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2010年2月16日 (火)

Black & White Scapes展が今週スタート!
いま新鮮に見える小さなモノクロ風景写真

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アンセル・アダムス作品の展示風景

世界経済は、やっとリーマン・ショックから立ち直りつつある。しかし経済回復は決して自律的で力強いものではない。中国のバブル崩壊など多くのリスクも抱えている。このような不安定な状況が続いていくと、誰の頭の中でもあたり前になっていた、経済成長が前提の考え方が変化するのではないかと最近考えている。
では低成長が長く続いた場合、アート写真はどこに向かっていくのだろうか?たぶん、今までとは逆の現象が顕在化してくるのだろう。数年前まで、写真は現代アート・ブームの影響を受けてきた。現代アートといえば、経済成長、グローバリズムを背景に、巨大、複雑な概念、カラー、高額な販売価格を特徴とする作品だった。
今後は、小さい、軽い、モノクロ、割安価格の作品が従来よりも注目されてくると思う。以前も述べたように、小ぶりの銀塩写真は現代アートの主要なカテゴリーのひとつとして存在感を増していくのではないだろうか?

すでに、欧米市場ではその兆候が見えはじめてきた。アート写真オークションでは現代アート系写真の出品が減り、銀塩写真が勢いを増している。歴史がある伝統的な銀塩写真は不況に強いことが再認識されているのだ。アート・フェアーでも変化が見える。規模が大きくなり、参加コストも高額になったフェアーへの反省から、シンプルに作品を見せるテーブル・トップ・フェアーが開催されるようになっている。Photo LAの期間に開催された「Classic Photographs Fair」は顧客動員、売り上げ的にも成功だったそうだ。これらの現象は単なる不況のせいか、もしかしたら水膨れしたアート界の原点回帰への始まりかもしれない。

ギャラリーの次回展「Black & White Scape」はこのような状況を意識した企画だ。
現在、風景写真といえばカラー、ラージサイズが中心だ。しかし、今回は全てモノクロ銀塩写真による小ぶりのランドスケープ、シティースケープ写真をコレクションした。その象徴として、モノクロ銀塩写真を代表するアンセル・アダムスの風景作品を展示している。作家の死後に制作されたヨセミテ・エディションではなく、1960年代にプリントされた真のオリジナル作品だ。
実は、昔は彼の作品には全く興味がわかなかった。しかし、2年ほど前ジョエル・マイロウィッツにインタビューしたときに、彼が「もしアンセル・アダムスがいま生きていれば絶対にフォトショップを使用しただろう」と語ったときから考え方が変わった。どうもマイロウィッツは、自分の写真をアンセル・アダムスの延長上に捉えているような印象だった。彼はもともとはニューカラーの代表写真家だったのが、今では完全に現代アート作家に転身した感がある。彼同様にアンセル・アダムスも、モノクロ写真で最高の表現を追求したのではなく、その限界を超えようとしていたのではないかと気付いたのだ。もしかしたらゾーンシステムの追求は、アナログのフォトショップのようなもので、彼の足跡は現代アート写真の原点のひとつでは、と考えるようになった。そのような作家性が評価されれば、上記の時代的な背景の転換から彼のモノクロ銀塩写真が改めて注目されるのではないだろうか。
外国人作家では、その他にマイケル・ケンナ、カート・マーカスの作品も展示している。

本展では普段は人物を撮影している写真家の風景写真にも注目した。ニューヨーク・ハーレムのドキュメントで知られる中村ノブオ、ファッション写真のナオキ、ストリートのポートレート写真の名手ハービー・山口などだ。普段はあまりフィーチャーされない、写真家の知られざる一面を発見する機会になればよいと思う。

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中村ノブオ作品の展示風景

中村ノブオ作品では、8X10"の密着プリントをグリッド状に20点並べてみた。小ぶりの都市ドキュメント作品の新しい展示に挑戦している。小さな写真でも、展示方法によってスペースを自由に使えることを体験してほしい。 また、ナオキ撮影の90年代東京の風景作品は、数年前に亡くなった伝説の英国人モノクロ・プリンター、ビル・ローリンソン氏による貴重なプリントだ。これらも一見の価値があると思う。

見どころ満載の「Black & White Scape」展は、2月19日(金)より開催します。
http://blitz-gallery.com/gallery_exhi_cur.html

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