« スティーブン・ショア(Stephen Shore)の新作
「WINSLOW ARIZONA (SEPTEMBER 19th, 2013)」
| トップページ | 2014年後半の予定
フォトブックの展示、トミオ・セイケ
「West Pier」展など。 »

2014年7月15日 (火)

コレクションをフォトブックから始めよう!
「アート写真集ベストセレクション101」展

Topics_7

このたび「アート写真集ベストセレクション101(101 Photobooks Best Selection 2001-2014)」という写真集ガイドブックが玄光社から刊行された。私も著者として編集作業にずっと関わってきた。同書では、以下のポイントを意識して内容をまとめているので参考にしてほしい。

・フォトブックを本ではなくアート作品だと考える
写真集の中の「フォトブック」は、写真家・アーティストが自らのメッセージを伝える目的で作り上げたものだと区別している。それはイメージが単に収録されたのではなく、それ自体が作品、一種のアート写真のマルチプルなのだと定義している。アート作品ということはコレクション対象であり、値段はオリジナルプリントより安いものが資産価値もあるということだ。実際にフォトブックのトレーディングを行う業者もいる。

・21世紀になり写真集の概念が大きく変化
フォトブックがアートだという認識は、特に21世紀になってから顕在化してきた。きっかけは、優れたフォトブックを通して写真史を再評価する動きが起きたことと、その研究成果としてフォトブックの系統だったガイドブックが相次いで刊行されたことにある。(同書では、21世紀に刊行された様々なフォトブック・ガイドをリスト化して紹介)
そして、写真家、アーティスト、出版社の制作側が、フォトブックは本ではなく作品になり得ると意識したことが重要だと考えている。多くの出版社の経営姿勢が、従来の薄利多売から高利小売に変化したのだ。つまり高額だが優れたフォトブックを少数生産して完売させるビジネスモデルの誕生だ。 しかし日本ではいまだに薄利多売が主流。それがいま国内から優れたフォトブックが生まれない理由でもあると考えている。

・アート写真コレクターが参入
かつては貴重な古書はレアブックと呼ばれ、ブックマニアの中だけで密かに珍重されコレクションされてきた。ここにきて従来のアート写真コレクターもフォトブックを買うようになり、市場規模が一気に拡大したのだ。
いままでは写真集がレアブックになるまでには長い時間がかかっていた。著者の業界での評価やポジションが確定しない間はそれらは単なる古本として扱われ、価値はなかなか上昇しなかったのだ。最近は、出版社が少数生産にシフトしたことで状況は大きく変わった。人気本はすぐに売り切れて、相場もすぐに上昇するようになる。2000年以降に刊行されたフォトブックにはその傾向が強い。従来のレアブックにおける初版信仰も絶対視されなくなってきた。再版はオリジナルプリントのモダンプリントに相当して、人気が高いものなら初版でなくても価値も上昇するようになった。

・写真集で写真家・アーティストの世界観を伝える
101冊の写真集を紹介する形だが、実は21世紀に注目すべき写真家・アーティスト101名を選んでいる。中には既に亡くなった人も含まれるが、それらは写真を撮影することで自己表現を試みていた人を、できるだけニュートラルな視点で選んでいる。単にモノクロームの抽象美やファインプリントのクオリティーを追求していただけの人は除外した。いまや写真も大きなくくりの現代アートの一分野だという立場にたっている。
また想定している読者はアート写真コレクションに興味を持つ初心者。意識して写真家・アーティストのキャリア解説、内容解説、市場評価を行っている。写真が見るのが好きで、いまのところ好き嫌いの感覚だけで写真集を買っていた人に、系統だったコレクションの考え方を提示している。あえてマニアックな写真家・アーティストのタイトルはセレクションしないようにした。
また資料的価値を高める目的で、できる限り多くの情報を詰め込もうとしている。101冊のうち、アート写真史的に重要な写真家・アーティストのページでは、過去に刊行された写真集リストを掲載。21世紀に売れた写真集ベスト10も13年分をリスト化して紹介している。

・アンソロジーのアート性にも注目した
最近は作者不詳の写真であるファウンド・フォトが注目されている。キュレーションや編集する人がどのようなセレクションを行い見せるかによって写真に新たな意味が与えられると考えられるようになっているのだ。 それ自体がアート写真表現の一つと認識されるようになっている。
その視点から、美術館の回顧展カタログもフォトブックとしてセレクションした。なぜなら、カタログであっても優れたキュレーターによるエディティングが行われたものは作品になり得るからだ。さらにその延長上として、複数の写真をセレクト掲載したアンソロジーも、優れた視点を持つ編者、キュレーターのによるものなら作品であるという視点に立っている。フォトブック・ガイドをリスト化したのも、資料的意味とともに、 それらは編者の作品にもなり得る点を示唆している。いまや写真撮影をしなくても、アート写真の作品は制作できるのだ。

・いまだに過小評価されている分野にも注目
コレクションの醍醐味は、自分の目利きを市場で試すことだろう。既に評価されている高額のフォトブックをただお金に任せてコレクションするのは成り金の行うこと。やはり、いまだに注目されていない分野をいち早く見つけ出し、値段が安いうちに買っておくことが理想だろう。オリジナルプリントの世界では、80年代に過小評価されていたドキュメント系、ファッション系がその後に大きく値を上げている。私が注目したのは、主にコマーシャル、ファッション系で活躍してきた日本人写真家のフォトブックだ。世界的に注目されているアート系の日本人写真家と比べて本当に安い値段で流通しているのだ。

・刊行記念展を開催
「アート写真集ベストセレクション101」の刊行を記念して、収録フォトブックを多数展示するイベントをブリッツで7月19日~8月2日まで開催する。当初の予定より開催が早まったので注意してほしい。
フォトブックの情報を同書やネットで収集することは簡単だ。しかし、フォトブックはリアルなもので情報ではない。ぜひ現物を見て、リアルの大きさ、厚さ、質感などを感じ取って欲しいと考えた。収録されているフォトブック、レアブックとともに、壁面には、リチャード・アヴェドン、ブルース・ウェバー、ジャンルー・シーフ、ピーター・リンドバーク、テリ・ワイフェンバック、マイケル・デウィック、ヘルムート・ニュートン、アンセル・アダムス、デボラ・ターバヴィル、アジェなどの作品も展示される。
私も会場にいることが多いので、ぜひ声をかけてください。

「アート写真集ベストセレクション101」展
ブリッツ・ギャラリー
東京都目黒区下目黒 6-20-29

7月19日~8月2日
休廊 7月28日(月)、日曜、休日もオープン。
1時~6時

なお8月3日(日)には同書購入者向けのトーク・イベント「フォトブック・コレクションへの誘い」も開催! 詳細、イベントお申込み方法については以下をご覧ください。
http://blitz-gallery.com/gallery_ue.html

|

« スティーブン・ショア(Stephen Shore)の新作
「WINSLOW ARIZONA (SEPTEMBER 19th, 2013)」
| トップページ | 2014年後半の予定
フォトブックの展示、トミオ・セイケ
「West Pier」展など。 »

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/170909/59989563

この記事へのトラックバック一覧です: コレクションをフォトブックから始めよう!
「アート写真集ベストセレクション101」展
:

« スティーブン・ショア(Stephen Shore)の新作
「WINSLOW ARIZONA (SEPTEMBER 19th, 2013)」
| トップページ | 2014年後半の予定
フォトブックの展示、トミオ・セイケ
「West Pier」展など。 »