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2013年3月 5日 (火)

"The Emerging Photography Artist 2013"が終了!
グランプリは三善チヒロが受賞

"The Emerging Photography Artist 2013" (新進気鋭のアート写真家展) が先週末に無事に終わった。寒い日や雪混じりの雨天があったか、12日間の来場者数はほぼ昨年並みの約800名だった。

来場者は、参加者の知人、親戚はもちろん、写真家、ギャラリー、ディーラー、学校関係、企業、学生、若者が多かった。若手写真家からは次回公募に関しての問い合わせが多数あった。2014年も開催する予定だが、募集は12月上旬に行うと思う。もし興味ある人は、アート・フォト・サイトのメールマガジンに登録して欲しい。ここで最も早く募集情報が公開される。
その他、学校関係者からの推薦に関しての照会もあった。次回開催する場合は、学校関係の推薦者を増やすととともに、公募枠増加も検討する余地があると感じた。

今回の参加15名の作品は、非常にバリエーションに富んでいた。
制作手法は銀塩モノクロから、カラーCプリント、デジタル、フォトグラビュール、オブジェまであり、モチーフは、風景、ドキュメント、ファッション、抽象、静物など様々だった。12名の個性的な推薦者が参加者を選んだことで、日本写真界の多様性がうまく反映されたと思う。

全ての展示作品は値段をつけて販売された。なんと昨年を上回る30点に購入予約があった。新人を個人的に応援する人のほかに、コレクター、ディーラーによる新人写真家の将来性を期待しての購入も散見された。値段は安いものの、潜在的なアート性、資産性を持つ作品である点が顧客にアピールできたのだと思う。

今回も、トークイベント、フロアレクチャーを通して、推薦者、参加者の発言機会を設定した。これに対してオーディエンスからは、複数作家の話が聞けディーラーの判断基準もわかって参考になったという意見が聞かれた。ディーラーやギャラリストを志望する人にも、作家評価の参考になると好評だった。私の印象だが、伝えたいメッセージを自分自身で明確に理解していない人がまだ多いと感じた。

本展から作品の最終評価はオーディエンス、コレクターが行うべきという意図からグランプリ賞を設定した。来場者の関心が非常に高く、投票用紙がすぐになくなり追加補充を毎日行っていた。得票数と作品販売実績を加味し、グランプリは1990年生まれの三善チヒロが受賞した。準グランプリは遠藤弘道。

プルトニウム239の効果が千分の一に減るのに24万年かかるという。三善は24万年という途方もない時間に私たちがリアリティーを感じる方法を模索している。作品として提示されるのは昆虫標本のようなヴィジュアル。実は植物の根を手足に、葉を羽毛にして細かいパーツを作り、パソコン上で組み合わされた昆虫のように見える"根虫"の作品なのだ。彼女は、あえてこの途方もなくリアリティーのない方法でそれに挑戦している。本人は否定しているが、見る側はまだ24万年のうちたった2年しか経過していないことに気付き、東日本大震災と原発事故の記憶を否応なく意識してしまうのだ。彼女ののトークイベントでの途方もない作り話のプレゼンテーションもとても印象的だった。

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(C)Chihiro Miyoshi

主催のJpadsは本展参加者に更なる展示機会を提供するためにいくつかの特典を用意した。今年4月4日~7日にかけて韓国ソウル市でアートフェア「ソウルフォト2013」が開催される。今回、Jpads会員ブリッツ・ギャラリーのブース内にJpads専用スペースを設けることにし、グランプリおよび準グランプリ受賞者の作品が展示される。グランプリの三善のことを推薦者の東京工芸大学吉田成先生は、大きな可能性を持つ原石に例えていた。ぜひソウルでも磨かれて少しでも輝きを増して欲しい。
また本年11月に開催される「倉敷フォトミュラル」にも参加者のうち8名が参加することが決まった。選出は今後行われる予定。

さて会期が終わり参加者は色々な感想を持っているだろう。主催した側からいくつかアドバイスをしておきたい。
まず、自分が信じていたメッセージが見る側に伝わっていたかどうかの検証を行って欲しい。たぶん多くの人は思い通りには伝わらなかったのではないか。その場合、何でコミュニケーションがとれなかったかを分析して原因と改善点を考えて欲しい。ヴィジュアル、アイデア、コンセプト、感情面、販売価格、展示方法、イベントでのトークなど、どこかに問題点があったはずだ。それを認識して直すことで作品の完成度は間違いなく上昇する。
仕事として作家活動を行う以上、写真展示終了後のフォローアップが非常に重要になるのだ。ポートフォリオは展示して終わりではなく、常に進化していかなければいけない。

参加者の現場で自分のメッセージをオーディエンスに伝える努力はいうまでもない。それ以外にも、自分のアピールを関係者に積極的に行ったほうが良いだろう。会期中は、将来作品を取り扱ってくれるかもしれないディーラー、ギャラリストなどが多数来場していた。
若手、新人にとっては、自分自身をアピールしたり、情報収集や意見感想が出来る絶好の機会だったと思う。
普段だと仕事の依頼になってしまうので、このようなカジュアルに話す機会を利用しない手はないだろう。プロ写真家には特にアピールする必要はないだろう。作家を目指す場合、写真家は同業のライバルになるのだ。プロ写真家に積極的にアピールするのはアマチュア写真家なのだ。作家としてのキャリアを追求していくのであれば、自分から行動しなければ何も起きない。実はこのようなアピールは非常に重要。たとえば、グループ展やアート・フェアの参加作家を決める場合、実力が同じなら積極的な人が選ばれるのが一般的だ。

最後に今回も企画、運営に準備不足など至らない点が多々あったことを心よりお詫びしたい。特に準備期間が短かったこと、告知活動が十分でなかった点は多くの人から指摘を受けた。事務局担当者の増員が必要だと強く感じた。来年以降に開催予定の次回展では、今回の反省を生かしあらゆる面でより高いレベルの新人グループ展にしたいと思う。

来場者、協賛企業、参加者、推薦者、関係者のみなさま、ありがとうございました。

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