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2010年1月19日 (火)

ヨコハマ・オープン・ポートフォリオ・レビュー
フォト・フェスティバルは日本の写真を変えられるか?

Blog

先週末に横浜赤レンガ倉庫1号館で開催されたオープン・ポートフォリオ・レビューに参加してきた。横浜は写真発祥の地で、今回の企画は2012年開催予定のヨコハマ・フォト・フェスティバルに向けてのプレイベントとのこと。メインとなるイベントはオープン・ポートフォリオ・レビュー。それ以外にも限られた予算内でアイデアを絞って写真展示やトークイベントも行われていた。

フェスティバルの状況は現在の日本の写真界を見事に反映しているものだった。主催者は欧米の一般的なフォト・フェスティバルを意識しているのだと思う。欧米ではその前提となる価値基準が少なくとも参加者に共有されている。しかし、日本では様々な写真の価値観が混在しているのだ。
たとえば、オープン・ポートフォリオ・レビュー。レビュアーとして参加したのは写真の様々な分野の人だった。常に自分の写真が優先される写真家、雑誌や写真集に関わる編集者、美術館のキュレーター、商業写真を営業するエージェント、オリジナルプリントを販売するディーラー、学者である写真研究家など。彼らの写真の価値基準はそれぞれ違うのだ。本イベントの趣旨が、対外的に、また参加者にも徹底できなかった原因もここにあると思われる。様々な分野出身の運営者がいたので、意見集約ができなかったのだろう。

しかし私はこの日本の現状に決して否定的ではない。逆に、もしかしたら日本独自の写真の強みになるかもしれないと考えている。つまりこの状況は、欧米のように歴史に規定されることなく多様な価値観が存在するということだ。欧米では却下されるような表現が、アートとして認められる可能性を秘めているかもしれない。
アートは非常に幅広い解釈が可能。明確な視点と方向性が示されれば、すべてを受容することは可能ではないだろうか。しかし、それにはそれぞれの分野の固有の価値観を互いに認め合うことが重要になるだろう。自分のよいと思うことをただ押し付けるだけでは今までの分裂状態が続くだけだ。フォト・フェスティバルはそのような日本独自のアート写真を提示する核になる可能性を秘めていると感じた。この件に関しては、私も色々考えているので別の機会に意見を述べたいと思う。

ポートフォリオ・レビューに参加した人は約50人あまり。わたしは、アート写真ディーラーの見地から10人くらいの人のポートフォリオを見て回った。少なくとも私が作品をレビューした人は、アート写真を売る人の価値基準を理解してくれたと思う。多くの人は写真のヴィジュアルづくりにはすぐれた才能を発揮している。ただし写真と顧客とをつなぐ方法論を知らないのだ。 また自分が写真で何を伝えたいかをあまり意識していない参加者も散見された。欧米のレビューでは明確な目的達成を目指し具体的にコンサルテーションを行っていく。参加者の写真表現の方向性が不明確だと、レビューはアマチュア向けの写真教室のように単に感想を聞くだけの場になってしまう。

実は、私は約10年にわたってアート写真の啓蒙活動をワークショップを通じて行っている。今回のイベントでは多くの過去の参加者と再会できて非常に嬉しかった。その後のキャリア展開の話をきいてみると、どうも彼らはアート写真の敷居が高いという印象を持っているようだった。実はこれには私も気づいており、深く反省している。昨年末にオンライン・ギャラリーを立ち上げたのはそのような人たちのために短期目標を提供したいという思いからだ。

今回のイベントには色々な意見はあるだろう。しかし様々な思惑がぶつかり合う写真界の中で多くの人を巻き込んで実行できたことは高く評価したい。ぜひ次回は今回の経験を活かしてフォト・フェスティバルの進化形を見せてほしい。

参加者、実行委員、ボランティアの皆様、大変お疲れ様でした!

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