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2011年9月13日 (火)

日本の写真市場の現状
幅広い選択肢、消費される写真

過去1年間くらい、ギャラリーの仕事以外に、JPADSでフォト・フェアの企画、運営や、IPCでの各種写真展開催に携わってきた。おかげ様で多くの種類の人たちと接することができた。これら一連の活動を通して、日本でのアートの意味が欧米とはかなり違うことを改めて実感した。つまり、日本では様々な価値観のアートとしての写真が混在していているということ。 それらは混ざり合うことなく個別に存在しているのだ。ニューヨークなどは人種のるつぼではなく、共存するが混じり合わないサラダボールというたとえがあるが、それと同じ感じだ。

日本では、個人という存在が前提で、論理的な思考の上に構築されたアイデアや世界観を作品で他者に伝えていくというようなアートの考えが希薄だ。従って、特に写真はどうしても表層でとらえられる傾向が強い。感覚、イメージ、デザインによるインテリア系、作品クオリティが基準の工芸品系、などが多く見られる。それが、現代アート系、欧米ファイン・アート写真系、その派生の日本的ファイン・アート系などと混在しているのだ。同じようなたたずまいのギャラリーでも、実は価値観がみな違うのだ。
また、日本の特色として事業多角化の一環でギャラリー経営を行っているところもある。彼らは、広告宣伝を重視した事業スタンスをとる場合が多い。また空き不動産の有効利用のためのギャラリーも多い。ギャラリー以外でも、デパートの美術画廊、同インテリア小物売り場、催事場、フレーム専門店、レンタル・スペース、インテリア・ショップ、カフェなどでも写真は売られている。
欧米だと、アート系が、現代アート、伝統的写真にカテゴリー別けされ、それとは区別されて業販系があるくらいだ。日本はこれらがすべて混在して、膨張しながらカオス化している感じだ。

写真の取り扱いギャラリーでも、同じ考えを持って業務を行う業者数は思いのほか少ない。業界団体は、基本的な考え方やビジネススタイルが同じ業者の集まりのことだ。日本ではこの前提がみな違う、つまり同じ写真の扱いギャラリーでもみな分野が違うともいえる。
日本のフォト・フェアでアート写真の啓蒙活動がうまくできないのは、様々な思いの業者が、ただ写真も販売しているという理由で、イベント業者の掛け声で集まっているからだ。つまり全体で一貫した基準の情報発信が難しいということ。従ってアート・フェアは、見る人が喜ぶ企画を前面に立てた、観客動員数を目指したイベントになる。

この状況は、作品を作る写真家、購入する消費者にも当てはまる。それぞれの市場にそれぞれの考え方があり、それをサポートする、作家、ギャラリー、消費者が存在するということだ。写真家が写真を売る場合、その中のどの分野を目指すかは非常に重要になる。私どもで開催する、ワークショップでもここの解説には時間をかけている。
日本的だなと感じるのは、モラル感覚と同じようにそれぞれの考えを他人も共有するはずだと信じている人が多いこと。個別の基準を持つ様々な村が乱立しており、独自に勢力を拡大させようとしているイメージだ。

これが現在の日本の写真市場の現状認識だ。これを欧米市場と比較しても意味がないだろう。私は単純に市場が違うと理解している。写真を売り買いする様々なチャンネルが存在する環境は、写真家にとって欧米よりも写真を売ること自体が容易かもしれない。あまり高い目的を掲げずに、正しい現状認識を持って、確信犯で売っていくのも一つの考え方だ思う。
写真を取り扱う者としては、この中から将来にオークション市場で取り扱われるような人が輩出してほしいという希望を持っている。欧米市場でも、写真家が売れるきっかけは表層のイメージによる場合も多い。その後、写真家が作家として成長していくためには、ギャラリーやディーラーの役割が非常に重要になると考えている。
これは写真というインテリア関連グッズの商品開発ではなく、時間のかかる作家のブランド作りをおこなうことだ。巧みな仕掛けを考え、実践することが必要で、商売人ではなく、専門家しか担うことが出来ない仕事だろう。課題は、この部分で活躍できる人材作りと環境整備にかかっている。具体的に考えているアイデアは折に触れて紹介していきたいと思う。

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