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2010年10月19日 (火)

2010年秋アート写真オークション速報
不況でも根強い希少作品への需要

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春と比べて景気の先行きにはやや雲がかかってきたという状況だろうか?
2008年のリーマン・ショックで大きな痛手を被った世界経済は各国政府による財政出動で徐々に回復し始めてきた。しかし、景気刺激策が終了するに従いその勢いが止まってしまった。内需が回復しないので日米欧は異例の金融緩和を続け、通貨安戦争へと発展した。輸出により自国経済を立ち直らせようということだ。もしかしたら先進国の景気低迷はまだしばらく続くかもしれないと多くの人が考え始めてきた。

今秋のニューヨークのアート写真オークション。主要3社の総売り上げは1,739万ドルだった。春は約1,777万ドルだったのでほぼ横ばいという結果。
しかし今年は6月に、ササビーズでポラロイド・コレクション485点のオークションが開催されている。総売り上げは約1,246万ドル、落札率約89%と好調だった。これを無事に消化した上での今秋のオークションだったので、結果は上出来だったと評価できると思う。質の高い作品を集めて、編集したオークションハウスの専門家たちの努力の結果だろう。

市場状況は、ササビーズのクリストファー・マホニィー氏のコメントに集約されている。彼は、"市場に初めて出てくる、真に貴重な作品に対して、市場は非常に強い関心を持っていることが証明された"と語っている。逆にいうと、凡庸なモダンプリントに対する需要はまだ回復途上ということだ。

高額落札は、クリスティーズに出品されたアンセル・アダムスの裏打ちされた雄大な"Grand Tetons and the Snake River, Grand Teton National Park, Wyoming,  1942"。
60年代にプリントされた約77X115cmの巨大作品。現存するのはわずか6点とのことで、338,500ドル(@85.約2877万円)で落札されている。
ちなみに、上記ポラロイド・コレクションのオークションでは、アダムスの同様の巨大作品"Clearing Winter Storm,Yosemite national Park, 1938"が作家のオークション最高価格の$722,500.(@85.約6141万円)落札されている。
ササビーズのトップは、ロバート・フランクの"U.S.90, En Route Del Rio, Texas,1955"。266,500ドル(@85.約2265万円)で落札されている。
全体の印象としては、クラシックなモノクロ作品が増えて、ファッション系と現代アート系の出品が目立って減少していること。現代アート系の作品がカタログ表紙を飾ることが多いフィリップス(Phillips de Pury & Company)だが、今回はアンドレ・ケルテスだった。ササビース、クリスティーズのカタログは90年代を思い起こさせてくれるような内容だった。ファッション系のニュートンやペンは慎重にセレクトされていたものの、絵柄によっては不落札なものが散見された。

個人的に嬉しかったのは、丸山晋一の作品Kusho#1がフィリップス(Phillips de Pury & Company)に出品され、$18,750.で落札されたこと。同イメージは10枚のエディションが既に完売している。現代アート系でも人気のある作品には需要があるようだ。
ちなみに、Kusho#1の大判銀塩写真版は現在東京広尾のインスタイル・フォトグラフィー・センターで開催中の"Imperfect Vision"で展示中です。

私が気になるのは、以前も触れたが米国で起きている株価の上昇予想の変化だ。いままでの写真オークションでの落札額の推移はほぼニューヨーク・ダウ株価と連動していた。株価上昇の背景には中長期的に価格が上昇するという一種の共同幻想があったと言われている。写真も同様に、有名作家の優れた作品を買っておけば値段はあがると信じられていた。実際に過去20年くらいの相場はその通りに動いていたのだ。
ここにきて専門家が指摘しているのは、長引く不況の影響で投資家の運用姿勢が慎重になり、株価の上昇神話が揺らいできたという事実だ。中長期的な株価上昇期待の減少はアート写真市場にも影響してくると思う。投資的見地で買っていた人は慎重になり、本当にアート写真を愛するコレクターが適正相場で買う市場になるだろうということだ。大幅な価格上昇見通しがないので、貴重な作品以外は高値での競り合いもなくなるだろう。
相場の上昇期待で買われるのは決して好ましいことではない。しかし、それが市場規模を拡大させ、新人や若手までもが注目されたのも事実だ。ブランド未確立の作家は苦戦する時代になる気がする。
今後のコレクターの志向は、多文化主義から自国主義、新人から中堅作家へ、サイズは大から中小へ、数から質へ、アバンギャルドからクラシックへと、いままでの揺り戻しがしばらく進む感じだ。

詳しいオークション結果については後日、アート写真の総合情報サイトのアート・フォト・サイトの海外オークション情報欄で紹介します。

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