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2010年3月30日 (火)

アート写真市場の現在
注目のオークション・シーズン到来!

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4月になるとニューヨーク春のアート写真オークションが始まる。まず最初に、いままでの市場状況の推移を簡単にまとめておこう。リーマンショック後の相場最悪期は2009年春のオークション。主要ハウス4社の総落札金額は急減して約615万ドルだった。専門誌の「ザ・フォトグラファーズ・コレクター」によるとこれは1997年秋並みの水準という。ピークだった2007年秋が3750万ドルだったので、1年前と比べるわずか約16%の規模に縮小したことになる。カタログが明らかに薄くなっていたのが印象的だった。その後、2009年秋のオークションでは売上が約1528万ドルに回復した。これはほぼ2004年春の約1600万ドルと同じレベルになる。2010年春前までの市場は、とりあえず底割れは回避されたもの、回復の勢いは決して強くないといった感じだろう。

様々な方面からの情報を総合すると、今年のいままでの相場状況は強弱が入り混じったミックスといった感じ。最近特に感じるのは、情報発信者によって状況認識と相場見通しがかなり違うということだ。たとえば、アート・フェアーで聞かれるコメント。主催者側からの発表はだいたい、不況なのに多くの熱心なコレクターが来て売り上げもそれなりにあったというもの。しかし、実際の参加業者からは強弱入り混じった様々な意見が聞こえてくるのだ。さすがにギャラリー名は明かしていないがネガティブな自虐的な意見さえも聞こえてくる。ディーラーはだいたいポジティブなことしか言わない。アート商売はイメージが大事だ。売り上げが悪いギャラリーとの風評が立つと、コレクターや作家への悪い印象を与えてしまう。だから、作品が売れた時は、騒ぐのだが、売れなかったときは黙っている。なかなか本音や実情は表面化してこない。 「今回のフェアーではギャラリーの作家をアピールできたし、新しいコレクターとのコンタクトが多くできた」などのコメントはポジティブにもとれるが、つまり作品が売れなかったこいうことなのだ。
実はアート写真といっても、そのカテゴリーは多岐にわたっている。ディーラー、コレクターも、もはや全ての分野を網羅することは不可能で、大体専門分野を持っている。どうも各分野ごとに状況がかなり違うことが様々な発言が出てくる背景のようなのだ。 売り上げ傾向はセカンダリー市場と同じで、評価の定まった良質の作品は順調に売れており、新人や若手の作品は苦戦しているようだ。在庫の質と取り扱い作家の知名度がディーラーの業績に大きく影響を与えている感じ。 老舗は順調だが、新進ギャラリーは苦戦するという構図なのだ。ネガティブな発言が聞こえてくるというのは、厳しい環境で本当に悪戦苦闘している業者が増えている証拠かもしれない。

では、最近行われたアート・フェアーの状況はどうだろうか? 参加者数の変化を見ると市場動向を推し量ることが可能だ。主要なアート・フェアー参加には多額の費用がかかる。今年は知らないが、2007年のフォトグラフィー・ショウのブース料金は9600ドルだったと記憶している。参加コストが回収できないとギャラリーにとってはかなりの負担になるのだ。先週ニューヨークで開催されたフォトグラフィー・ショーの参加数は73と昨年とほぼ同じだった。単価の安いアート写真は他分野のアートと比べて不況の影響は少ないという意見もある。しかし、今年もAIPADメンバー以外のゲスト展示者の参加や、複数ディーラーが一つのブースに共同参加した例もあったそうだ。やはり好況時とは内情はかなり違う印象だ。
販売実績についてはまだ多くの情報は集まってないが、全体的に低調だったと聞いている。ディーラーの多くは意識的に比較的低価格の作品を持ち込んでいたそうだ。

ここにきてオークション市場をとりまく雰囲気は決して悪くないと思う。為替は比較的落ち着いているし、ニューヨークの株価はリーマン・ショック直前のレベルまで戻している。その背景は、不況下の過剰流動性が背景で、さらにそれが進めば金利上昇につながるという非常に危ういものでもある。しかし、投資家の被っていた多くの含み損が減少していることは明らかだ。まだ今春のカタログ内容は精査していないが、出品数はほぼ横ばい。コレクション一括セールは、クリスティーズがアービング・ペン作品70点、とThe Bio Collection約120点を行うくらいだ。ただしフィリップスでは、昨秋より約50点増えて約350作品が入札される。現代アート、コンテンポラリー系が増えている感じだ。落札予想価格は、全体的に若干高くなっている印象を感じる。冬から春にかけての経済状況の変化がオークションにどのような影響を与えるだろうか。オークション・シーズンは4月13日のササビーズからスタートする。

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