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2010年6月29日 (火)

アート写真市場の現在
2010年春オークション・レビュー

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景気は世界的に回復傾向にある。しかし、その原動力は各国の大規模な財政支出、つまり借金により賄われている。いままではその恩恵を受けて、生産、消費が改善したが、最近になりその負の面の弊害が目立つようになってきた。ギリシャに端を発した、欧州の財政と金融危機が新たな火種として顕在化。欧州各国は市場からの攻撃を恐れて急激に財政再建路線に軸足を移し始めた。米国では、政府の減税が4月末に終了したことが影響して新築住宅販売が過去最大の下落幅を示すなどその反動も散見されるようになってきた。景気は最悪期は脱したものの、今後の見通しは決して楽観が許されない状況だろう。

さてアート市場はいまどのような状況だろうか。
5月にはニューヨークのクリスティーズでパブロ・ピカソの「NUDE, GREEN LEAVES, AND BUST 」が、アート作品としてオークション最高額の約1億648万ドル(約96億円)で落札された。一方で、6月のロンドンのクリスティーズではクロード・モネのレアな睡蓮の絵画が不落札になっている。やや全体の方向性がつかみにくい印象だ。
6月に世界で最も権威があるフェアーのアート・バーゼルが開催された。専門誌のレポートの見出しは、"豊富な資金、しかし市場の方向性のコンセンサスはない" というものだった。まさにアート市場の現状を言い当てた表現だと思う。
つまり、アート史で評価の定まったような名品を展示できたギャラリーの売り上げは概して好調で、それ以外の中途半端に高額な作品の売り上げは苦戦ということのようだ。
現代アートとしては安い価格帯になる10万ドル(約950万円)以下の動きは悪くないそうだ。実際、作品を出品していた日本人作家によると、新作を含めてかなりの点数が売れたという。しかし、バーゼルは世界中の富裕層相手のフェアーなので、市場の断片的な状況だけを示しているかもしれない。つまり、不況の時でも富裕層は潤沢な余裕資金を持っている。逸品が適正価格で売られていれば買う人は確実に存在する。アート・バーゼルはニューヨークの五番街と同じようなところで、常に買い物客が多く活気があるように感じられるのだ。

価格レベルにかなりの違いがあるが、この傾向はアート写真にもあてはまるだろう。
ちなみに今春のオークションでは100万ドル(約9500万円)超え作品は1点しかなかった。
ササビーズで落札されたエドワード・ウェストンのオウムガイを正面から撮影したヴィンテージ・プリントの"Nautilus,1927"。1,082,500万ドル(約1億283万円)で落札されている。
繰り返しになるが、写真も希少で価値のあるものは高額でも売れるが、それ以外の動きははまだケース・バイ・ケースなのだ。
今春は、アート写真の新たなコレクション構築とみられる、良品の積極的な買いが見られたという。このようなまとめ買いが高額作品の市場を活性化させた印象が強い。
この流れで好調だったのは、クリスティーズで開催されたアーヴィング・ペンの単独セール、"Three Decades with Irving Penn"だ。これはペンのスタジオのマネージャーを長年勤め、彼の右腕として活躍していたPatricia McCabeのコレクションからのもの。ほとんどがクリスマス・プレゼントだったのだが、ペンは普通に販売されているエディション番号付きを贈っていた。抜群の来歴と完璧に近い保存状態からセールは完売だった。

一方で、中間価格帯から以下の作品が中心の複数委託者からのセールは方向性が定まらない印象だった。オークションハウスがかなり厳しい出品作の選別を行っているのに、全般的に普通の落札結果が多かった。
モダンプリントやエディションが付いた希少性が高くない作品は、予想落札価格の範囲内での落札が多い。アーヴィング・ペンやダイアン・アーバスなど有名作家でも最低落札価格が強めと感じる作品は不落札になるケースが見られた。
一般コレクターは、欲しい作品の価格が自分の相場観の範囲内なら買う。しかし、無理して高値を追うことはしないというスタンスだ。転売目的のディーラーは、今のレベルで作品を仕入れても相場の短期的な急上昇は予想しにくいと考えているようだ。従って自分の相場観と比べて過小評価されているものにしか興味を示さない。今まで不調だったファッション系や現代アート系作品も売れるようになってきた。しかしブランド作家の作品以外は相変わらずコレクターは慎重だった。

オークションが行われた4月のニューヨークのダウ平均株価は2月の急落から回復していた。しかし、5月には欧州の財政問題への懸念から再び一時一万ドル割れとなった。株価チャート的にも、リーマンショック後の最安値からの戻りの節目となるポイントを抜くことが出来なかった。中長期トレンドはまだ弱きが続いている。株価動向は経済の先行指標でもあり、オークション参加者に心理的な影響を与える。5月に開催された、ブルームズベリー、やササビース・ロンドンのオークションはかなり厳しい結果だった。目玉が少ない、普通の作品が中心だったからと思われる。これらの価格帯のアート写真のコレクションは中間層の人たちが中心に行っている。彼らには今回の不況のダメージがまだ残っており、先行きにも決して楽観視ていない表れなのだろう。
春先までの市場は、慎重だがやや強気に傾いていた。ここにきて再び慎重スタンスにややトーンダウンした感じだ。

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2010年6月22日 (火)

家族写真をアートにする方法
テリ・ワイフェンバックの写真日記

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(C)Terri Weifenbach

現在開催中のテリ・ワイフェンバック(Terri Weifenbach)の「アナザー・サマー(Another Summer)」。実は始める前にいくつか心配な点があった。本作は眩しく輝いた乾いた心地よい写真作品なのだが今までの一連の作品と比べてスタイルが大きく変化しているのだ。
彼女の写真は、ピンボケ画面の中にシャープにピントがあった部分が存在する、夢のような瞑想感が漂う大判イメージが特徴。「In your dreams」、 「Hunter  Green」、「 Lana」ではほぼ同じスタイルで作品を発表し続けてきた。
今回も同じくカラーのタイプC-プリントだが、11x14"とかなり小サイズになり、よりスナップ的な流れで見せる作品構成に変化した。今までは風景が中心だったのが、今回は人物も多数撮影されている。

私はこの変化を非常に高く評価している。作家はいったんオリジナルのスタイルが認められると、リスクを冒して変化するには大きな活断が必要だ。しかし変化しないとキャリアの新たな局面を展開することはできない。ワイフェンバックは日々の生活を写真で日記的にテーマにする作家として知られている。今回の方がよりそのスタイルに近く自然体だと感じている。しかし、日本のオーディエンスは作家性ではなく、何が写っているかで作品を評価する傾向がある。彼女の作家性を理解していれば問題ないのだが、カラフルで瞑想感がある写真が好きなに人は今回の変化に戸惑うかもしれないということだ。

心配はもう一つあった。本作が受け入れられるには作家のメッセージが理解されることが必要となる。しかし今回の彼女のメッセージは、子どもから大人になる精神的な成長がテーマと、やや難解なのだ。その過程で子供の目に映るだろうと大人になった作家が意識して撮影されたイメージ。一見、普通の家族写真に見えなくもない。見る人が彼女の写真世界に入り込んでくれるかがやや不安だった。

しかし、写真展が始まってみると、これらはよけいな心配だったのが解ってきた。いままでに何人もの来廊者と話してみたが、多くの人が自分の子供時代の夏休みのシーンを思い浮かべながら見ているようなのだ。開催時期がちょうど夏休み前なのもよかったと思う。
ワイフェンバックの写真がきっかけとなり、自分の記憶のデーターベースに検索が行われる。誰しもが少なからず持っているだろう子供時代の夏休みの家族旅行のワンシーンを思い起こしているという感じだ。それとともに、それぞれが持つ過去の記憶、価値観が呼び起こされる。それは懐かしくほろ苦い思い出かもしれない。人によっては現在の自分を意識するきっかけになるかもしれない。つまり、写真を通じて見る人への問いかけがなされ、作家とのコミュニケーションが起きている。単なる写真ではなく、自分に意味を与えてくれるアート作品として存在しているのだ。
以前のブログで、本作の時代との接点についてギャラリーの考えを述べた。オーディエンスが時代性に共感できるかの前提は、彼らの心が作品に反応するかにかかっている。それなくして、ギャラリーの提示する視点は意味がない。

以上から、「アナザー・サマー」はアーティストを目指す人には非常に参考になる作品でもあると思う。カラーの家族スナップは多くのアマチュアが撮影する題材だ。それをアート作品として提示するヒントが隠されているのだ。この点に関しては、何人かの写真家と大いに話が盛り上がった。本展がきっかけで彼らがの作品に新たな展開があれば嬉しく思う。

梅雨期で蒸し暑い天気が続いているが、平日でもほんとうに多くの人が来てくれる。好意的なコメントも数多くもらっている。 辛口のアーティストたちの評判も上々だ。作品の売り上げはほぼ予想通り、写真集は順調に売れている。不景気であることを考えれば上々のスタートだろう。一番のうれしい誤算は、私の当初の心配をよそに来廊者の多くは写真を知的好奇心を満たしていくれるアート作品と捉えてくれていることだ。日本人のアート写真理解力は間違いなくレベル・アップしていると感じている。

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2010年6月15日 (火)

約583万円の写真集
ロバート・フランク「The Americans」

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5月21日にロンドンのクリスティーズで毎年恒例の「Photobook」オークションが開催された(上の写真がオークションカタログ表紙)。今年の話題をさらったのが、ロバート・フランクの古典写真集「The Americans」が当日のオークション最高値の43,250ポンド(約583万円) で落札されたこと。落札予想価格の上限は15,000ポンド(約202万円)。もちろん、この本の史上最高値段でもある。プレスリリースによると、戦後に正規に流通した普及版写真集での最高価格とのことだ。
これ以上の値段をつけている写真集もあるが、オリジナルプリントがついていたり、1点物の実物大見本などだ。つまり今回は印刷され流通した写真集のオークション新記録ということだ。

「The Americans」は数多くの版があることは広く知られている。オリジナルは1958年の5月15日にフランスのRobert Delpire社から"Les Americains"。今回落札されたのは、1959年の米国Grove press刊行による、米国版の初版だ。最近では、米国版と欧州版は、出版社が違うだけで内容は全く同じ場合が一般的。しかし、上記の2冊は収録写真数は同じだが編集がかなり違い、別物と解釈されている。90年代くらいは、フランス版の方が最初に出たということで市場での価値が高かった。 しかし、フォトブック自体が再評価されるようになってからは、作家性がより反映されているということで米国Grove press版の評価が上昇した。状態にもよるが、現在では2冊は同じくらいの値段がつくこともある。

さて今回オークションで落札されたのは、1959年のGrove press刊行による米国版だ。何でこれほどの高評価を得たかというと、ロバート・フランクの直筆サインが、「For Leo Stahin. Dec. 1959 Robert Frank」と書かれているからだ。この1959年12月という記述が非常に重要。この本は1959年刊となっているが実際に店頭に並んだのが1960年1月だという。つまり、これは写真集「The Americans」のまさに刊行時のサインということ、アート写真でいうと、ヴィンテージ・プリントという意味になるのだ。クリスティーズによると、過去30年間で同時期にサインされた写真集はオークション市場には登場していないとのこと。
彼のオリジナルプリントは、サイン入りモダンプリントなら1万ドル(約92万円)以下でも購入可能だ。今回の高額落札は、もはや写真集はコレクターの資料という位置付けにとどまらず、それ自体が写真表現のカテゴリーの一つであることを明らかにしたことになる。
写真集「The Americans」はいままでに多くの出版社から数多くの再版が世界中で刊行されている。表紙デザインやサイズも様々だ。2008年にスタイドル社から刊行50周年記念版が刊行された(下の写真)。これは、原点回帰で本のサイズが再び1959年米国Grove press版に戻されている。現在、アマゾンや洋書店で売られているのは、約583万円で落札された写真集とほぼ同じたたずまいなのだ。興味ある人はぜひ手に取って本の雰囲気を確かめてほしい。

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フォトブックス市場の動向にも少し触れておこう。他のアート市場と同様に世界的な景気後退の影響を受けて市場は弱含んでいる。ロンドンで開催のオークションを比較すると、景気の底は2009年だったようだ。総売り上げ285,562ポンド(約4000万円)、落札率約62%と低迷した。2010年は出品作を厳選したこともあり、総売り上げは353,438ポンド、落札率は約72%に回復している。ちなみに最高売り上げは2006年の643,832ポンド、落札率は約86%。ちょうどリーマンショック前の2008年春には市場の大きなニューヨークでもフォトブックス・オークションが開催され、その時はなんと約260万ドル(約2億6千万円)の総売り上げだった。 落札状況をフォローしてみると、アート写真市場の動きと全く同じだ。現在は、本当に資産価値があり、状態が良い写真集なら需要はある。しかし、いつでも買えるような流通量が比較的多い中級品の動きは鈍いといことだろう。 ヴィンテージは売れて、モダンプリントが苦戦するという構図だ。その状況が象徴的だったのが、今年5月19日ブルームズベリー・ニューヨークでアート写真の一部で開催されたフォトブックのオークション。際立った目玉がない中級品中心だったこともあり、約50点の出品で落札率はわずか30%だった。
従ってピークと比べて個別写真集の相場も下落気味。特定の欲しい写真集があったが手が出なかった人、特に高額本の場合は好機到来かもしれない。しかし、フォトブックには、アート・ギャラリーだけではなく膨大な数の古書店ディーラーが関わっている。10万円以下の本の場合、相場の下限ではこれらディーラーが仕入れの買いを入れる。参加者が少ない現代アートのように値段が急落することはない。以前より多少安く買えるくらいに考えてほしい。

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2010年6月 8日 (火)

アート・ビジネスの原動力
リスペクトされる関係

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アート業界でよく聞く言葉がいくつかある。以前、パッションを取り上げたが今回はリスペクトについて書いてみたい。欧米ではこれがアート・ビジネスを円滑に進めるための根底にある。基本的な考えはシンプルにこんな感じ。
たとえば写真家の場合、商業写真家の道に進んだ方が遥かに生活は楽だろう。アーティストのファインアート・フォトグラファーは、自分がどうしても世界に伝えたいメッセージがあり、作品での情報発信を優先する生き方をあえて選んでいるのだ。彼らは才能とともに高いプロ意識を持って活動している。その背景には以前紹介した様々なパッションがある。一般の人はアーティストのような生き方はできないので、彼らをリスペクト、つまり尊敬するということだ。商業写真家は、ビジネス優先なのであまりリスペクトされない。

米国では、コンセプトを突き詰めるアート系と徹底的に技術を学ぶ広告系と学校の段階で方向性が分かれている。アート系の学校はお金がかかるので、いったん社会に出てお金をためてから学ぶ人も多い。社会には彼らを金銭的に支援するシステムが整備されている。作品を購入して応援するコレクターがいて、また作品制作支援プログラムとして多くの奨学金、アーティスト・イン・レジデンス、 賞金が出るアワードや講師の職が提供される。
ロバート・フランクの歴史的写真集「The Americans」はグッゲンハイム財団の奨学金で1年をかけて制作されたことはよく知られている。現在、原美術館で写真展「パリ・京都」が開催されているシリアス・カラーの父と呼ばれるウィリアム・エグルストン。展示されている「パリ」のシリーズは、カルティエ現代美術財団の支援で制作されている。多くの優れた作品は社会の様々なサポートがあって生まれたのだ。

ただし、全てのアーティストが尊敬されるわけではない。アーティストであっても一般人と同様に社会の中で責任を持って生きていくことが求められる。世の中との関係の中に緊張感も持って自己表現を続けることが重要だ。それができない表現者は自分のエゴの押し付けになる可能性がある。リスペクトと対極の存在になってしまい、ディーラーや顧客などは応援しないのだ。日本ではアーティストといえば個性的な人という印象があるが、優れたアーティストは社会人としても一流だ。フィクションの世界に登場するような、エキセントリックな人は実在しない。

アートは資本主義の中で存在しているが、アーティストとディーラーのビジネスは信頼関係が基本に成り立っている。契約関係があっても信頼がなければアート・ビジネスは回っていかない。信頼の背景にあるのは互いがリスペクト出来るかによる。
リスペクトされるようになるにはいくつかの条件がある。アーティストには、才能はもちろん、知的さ、作品クオリティーに対するこだわり、人間性などが重要になる。ディーラーには、企画力、資金力、情報発信力、営業力が求められる。もちろん両者にアートへのパッションがあることは前提条件だ。互いのことを知るためには両者の密なコミュニケーションも絶対に必要だ。
私の経験則によると、お互いを利用しようという姿勢で行う写真展は失敗することが多い。お金儲けを目的とするアート活動なので、売り上げが上がらないと関係はすぐに消滅するのだ。
ビジネス社会の人間関係は損得勘定だけで成立している。人の評価は社会的な肩書や役割で判断され、互いを利用することだけを考える無味乾燥なつながりだ。アートの世界では、利害関係を超越した互いを真に尊敬しあう人間関係が稀にだが構築可能なのだ。アートが多くの人を引き付け、現代社会で存在が求められる理由のひとつがここにある。

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2010年6月 1日 (火)

インテリアとしての写真作品
Tokyo Lifestyle Photo

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展示作業中の会場

Interiorlifestyle Tokyo という、インテリア・雑貨関係の人を対象にした国際見本市が6月2日~4日に東京ビックサイト 西ホールで開催される。非常に大きな規模のイベントなのだが、今年からその一部でTokyo Lifestyle Photo - Living with Photography - が行われる。これは、インテリア・ショップとギャラリーが集結して「写真と暮らす」という新しいライフスタイルを提案する試みだ。小山登美夫、タカ・イシイ、ツァイト・フォト・サロンなどがインテリア・ショップとともにブースを構える。
私どもはギャラリーとしては参加しないが、Style Meets Peopleというモダンな高級家具とインテリア雑貨を扱うショップのブースに写真作品を提供。昨年に行った写真展「ムーンスケープ」が好評だった高橋和海の、120X150cmの大判作品2点と、20X24"作品4点を展示している。

日本ではまだ写真は美術品として広く認知されていない。90年代と比べて状況は改善したものの、まだ市場規模は小さい。いままでギャラリーは写真のコレクター層を広げる努力をずっと行ってきた。しかし、これがなかなかうまくいかないのだ。購入経験がない人はアート写真価格の相場観を持たない。たとえば、10万円代と言えば欧米市場では低価格帯作品になるのだが、初めての人にはその値段が高いか安いかの判断が下せないのだ。アート写真先進国の米国では、写真価格が安い時に市場が立ち上り、市場拡大と並行して値段が上昇していった。高額作品が最初から売れていたのではない。

日本でも、最初に買う人はとりあえず安いものからとなるだろう。たとえばアート写真コレクションの入り口が写真ポスターや印刷物をフレームに入れて飾ることでもよいと思う。私も最初はフレーム入りポスターだった。しかし、ポスターは印刷クオリティーが低い。 次第に本物が欲しくなってオリジナルプリントを買い始めた。
現在の日本市場での問題点は、ポスターなどの印刷物と、オリジナルプリントとに大きな価格差があることだと思う。そのギャップを埋めるために低価格のオリジナルプリントをインテリア雑貨感覚で売るのもありだと思う。敷居が高いギャラリーよりもインテリア・ショップの方が気軽に買えることもあるだろう。きっかけは何でもいい。インテリア感覚で買った人の中から、アートとして写真の魅力に目覚める人が出てきて欲しいのだ。経験を積み、良いもの、価値のあるものは値段が高いとわかればギャラリーに足を運ぶようになるだろう。

実は、アート・フォト・サイトのオンライン・ギャラリーもこれと同じような意図がある。新人だから値段は安めだが、ギャラリストが制作に関わりアート作品としての必要十分条件は満たしている作品群だ。優れたヴィジュアルと適切なコンセプトを持ったリーズナブルな写真作品で、売り上げも予想外に好調。実績がない新人にとっては、低価格作品から自らの市場を拡大していくのが現実的だと思う。

さて上記のTokyo Lifestyle Photo だ。本日、作品設営に立ち会ってきた。私の印象だと、ギャラリー系の展示ではあまり低価格帯の作品は展示されていなかった感じだ。高級家具を買う人なら、高額なアートも受け入れられるという発想だろう。
しかし、世界的な経済危機で高額アートをインテリア感覚で買う人は減少している。一方、不況でも手軽なアートをインテリアに飾りたいという潜在需要は大きいと思う。しかし、目が肥えた人たちは、優れたビジュアルとアイデアを持ったリーズナブルな価格の作品を求めている。「写真と暮らす」がテーマの本イベントがきっかけで、ギャラリーが新たな顧客層と出会うことを願いたい。

Tokyo Lifestyle Photo は、東京ビッグサイトで開催される国際見本市"Interiorlifestyle Tokyo" 内で6月2日~4日まで開催。
会場は東京ビックサイト西ホール。開催は10:00から18:00(最終日17:00)まで。

Interiorlifestyle Tokyo についてはこちらをご覧ください。

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