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2010年12月 7日 (火)

アート写真ディーラーの団体が設立!
10日から広尾・アート・フォト・マーケット開催

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AIPADという組織がある。これはThe Association of Internatinal Photography Art Dealersの略称。1979年に北米で設立されたアート写真ディーラーの組織だ。ちなみに欧米では、ギャラリーのことも作品を扱う業者という意味でディーラーと呼ぶことが多い。AIPADは、アート写真を売買するビジネスでの高い基準の設定とその運用が目的としている。論理的な基準、コミュニティー内でのコミュニケーション、写真がアートとして認知されるための働きかけ、写真家とコレクターの権利の保護、責任あるディーラーの信頼向上などをうたっている。70年代後半にかけてアート写真市場が拡大してきたことに伴い専門業者が集まって業界の基準を定めようとして結成されたのだ。

実は日本にはアート写真を取り扱う業者の団体がいままで存在しなかった。過去30年くらいの間に多くの写真ギャラリーが生まれたが、だいたい10年以内に廃業していった。最近はビジネスの動きが加速していることから、わずか数年で撤退するところも少なくない。10年以上営業している業者はいくつかあるが、それらは独自に顧客層を開拓して生き残ってきた。
業界団体がなかった理由は、90年代くらいまでは多くのギャラリーが外国人作家を中心に取り扱っていたからだと思う。既に海外市場の基準で販売されている作品をそのまま日本市場に当てはめてきたので、独自の基準作りの必要性を感じなかったのだ。
しかし、ここ10年くらいで環境が大きく変化してきた。まず不況の影響で、比較的高価な外国人作家が売れなくなり割安の国内作家を取り扱うギャラリーが増えてきた。しかし前記のように、国内市場にはアート写真の、クオリティー、値段、コンセプトなどの基準がないことから、様々なレベルの写真が好きな値段で売られるようになってきた。
また最近では、商業写真家が不況による収入減少を補うために自分なりにアートだと解釈した写真を自ら値付けして販売するのも増えている。
さらに、現代アート分野の人が写真メディアで表現するようになったことで状況はさらに複雑化する。現代アートは高度なアイデアやコンセプトが全てなのだが、その表層面だけを取り入れて、高い値段をつける人も出てきている。
日本はデザイン王国と言われ、いまや写真家ではなくデザイナーがスターになる時代だ。グラフィックデザイン的に優れたイメージがアートだと解釈する人も散見されるようになった。
私は、感覚重視で制作されたものすべてがアートだと誤解されているのがこれらの混迷の原因だと理解している。なぜならフィーリングで写真を語ると作品価値の序列を否定することになり、客観的な優劣がつけられないからだ。
まとめてみると、日本のアート写真市場というものがあるとすれば、関係する人それぞれがアートだと解釈した、様々な価値観の写真が混在している状況なのだ。そこには統一した価値基準のようなものは存在しない。
以前も触れたが、最近数多く開催される、アートイベントでは非常に不可解な経験をすることがある。日本人の新人作家の大判作品が写真史に名前が残る外国人マスターの作品の値段よりも高価というようなきわめてシュールな情景が珍しくないのだ。私は個人的には日本のこのシュールさを楽しんでおり、この状況を論理的に解説することで弱点を長所に変える可能があると考えている。これについては別の機会に触れたい。

さて現在の状況で一番迷惑なのは、写真を買おうと考える人たちだろう。いったい何を基準に作品を選べばよいのか?はたして作品の市場性や資産価値は担保されるのか、という素朴な疑問を持ち始めているのだ。これが、日本で写真が売れない背景になっていると思う。価格の客観的な正当性が不明なモノに何万、何10万もお金を出す人は多くはないだろう。実際、コレクターは基準が明確な外国人作家や日本人でも外国で評価されている人を好んで購入する傾向が強い。
いままで、老舗のギャラリー同志は利害が一致しないこともあり必ずしも親密な関係ではなかった。しかし、このようなカオス状態が続くとさすがに自分たちの首を絞めることになるという危機意識を共有するようになってきた。 米国と比べ30年遅れだが、ここにきてP.G.I.のディレクターを約30年務め、現在、フォトクラシック代表の山崎信氏が中心となり、P.G.I、MEM、ブリッツなどが集まってやっと業界団体のジャパン・フォトグラフィー・アート・ディーラース・ソサエティー(JPADS)が設立されたのだ。(ジェイパッズと呼んでください)最初からアート写真の共通基準を提示するなどの大仰な考えはない。たぶんメンバーの意見も様々だと思う。とりあえず欧米のアート写真界の状況を参考にして日本独自のゆるい基準が顧客に提示できるようになればよいと思う。希望を語る若いギャラリーと違い、老舗ギャラリーは日本市場への絶望からスタートしている。いまの状況に対して現実的に対応できるのだ。このような、広くアート写真を話し合う場が出来たことが大きな一歩で、過度の期待を持たずに利害調整しながら継続していくことが重要なのだと悟っている。

JPADS主催の初めてのイベント"広尾・アート・フォト・マーケット"がインスタイル・フォトグラフィー・センターで今月10日から開催される。これは10万円以下の価格の中堅、エマージング・アーティスト中心のアート・フェアー。 P.G.I、フォトクラシック、MEM、ブリッツ、G/Pギャラリー、エモン・フォト・ギャラリーの国内6業者が持ち寄った約60点以上の作品を一堂に見て、買えるイベントだ。ちょうど季節は年末のクリスマス・シーズン。アート好き、写真好きの人へのプレゼントへ、また1年間頑張った自分へのご褒美にと、お気に入りの1枚を探しに来てください!私は、期間中はだいたい会場にいる予定です。見つけたらぜひ声をかけてください!
引き続いて、2011年2月には、ザ・JPADS・フォトグラフィー・ショーを開催する予定です。

www.jpads.org

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