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2012年1月10日 (火)

アート写真の現在
2012年をパーソナルに展望する

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昨年の3.11東日本大震災は、アート業界にも経済的に多大な影響を与えた。それは震災による消費意欲の減退というだけではない。人間が自然中の一部であるという当たり前のことを私たちが意識してしまったことが重要だろう。
現代人は、普段はそんなことを忘れて色々なことに囚われ思い悩みながら生きている。平時にはアートは違った方面から世の中を見ることを教えてくれるのだ。問題なのは、いまでも多くの人が非常時の精神状態を引きずっていること。そして、たまにある余震や次の大震災の可能性が報道されることで大自然の中の無力な自分を確認させられる。このような状況で既存のアートはその本来の役割を果たすことは難しいのだ。たぶんこんな雰囲気は数年は続くのではないか。
また、大震災を作品テーマに取り込む動きも散見された。しかしこれは取り扱いが非常に難しいので注意が必要だろう。それ自体をテーマにすると作家として自らの存在基盤を危うくするリスクをかかえている。事実をパーソナルな視点でとらえるのが賢明だと思う。

2012年のアート写真市場はどうなるだろうか?
欧州債務危機問題、米国家庭におけるバランスシート調整による長引く不況から、市場の先行きには不透明感が強まっている。欧州発の信用収縮が改めて意識されたからか、年初からのユーロ急落は不気味だ。このような状況下で昨年来進行しているアート写真市場の2極化がさらに進むと思う。
ブランドが確立した作家の希少作品は、高い資産価値がある。金融資産の価値が揺らいでいる中、それらに対しては根強い需要がある。海外オークションでも高額落札されるのは、ほとんどが20世紀の有名写真家によるヴィンテージ・プリントだ。その顔ぶれを見ると90年代のオークション・シーンを思い出す。一番影響を受けるのが中間価格帯の作品となる。さらにその中でも作家ブランドによる2極化が細かく進むのではないか。アート写真界でのブランド確立は個展開催とともに写真集の有無が影響する。作品ごとに写真集が刊行され、売れている人以外はこの分野でも苦戦するだろう。一番厳しいのは、作品集も出ていない上に、中途半端に高い値段が付く現代アート系の新進作家だろう。
もう一極となるインテリアの一部としての取り扱われることが多い比較的低価格作品の需要は悪くない。海外では約2500ドル(約20万円)以内、国内だと約1000ドル(約8万円)以内の写真作品の動きは活発だ。

昨年は、商業写真で活躍する人たちがアート分野への関心を示すようになった年でもあった。アート分野でのキャリアを目指すのは、いままでは中堅商業写真家が中心だった。長引く不況とデジタル化の波により、いまや彼らにはお金のかかる作品作りを続ける余力がなくなりかけている。逆にいままで仕事で忙しかった売れっ子の写真家が写真販売に興味を示すようになった。いまや彼らにしか作品制作を継続する余裕がなくなってきているのだ。昨年、2回開催されたインフィニティー展はその表れだった。多忙な実力者たちが作品の展示販売に挑戦してくれたことは喜ばしい出来事だった。しかし、一方で広告写真やパーソナルワークがすぐにアートになるわけではない。いまだに多くの人は、イメージ重視の作品から抜け出し切れていない。
作家を目指すことは自分の拠り所をアート写真の歴史の延長上に見つけることに他ならない。違う分野の写真に挑戦する時には市場の現状認識、市場の調査、研究が不可欠になる。 その点に気付く人がどれだけ増えるかに今年は注目している。
例えばそのための絶好の学びの機会が年末に開催した、ザJpadsフォトグラフィーショーだった。約100点にも及ぶ資産価値が認められた写真作品のクオリティー、値段を比較できる機会はめったにない。来場した写真家の人たちはかなり刺激を受けたようだ。作家を目指すことは、会場で展示されていた有名写真家の仕事を引き継ぐ行為であることを直感的に実感出来たのだろう。彼らのように本当にアート分野でのキャリアに挑戦しようと思う人たちが少ないながら商業写真家から出てきたことは嬉しい兆候だ。今後もアート分野での可能性を本気で探求したい人を応援していきたいと思う。

一方、高いレベルを目指すハイアマチュアの積極的な活動が目立ったのも昨年の特徴だった。この傾向は間違いなく今年も続くと思う。
世間では震災後の不安感のたかまりからつながりを求める人が増えているという。その手段の一つが写真を通してのつながりなのだ。アートとは元々は写真を通じて作家とオーディエンスがつながることだ。
11月に写真家の横木安良夫の主催するアマチュア写真家のグループ展をお手伝いした。自分の作品が展示され、またカタログに収録されていることで彼らの多くは本当に幸せそうな表情をしていた。アートとしての写真とは別にして、自分のアイデンティティー確認や人とのつながりを演出する写真の素晴らしい効用を確認できた。多くの人はそこで満足するのだが、中には更に高いレベルを目指す人も出てきている。商業写真家のように職業的プライドがないので専門家のアドバイスに対しても高い対応力を示す。短期間に驚くべき成長をみせる人も多いのだ。写真では、もはや技術力のみは問われない。今後はアマチュアの中から優れた作家がでてくる可能性が十分にあると思っている。安定的な本業も持っていることが継続的に作品に取り組む上で大きなメリットだろう。 今年も、ワークショップやJpadsの活動を通してハイ・アマチュアの活動を支援していきたいと思う。

2012年もアート写真市場拡大のために、現実を直視しながら分相応で実行可能なことをひとつひとつ行っていきたいと思います。
本年もよろしくお願いします。

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