« 2012年8月 | トップページ | 2012年10月 »

2012年9月25日 (火)

TOKYO PHOTO 2012
色々な視点で写真を見比べてみよう!

今週末から開催される東京フォトにブリッツはJpadsの一員として参加する。Jpadsの活動や、今後の各種イベントの広報宣伝を行うのが主目的だ。(ザ・エマージング・フォトグラフィー・アーティスト2013、クリスマス・フォトフェアなど)
作品展示はフォトクラシックと共同でセカンダリー市場で取り扱われる作品を中心に展示する。
セカンダリーという言葉は専門用語でややわかり難いかもしれない。ここでその意味を簡単に説明しておこう。
アート市場は作家を目指す膨大な数の若手新人がベースに存在する。現代アートではロンドンとニューヨークに作家志望者が約4万人ずつ、合計8万人いると言われている。写真分野は敷居がより低いので作家志望者の更にその下に多くのアマチュア写真家がいると思われる。それら予備軍の中から作品が認められた人が商業ギャラリーで取り扱われるようになる。このギャラリー店頭市場のことをプライマリー・マーケットという。
そこでは作家間の熾烈な生存競争が行われる。1~2回の個展開催を経験して多くは活動を止めてしまう。しかしそこで実績を上げた人は作家としてのブランド価値が次第に上昇していく。最終的にごく一部の勝ち残った人の作品がササビーズ、クリスティーズなどのオークションに出品され、落札されるようになる。
だいたいが、かなりのベテランか既に亡くなった作家が中心になる。かつて、店頭で取引された作品が再び取引されるという意味で(プライマリー・マーケットに対して)セカンダリー・マーケットと呼ばれるわけだ。ここで取引されるのは資産価値を持つアート作品と理解してよいだろう。

ギャラリー店頭での販売は必ずしも作品の客観的評価ではない。気に入った作品を一般の人が購入するのはよくあることだ。しかし、ある程度の数のコレクター、業者が中超期的に価値を認めないとオークションでは取り扱われない。全てのアーティスト志望者にとって自作がオークションで取引されることが目標の一つなのだ。またコレクターは、将来オークションで取引される可能性が高いと見込まれるプライマリー作家を常に物色している。

写真といっても本当に多種多様。フォトフェアは、プライマリー、セカンダリーの様々な分野(ファインアート写真系、現代アート系)、種類(銀塩、デジタルなど)の写真作品が同時に展示販売される。近年の現代アートの高騰で、大きなサイズの写真作品はプライマリー作家でもかなり高額になっている。その結果ここ数年、アート写真オークションで取引される有名写真家の作品よりも、無名の日本人写真家のただ大きな作品の方が高価という奇妙な現象が散見された。しかし現代アート市場の低価格帯分野はリーマンショック以降に急激に規模が縮小している。今年はたぶん上記のような奇妙な現象は起きないだろう。
市場における作家のポジションと相場を意識するとアート写真の価値基準がわかってくる。興味がより増してくると思う。

さて私どもは専門のファッション分野から、アーヴィング・ペン、ヘルムート・ニュートン、スティーブン・マイゼル、ノーマン・パーキンソン、ホルスト、ジャンルー・シーフ、ブルース・ウェーバー、ピーター・リンドバーク、マイケル・デウイックなどを出品する。
ファッション写真の歴史を簡単に網羅したセレクションになっている。有名作品も含まれているので、この分野に興味ある人はぜひ見ていただきたい。
なお期間中は広尾のインスタイル・フォトグラフィー・センター(IPC)のレンタル受付、説明も行う予定。(興味のある人は事前に info@instylephotocenter.com までお問合せください。)私はだいたい会場にいるので気軽に声をかけてください!

東京フォトは9月28日(金)~10月1日(月)まで東京ミッドタウンホールで開催。
開催時間11時~19時、入場券は当日1500円。
http://www.tokyophoto.org/2012/ja/

| | トラックバック (0)

2012年9月18日 (火)

メイキング・アート写真ギャラリー
ミュゼオ御殿場・フォトギャラリー

以前から紹介しているが御殿場に新しい写真ギャラリーが10月18日にオープンする。
先週末に第1段の展示準備のために現地に行ってきた。
車だと東名高速の御殿場インター第1ゲートを通り箱根方面に向かう。目の前にそびえる深緑の山の中腹に人目を引く白い建物が見える。それが平和公園の仏舎利塔でミュゼオ御殿場はその向かい側にある。目黒のブリッツからちょうど1時間30分くらいだ。
東京はまだ残暑が厳しいが、富士山の麓で標高450mmくらいあるので気温は20度前後で非常に過ごしやすい。10月の平均気温が11~20度ということなので、オープンの時はやや肌寒いかもしれない。

Blog_4

ギャラリーとして使用されるのはもともと撮影スタジオがあった場所。壁面は白くペイントされていて天井は非常に高い。入り口の壁面は可動式になっていてスリット状の窓からはから自然光が入る。天気が良ければ解放してオープンギャラリーにするのも良いだろう。

Blog_1

アメリカ西海岸の倉庫を改造した現代アートギャラリーの雰囲気だ。
展示スペースは約10メートル四方という感じで3つの壁面を利用することになる。天井が高いのでスポットライトの光線がやや弱い感じもするが、これは個人の好みだろう。ギャラリースペースを出ると、すぐ左側に晴れていれば富士山の絶景を拝むことが出来る。

Blog_2
今回、仮に展示したのは、高橋和海の「ムーンスケープ」3点と丸山晋一の「空書」7点。奥に展示した高橋作品はグロッシー系のタイプCプリントの上、アクリルがある。夜空の月を撮影した作品などはまわりの写り込みがやや気になるかもしれない。

Blog_3
左側に展示した丸山晋一作品は"マル"を表現した「空所#1」だけが銀塩写真。残りはデジタル・ピグメント・プリントだ。
ギャラリーの右側には蓮井幹生のパノラマ写真の「ピースランド」を展示する予定。

ミュゼオ御殿場・フォトギャラリーのグランドオープン展、「Imperfect Moment-侘び・ポジティブな瞬間-」(蓮井幹生、丸山晋一、高橋和海)は10月18日から12月25日まで開催。開館時間11時から18時。水曜休館(*ご注意!11月12日~21日は休館)、入場無料。

周辺地域には有名な御殿場プレミアムアウトレットや日帰り温泉もある。アート写真を見て、買い物して、ひと風呂浴びて帰るのがおすすめのプラン。ただし週末は高速道路も各種施設もかなり混むので、できれば平日の来館がおすすめだ。
また、施設の性格上、イベントの開催が急遽行われ休館になることもあるという。行かれる時はかならずミュゼオ御殿場ウェブサイトでギャラリーがオープンしていることを確認してください!

| | トラックバック (0)

2012年9月11日 (火)

写真コレクションを始めたい人へ
アート写真コレクション指南書ガイド

写真を売買する仕事柄、写真コレクションの解説書を見つけたら絶対に買うことにしている。残念ながら、いまのところ系統だって書かれたものは全て洋書。どうしてもある程度の英語読解力が必要となる。私はこれが日本で写真コレクションが低調は理由の一つではないだろうかと考えている。日本語のコレクション・ガイドはいつかぜひ作ってみたいと個人的に考えている。
さてこの種類の本は、写真分野のコレクションを始めたい人に対し基本的な情報提供を目的に編集されている。どの本にも定番になっているのは、写真史の解説、専門用語の意味説明、写真技法や種類の紹介、市場で取引されている作家のリストや相場、写真の展示・保存方法、購入可能なギャラリーのリストなどだ。近年に刊行された本には専門家へのインタビューなども収録されている。
アート写真を勉強する時、写真史から入るとつまらないので長続きしない。これは私の経験だが、市場との関わりとともに歴史が書かれ、写真家が紹介されていると興味が長続きする。
ただし、これら指南書の情報や意見を妄信してはいけない。アート写真市場の評価基準、トレンド、価格は流動的だ。特に最近は、現代アート市場とのかかわりが強くなったことで動きは複雑で早くなっている。また写真分野のカテゴリは非常に幅広い。著者はあくまでも得意分野の専門家であり、全ての動向を把握しているわけではない。また国によっても市場特性が違う。著者の出身国や仕事をしている国によっても見方がかなり違うのだ。
思い込みが危険なのは何でも同じ。本だけでなく、専門家たちの意見を聴くなど、できるだけ広い情報収集を心がけて欲しい。

以下に簡単なアート写真コレクション指南書ガイドのリストを掲載している。
記載されている情報は新しい方が良い。コレクションに興味ある人はまず21世紀に書かれた本を買うのがよいだろう。ただし、情報は非常に古いが1979年刊の"The Photograph Collector's Guide"は基礎的情報が最も充実している。著者のLee D.Witkinは1969年に写真専門ギャラリーをニューヨークに開いた業界の伝説的人物。彼は作品購入時に、"自分の心が動かされるかどうか、プリント自体が高いクオリティーを持つか"の二つを心がけており、決して作家のブランド買わなかったという。これらの彼のアドバイスは多くの人に影響を与えている。また本書の特徴は写真家のサインの写しが多数掲載されていること。資料的価値も高いのだ。改定版が再版されるとの情報がずっと流れているがまだ現物はみていない。編集作業が続いているのだろうか?

1."Photographs: A Collector's Guide"
   By Richard Blodgett (April 1979, Ballantine Books)
1
2."The Photograph Collector's Guide"
   By Lee D.Witkin & Barbara London(1979, NYGS)
2
3."How To Buy Photographs"
   By Stuart Bennett(1987, Phaidon/Christie's)
3
4."Collecting photography"
   By Gerry Badger (2003,Mitchell Beazley)
4
5."The Art of Collecting Photography"
   By Laura Noble (2006, An AVA Books)
5
6."The Collector's Guide To Emerging Art Photography"
   By Alana Celii, Jon Feinstein and Grant Willing (2008, humble arts foundation)
6

これらの本の特徴は既に市場で資産価値が認められている写真家を中心に取り扱っている点だ。15~20年くらい前までには作品価格は非常に安かったので、実際に解説書に紹介されているような作家の作品をギャラリーやオークションで入手できた。1985年当時の写真作品の中間価格帯は200ドル~1500ドルだった。ロバート・メープルソープのエディション3のプラチナ・プリントが5000ドルという、 当時としては高価で販売されたことが"How To Buy Photographs"には紹介されている。

まだ写真史で評価軸が明確でない分野を見つけ出して、ひと足早くコレクションを始めることもできた。この20年間で市場価値が大きく上昇したファッションやドキュメント系だ。ちなみに70年代後半のロバート・フランクの"The Americans"からの作品価格は、500ドル~1200ドル、アーヴィング・ペンも700ドル~2500ドルだった!
1979年時点では、ダイアン・アーバスのサイン入りプリントは500ドル~2500ドルだった。現在アーバスの価値は10万~35万ドルと100倍以上だ。
上記のメープルソープのプラチナ・プリントの相場は3万~5万ドルと約25年で6倍以上。ロバート・フランクの"The Americans"の相場は1万ドル~、表紙イメージ"Trolley, New Orleans, 1956"は10万~15万ドルだ。ペンの相場は1万ドル~になっている。
アーバス、フランクは極端な例だが、過去に起きたことは未来にもかならず起きる。10年~20年後のスーパースターは現在、市場のどこかに必ず存在しているはずだ。これから写真コレクションを始める人は、既に有名になった人よりも未来のスーパースターに注目して欲しい。

将来性の高い作家を集めたのが、"The Collector's Guide To Emerging Art Photography"(2008年刊)だ。これはhumble arts foundationというニューヨークのアート写真の普及を目指す団体が出版したもの。世界中から163名の写真家がセレクションされている。同団体からは、私はまだ購入していないが続編の"The Collector’s Guide to New Art Photography Vol. 2" (2010年刊)もでている。
しかし、上記の本には多くの写真家の写真が1枚掲載されているだけ。彼らが何を意図して作品を提示しているかは不明だ。連絡先、メールアドレス、ウェブサイトが掲載されているので、興味のある作家は読者自ら調べて欲しいという意図だろう。現地では写真展やイベントなども本と連動させて開催されているようだ。その場では写真家の作品解説も生できけるのだろう。
海外作家の場合、本からだけだとはなかなか詳しい写真家のメッセージや情報は入手し難いと感じている。日本から海外の将来性のある作家を見つけ出す場合は、ギャラリーのプライマリー市場で活躍している人に注目するのが賢明だろう。彼らは数多いる写真家の中からギャラリーが有力と考えている注目株だ。そのなかでも有力作家は写真集が連動して発売される場合が多い。気になる人の本は要チェックだろう。

実は日本において将来性のある写真家たちをコレクターに紹介するこころみはJPADSが行っている。今年開催した"ザ・エマージング・フォトグラフィー・アーティスト2012"はまさに新人発掘を意図している。実際に行うことで数々の反省点が明確になってきた。まだまだ小さな活動だが、来年はより充実したイベントにレベルアップさせるつもりだ。現在は、小冊子の制作にとどまっていいるが、将来的には写真集化を考えている。

今回、久しぶりに過去約30年に書かれたコレクションガイドを見返してみた。写真史が書き継がれるのと同様に、アート写真コレクションの探求も専門家やコレクターの間にずっと受け継がれ、歴史が積み重なっていることがよくわかる。 "The Photograph Collector's Guide"の著者Lee D.Witkinは1984年に亡くなっているが、彼の精神は受け継がれているのだ。"The Art of Collecting Photography"の著者のLaura Nobleは1974年生まれのまだ30歳代。彼女は過去の先人に実績を踏襲して新たな視点で書いている。
読む側がその流れをフォローしていることが前提に書かれている部分もある。コレクター予備軍の人のなかにはコレクションガイドの内容がわかり難いと指摘する人がいる。その原因は、前提となっている知識をまだ十分に獲得していない場合が多いのだ。

さて日本ではコレクターが育たないという嘆きはよく聞く。コレクションを行う基本となる、考え方、方法論などの探求と、その積み重ねがほとんどないのだから当たり前かもしれない。しかし、アートとして写真を認識するコレクター予備軍は確実に増えている。優れたコンテンツが増えれば市場は拡大するのではないか。いま優れた作品を市場に送りだす継続的な努力が関係者に求められているのだと思う。

| | トラックバック (0)

2012年9月 4日 (火)

今秋の活動予定(2)
ミュゼオ御殿場・フォトギャラリー、東京フォトなど

Blog
(C)Mikio Hasui

前回にふれた御殿場の新しいフォトギャラリーの詳細が決まったので紹介したい。
ギャラリーはミュゼオ御殿場という複合施設の中に新設される。名称はシンプルにミュゼオ御殿場・フォトギャラリーになった。場所は東名高速道路御殿場IC第一出入口を出て箱根・小田原方面へ3分くらい直進した坂の途中。平和公園の左側にある。御殿場プレミアムアウトレットからも約5分だ。

以下が「ミュゼオ御殿場」の概要。
「総面積4000坪。御殿場秩父宮御用邸跡地に隣接した四季折々に違う表情を見せる3000坪のグラスガーデン。そこには富士山を間近に臨む広大なランドスケープ 「ミュゼオ御殿場」があります。 ミュゼオ御殿場は「車の聖地」に誕生した様々なレンタルスペースを所有する複合施設。 本場イタリアで修行を積んだスタッフの集まるイタリア料理レストラン「タンタローバ デル ミュゼオ御殿場」を始め、レセプションスペース・展示スペース・撮影用スタジオ(ドーム型スタジオ)・セミナールーム・コンサートエリアなど、大規模なイベントから家族の想い出づくりまでが実現できる複合的なスペースです。」http://museogotemba.com/index.html

ここははかつては秩父宮家の御殿場御別邸だった秩父宮記念公園に隣接している。また道を挟んでは平和公園がある。そこにある仏舎利塔には、インドのネルー首相から贈られた仏舎利(釈迦の遺骨・灰塵)が納められている。中国人団体客が箱根観光のついでに立ち寄る場所なのだそうだ。つまりこの地は御殿場あたりで富士山が最も美しく見える場所なのだ。
「車の聖地」といわれるのは、かつてここにはフェラーリ美術館があったから。高速と山道が近くにあるので新車のプレス向け試乗会もよく開催されるという。

グランドオープン展は10月18日から蓮井幹生、丸山晋一、高橋和海「Imperfect Moment-侘び・ポジティブな瞬間-」を開催。開館時間11時から18時。水曜休館、入場無料。ただし、施設の性格上、イベントの開催が急遽行われることがあるという。行かれる時は絶対にウェブサイトでオープンしていることを確認してください!写真展開催準備は9月中旬くらいから開始する予定。富士山の絶景とアート写真が楽しめる素敵な空間になって欲しい願っている。

9月28日から10月1日まで六本木の東京ミッドタウンで「東京フォト」が開催される。
今回、私どもはJPADSとしてフォトクラシックとともに参加する。JPADSの活動を広くアピールすることが主目的となる。日本をはじめアジアのアートフェアの特徴は、様々な価値観の写真が一堂に展示されること。値段も任意に付けられている。一方で、欧米市場には作家のキャリアと市場性により明確な価値基準がある。値段もそれが反映されて決まってくる。それは、市場が作品の資産価値を保証する意味合いがある。このような環境で、はじめて顧客は安心して写真のコレクションが行われるのだ。日本で写真が売れない理由の一つは、資産価値のあるアートとしてではなく、一般商品として取り扱われているからなのだ。JPADSの役割はコレクターが安心して写真が買えるように日本でも客観的な価値基準を明確化していくことだと考えている。従って今回の展示はセカンダリー市場で売買されている作品が中心になる予定。私どもは専門のファッション系をセレクトするつもりだ。
JPADSでは今年の12月にクリスマス・フォトフェアを広尾のIPCで開催する。ここではプライマリー市場、つまりギャラリー店頭市場で活躍する作家を展示する予定だ。
来年2月にはザ・エマージング・フォトグラフィー・アーティスト2013を開催するが、こちらはアート写真市場を目指す若手、中堅の展示になる予定だ。なお、同展では3名程度の公募を行う予定だ。詳細は「東京フォト」の会場内で発表します。

| | トラックバック (0)

« 2012年8月 | トップページ | 2012年10月 »