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2012年11月27日 (火)

2012年秋NYアート写真オークション結果
平均的売上げだが高額セクターの相場調整の気配

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クリスティーズカタログ

最近のアート市場では一点もの価値がより高まっている。写真を含む複数枚制作されるアート作品市場が横ばいの一方で歴史に残る美術館収蔵クラスの有名作家による絵画や彫刻は記録的な値段で落札されている。
11月ニューヨークで開催された戦後コンテンポラリー作品のオークションは記録的な売上高だった。目玉作品が出品されるイーブニングセールでは、クリスティーズで412,253,100ドル(約329億円)、ササビーズでは375,205,000ドル(約300億円)もの総売上を達成している。
高額落札も続出。ササビーズではマーク・ロスコの“No.1 (Royal Red and Blue),1954”が$75,122,500(約60億円) 。クリスティーズではアンディー・ウォーホールの“Statue of Liberty,1962”が$43,762,500(約35億円) で落札されている。

マーク・ロスコ、ジャクソン・ポロック・ウィレム・デ・クーニング、アンディー・ウォーホール、ゲハルト・リヒター、フランシス・ベーコンなど、高いクオリティーで市場に新鮮な作品が高額落札の上位を独占している。
この分野のデイ・セールにも写真作品が出品されているが、アーティストが写真で表現していると考えられておりエディション数も少なく他のアート作品と同列に取り扱われている。杉本博司などは順調に落札されている。
ただ一つ気になったのが、15万ドルを超える高額落札予想価格がついたシンディー・シャーマンの不落札が散見されたこと。いままでにやや相場が上がり過ぎた感じがする。アンドレアス・グルスキーの相場も同様な調整の気配を感じた。

さて、2012年秋のニューヨーク・アート写真オークション。以前、11月6日のブログでは趣向を変えて高額落札予想で不落札作品を紹介して市場動向を分析してみた。(前回の解説はこちらをどうぞ)今回はいつものように高額落札作品を紹介しておこう。

主要ハウスの売り上げは、ササビーズ約448万ドル(約3.59億円)落札率約65%、クリスティーズ約779万ドル(約6.23億円)落札率約63%、フィリップス(Phillips de Pury & Company)約470万ドル(約3.76億円)落札率約76%、 だった。ちなみに写真とレアブックを取り扱うスワンは、エドワード・カーティス"The North American Indian"のコンプリート・セットが144万ドルの高額で落札されたことから、総売り上げ約271万ドル(約2.16億円)と最高売上記録を達成、落札率は約63%だった。
売り上げはササビーズ、クリスティーズが微増、フィリップスが20%強の減少、スワンは約倍増。トータルではスワンが貢献したことで200万ドル弱の上昇だった。しかし、落札率は各社とも春より減少している。

シーズンは10月2日のフィリップス(Phillips de Pury & Company)からスタートした。 ここが得意の現代アート系が好調。最高額の落札はトーマス・デマンドの"Wand/ Mural,1999"で、約24万ドル(約1940万円)だった。ピーター・ベアードの、"Happy Easter/ Alia Bay Croc Hatchery, Lake Rudolf for Eyelids of Morning,1965"は落札予想価格は12万~18万ドル(約960万~1440万円)のところ19.55万ドル(約1564万円)で第2位。同じくベアードの2枚組作品、"Cheetah cubs orphaned at Meiga nr.Nyeri for The End of the Game, 1968 and Hunting Cheetah on the Taru Desert, Kenya, June, 1960"も約11万ドル(約884万円)で第5位だった。
カタログ表紙のスティーブン・マイゼルによる187 x 147.5 cmの超巨大の1点もの作品、"Walking in Paris, Linda Evangelista & Kristen McMenamy, Vogue, October, 1992"は、8.65万ドル(約692万円)だった。
写真雑誌カメラワークの完全セットは約12万ドル(約980万円)と予想の下限だったが第3位となった。

ササビーズは10月3日に開催。
第1位はカタログ表紙作品のハンス・ベルメール"Self Portrait with die Puppe,1934"。これは作家本人が写ったドール・シリーズの1枚。美術館での展示など輝かしい来歴を持つ1枚。
落札予想価格は10万~15万ドル(約800万~1200万円)をはるかに超えて、約37.4万ドル(約2996万円)で落札。同じく、チャールス・レンダー・ウィード(Charles leander Weed)の19世紀制作の30点セット"Yosemite Valley and Big Tree Views, 1864"も同額で落札されている。
3位はシンディー・シャーマンの2作品。"Untitled Film Still #83, 1980"と、"Untitled #19, 1978"がともに約18.2万ドル(約1460万円)で落札されている。ピーター・ベアードの1点もの作品"Rothchild's Giraffes from The Uganda Line"も同額だった。
6位には、イモージン・カニンガムのクラシックなヌード作品"Nudes (Two Sisters),1928"が約11万ドル(約884万円)がはいった。

クリスティーズは10月4日から5日にかけて、プライベート・コレクター所有のリチャード・アヴェドン作品28点の単独セールと、複数委託者の約347点のオークションを開催。今春の売上トップだったクリスティーズは出品数で今秋も他社をリードしている。
断トツの1位はカタログ表紙のピーター・ベアード作品"Orphan Cheetah Triptych, 1968"。127 X 248.9cmサイズの中に3枚のチータの写真が貼られ、ヘビの皮などで様々なコラージュがなされている。激しい競り合いの末、落札予想価格15万ドルを遥かに超える66.2万ドル(約5300万円)で落札された。これは、もちろんベアードのオークション新記録、今シーズンの最高額でもあった。
リチャード・アヴェドン・セールの2点が同額で第2位。彼の代表作"Evening dress by Dior, Cirque d’Hiver, Paris, August 1955"。今秋出品されたのは記録上最も初期にプリントされた極めて貴重な作品。20X24"の大判サイズの"Brigitte Bardot, 1959"とともに、26.6万ドル(約2132万円)で落札。
第4位はヘルムート・ニュートンのパノラマ作品、"Panoramic Nude with Revolver,Como, Italy,1989"。24.2万ドル(約1940万円)だった。
5位と6位はこれもともにアヴェドン・セールから。"Stephanie Seymour, model,New York City, May 9, 1992"が、23万ドル(約1844万円)。69点のポートフォリオ"The Family,1976"
が、20.6万ドル(約1652万ドル)だった。
7位はアーヴィング・ペンの"Black and White Vogue Cover, 1950"。これは1976年にプリントされた貴重なプラチナ・プリント。予想落札価格以下だったが、19.4万ドル(約1556万円)で落札された。

2010年春以降は主要3社の総売り上げは1600万ドルから1900万ドル台の範囲内に落ち着いている。今回のオークションもそのレンジ内に収まる結果だった。しかし、以前指摘したように高額落札が見込まれていた多くの作品が売れなかった。いままでは、好調なトップエンドのアート作品の高額落札に引きずられ、写真分野でも貴重作品に対するオークションハウスの落札予想価格設定は強気だった。 今秋の傾向は絵画などの本当に貴重作品が並ぶ超トップエンドの相場は金余りの影響で強いものの、それ以下については相場の調整が始まってきた気配を感じた。希少性が劣る写真作品はその影響を受けている印象だ。今後は、超トップエンドの活況がいつまで続くかが注目だろう。バブルでないことを祈るばかりだ。

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2012年11月20日 (火)

アーティストを目指す人の登竜門 になるか?
"The Emerging Photography Artist 2013"
来年も開催!公募も実施します!

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来年も、アーティストを目指す若手、新人写真家をアート写真市場に紹介するためのグループ展、"エマージング・フォトグラフィー・アーティスト 2013"-新進気鋭のアート写真家展-、を私どもも参加しているJPADS主催によりインスタイル・フォトグラフィー・センターで開催する。
企画の意図は以下の通り。(プレス用資料から抜粋)
「現在、アマチュアやプロの写真家の中には多くのアーティスト志望者がいます。新人がデビューするにはまず商業ギャラリー・ディーラーに認められることが必要です。しかし欧米と比べて、日本にはアート写真専門業者が少なく、また市場規模が小さいのが実情。どの専門業者も知名度の低い写真家の個展開催には消極的です。本グループ展は、そのような状況の中で創作活動を続けている若手、新人をアート写真市場に紹介するために企画されました。」

要は写真でのアーティスト活動を行っている若手、新人の登竜門的な位置づけを目指しているイベントなのだ。
いまの日本では似たようなイベントや活動は数多ある。しかし、それらの多くは特定の団体や写真家が中心の閉じた活動だ。一度グループに入るとどうしても色がついてしまう。また仲間以外に対しては排他的になりがちなので注意が必要だ。本来作家活動は孤独な作業で、仲間だけでなく幅広いオーディエンスにメッセージを投げかけるものだ。
私どもが考えるのは一人で頑張っている個人を支える自由でニュートラルで、オープンなイベントだ。これがきっかけで、新たなギャラリーやコレクターとの出会いがあればよいと考えている。
参加者に一部経費負担をお願いすることに批判的な人もいる。しかし、自らのブランド構築のために自分自身に投資するのは意味がある行為だと思う。実は一番経費のかかるのは人件費。運営はすべてボランティアなのだ。本音を言うと、多くの人が関わるイベントなので仕事量が多く大変なのだ。しかし、ギャラリー、ディーラーがお金にならないことを行わなかった結果が、目立った新人作家がいない低迷したいまの日本のアート写真界だ。これでは日本の写真はアマチュアの趣味の世界だけになってしまう。また本業を別に持たない商業ギャラリーは消えてしまうかもしれない。そんな切実な危機感から私どもは本イベントに取り組んでいるのだ。

今年の2月の第1回展では特に学校関係者からの評判が予想以上に良かった。写真を学ぶ学生にとって、アート業界も進路の可能性のひとつだろう。しかし、いままではアート分野を目指す人へ具体的な方向性を示すものが日本には存在しなかったのだ。
開催することが重要と考えていたので、あまり具体的な成果は期待していなかった。しかし、来場者は約900名もあり、将来性のある新人に興味を持つコレクターや新たな才能を探すギャラリーからかなりの反応があった。また、作品が予想外に売れたのは嬉しい誤算だった。こだわって制作した展覧会カタログはほぼ完売。会期終了後も写真関係者から多数の問い合わせをもらった。

反省も数多くある。前回は一人の専門家による複数人の推薦となったのだが、写真家のレベルにかなりばらつきが出てしまった。次回は推薦者を増やして各専門家の推薦を1名にする予定だ。また周りに推薦者がいないアート志向の人も当然いると思うので、公募も実施することにした。2~4名位を選べらればよいと考えている。
またグランプリと準グランプリも授与することにした。特典として、賞品の授与や、個展、グループ展開催の権利などの提供を検討している。しかし特に大きなイベントにする気はない。様々な写真の価値観の中のごく一部として、アートとしての写真の存在をアピールしていきたい。目標は継続すること。

来年2月の開催に先立ち、公募参加希望者の面接を12月2日(日)に予定している。
写真でのアーティスト活動を志していて、既に作品ポートフォリオが完成している人はぜひチャレンジして欲しい。興味ある人は以下を参考にしてください。

http://www.artphoto-site.com/jpads_pr_006.pdf

http://www.instylephotocenter.com/jpads_emerging2013.html

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2012年11月13日 (火)

アート写真を公開ライブオークションで買う
ディーラー価格で本物が購入できるチャンス

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私は今までの人生で2回ほど心臓が飛び出るほど緊張した機会がある。
まずはゴルフのティーグランドでの経験。無謀にもコースデビューがいきなりコンペだったのだ。そしてニューヨークのアート写真オークションで初めて作品を落札した時だ。当然、現地のオークションは全て英語で進行する。自分が正しい値段でビットしているか非常に不安だったことを覚えている。しかし、多くの人の前で欲しい作品を自らの予想価格で落札できたときは今までに経験がない爽快感を味わった。
欧米のオークションは社交の場でもある。アート以外にも、ワイン、家具、デザインなど様々なカテゴリーもある。ほとんどが入場制限はなく誰でも参加できる。デートでオークション会場を訪れ、彼女の前でアート作品を落札して自分の魅力をアピールする男性もいるという話だ。確かに大勢の中での競り合いは非常に注目される。競り勝った落札者はとてもカッコよく見える。

日本でもインターネットが普及したことでオークションが私たちに身近な存在になってきた。欲しい商品を見つけて他の人と終了間際まで競り合った経験を持つ人も多いと思う。競り合いの緊張感は日常生活ではなかなか味わえない経験。最後に落札できたときの喜びと解放感はオークションの大きな魅力だろう。
ネットオークションにも美術品のカテゴリーがある。しかし、個人出品の現物が見られない入札には、作品の真贋、状態などの問題点がつきまとう。出品作が盗難品の可能性もあるだろう。安い作品ならダメもとでの落札も運だめしでよいだろう。しかし開始価格が高額な作品だとの積極的な入札には勇気がいると思う。落札した現物が想像していたよりも状態が悪いケースはネットオークションでは数多ある。
実は昔、イーベイとササビースがアート作品のオンライン・ギャラリーを運営していたことがある。しかし結局長続きしなかった。理由は安い作品はともかく、高い作品への入札は非常に少なくビジネスとして成立しなかったからと聞いている。今では、ネットオークションは実際のオークションを補完するものとして使われている。

美術品オークションの場合、やはりライブで行われる公開入札方式(オープン・ビット・オークション)が一般的だろう。しかしアート写真の場合、老舗の美術作品競売専門業者であるササビーズ、クリスティーズ、フィリップスはニューヨーク、ロンドン、パリでしかオークションを開催していない。もちろん日本からの参加は可能だが、現物が見られない上、落札しても現地からの高額な輸送費がかかる。専門業者以外はかなり敷居が高い存在だった。
しかし、ついに日本でもアート写真が公開オークションで買えるようになった。実は、昨年からSBIアートオークションという会社が設立され、彼らの行う「モダン&コンテポラリー・アート」のカテゴリーではアート写真が出品されるようになったのだ。ネットオークションの経験を持つ人ならあまり抵抗感なく参加できると思う。12月8日(土)に開催するオークションはアート写真が好きな人ならぜひ注目してもらいたい。森山大道、畠山直哉、横須賀功光、柴田敏雄、エドワード・ウェストン、リー・フリードランダー、ピーター・リンドバーク、ルイザ・ランブリ、ウォルフガング・ティルマンス、カンディダ・へファーなど写真作品は約29点が出品される予定とのこと。まだ欧米と比べると点数は非常に少ないが、今までは一般の人には縁遠かったこの公開のライブ・オークションが身近になることには意義があると思う。

公開入札方式のライブ・オークション参加には事前に知っておいた方が良い知識がある。ここで初心者向けに簡単に紹介しておこう。

・出品作品
公開オークションでは、コレクターの売りたい作品が全て参加できるわけではない。ここが出品自由のネットオークションとの大きな違いだ。アート作品として市場価値があると認知されたものだけが出品可能なのだ。オークション会社は入札に先立って出品作品の選択とリストの編集作業を行う。出品されるのは元々ギャラリーの店頭市場で売られていたもの。その後の生存競争を勝ち抜いてトラックレコードが明確になった作家のものだけなのだ。一流のアートオークションでは評価が定まっていない新人アーティストの作品が出品されることはない。個別の作品はどの業者から購入したが重要な記録となる。オークションでの落札は作品の出所"Provenance"として高い信用度がある。

・カタログ
全ての出品作品の個別情報はオークション・カタログに書かれている。写真作品の場合、イメージ(写真)、作家名、作品タイトル、サインの有無、制作技法、サイズ、来歴、落札予想価格の上限と下限、などが記載されている。最近は、ネット上のオンライン・カタログに同様の情報が掲載されている。ただし注意が必要なのは作品の状態の記載がないこと。コレクターはこれらの情報を目安に欲しい作品を物色することになる。
カタログはオークション会社で入手可能。郵送も対応してくれる。

・プレヴュー(下見会)
オークションの基本は現在の状態での販売。落札後はノー・クレーム・ノーリターンだ。入札者は事前に作品状態を確認して納得した上で入札に参加するのが前提なのだ。だいたいオークション開催日前の数日間にわたり出品全作品が展示されるプレビューが開催される。もし目当ての作品がカタログにあれば現物をチェックできる。額装された作品は額から外して見せてもらうことが可能。しかし、あまり大きな心配は不要だ。ほとんどのオークション会社は、信用にかかわるので状態が悪い作品は出品を断るのが一般的なのだ。その点では現物が見れない上に、信用度が不明な個人出品のネット・オークションよりもはるかに安心なのだ。

・落札予想価格
ネットの場合、参加者自身がもつ商品の相場感で入札価格の上限を決めることになるだろう。しかし、よほどその分野に詳しくないと自分の入札価格が適正か不安になる場合が多いと思う。公開オークションの場合は予め専門家が設定した落札予想価格が表示されている。それがその時点の作品相場ということ。通常、金額には下限と上限が記されている。自分がどれだけ欲しいかによって入札金額を決めればよいの。だから間違えて相場とかけ離れた金額で落札することはない。

・最低落札価格
ネットオークションでは思わぬ掘り出し物に出合うことがある。出品者が商品の相場情報を持たないで開始価格を安く設定する時に発生する。しかし、本当に割安だったどうかは、現物が送られてくるまでわからない。掘り出し物とも思って安く落札したが状態が悪かったというケースもあるのだ。
専門業者主催の公開オークションでは掘り出し物はまずないと考えた方がよいだろう。例えば落札予想価格が50万~60万円だとする。しかし、入札者が一人しかいなくても10万円でその作品が買えることはない。通常、個別作品には最低落札価格があり、それ以下では売買が成立しないのだ。最低落札価格は通常非公開。ロットによって違うがだいたい落札予想価格の下限か、10%程度低いレベルに設定されている。出品者が高く売りたい場合は高めに、安くても売りたい場合は低めになる。

・入札の実際
まず会場の受付で住所氏名などを書類に記載して参加登録を行う。その時には本人確認が必要なので運転免許証、健康保険証、クレジットカードなどの持参が必要だ。手続きが終わると番号が記載されたパドルが渡される。
会場では自分の欲しい作品の順番が来たら、場を仕切るオークショナーがいくらから入札を開始するかに集中する。だいたい最低落札価格の半分くらいから始まる。自分が予め決めた予算内ならパドルを周りから見えるように高く上げれば入札参加となる。ここで注意が必要なのは入札額とは別に手数料が別途かかること。(下の項目で説明)私は実際の金額ではなく常に合計金額を意識して入札するように心がけている。さて後は、同じものが欲しい人の間での競争。ライバルは、会場の中だけではない。事前に最高入札額を書類で提示する不在者入札もある。また、電話で入札する得意客もいる。自分が支払っても良いレベルまで、パドルを上げ続けることになる。ビットが承認されるとオークショナーがこちらを指さしたり、アイコンタクトをとったりする。予算以上に競り上がった場合は、熱くなることなく潔くパドルを下げてその後の結果を見守るのがよいだろう。最終的にその他に入札者がいなくなればけ晴れて落札。オークショナーがこちらのパドルの番号を読み上げてくれる。

・決済
自分の興味ある作品のオークションが終わったら、途中で会場を出ても問題ない。慣れた人は自分の興味のあるロットが終わるとすぐに帰ってしまう。出口でパドルを返却して代金支払方法を確認する。最近は、銀行振り込み以外にも、クレジットカードを受け付けるところもある。ちなみにSBIアートオークションは振り込みだけとなる。決済後に、作品はオークションハウスの倉庫で受け取るか、宅配便を依頼すればよいだろう。落札から後の流れはアートフェアでの作品購入とほぼ同じだ。

・手数料
オークションで落札できた場合は、その金額で作品が入手できるわけではない。落札価格に決められた料率で計算された手数料がかかる。海外ではバイヤーズ・プレミアムと呼ばれ、大手業者の場合25%にもなる。(SBIアートオークションは税込みで15.75%)落札価格と税込み手数料の合計を購入代金という。この手数料はギャラリーで買った時の業者の利益部分に当たる。オークションでの購入では仕入れ価格と業者手数料が明快になっているのだ。

以上のように、公開のライブ・オークションでは一定の要件を満たした本物が、現在の相場で購入できるメリットがある、コレクション初心者でも安心して参加できる場なのだ。
それではオークションでの落札はギャラリーでの購入と比べて得なのだろうか。これは顧客から良く受ける素朴な質問だ。まず知っておいて欲しいのは、オークションに出品される作品は今ではギャラリーの店頭で売っていない貴重な作品が多いという事実。エディションという限定枚数のことは聞いたことがあると思うが、すでに売り切れたエディションの作品もしくは、売り切れが近く販売価格が非常に高価になっている作品なのだ。すでに作家がなくなっている作品もある。
このような貴重な作品を取り扱うギャラリーやディーラーもいる。実は彼らにとってオークションは作品仕入れの機会なのだ。落札後には、作品をしばらく在庫として抱え、その後に相場動向を見て手数料を載せた上でギャラリー店頭やアートフェアで販売する。その意味では一般の人にとって業者の仕入れ価格で作品が買えるチャンスともいえるだろう。

今回、SBIアートオークションを取り上げて紹介したのは、せっかく始めた写真の取り扱いを継続してもらいたいという応援の気持ちからだ。実はリーマン・ショックの前には日本の大手美術作品競売専門業者のシンワ・アートオークションが写真を取り扱っていた時期があった。またアール・ローカス・オークションという写真専門のオークション会社も日本橋で活動をしていた。いずれも作品が売れないことからいまでは写真取り扱いを中止してしまった。アート写真市場が機能するためには転売目的であるセカンダリー市場のオークション、アートフェアの存在が不可欠だ。アートフェアは東京フォトが継続して開催している。売上高は、欧米と比べると遥かに少ないものの開催を重ねるごとに上がっていると聞いている。オークションも中長期的にはビジネスとして決して可能性がないわけではないと思う。しかし、日本ではまだ新しい分野なのでコレクターやその予備軍にシステムが浸透するには時間がかかる。短期的な結果に影響されることなく長い目で行って欲しいのだ。

SBIアートオークションで12月8日開催の「モダン&コンテポラリー・アート」のオンライン・カタログは以下で見られます。
今回はオークション参加に興味ある人にカタログを限定数だけ無料で送ってくれるとのこと。(事前の予告なしに無料送付を終了する場合もある。予めご了承ください。)

http://www.sbiartauction.co.jp/jp/catalogues_top.html

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2012年11月 6日 (火)

2012年秋のニューヨーク・アート写真オークション結果
気になる高額作品の不落札増加

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今秋のニューヨーク・アート写真オークションはほぼ春並みの売り上げ額だった。主要3社の売り上げ合計は、春の約1676万ドル(@80、約13.4憶円)に対して約1698万ドル(@80、約13.58憶円)だった。スワン・オークションを合計すると売り上げ額は上昇している。これは、エドワード・カーティスの"The North American Indian"のコンプリート・セットが144万ドルの高額で落札された影響による。総売り上げ、落札率などを総合的に評価すると、きわめてニュートラルな結果だったといえるだろう。しかし内容を精査すると、高額落札が見込まれていた多くの作品が売れていないのが気になる。いままでは特に希少作品は確実に落札されていただけに目立って感じた。

フィリップス(Phillips de Pury & Company)では、注目されていた、エドワード・ウェストンの代表作"Pepper No. 30"、落札予想価格20万~30万ドル(約1600万~2400万円)と、ポール・アウターブリッジの"Standing Nude with Chair"、落札予想価格15万~20万ドル(約1200万~1600万円)がともに売れなかった。

クリスティーズでは、エドワード・ウェストンのプラチナ・プリント"Piramide del Sol, Mexico, 1923"、落札予想価格は12万~18万ドル(約960万~1440万円)。ウィリアム・エグルストンの有名な写真集の表紙のダイトランスファー作品"Memphis (Tricycle), c. 1970"、
落札予想価格は25万~35万ドル(約2000万~2800万円)が不落札。
いままで人気のあったアーヴィング・ペンの"Picasso,Cannes,France, 1957"や"Two Liqueurs,NY,1951"も買い手がつかなかった。
リチャード・アヴェドン・コレクション28点の単独オークションでも、あの有名な、"Marilyn Monroe, actress, NY,1957"、落札予想価格15万~20万ドル(約1200万~1600万円)が不落札という結果だった。

ササビーズでは、以下の注目作品が不落札だった。
アルフレッド・スティーグリッツの季刊"Camera Work"の1903~1917年の完全セット、落札予想価格20万~30万ドル(約1600万~2400万円)。ポール・ストランドの"Lusetti Family, Luzzara, Italy,1957"、落札予想価格25万~35万ドル(約2000万~2800万円)、アーヴィング・ペンの"Girl Drinking, 1947"、落札予想価格8万~12万ドル(約640万~960万円)、ラウル・ユバックの"La Triomphe dela Sterilite ou Penthesilee, 1937"、落札予想価格15万~25万ドル(約1200万~2000万円)。
また今回注目されていた、日系アメリカ人イチロー・ミスミのエドワード・ウェストン作品コレクションのうち、"Nude on sand, Oceanno, 1936(Asleep)"落札予想価格10万~15万ドル(約800万~1200万円)、"Nude on sand, Oceanno(Face down), 1936"、落札予想価格15万~25万ドル(約1200万~2000万円)がともに売れていない。

冷静に考えると現在は世界的な景気後退期。米国では住宅セクターの最悪期は脱したものの雇用はまだ伸びていない。また欧州債務危機は長引きそうだし、中国の景気後退が取りざたされてきた。将来の見通しも決して明るくないだろう。しかし貴重作品の需要が今まで強かったことを反映して、特に高額セクターの落札予想価格だけは非常に強気だった。
過去の落札記録が残っている上記フィリップスでのポール・アウターブリッジ作品で分析してみよう。本作は1996年にわずか7,820ドルで落札された作品だ。その後2003年10月のクリスティーズでは、落札予想価格6万~8万ドルのところ、153,100ドルの高額で落札されている。2003年の秋は低金利から金余りにとなり住宅着工の増加を誘発して米国経済は大きく回復していた時期。それ以降住宅価格が急上昇してバブル化する。好調な市場センチメントと金余りが高額落札となったのだろう。リーマンショック、欧州債務危機後の現在とは景況感が違う。今回のオークションハウスの落札予想価格が高すぎたと思う。当時の落札予想価格6万~8万ドルあたりが最低落札価格ではないだろうか。

クリスティーズで不落札になったリチャード・アヴェドンの"Marilyn Monroe, actress, NY,1957"、落札予想価格15万~25万ドル、はどうだろうか。実は本作は2006年春にフィリップスで40,800ドルで落札された作品。2006年秋には同じエディション数の作品が72,000ドルで落札されている。その時の落札予想価格3万~5万ドルだった。2006年はリーマンショック前の市場のピークだった時期。景況感が今とは全く違う。また本作はエディションが50点もある作品だ。2006年秋と比べ3倍近い落札予想価格はこの時期にしては過大評価だったと思う。

今までは不況が続くものの、非常にレアな作品だけは市場の弱いトレンドとは逆の動きを見せていた。どうもその流れにも変化の兆しが出てきた感じだ。現在の市場取引総額は2004年~2005年のレベル。当時よりは株価は高いので、その時期の相場までは落ちないだろう。しかし、これから低価格帯から高価格帯まで全ての分野においてニュートラルな状況になるのではないか。来春のオークションでは特に高額商品の落札予想価格が見直されると思う。

秋のオークションの詳細は情報整理が済み次第、アート・フォト・サイトの海外オークション情報欄に掲載します。

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