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2013年10月15日 (火)

アート写真の制作ヒント
気をつけたい安易な作品テーマ

東京フォト2013が9月末に開催された。作家を目指す人や、写真撮影を趣味とする多くの人が訪れたと思う。
今回の出展者は約半数が海外のギャラリーで、展示作品の多くは既に資産価値が認知されたいわゆるセカンダリー市場の取り扱い作品だった。これらの作品の特徴は、アーティストの作家性、作品メッセージ、テーマ性がすでに市場で認知されているということだ。コレクターはそれらの前提を分かった上で、イメージ、サイズ、エディション、コンディション、販売価格を総合的に判断して買うかどうかを決めることになる。国際的なフォトフェアは若手や新人が自らのメッセージを伝える場ではないのだ。
新人を一部のスペースに展示するギャラリーもあった。それらの作家は、その存在が市場である程度認められている人たちだ。いわゆる作家のブランド化の一環としてギャラリーが展示するのだ。
その判断基準はシンプルだ。過去のアート関連の展示で実際に作品がコレクターに売れたかどうか、また本人が営業努力を行っているかどうかだ。新人のメッセージはまだ市場で十分に認知されていない。彼らはフォトフェアの傍らで必死になって自分なりの情報発信を行っている。

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今回、わたしどもは「New Japanese Abstruct Photography」というテーマで一つの壁面を使用して若手から中堅写真家を展示した。「新しい日本の抽象写真」というような意味だ。本当はもっと大きな規模でのグループ展を行うつもりだった。しかし、作品の選択を行う過程で挫折してしまった。どういうことかというと、抽象的な写真を作品として安易に提示する人があまりにも多いのだ。特にデジタルカメラでストレートに撮影する人にその傾向が強く見られる。アート作品でアイデア・コンセプトが必要なことは写真を撮影する人なら知識として知っている。しかし具体的に何を行うかは感覚的にしか理解していない。これは本来自分自身が能動的に社会と接することで見つけ出すものだ。しかし、最初に写真撮影ありきの人の場合、後付けでそれらしきものを付けたすことになる。単に作品要件を満たすために「抽象」を意識して制作した、とするのだ。
写真史で抽象写真を撮影していた写真家を意識したとイメージの表層の類似性だけで自作を語る人も多い。このタイプのなかにも自分の人生と真剣に向き合って、精神の緊張状態の局限での創作活動の中から抽象作品が生まれているケースも稀にある。そうなると作品は社会との関係性を持つ可能性が出てくる。
しかし、そこまで自分の心をさらけ出して表現する勇気を持つ人は少数だ。多くは自分のエゴ拡大が目的で、そんなに真剣に作品制作に取り組んではいないのだ。
実際には、真の作家性をイメージの表層だけで判断するのは難しく、ギャラリーも最初のうちは惑わされることもある。しかしある程度の期間付き合うと写真家の真のスタンスが次第にわかってくる。抽象的な写真が社会との葛藤から生まれたのではなく、方法論として撮影されている場合は作品テーマのあらたな展開がない。撮影する対象が変わるだけのワンパターンに陥るのだ。
アート写真での作家性の評価は本当に難しい。写真家の思い込みと、優れたメッセージとは紙一重の違いのこともあるのだ。見る側は、かなりの期間の現場での経験が必要だと思う。

以前に風景写真を撮影する人が、やたらに、「テーマは日本の伝統的な優美の美意識です」、「八百万の神を撮影しました」としたり、杉本博司の影響か、「禅を意識しました」とする場合が多いことを紹介した。「抽象」も含めて、これらは安易に自分の作品にレッテルを貼って安心するような行為だろう。結局、簡単に手に入れた作品テーマは決して見る側を真に感動させることはできないのだ。
それでも、単に写真をデザイン面や色彩面だけでアピールしたり、単に大きく現代アート風な設えにする人よりは将来性はあると思う。少なくとも、何らかのレッテルがあり、ビジュアルとクオリティーが優れていれば、インテリア用の写真作品としては通用するだろう。
また新人ならば確信犯でここからスタートしても良いと思う。実際、ワークショップではレッテルを写真家に提示して反応を見てみることもある。なかには実際に展示されることで、自分の作品に何が足りないかを気付く人もいるのだ。
もしアーティストを目指したいのであれば、作品の要件のみを整えて満足するのではなく、社会の中で作品がどのような意味を持つかを自分自身で考えて欲しい。その先にライフワークになる真の作品テーマの卵が見つかるかもしれない。たとえ作品制作アプローチが不器用でも、その方が見る側の心を刺激するのだ。
ギャラリーもコレクターも、そのような写真で自己表現する真のアーティストが生まれることを待ち望んでいる。

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