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2010年8月 3日 (火)

写真展での情報発信とは
作品コンテンツが伝わりはじめる!

Blog
(C)Terri Weifenbach / RAM

テリー・ワイフェンバック展が無事に終了した。
以前も書いたが、本展では作品テーマはかなりコンセプチュアルで、作品スタイルも大きく変化していた。従来のテリー・ファンが関心を持ってもらえるか若干の不安があった。(詳しくは過去のブログをお読みください)しかし、結果的には心配は思いすごしで、予想していた以上に多くの人が来てくれた。写真集発行人の加瀬亮氏のファンの人たちのクチコミ効果もかなりあったと思う。来廊者数は会期終了が近づくにつれ増加。最終日にはギャラリーとして非常に多い50名を超えた。著名な写真家、美術館関係者も多数来てくれた。
私どものギャラリーは決して交通の便が良いところにない。街を歩いていた人が何気なく入ってくるようなことはないと思う。ほとんどの人が写真を見るために暑いなか来てくれたのだ。来廊してくれた皆様、ほんとうにありがとうございました。

写真展情報は、いくつかの新聞や雑誌で紹介してもらった以外はすべてウェブ中心で発信された。ウェブ情報はポータルサイトなどを通じての情報提供が一般的。これは、顧客の情報入手方法の変化に対応し、旧来のメディアがウェブに置き換わっただけのことだ。
今回は写真展自体の開催情報だけでなく、いままではあまり感じなかったコンテンツ自体もある程度伝わっている感じがした。通常、アーティストのアイデアやコンセプトは評論家などの専門家が伝えるもの。実はこの点が日本では一番弱い部分で、どうしても開催情報伝達が中心になっている。
本展ではそれらが一般のオーディエンスを通じて伝わったという手ごたえがあったのだ。

ギャラリーとしても、作家の視点をやや独断と偏見で解釈した。オーディエンスにその評価を問いたいと思ったのだ。ブログで繰り返し発信し、ワークショップやギャラリー店頭でも伝える努力を行った。冒頭に書いたように、作家の視点が理解されないと写真集や作品が売れないと考えたからだ。
従来は、作家のコンセプトに対する反応のようなものはあまりないのだが、今回は、コレクターのブログなどでも評価してもらったり、作品の評判を聞いて見に来たという人がかなりいた。
これはテリー・ワイフェンバックの写真作品の高いアート性が評価されたという証拠でもある。低レベルの作品だと話題が広がらずに膨大な情報の中で埋没してしまうだろう。またこのような状況が起こる背景には、見る側のアート写真リテラシー(理解力)が全体的に高くなってきたことがあると思う。ウェブやクチコミ情報がコンテンツとして意味を持つには発信者が写真家のメッセージを理解し価値を見出す必要がある。単にイメージの好みを述べるのではなく、発信される情報の内容が重要なのだ。

ここまで書いて思い出したのは、いまや死語に近いかもしれない、「Web2.0」という概念。
「ウェブ進化論」で知られる梅田望夫氏のよると、ネット上の不特定多数の人々を、受動的なサービス享受者ではなく能動的な表現者と認めて巻き込んでいくための技術、サービス、というように説明している。これは期待はずれで、実態はモノを売るビジネスとしては従来の代理店制度などがネットに変わっただけの代物だった。しかし、アーティストのコンテンツの情報発信に関しては、一般人でも情報の受け手だけでなく発信者になり得るのかもしれないと感じた。

写真分野での、作家コンテンツへの関心の高まりは好ましい傾向だろう。やっと日本でもアート写真がコレクションとして広がっていく条件が整ってきたということではないか。いまや作家のメッセージに共感すれば、絶版写真集なども含めて5万円以下ならば抵抗感なく購入する人が増えている。実際、今回販売したオリジナル・プリント付きの限定50部の写真集は飛ぶように売れた。欧米市場並みになるのにまだ時間はかかるだろうが、この過程を経ることで初めて数十万円もする作品が普通に売れるようになるのだ。

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