いとき時と比べ体力や視力そして直感が衰えるのを、人生経験を重ねたことで円熟味を増した思考力で補うようになる。若いときには気付かなかった視点で作品提示できるようになる。このように変化できた人は年齢を重ねても現役で作家活動を継続できる。

一方、天才的な能力を持つ人はキャリア後半で作品がマンネリ化することが多い。若いときに優れた感覚に頼っていると、年齢を重ねると新しいものが生み出せなくなる。そして過去の栄光にすがり同じようなスタイルの作品を作り続けることになる。実績があるので最初のうちはある程度売れ続ける。 それが目先を変えて作品サイズを拡大したりするようになると、近作に対する市場の興味が急激にしぼんでいくのだ。

歴史の長い絵画市場の場合、最も価値の高い作品は作家のキャリア初期か、キャリア後期に制作される場合が多いという。そしてプライス・カーブは最初は徐々に上昇して、その後急上昇、そしてフラットになり安定してくる傾向がある。だから、投資的な要素を考える場合、キャリア初期や、まだ未開拓分野の作家を見つけ出すことが重要だといわれている。若い作家はそのまま消えていく人も多いのでリスクヘッジの為に複数作家を購入していくことも必要になる。以上が歴史の浅いアート写真にもそのまま当てはまるかどうかは不確定だが、参考にはなるだろう。

イメージ主体に作品を見る人には、作家のキャリア後期作は、若い時代と比べて魅力が弱く感じるかもしれない。コンセプト重視にシフトした人の作品を理解するには見る側にも能力が求められるのだ。作家のそれまでのキャリアを総合的に捉え、その流れの延長上に作品を認識しなければならない。最新作だけを単独で見ても、その作品性は正しく理解できないのだ。これが、アート鑑賞やコレクションの面白みであるとともに、難しいところだ。

それゆえ、アンドレ・ケルテス、アーヴィング・ペンなどの巨匠でも、キャリア後期作品の評価は高くない。アート相場は、様々なレベルのコレクターがいる。どうしてもイメージ人気によりプレミアムが付いてしまうのだ。投資で買うなら、キャリアのベスト期の代表作を、高額でも狙うべきだ。それらが一番流動性が高いからだ。しかし、もし本当にその作家が好きならば、キャリア後期にはお買い得作品が多いのだ。
アンドレ・ケルテスはパリ時代の作品人気が非常に高い。しかし、後期のニューヨークの作品のなかにも彼らしい秀作があると思う。パリ時代のヴィンテージ・プリントは高額だ。2005年には、1926年作の「Chez Mondrian」が約46.4万ドル(約4600万円)で落札されている。しかし、ニューヨーク時代のヴィンテージに近いプリントは1万ドル(約100万円)前後から入手可能なのだ。
同じような例はほかにもある。特に景気後退期には、需要が人気作品に集中しがちになる。イメージだけにこだわらなければ良い作品をリーズナブル価格で購入できるチャンスは大きくなる。

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