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2011年10月 4日 (火)

横木安良夫「Glance of Lens レンズの一瞥」
究極の作品コンセプトを実践する

Guide073
(C)Alao Yokogi

横木安良夫「Glance of Lens レンズの一瞥」が品川のキャノンギャラリーSで11月8日(火)まで開催されている。
これは、ブリッツで今春に行った写真展の拡大版といえるものだ。展示写真は約40点だが、かなりの作品が重複している。今回は販売目的ではないので、思い切り巨大な作品が制作されている。また数々の展示方法のチャレンジが見られる。一部作品は、バックライトで照らしだす巨大作品。また、キャンバス地へのインクジェットプリントも行っている。このスペースは壁が黒色で、展示が難しい。事務所のなかの作品展示みたいになることが多い。しかし本展はバックライト作品を導入したり見事な会場レイアウトに仕上がっている。 会場のディレクションは横木が懇意にしている原耕一氏が担当したという。納得である。
ブリッツの個展では、スタート直後に東日本大震災が起きてしまい写真展どころではなくなった。実は阪神淡路大震災の写真も展示していたので奇妙な偶然性を感じた。今回も、横木は震災後の東北地方に入り撮影している。本展では、宮城県名取市で撮影された大量のクルマの残骸の写真など新作数点も紹介されている。彼の、「Glance of Lens 」は現在進行形で続いているのだ。

多くの人は、横木の「Glance of Lens 」を解釈しようとすると頭を抱えてしまう。彼は展示を通して、「写真て、いったい何なのだろう?」と、私たちに問いかけてくる。 以前も述べたが私の理解を繰り返しておきたい。少しばかり小難しくなるがお付き合い願いたい。
まず彼には、いまのアートシーンにおける、アイデア重視の現代アート系写真偏重に対する疑問がある。頭でっかちの写真作品。その前提は、人の内部に自我のようなものがあって、そこから様々な判断を下し、アイデアを生み出しているという感覚があるだろう。彼はその自己意識そのものを疑うのだ。自分がいるという感覚は、脳の中にある心的モデルの一種かもしれないという気付きがある。
横木の撮影時の感覚は心理学の「フロー状態」に近いのだと思う。米国の心理学者ミハイリ・チクセントミハイは、子供が遊んでいるとき我を忘れて熱中する状態の「フロー状態」とよんでいる。それはアーティストが創作活動の中で集中して自らを失う状態とおなじ。チクセントミハイによると、行為の難易度と自分の技術が合致して、自己意識がない時にそれを経験するという。

横木は、写真家は写真を撮る行為自体にもっと価値を置かないといけないという。しかし、これは単に自分の感覚を重視して撮影すればよいというのではない。彼の写真を理解するもうひとつのポイントはエゴがないことなのだ。そこには、自分はプロの写真家なので、センスが良いとか、高い技術力を持つとか、優れた構図・デザイン力を持つとかがないのだ。まして売名行為で写真撮影することはない。彼は、自分には不気味な写真が多いと語っているが、意識して不気味な写真を撮ることはできないだろう。つまり写真バカになれることが大きな強みなのだ。それも確信犯でなりきっている。凡人はつまらないプライドがでてきてなかなか徹底できない。
アイデアを生み出す自我自体の存在に対する違和感。そしてエゴがなく、撮影自体に集中する。私の理解は、「Glance of Lens」は作品コンセプトがないこと自体がコンセプトということ。まさに究極のアイデアだろう。
普段の横木は非常に人間的だ。それがカメラを持つと撮影に徹することができる。その積み重ねが究極のライフワークの「Glance of Lens」というわけだ。神戸淡路大震災や、東日本大震災などの作品は公開に微妙な配慮が必要な写真だろう。しかし、「Glance of Lens」の流れの中ではそれらも同列に横木自身の作品になるのだ。 私は、「Glance of Lens」に禅の悟りと同じようなニュアンスを感じている。つまり、頭で分かっていてもダメで、生活なかで常にそれを実践していかないといけないのだ。
横木にとって作品制作の継続自体がコンセプトということだろう。

横木安良夫「Glance of Lens レンズの一瞥」は、品川のキャノン・ギャラリーSで11月8日(火)開催中!
開館時間 10時~17時30分まで。
入場無料。ただし日曜、祝日は休館になるのでご注意ください!

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