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2014年5月27日 (火)

「写真に何ができるのか」をどう読むか?
アート写真を読み解く参考書

先週末まで開催していた「写真に何ができるのか-思考する7人の眼-」展は、おかげさまで無事に終了した。マスコミ関係者、フォトフェア関係者、フォトフェスティバル関係者など非常に幅広い分野の人が来てくれて、日本の写真市場について意見交換をすることができた。

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本書には、写真家、アーティストによる作品とエッセー、作品解説、そして「デジタル革命第2ステージを迎えて」など、多種多様な内容が満載されている。どこから読んだらよいかわからないという意見もあった。私は読み方は各自の自由だと考えている。しかし、もし読み方に悩んでいる人がいるのなら「写真家、アーティストの本質を読み解く」というアプローチを提案したい。
まず「デジタル革命第2ステージを迎えて」から読んでほしい。そこには、過去約20年間のマーケットの変化が詳しく書かれている。デジタル化が到来して写真がそしてマーケットがどのように変わったかが理解できる内容だ。そして日本のアート写真市場を、写真家、アーティストの側と、コレクター(予備軍)の側から分析している。日本のアート写真市場は、写真家、アーティストからの継続的な作品供給がないことから、欧米のようなプライマリー(ギャラリー)とセカンダリー(オークション)が共存する市場構造になっていないと指摘している。マーケットのようなものは存在しているが、それは海外で認められた写真家、アーティストのものがその延長上として存在しているだけなのだ。
特に日本人の若手新人の場合は、彼らの作品をアート作品として価値を保証するマーケットは存在しない。私の言いたいのは、市場成立のために、できるだけ多くの写真家、アーティストが継続して作品を作り続けて欲しいという点に尽きる。それなくして状況は永遠に変わらない。何かのブームのように、ある日突然にアート写真市場が生まれることはあり得ないのだ。
読者はそれを念頭に置いて、写真家、アーティストの作品を見て、エッセーを読んでほしい。そして、ぜひその人が果たして作品を継続して制作できる人なのかを見極めてほしい。 本書を読む楽しみはまさにここに尽きると思う。色々な判断基準があるだろう。私がおすすめするのは、その写真家、アーティストが果たしてロマンチストか、リアリストなのかを読み解くことだ。自分のことを中心に考えているか、それとも自らを客観視しているかは、作品ポートフォリオの本質を読み解く際に重要な手がかりになる。この段階で何を本人が伝えたいかが理解できないこともあるだろう。もしかしたら、そのような人はアート表現と全く違う理由で写真に取り組んでいるのかもしれない。 日本ではアート以外の目的で写真と関わっている人の方が圧倒系に多いのだ。
さて、写真家、アーティストのメッセージが読み解けたなら、次に主張内容が今という時代の何らかの価値観と関わっているかもぜひ確認してほしい。ここの部分が弱いと、オーディエンスとの強いコミュニケーションが生まれず、アート作品として成立しないかもしれない。アーティストとオーディエンスは時代の価値観を共有することで初めてつながるのだ。これがないとエゴの押し付けになる可能性がある。本書の内容を読んで、時代性が反映されたメッセージが発信していると判断できるなら、その人はかなり将来性があると判断してよいだろう。ぜひ今後の活動をフォローしてほしい。

もう気づかれただろうか。いままで述べてきた一連の行為は専門家による写真家のポートフォリオ・レビューの過程そのものなのだ。レビュアーは上記のような視点で作品の内容を判断している。最初の「デジタル革命第2ステージを迎えて」の部分はレビュアーの現状認識なのだ。 写真家の側にたてば、自作をセルフチェックすることでアート作品としての足りない部分がみえてくるだろう。
「写真に何ができるのか」は、読者の知的好奇心を刺激してくれるアート写真読解の参考書にもなるのだ。興味ある人はぜひ手に取ってほしい。

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2014年5月20日 (火)

写真オークション結果
(2014年ロンドン)
全年同様の驚き少ない平均的な落札結果

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ササビーズのカタログ

例年5月に開催されるロンドンのアート写真オークション。今年はササビーズとフリップスのみの開催となった。クリスティーズはパリコレに合わせて7月にパリで開催する予定とのこと。
アートの中では低価格帯と考えられているアート写真。さらにロンドンでは目玉となる高額の貴重作品の出品はあまりない。今回も大きなサプライズはなく、絵にかいたような普通の結果だった。

5月7日、ササビーズ・ロンドンでは複数委託者による148点のオークションが開催された。
落札率はほぼ60%とあまり良くなかった。売り上げはほぼ落札予想価格の真ん中となる1,851,575ポンド(約3.14憶円)だった。
最高額落札は、19世紀のJohn Beasley Greeneの写真アルバム"Album of Egypt and Algeria, 1852-1856"。落札予想価格上限150,000ポンドを大きく上回る482,500ポンド(約8200万円)で落札された。
リチャード・アヴェドンの11枚からなるファッション・ポートフォリオの"Avedon, Paris, 1978"は、落札予想価格下限近くの134,500ポンド(約2286万円)で落札。これは、1979~1980年ころにコレクションされた貴重な初期作品だ。
アーヴィング・ペンの"Anemone/Anemone Coronaria: Irna Blue, New York, 2006" は、落札予想価格上限18,000ポンドを大きく上回る69,700ポンド(約1184万円)で落札された。これはエディション9のピグメント・プリント。ペンのダイ・トランファーでない花のカラー作品としては驚きの高額落札だ。
ちなみにカタログ表紙の掲載写真は、アダム・フスの"Untitled, 2007"。1点もののフォトグラム作品。落札予想価格上限近くの37,500ポンド(約637万円)で落札されている。

5月8日にフリップス・ロンドンで開催された複数委託者によるアート写真オークションもほぼ予想通りの結果だった。出品数は142点、落札率は約68%、総売上高は落札予想価格のほぼ下限値の合計1,189,625ポンド(約2.02億円)。ただし、中価格帯から高額価格帯作品の落札がやや弱かった。全般的に、クラシックのファッション写真、カラーによる現代アート系作品の動きが鈍く感じられた。

最高額落札は、アーウィン・ブルメンフェルドのソラリゼーションによるポートレートの"Manina, Paris, 1937"。落札予想価格上限30,000ポンドを大きく上回る80,500ポンド(約1368万円)で落札された。
ウィリアム・エグルストンのダイトランスファー作品の"Untitled (Near Minter City and Glendora, Mississippi), 1970"は、落札予想価格範囲内の62,500ポンド(約1062万円)で落札されている。

(1ポンドは170円で換算)

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2014年5月13日 (火)

「写真に何ができるか」
刊行記念写真展を開催!

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三善チヒロの作品

「写真に何ができるか」-思考する7人の眼-(窓社)の刊行記念写真展が5月14日~25日まで東京広尾のインスタイル・フォトグラフィー・センターで開催される。
写真をアート作品として提示する場合、写真家が何を伝えたいかを自ら語ることが必要不可欠。同書はそのような意図を持つ写真家たちが、作品とテキストを通して、自らのメッセージを世の中に発信することを目指したヴィジュアル+メッセージ本だ。
ただし、写真家のテキストは重要だが、それらはあくまでも写真作品とともに存在する。本展は、本物のオリジナルプリントを見てもらい、作品理解をより深めてもらうことを意図して開催する。

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西野壮平の作品

本展では「写真に何ができるか」に参加しているうち、三善チヒロ、幸田大地、にのみやさをり、石橋英之、芦谷淳、西野壮平のの約30点の作品を展示。

○参加写真家による自作を語るフロアレクチャーを開催!
参加無料、事前の申し込みは不要。時間までに会場においでください。

5月17日(土)
2:00~ 芦谷淳
3:00~ 三善チヒロ

5月18日(日)
2:00~ 幸田大地
3:00~ にのみやさをり

○編者によるトークイベント開催
5月25日(日) 2:00~
「デジタル革命第2ステージを迎えて」
福川芳郎
デジタル化が進み、現代アートが市場を席巻している欧米のアート写真の最前線はどのようになっているか。また日本のアート写真界の現状を語る予定。
参加無料。20名程度。
参加希望者は以下からお申込みください。
http://ws.formzu.net/fgen/S73986561/

  
「写真に何ができるか」 展
2014年 5月14日(水)~ 5月25日(日)
1:00PM~6:00PM/ 入場無料 月・火曜休館
会場:インスタイル・フォトグラフィー・センター
東京都港区南麻布5-2-9 東京メトロ日比谷線 広尾駅下車 徒歩7分
主催 「写真に何ができるか」展 実行委員会

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