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2011年7月12日 (火)

目指せアート写真の世界
地方在住写真家の可能性

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最近、地方の写真家の作品を見てアドバイスすることが多い。私が出張することもあるし、わざわざ上京してくれる人もいる。彼らは地元で活躍する商業写真家や、ハイアマチュアの人たちで、キャリアの一環としてアート作品に取り組みたいと考えている。だいたいの人が生活ベースを持った上で、自分のペースで地道に活動を続けている。作品を見る前に、市場の現状解説や、アート写真の価値観のことを一通り説明する。都市部の人よりも真剣に聞いてくれる印象だ。

彼らは全般的に心がオープンで、素直な気持ちで写真に取り組んでいる感じだ。そしてアドバイスを積極的に受け入れてくれる場合が多い。何か新しい分野のことを学ぶときには、自分を空っぽにして専門家の意見や解説を受け入れてみるのが有効だ。それにより、いままで気付かなかった自分が発見できたり、新しい価値観が生まれる。アート写真を目指す人の作品自体のレベルは、都市部でも地方でも大きくは違わない。それらの背景にある感動を、収集、集約して、さらに考えていく過程が重要になる。最終的にテーマを明確化して作品ポートフォリオとしてまとめていく。地方在住写真家の場合、シンプルなアドバイスで、テーマが顕在化したり、視点がひらめいたり、ステーツメントの内容が飛躍的に改善したり、作品作りの方向性が突然見えてくることが多い。たぶん、自分の心を開いて素直な気持ちで取り組んでくれるから、見えなかった色々なつながりが顕在化するのだろう。それは、複雑なパズルが解けたような感じで、写真を見る側にとって極めて心地より瞬間だ。

一方、地方在住写真家とは全く逆のタイプの写真家にも遭遇することがある。都市部に比較的多いだろう。彼らは、自分の中に凝り固まった考えや、好みの感覚があってそれを認めてもらうため、補強するために写真を見せにくる。アドバイスをしても、自分に都合のよいことだけを受け入れる。アートの世界は、個人の存在と自由が重んじられるはずだ。しかし不思議なことに、彼らは自分が感覚で良いと感じる写真を、他人も良いと感じるはずという思い込みを持っている。これは、多くの人が同質の価値観やモラル観を持っていた時代の名残を引き継いでいるのかもしれない。
戦後に自由と民主主義が導入されたことで、"同質性を前提とした日本人の文化"はもはや存在しない。同様に、個人の(美的)感覚も人によって様々になっている。90年代以降はさらにばらけている。日本社会でいま起きている様々な問題は、同質性は崩れているのに、多くの人が自分と同じモラル基準を持っているはずで、それに従うべきと考えるからだ。
アートは作品を通して人間どうしのコミュニケーションが行われること。そのコミュニケーションは、それぞれが違うことを認め合うのが前提だ。従って、みんな同じと考える人とは会話が成立しない。アートとしての写真を語りあう場で、永遠に不毛な平行線の会話が続くのだ。あるキュレーターは、運悪くそのような人と出会ったら、場の雰囲気を壊さないため逆に作品を徹底的に褒め倒すという。やや極端な対応だと思うが、気持ちはよく理解できる。

上記のように、作品制作の過程では思い込みにとらわれることなく、自由な気持ちで周りの意見を聞きながら、自分の内面を深く探求する必要がある。しかし、作品が完成するとこんどはまったく別の素養が求められる。一転して外界への積極的な働きかけが必要となるのだ。シャイな地方在住の人はこの部分が弱いことが多い。作家を目指すなら、これらの外向きの活動は仕事の一部であると認識してほしい。社会に存在する仕事には営業系が多いだろう。知らない人に会ってと話すのが苦手でも、営業活動に従事して実績を上げている人は数多くいる。なぜできるかと言えば、生活のために必要な仕事と割り切っているからだろう。作家を目指す人にとって、営業活動は作品制作と同じくらい重要な仕事だと理解してほしい。
特に新人の場合は、どれだけ自分を広くアピールして、多くの人をギャラリーに動員できるかにかかっている。最初はだれでも作品は売れないもの、興味を持って見に来る人の数が作家の将来性を占う目安になる。本人が行動して、それにギャラリー、友人、仲間の営業努力が重なることで、情報が広く多くの人に伝わるようになる。

日本のアート写真界の問題点は、プライマリー市場で継続的に活躍する作家が育たないことに尽きる。上記の理由から、新たな新人は東京だけでなく、地方部からも出てくる可能性が高いのではと感じている。今後も、東京以外でのワークショップ開催や、その後の作品フォローアップに取り組むとともに、彼らの作品を一番大きな東京市場に紹介するシステムを構築していきたいと思う。

地方都市での、レクチャーやワークショップに興味ある人はぜひご連絡ください。

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