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2013年8月27日 (火)

2013年後半の写真展示などの活動予定

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(C)Tomio Seike

○「Timeless Time」トミオ・セイケ写真展
セイケは2012年11月にシグマのDP3メリルのカタログ用写真撮影のためにプラハを訪れる。本展ではその時に集中的に撮影されたシティースケープス約20点を展示する。
カタログはカラ―が多いが、写真展用は全てモノクロ作品になる。セイケは今年はじめにライカ・モノクロームで撮影した写真を銀座のライカ・ギャラリーで展示している。今回は本体販売価格がライカの約1/10で、誰でも購入できるシグマのコンデジで撮影した写真の展示となる。セイケは、良い写真を撮るにはカメラではなく撮影者が経験の上で確立したオリジナルな撮影スタイルが重要だと考えているようだ。 優れた写真とは、作家性とは何かを考えさせられる写真展になるだろう。

9月14日(土)より開催
ブリッツ(目黒)
13:00~18:00/ 入場無料
日曜、月曜、9月24日~28日は休廊 

・トーク・イベント
セイケ・トミオとアート・ディレクターの福井信蔵氏とのトークイベントを開催
9月15日(日)午後2時より
25名限定(立ち見あり)
9月4日からギャラリー・ウェブサイトで申し込みを開始
希望者が多い場合は抽選


○「TOKYO PHOTO 2013」
昨年に続いて東京フォトに参加する予定だ。
今年から会場が東京ミッドタウンから増上寺に変更になった。プレスリリースによると、東京をはじめ、ニューヨーク、パリ、ベルリン、アムステルダム、マドリッドなど世界の主要10都市よりトップギャラリーが参加。また、5周年記念企画として英国国立美術館テートモダン(TATE MODERN)のフォト・キュレーター、サイモン・ベーカー氏による企画展、米国西海岸屈指の美術館J・ポール・ゲティ美術館(J. Paul Getty Museum)のアマンダ・マドックス女史による企画展、東松照明追悼展、ウィリアム・クライン「東京」展、「日中未来の子ども100 人の写真展」を同時に併設するとのこと。

9月27日~9月30日
会場 増上寺 港区芝公園4-7-35
12:00~19:00
一般 1,300 円/学生 1,000 円/前売り 1,000 円

○アート写真コレクション講座
アート・フォト・サイトでは約10年以上に渡ってプロ・アマチュア写真家向けにファィン・アート写真の基礎を解説して具体的アドバイスを行う「ファイン・アート・フォトグラファー講座」を行っている。新しく始まるコレクション講座は、写真を見ることが好きでコレクションに興味を持つ人向けのもの。
日本では長らくアマチュア写真家向けのカメラ市場は存在するが、写真市場は存在しないと言われてきた。ここにきて、写真は撮らないが見るのが好きな人が現れつつある。彼らは写真はアート表現の一部であることを理解して、写真家のメッセージを読み解こうと能動的に写真に接している。しかしアート写真をより理解するには様々な経験や基礎知識が必要となる。自分の好みを優先させればよいアマチュア写真とは全く違うのだ。特に最近は写真も大きなくくりの現代アートの一分野になりつつあり、その傾向は一層強まっている。
当講座では様々な専門的情報の提供やオリジナル作品のポートフォリオ学習を通して、参加者のアート写真理解力向上を目指す。

10月中旬開催予定
会場 インスタイル・フォトグラフィー・センター
13:30~17:00
受講料 未定

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2013年8月13日 (火)

森山大道、荒木経惟、杉本博司
過去5年間のオークション結果を分析する

最近、アート写真のオークション結果の分析を行う機会があった。
せっかくのなので日本人写真家で世界的に知名度が高い、森山大道(1938-)、荒木経惟(1940-)、杉本博司(1948-)の2008年~2012年までの過去5年の動きを調べてみた。
データは、"GORDON'S Blouin Art Sales Indes"を参照している。
図1で3人の各年の最高落札価格(ただし1点物作品のみ)、
図2~図4で各自のオークション出品数(ブルー線)、不落札数(レッド線)、不落札率(グリーン線)でまとめてみた。

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アート写真市場での売上高、落札価格の直近のピークは2008年。その後リーマンショックで2009年に市場規模と相場は大きく落ち込み、ここ数年はやっと2000年代前半のレベルまで戻ってきた。
また2008年は「Paris Photo」で日本が招待国となった年だ。ここで、日本ではエディションや販売価格の管理方法、ヴィンテージ・プリントの理解が欧米とは違うことが明らかになっている。その後の日本人写真家の、特に古い時代に制作された写真の相場に多少影響を与えていると思う。

3人の日本人写真家の共通点は、経済は回復しているものの出品数の減少傾向が続いていることだ。2008年までの市場拡大時には欧米コレクターが多文化主義の視点から非西洋作家の物色を積極的に行っていた。日本人写真家もそのブームの恩恵を与った。金額的にも、森山と杉本の2008年の最高値はそのブームで発生したバブルの影響だった可能性が高い。
出品数減少は、その後の景気悪化により起きた原点回帰の流れがまだ続いているからだろう。またオークションハウスが不落札作の次回オークションへの出品に消極的なことも影響していると思う。

個別作家をみてみると、荒木は出品数は減少しているものの、最高落札価格は上昇、不落札率も決して低いとは言えないが安定している。2013年5月8日にロンドンのフィリップスで開催された"PHOTOGRAPHS"オークションでは、彼の77点の作品が一括で110,500ポンド(@150、約1675万円)で落札されている。複数作品とはいえ、荒木作品のオークション・レコードとなった。彼の市場でのポジションは確立されていることは明らかだろう。しかし2012年の落札作品のうち約95%が1万ドル以下。また多作な作家であることからイメージの絵柄によっては市場性がないものもあるようだ。

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杉本はリーマンショック後の相場下落による落札予想価格の調整がうまくいった模様。2012年は出品数は低下しているが、これはブームの陰りではなく中心市場が"Photographs"から出品数が絞り込まれる"Contemporary Art"分野へよりシフトしてきたからではないだろうか。実際に不落札率、最高落札額ともにずっと安定している。
2012年には高額セクターとなる5万ドルを超える落札が14件もある。代表作の"Seascapes"、"Theater"は美術館クラスの作品として資産価値が市場で十分に認識されていると判断してよいだろう。

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森山は、出品数、最高落札価格ともにあまり勢いがない。2012年の68%という高い不落札はやや気になるところだ。ロンドンのテート・モダンで2013年まで開催された“William Klein + Daido Moriyama”展の市場への影響を見極めたいと思う。

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オークションで販売されることの意味を確認しておこう。
出品作はかつてギャラリーの店頭で販売されたものだ。同時期に同じように複数作家の膨大な数の作品が売られていたはず。その後、継続して作品を作り続け、熾烈な生き残り戦争に勝ち残った作家の作品がオークションに出品されるのだ。それは作家にとって一種のステイタスでもある。作品の資産価値が認められたことなので、最初にギャラリー店頭で売られた時よりも価格は高額になる。 しかし、どんな高額で落札されてもいったん過去に売買されているので、作家への分け前はない。しかしオークションでの高額落札がギャラリー店頭価格の上昇を招くので、間接的なメリットはある。

作家の評価には様々な基準がある。市場で付いた値段だけで決まるわけではない。しかし、世界的に評価されるためには作品の資産価値が客観的に認められることも必要なのだ。

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2013年8月 6日 (火)

芦谷 淳「POINT LANDSCAPE」
新しい風景写真誕生の予感

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(C)芦谷淳

芦谷淳の「POINT LANDSCAPE」が8月12日までに新宿のペンタックス・フォーラムで開催されている。約840 X 1120cmサイズの裏打ちされたモノクロの大判作品27点が二つのギャラリースペースに展示されている。

プロ・アマチュアを問わず国内の自然風景を撮影する人は非常に多い。現在はデジタル技術が進歩したことで、昼夜を問わず様々な状況できれいな風景を撮影することが簡単になった。いまや撮影後の画像処理はアマチュアでも一般的だ。趣味の写真なら単にきれいな風景を撮影すればよい。しかし、アート作品として提示する場合は何らかのテーマ性が提示されなければならない。最近は、日本の伝統的な自然への畏敬の念を持った美意識を表現している、と説明される作品が多くなっている。
このような作品では、「日本は天変地異はあるが、温暖な気候で美しい自然を持っている。かつて日本人は八百万の神というように自然に神が宿っていると考えていた。現代社会でも、最近のパワースポットのブームのように形は変わったものの同じようなメンタリティーを持ち続けている。そんな日本の伝統的な美意識を現在に再発見することがテーマです」のようなステーツメントがお約束になっている。
実はこれこそはもともと私が昔行っていたアプローチ。グループ展の「Imperfect Moments」や「Imperfect Visions」で、日本の伝統的な美意識の優美や侘び寂びをテーマにしている作品を紹介してきた。時間が経過してこれが日本のアート系風景写真を語るアイデア・コンセプトの定番の一つになってしまったようだ。
アマチュア写真家が作品制作の方法を学ぶ意味で、この汎用性のあるテーマを取り入れることには何ら問題がない。しかし、作家志向の人までもが日本の伝統的美意識を安易に利用しているのはやや気になる。
良く考えてみると、現在社会は化石燃料の消費を前提に成り立っている。単に人間が自然の一部であることを認識しただけではなにも状況は変わらない。ただ古き良き時代のノスタルジーに浸り、個人のエゴを満たすだけになりかねないのだ。

これらの写真と対極的なのが「ニュー・トポグラフィックス」の写真家たち。詳しくは以下に引用した解説を読んで欲しい。彼らは、アンセル・アダムスのように雄大な自然を美化するのではなく、都市化により変貌する日常シーンをミニマムなアプローチで撮影している。最近刊行された同展の新版カタログに寄せられたエッセーでキュレーターのブリット・サルヴェセン(Britt Salvesen)は、"これらの写真が示しているのは、いま私たちが直面している環境問題に対する「責任感」だ"と語っている。
私は日本人写真家に欠けているのはこの「責任感」だと考えている。いま求められるのは日本伝統の「優美」の美意識と、「ニュー・トポグラフィックス」の「環境問題への責任感」とが共存する風景写真ではないだろうか。
そして、芦谷 淳の「POINT LANDSCAPE」はその可能性を持つ新しい風景写真になり得ると評価している。以下に、彼の作品の解説を引用した。写真展を開催するが作品解説がないということだった。彼の作品ではアイデア・コンセプトが伝わることが不可欠だと考えたので書かせてもらった。興味がある人はぜひ写真鑑賞の際の参考にしてほしい。

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芦谷 淳「POINT LANDSCAPE」
意識的な優美の世界

日本人写真家が国内の自然風景を撮影するとき、
日本伝統の「優美」の美意識をテーマとする場合が非常に多い。
その背景には環境汚染などが進行する現代社会で、
自然をコントロールする西洋的な価値観が行き詰まりを見せているという認識がある。

その解決策として、日本の自然と共存する生き方に可能性を見出そうということだ。
しかし、この提言は非常にあいまいなものである。現代社会は地球資源を利用して成り立っている。ただ人間が自然の一部であると意識するだけでは諸問題は解決しないだろう。
下手すれば単にノスタルジーに浸り、個人のエゴを満たすだけではないか。

そんな日本の風景写真の対極にあるのが「ニュー・トポグラフィックス」と言われている分野の欧米の風景写真だ。その原点は1975年にジョージ・イーストマン・ハウスでウィリアム・ジェンキンス(William Jenkins)のキュレーションで開催された「ニュー・トポグラフィックス-人が変えた風景の写真」(New Topographics: Photographs of a Man-Altered Landscape)にある。同展は、風景写真の新しい可能性を提示したといわれる写真史上の重要な写真展だ。
アメリカ人のロバート・アダムス、ルイス・ボルツ、スティーブン・ショアー、ヘンリー・ウェッセル・Jrら8人と、ドイツ人のベッヒャー夫妻が参加。彼らは、従来の雄大な自然を美化する古典的モダニストとは違い、都市化により変貌するありきたりのシーンをミニマムなスタイルで撮影。その冷徹で客観的なイメージ群はアンドレアス・グルスキーなどの現代アート系写真に影響を与えたと言われている。

「ニュー・トポグラフィックス」について、2009年に刊行された同名写真集新版のエッセーでブリット・サルヴェセン(Britt Salvesen)が"これらの写真が示しているのは、いま私たちが直面している環境問題に対する「責任感」だ。"と評価している。日本人写真家に欠けているのはこの「責任感」ではないだろうか。それは人間個人の意識の問題。写真家が個人として自立していることが必要不可欠だろう。
私は日本伝統の自然を愛でる「優美」の美意識と、「ニュー・トポグラフィックス」が主張する「責任感」との共存の先に新しい現実的な風景写真の可能性があると考えている。

そのアプローチは様々あるだろうが、芦谷淳の「POINT LANDSCAPE」はその方向性を持った作品だと評価している。
本作は日本人写真家による日本で撮影された「ニュー・トポグラフィックス」的な作品だ。彼の写真には自然風景とともに、人工物の道路、電柱、切り出された木材、ダムなどが写されている。時代性を意識して、東日本大震災後の東北の復興現場での作品も一部に含まれる。

芦谷の作品からは日本人写真家による新たな風景写真の可能性を感じさせる。
彼は自らの存在をリアルにとらえている写真家だ。単に組織に属したくないというエゴから写真家を目指したのではない。真に自由な人生を歩みたいがゆえにこの道を選択した。
その実践には孤独を恐れない覚悟が必要なことも理解している。そんなクールな視線で日本風景に対峙して撮影したのが本作なのだ。日本的な優美な印象を直接的には感じないものの、そのミニマムな作品からは禅的な静謐な雰囲気が感じられる。
モノクロの作品群は柴田敏雄(1949-)の代表作「日本典型」(1992年)を思い起こさせるかもしれない。しかし芦谷は自らのリアリスト的心情が反映された風景をパーソナルに撮影している。 この点が、自然の中にある建造物の造形に興味を持つ柴田とは決定的に違う。

風景写真は画像のクオリティーの高さが非常に重要になる。彼のペンタックス645Dは大型フィルムカメラと遜色のないクオリティーを提供してくれる。このカメラとの出会いがなければ「POINT LANDSCAPE」は誕生しなかっただろう。今回のペンタックスフォーラムでの写真展は大きなサイズでの作品展示だが、小さなサイズであっても画像の凝縮感が強調され十分に魅力的だと思う。
彼の本格的作品制作はこのカメラの登場ととともに始まったという。僅か数年の期間で、様々な可能性を予感させる高レベルの作品群が制作できたのは驚異だと思う。しかし本作はとても大きいテーマを取り扱っている。もしかしたらライフワーク的作品になるかもしれない。どちらにしても、今回の展示はまだ作品の序章にすぎないのだ。
今回の展示で自分の作品の方向性の正しさが再確認できれば、より多様な撮影場所で、 対象を絞って新たな作品制作に取り組めるようになるだろう。
今後の「POINT LANDSCAPE」シリーズの展開と作品完成度の向上に期待したい。

福川 芳郎
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芦谷 淳 写真展
「POINT LANDSCAPE」
2013年8月12日(月)まで
10:30~18:30(最終日 16:00終了)
フォトイマジネーションスペース・ペンタックスフォーラム
入場無料

www.pentax.jp/forum/

本展は国内のランドスケープ作品を制作している人は必見の写真展だ。会場では気軽に買えるミニ・プリントや限定30部の写真集も販売している。

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