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2012年11月13日 (火)

アート写真を公開ライブオークションで買う
ディーラー価格で本物が購入できるチャンス

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私は今までの人生で2回ほど心臓が飛び出るほど緊張した機会がある。
まずはゴルフのティーグランドでの経験。無謀にもコースデビューがいきなりコンペだったのだ。そしてニューヨークのアート写真オークションで初めて作品を落札した時だ。当然、現地のオークションは全て英語で進行する。自分が正しい値段でビットしているか非常に不安だったことを覚えている。しかし、多くの人の前で欲しい作品を自らの予想価格で落札できたときは今までに経験がない爽快感を味わった。
欧米のオークションは社交の場でもある。アート以外にも、ワイン、家具、デザインなど様々なカテゴリーもある。ほとんどが入場制限はなく誰でも参加できる。デートでオークション会場を訪れ、彼女の前でアート作品を落札して自分の魅力をアピールする男性もいるという話だ。確かに大勢の中での競り合いは非常に注目される。競り勝った落札者はとてもカッコよく見える。

日本でもインターネットが普及したことでオークションが私たちに身近な存在になってきた。欲しい商品を見つけて他の人と終了間際まで競り合った経験を持つ人も多いと思う。競り合いの緊張感は日常生活ではなかなか味わえない経験。最後に落札できたときの喜びと解放感はオークションの大きな魅力だろう。
ネットオークションにも美術品のカテゴリーがある。しかし、個人出品の現物が見られない入札には、作品の真贋、状態などの問題点がつきまとう。出品作が盗難品の可能性もあるだろう。安い作品ならダメもとでの落札も運だめしでよいだろう。しかし開始価格が高額な作品だとの積極的な入札には勇気がいると思う。落札した現物が想像していたよりも状態が悪いケースはネットオークションでは数多ある。
実は昔、イーベイとササビースがアート作品のオンライン・ギャラリーを運営していたことがある。しかし結局長続きしなかった。理由は安い作品はともかく、高い作品への入札は非常に少なくビジネスとして成立しなかったからと聞いている。今では、ネットオークションは実際のオークションを補完するものとして使われている。

美術品オークションの場合、やはりライブで行われる公開入札方式(オープン・ビット・オークション)が一般的だろう。しかしアート写真の場合、老舗の美術作品競売専門業者であるササビーズ、クリスティーズ、フィリップスはニューヨーク、ロンドン、パリでしかオークションを開催していない。もちろん日本からの参加は可能だが、現物が見られない上、落札しても現地からの高額な輸送費がかかる。専門業者以外はかなり敷居が高い存在だった。
しかし、ついに日本でもアート写真が公開オークションで買えるようになった。実は、昨年からSBIアートオークションという会社が設立され、彼らの行う「モダン&コンテポラリー・アート」のカテゴリーではアート写真が出品されるようになったのだ。ネットオークションの経験を持つ人ならあまり抵抗感なく参加できると思う。12月8日(土)に開催するオークションはアート写真が好きな人ならぜひ注目してもらいたい。森山大道、畠山直哉、横須賀功光、柴田敏雄、エドワード・ウェストン、リー・フリードランダー、ピーター・リンドバーク、ルイザ・ランブリ、ウォルフガング・ティルマンス、カンディダ・へファーなど写真作品は約29点が出品される予定とのこと。まだ欧米と比べると点数は非常に少ないが、今までは一般の人には縁遠かったこの公開のライブ・オークションが身近になることには意義があると思う。

公開入札方式のライブ・オークション参加には事前に知っておいた方が良い知識がある。ここで初心者向けに簡単に紹介しておこう。

・出品作品
公開オークションでは、コレクターの売りたい作品が全て参加できるわけではない。ここが出品自由のネットオークションとの大きな違いだ。アート作品として市場価値があると認知されたものだけが出品可能なのだ。オークション会社は入札に先立って出品作品の選択とリストの編集作業を行う。出品されるのは元々ギャラリーの店頭市場で売られていたもの。その後の生存競争を勝ち抜いてトラックレコードが明確になった作家のものだけなのだ。一流のアートオークションでは評価が定まっていない新人アーティストの作品が出品されることはない。個別の作品はどの業者から購入したが重要な記録となる。オークションでの落札は作品の出所"Provenance"として高い信用度がある。

・カタログ
全ての出品作品の個別情報はオークション・カタログに書かれている。写真作品の場合、イメージ(写真)、作家名、作品タイトル、サインの有無、制作技法、サイズ、来歴、落札予想価格の上限と下限、などが記載されている。最近は、ネット上のオンライン・カタログに同様の情報が掲載されている。ただし注意が必要なのは作品の状態の記載がないこと。コレクターはこれらの情報を目安に欲しい作品を物色することになる。
カタログはオークション会社で入手可能。郵送も対応してくれる。

・プレヴュー(下見会)
オークションの基本は現在の状態での販売。落札後はノー・クレーム・ノーリターンだ。入札者は事前に作品状態を確認して納得した上で入札に参加するのが前提なのだ。だいたいオークション開催日前の数日間にわたり出品全作品が展示されるプレビューが開催される。もし目当ての作品がカタログにあれば現物をチェックできる。額装された作品は額から外して見せてもらうことが可能。しかし、あまり大きな心配は不要だ。ほとんどのオークション会社は、信用にかかわるので状態が悪い作品は出品を断るのが一般的なのだ。その点では現物が見れない上に、信用度が不明な個人出品のネット・オークションよりもはるかに安心なのだ。

・落札予想価格
ネットの場合、参加者自身がもつ商品の相場感で入札価格の上限を決めることになるだろう。しかし、よほどその分野に詳しくないと自分の入札価格が適正か不安になる場合が多いと思う。公開オークションの場合は予め専門家が設定した落札予想価格が表示されている。それがその時点の作品相場ということ。通常、金額には下限と上限が記されている。自分がどれだけ欲しいかによって入札金額を決めればよいの。だから間違えて相場とかけ離れた金額で落札することはない。

・最低落札価格
ネットオークションでは思わぬ掘り出し物に出合うことがある。出品者が商品の相場情報を持たないで開始価格を安く設定する時に発生する。しかし、本当に割安だったどうかは、現物が送られてくるまでわからない。掘り出し物とも思って安く落札したが状態が悪かったというケースもあるのだ。
専門業者主催の公開オークションでは掘り出し物はまずないと考えた方がよいだろう。例えば落札予想価格が50万~60万円だとする。しかし、入札者が一人しかいなくても10万円でその作品が買えることはない。通常、個別作品には最低落札価格があり、それ以下では売買が成立しないのだ。最低落札価格は通常非公開。ロットによって違うがだいたい落札予想価格の下限か、10%程度低いレベルに設定されている。出品者が高く売りたい場合は高めに、安くても売りたい場合は低めになる。

・入札の実際
まず会場の受付で住所氏名などを書類に記載して参加登録を行う。その時には本人確認が必要なので運転免許証、健康保険証、クレジットカードなどの持参が必要だ。手続きが終わると番号が記載されたパドルが渡される。
会場では自分の欲しい作品の順番が来たら、場を仕切るオークショナーがいくらから入札を開始するかに集中する。だいたい最低落札価格の半分くらいから始まる。自分が予め決めた予算内ならパドルを周りから見えるように高く上げれば入札参加となる。ここで注意が必要なのは入札額とは別に手数料が別途かかること。(下の項目で説明)私は実際の金額ではなく常に合計金額を意識して入札するように心がけている。さて後は、同じものが欲しい人の間での競争。ライバルは、会場の中だけではない。事前に最高入札額を書類で提示する不在者入札もある。また、電話で入札する得意客もいる。自分が支払っても良いレベルまで、パドルを上げ続けることになる。ビットが承認されるとオークショナーがこちらを指さしたり、アイコンタクトをとったりする。予算以上に競り上がった場合は、熱くなることなく潔くパドルを下げてその後の結果を見守るのがよいだろう。最終的にその他に入札者がいなくなればけ晴れて落札。オークショナーがこちらのパドルの番号を読み上げてくれる。

・決済
自分の興味ある作品のオークションが終わったら、途中で会場を出ても問題ない。慣れた人は自分の興味のあるロットが終わるとすぐに帰ってしまう。出口でパドルを返却して代金支払方法を確認する。最近は、銀行振り込み以外にも、クレジットカードを受け付けるところもある。ちなみにSBIアートオークションは振り込みだけとなる。決済後に、作品はオークションハウスの倉庫で受け取るか、宅配便を依頼すればよいだろう。落札から後の流れはアートフェアでの作品購入とほぼ同じだ。

・手数料
オークションで落札できた場合は、その金額で作品が入手できるわけではない。落札価格に決められた料率で計算された手数料がかかる。海外ではバイヤーズ・プレミアムと呼ばれ、大手業者の場合25%にもなる。(SBIアートオークションは税込みで15.75%)落札価格と税込み手数料の合計を購入代金という。この手数料はギャラリーで買った時の業者の利益部分に当たる。オークションでの購入では仕入れ価格と業者手数料が明快になっているのだ。

以上のように、公開のライブ・オークションでは一定の要件を満たした本物が、現在の相場で購入できるメリットがある、コレクション初心者でも安心して参加できる場なのだ。
それではオークションでの落札はギャラリーでの購入と比べて得なのだろうか。これは顧客から良く受ける素朴な質問だ。まず知っておいて欲しいのは、オークションに出品される作品は今ではギャラリーの店頭で売っていない貴重な作品が多いという事実。エディションという限定枚数のことは聞いたことがあると思うが、すでに売り切れたエディションの作品もしくは、売り切れが近く販売価格が非常に高価になっている作品なのだ。すでに作家がなくなっている作品もある。
このような貴重な作品を取り扱うギャラリーやディーラーもいる。実は彼らにとってオークションは作品仕入れの機会なのだ。落札後には、作品をしばらく在庫として抱え、その後に相場動向を見て手数料を載せた上でギャラリー店頭やアートフェアで販売する。その意味では一般の人にとって業者の仕入れ価格で作品が買えるチャンスともいえるだろう。

今回、SBIアートオークションを取り上げて紹介したのは、せっかく始めた写真の取り扱いを継続してもらいたいという応援の気持ちからだ。実はリーマン・ショックの前には日本の大手美術作品競売専門業者のシンワ・アートオークションが写真を取り扱っていた時期があった。またアール・ローカス・オークションという写真専門のオークション会社も日本橋で活動をしていた。いずれも作品が売れないことからいまでは写真取り扱いを中止してしまった。アート写真市場が機能するためには転売目的であるセカンダリー市場のオークション、アートフェアの存在が不可欠だ。アートフェアは東京フォトが継続して開催している。売上高は、欧米と比べると遥かに少ないものの開催を重ねるごとに上がっていると聞いている。オークションも中長期的にはビジネスとして決して可能性がないわけではないと思う。しかし、日本ではまだ新しい分野なのでコレクターやその予備軍にシステムが浸透するには時間がかかる。短期的な結果に影響されることなく長い目で行って欲しいのだ。

SBIアートオークションで12月8日開催の「モダン&コンテポラリー・アート」のオンライン・カタログは以下で見られます。
今回はオークション参加に興味ある人にカタログを限定数だけ無料で送ってくれるとのこと。(事前の予告なしに無料送付を終了する場合もある。予めご了承ください。)

http://www.sbiartauction.co.jp/jp/catalogues_top.html

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