« ソウルフォト2013 (1) | トップページ | 2013年春NYアート写真オークション結果
景気回復期待で取引額が増大! »

2013年4月16日 (火)

ソウルフォト2013 現地レポート-(2)

私たちのソウルフォト参加は3回目になる。今回は以前よりもエマージングアーティスト(新人のこと)とギャラリーのプライマリーアーティストが中心の展示だと感じた。また現地の参加ギャラリー数が以前より減少しており、また大きな作品が減っている印象もあった。韓国には特に写真専門のギャラリーがあるわけではなく、現代アートギャラリーが写真で表現する作家を取り扱っている。彼らは秋に行われるKIAF(Korea International Art Fair) に注力しているという話も聞いた。
最近は世界的にもファイン・アート写真と現代アート写真の、フェアやオークションでの棲み分けが進行している。これは高額セクターが好調である一方で、中間価格帯以下の作品が低迷している影響だと思う。写真と現代アートはコレクター層の違う。それが業者間で意識されるようになり、各自はターゲットを絞り込んでフェアに参加しているのだ。

来場者はいつもように非常に多かった。カメラや関連商品を展示するフォトイメージング・ウィークの一環として行われることが影響している。しかし日本同様にカメラ関連が目的の人が多く、アート作品目当ての人はそんなに多くないと思う。
やはり韓国経済低迷の影響も感じられた。この国は現在の日本と同じように為替安政策を採用して輸出企業の活性化を目指してきた。しかし一部輸出企業は潤ったものの、賃金は上がらない上に輸入物価の上昇で国内経済はかなり疲弊しているという。日本が同じ道を歩まないことを祈るばかりだ。会場コエックスの地下モールもリニューアルとのことで全ての店が閉まっている地帯があった。最初に来た時より明らかに活気はなかった。

私たちはいままではモノクロの有名作家のセカンダリー作品中心に展示を行ってきた。結果としては、多少高くても世界的にブランドが確立している写真家の作品は売れた。しかし、日本人作家で金額が高めの人の引き合いが少なかった。
今回はあえてエマージングアーティストとギャラリーのプライマリーアーティストを持っていった。驚いたのは今回持ち込んだ低価格作品への反応が非常に良かったことだ。また実際に複数作品が売れた。
韓国マーケットの構造はかなり日本に近いのではないだろうか。一部の富裕層が外国人の資産価値のある作品を購入する。一方でこの国には独自の市場もあり、写真好きな中間層も存在する。彼らの一部が自分たちの予算の範囲内で写真を購入する。

地元で活躍しているKim Doohaの作品は250万ウォン(約20万円位)で売れていた。今回は彼は自分が育てた無農薬野菜を撮影した巨大モノクロ作品を展示。
Blog5
虫に食われて見た目は良くないがそれこそが最も美しい野菜の姿だ、というテーマだ。
彼は以前は毛糸を丸めた大判作品を売っていた。精神的に不安定な時に心が和むから撮影すると語っていたと記憶している。写真表現を通して社会との接点を見つけ作家キャリアを歩み始めたようだ。

もちろん韓国内にも海外でも活躍している作家もいる。慶一大学校教授のミョン・ホ・リー(Myoung Ho Lee)はニューヨークの有力ギャラリーが取り扱っている有名作家。
Blog1
彼は自然環境に生えている大木の背景に、白い布を四角いキャンバスに見えるような方法で掲げて写真を撮影する「Tree」シリーズを制作している。今回は彼の巨大な代表作が大きなスぺースで展示されていたが、優れた目を持ったコレクターがめざとく購入していた。
また、お前たちはここにブースを出して何をしているのか?という質問を老夫婦から受けたりもした。写真を売る行為が理解できないらしい。日本でも同じようなことがあるので思わず苦笑した。

韓国のオーディエンスは写真の表層だけではなく、作家のメッセージにも耳を傾ける人が少なからずいる。今回、通訳をお願いしたジョさんはとても丁寧に作品コンセプトを来場者に説明してくれた。どうも写真については現代美術と同様のアプローチをするように教育を受けているようだ。この点は日本とはかなり違う。今回は抽象的な作品を多く展示したが、制作アプローチがドキュメント、ストレート写真的なものへの反応は鈍く、制作手法に独自性がある、丸山晋一や、新人の三善チヒロ、石橋英之には関心が集まった。
全体的に展示作品はデジタルが多かった。日本でもよくあるのだが、大きくしたことでプリントのクオリティーに問題がある作品も見られた。インクジェット作品しか見たことがない人が多いようで、百瀬俊哉、高橋和海のCプリントの美しさには多くの人が驚いていた。
このあたりの総合的な分析が韓国での売れる写真作品のヒントにつながると思う。

日本と韓国は写真教育ではかなり交流があることも実感できた。ゲストで来ていた細江英公氏はこちらではスター扱いだ。それは、韓国人留学生が写真を学びに東京工芸大学、日本大学、九州産業大学などに数多く来ているからだ。それらの卒業生が教育者になったりしているようだ。ソウル芸術大学では、私どもが取り扱っている丸山晋一やテリー・ワイフェンバックを作例として紹介しているという。しかし学校現場と違い、写真ギャラリーでの交流があまりない。今後は写真にかかわる幅広い業界関係者の交流が必要だろう。

今回の招待国はロシアだった。キュレーターのイリナ氏による現代ロシア作家約10名によるグループ展示は見ごたえがある優れたものだった。テーマは「From poetical tradition and mythology」(詩の伝統と神話から)で、歴史を踏まえた上でオリジナルがアナログの銀塩写真から巨大な現代アートの作品までが展示されている。

Blog2

Blog3 
彼女によると、アートとしての写真と現代アートのメッセージ性とをバランスさせたキュレーションを行ったそうだ。写真としての優れたヴィジュアルと斬新なアイデアを合わせ持った作品が多い。やはり欧州写真の流れを引き継いでいる印象が強い。今後、国内市場が成長するにしたがいグローバルに活躍する人がでてくる予感がする。

展示作品はたぶんデータで送られたものを現地でエプソン製のインクジェットで出力したものだろう。ロシアからすべての作品を輸送するとなると膨大な費用が発生する。デジタル化の進行でデータさえ送れば展示地で作品制作が可能になったわけだ。たぶんオリジナル作品との違いはあるのだろうが特にクオリティーに問題は感じなかった。まだ世界的に無名の作家の場合は確信犯でこのような展示を行うことも決して悪くはないのだろう。

ソウルフォトはアジアのエマージングとプライマリー作家の交流の場となるのが理想ではないかと感じた。
清里フォトミュージアムは期間中にポートフォリオレビューを実施して、ヤングポートフォリオの参加者募集を行っていた。欧米と比べて市場がまだ黎明期のアジアではそれなどは実際的な活動だと思う。ソウルでは確かに資産価値のある作品が売れる可能性はある。しかしそれはマグロの一本釣りのようにまったく成果が上がらないリスクもある。そうなるとどうしても赤字覚悟の上で価格が安い作品の展示が中心になるだろう。
はたして、商業ギャラリーが多額の経費を出して参加する意味があるかどうかは個別オーナーの判断によるだろう。中長期的に日本と同様に市場が伸びると考えるなら先行投資と考えることはできるだろう。日本の作家レベルはまだアジアではかなり高いと思う。アジア全体を見据えて、優れた作家をこの地の市場で紹介することは、ギャラリーの広告宣伝にもなるだろう。海外のフェアのようにお金の匂いが弱いことがソウルフォトの魅力ではないだろうか。
しかし作家志望者とは価値観や創作の方向性が違うアマチュア写真家の展示が増えているのには不安を感じる。フェア自体が学園祭やグループ展の延長上になってしまう危険性がある。予算が厳しいおりから、どうしても主催者は彼らでも受け入れてしまいがちだ。ある程度の限度を超えた場合、アート・フェアとしてのレベルが保てなくなりその存在価値が危うくなるだろう。それではコレクターも商業ギャラリーも興味をなくすことになる。開催すること自体が目的でないことを主催者は自覚して欲しい。

|

« ソウルフォト2013 (1) | トップページ | 2013年春NYアート写真オークション結果
景気回復期待で取引額が増大! »

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/170909/57186018

この記事へのトラックバック一覧です: ソウルフォト2013 現地レポート-(2):

« ソウルフォト2013 (1) | トップページ | 2013年春NYアート写真オークション結果
景気回復期待で取引額が増大! »