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2015年3月10日 (火)

2015年アート写真市場がスタート
最新オークション・レビュー

最近は、クリスティーズ、ササビーズ、フィリップスの大手オークションハウス主導でアート写真がラグジュアリー・アート化してきた。そのような状況下、中小業者の市場での棲み分けと役割がかなり明確になってきた感がある。だいたい1万ドル(約120万円)以下の低価格帯中心の、伝統的な20世紀写真の取り扱いに特化する傾向が強くなってきたのだ。
それは大手が取り扱わない、価格帯、分野に専門性を発揮していくということ。大手は、優れた作品中心に出品作をかなり絞り込んでセレクションする。写真史や、カテゴリーも意識した上で出品作を調整してカタログを制作してくる。そして、過去に不落札になった作家の作品には冷たい。彼らは売却希望者の作品をすべて取り扱うのではないのだ。
中小はといえば、まったく逆の対応をする。市場性がない作品、落札予想価格の低い作品、無名な写真家の作品、作家のサインのない作品、作者不詳の作品、場合によってはプレスプリントまで取り扱ってくれる。一部のロットについては最低落札価格を設けない、いわゆる成り行きの入札が採用されるケースもある。
かつては大手が取り扱っていたフォトブックも中小が専門に取り扱うカテゴリーになりつつある。

中小業者にとってオークション開催時期も非常に重要になる。大手3社は、春と秋に大規模なオークションをニューヨークで開催する。それに続いて欧州のパリ、ロンドンなどで中規模のものを行うのが年間スケジュールとなる。中小業者はそれと重ならない時期を選んで開催する。それがちょうど今の時期にあたる。 2月にスワン・ギャラリー、3月にブルームスベリーでアート写真オークションが開催されたのでその結果のレビューをお届けしよう。

スワン(Swann Auction Galleries)ニューヨークは2月19日に"Fine Photographs"を開催。いよいよ2015年のアート写真オークション・シーズンが始まった。出品作品は173点で落札率は約72%、総売り上げは約93万ドル(約1.12億円)。昨年12月のオークションよりは数字は改善しているものの、驚きのない標準的なオークションだった。
最高額はヘルムート・ニュートンの"Portrait of Karl Lagerfeld in Paris, 1976"。これは72.4x113 cmサイズの大判作品。ほぼ落札予想価格下限の75,000ドル(約900万円)で落札。ラガーフェルドとニュートンという、大手が得意とする典型的アイコン&スタイル系の人気がここでも高かった。カタログの表紙だった、森山大道のシルクスクリーン作品"Kuchibiru  (Black)" は不落札だった。

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Swann  Auction Galleries

ブルームスベリー(Dreweatts & Bloomsbury)ロンドンは、3月5日~6日にわたって、 単独コレクション・セールの"19th and 20th Century Photographs from a Private Collection"と、複数委託者による"Photo Opportunities"を開催した。
結果は、前者の出品作数は213点で落札率は約75%、総売り上げは約32.6万ポンド(約6136万円)。後者は、出品作数は245点で落札率は約56%、総売り上げは約13万ポンド(約2447万円)だった。
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Dreweatts & Bloomsbury

最高額は、単独コレクション・セールでのジュリア・マーガレット・キャメロンによる鶏卵紙プリント"The Dream, 1869"。1.86万ポンド(約350万円)で落札された。カタログ・カヴァーを飾る、エドワード・スタイケンのシルバー・プリント"Eva le Gallienne, 1923"は4000ポンド(約75万円)だった。同社の結果も、昨年11月より数字は改善しているものの話題の乏しいオークションだった。
少しばかり気になるのが、同社がオークションの一部で取り扱っているフォトブック分野の低迷だ。落札率は、昨年11月が約58%、今回はさらに悪化して約37%だった。フォトブックは低価格帯のアート写真作品のカテゴリーに含まれる。この分野の低調を象徴している存在で、明らかに一時期のフォトブック・コレクションに対する熱狂は冷めている。
世界経済は原油価格低下や長期金利低下により消費中心に改善傾向にある。特に富裕層は、世界的な金融緩和による資産価値上昇で潤っている。一方で、デジタル・テクノロジーの進歩と経済のグローバル化を背景に中間層の所得はいまだに低迷。今回の結果は、中低価格帯アート写真の主要コレクターである中間層からの需要低迷が反映されていると考える。
高額セクターの好調と、中低価格セクターの低調という、市場の二分化が相変わらず続いている。金融市場の世界的な長期金利低下とともに、この状況は景気循環というよりも何かもっと大きい構造的な変化ではないかと感じている。この点についてはもう少し情報を集めて分析を行いたい。

それでは2015年の高価格帯の写真市場ははどうだろうか?次回のオークションレビューでは、先月にロンドンで行われた現代アートオークションでの写真関連の結果を分析したい。
(為替レート:1ドル/120円、1ポンド/188円で換算) 

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