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2015年11月17日 (火)

コレクションの基礎(3)
インテリア向け写真作品の現状

今回はインテリア展示用に商品開発された写真作品の現状を説明しておこう。これらは呼び方を変えると、応用芸術のデザインの範疇に含まれる一般商品だ。アートを拡大解釈するとそれに踏まれるともいえる。しかし、ここでのアートはファイン・アートのことを意味しているので混同しないでほしい。
多くの人は、欧米にはアート写真市場しか存在しないと誤解している。実はインテリア用写真の巨大市場が存在するのだ。専門の販売店が存在しており、見本市もある。最近はオンラインでの販売が増加している。
それらの写真はインテリア展示に合うように、綿密なイメージのマーケティングが行われている。わがままな顧客ニーズに対応するように、様々な作品サイズや豊富なフレームの選択肢も用意されている。モチーフのカテゴリーも豊富で、抽象、建築、海外シティースケープ、自然風景、音楽、 モノクローム、夜景、ポートレート、ヌード、ヴィンテージ、クルマ、海景、動物などの作品が提供されている。商業写真家が商品開発の一環として制作する場合もある。
またアイコン&スタイル系で、作家のアート性が低い作品はこのカテゴリーで販売されることが多い。物故作家の財団から権利を買ってエステート・プリントを制作するケースも散見される。

専門販売店は大都市やリゾート地などの集客が期待できる場所に、複数のフランチャイズ店舗を構えている。一般的にアートギャラリーは高利少売だが、インテリア系は薄利多売のビジネスモデルとなる。デジタル技術の発達で、在庫を持たずに注文ごとに簡単に作品制作できるようになったことが普及のきっかけだ。かつてのポスター販売店に新形態だと理解すればよいだろう。

この分野の購入者層もかなり多様だ。購入予算が少ない一般庶民向けの市場だと考えられているが、アートの購入経験が少ない中間層や富裕層も主要な購入者だ。このような人は、アートは自分の感覚で選べばよいと考えている場合が多いのだ。価格帯もかなり幅広い。ポスター感覚の低価格作品から、2000~4000ドル(約25~50万円)程度までが含まれる。日本の感覚ではかなり高額に感じるかもしれない。しかし、日本でも広告や雑誌で活躍している人気写真家が自らのファンのコミュニティーを作って写真を数十万円で売っている例も数多くある。それらは顧客が好きだから買う一般商品であり、資産価値を持つアート作品ではない。

以前紹介した、世界一高額の写真が売れたと自身で発表したピーター・リック(Peter Lik)。彼については様々な議論が巻き起こされたが、アート界の専門家はインテリア系の写真家と考えている。彼は自身の名前を付けたギャラリーを世界中で展開しており、販売価格は3950ドル(約47万円)からスタートする。親しみやすいヴィジュアルを気にいってコレクションしている人が数多くいるらしい。お金の価値基準は人によって様々なのだ。
アート写真市場で適用される一般的基準では、低価格帯作品は1万ドル(約120万円)以下をさす。通常この半分の5000ドル(約60万円)以下の作品に、投資的な価値を見出さないほうが賢明だといわれている。この種の作品の流通からは、日本でかつてイベント会場などで長期分割払いで数十万円で売られていたハッピー系の版画が思い起こされる。実際、いまではインテリア向けのアート分野では写真と版画が混在している。ともに作品はデータ化されて、インクジェット・プリンターで制作されているのだ。ジグリー・プリントも同じ意味になる。

インテリア向け作品とアート作品は、両者の境界線に位置する作品もあり価格帯では区別しにくい。アート系でも、中堅作家の代表作でない作品、若手写真家の作品が同じ価格帯になることが多い。販売方法での区別も難しくなっている。インテリア用でもアート作品同様にエディションをつけて、段階的に販売価格が上昇するステップ・アップ方式で価格設定している業者も存在するのだ。
写真制作方法は大まかな目安になる。インテリア系は量産しやすいインクジェット・プリンターを使用したデジタルプリントが多い。しかし、デジタル技術を利用するアーティストも存在するので、明確な線引きは不可能だ。結局のところ、店頭では、どのような種類の作品を、いくらで、何点販売しようがそれは売り手の自由なのだ。
このように、現場では様々な種類の写真作品が混在している。海外ではインテリア向け作品として販売する専門業者が存在する。それゆえ、ある程度の情報収集を行うとアート系との区別ができるようになる。しかし、日本ではデザイン重視の作品をアートとして販売している業者もいる。一般の人には非常に分かり難い状況になっているといえる。作品の価値が適正か判断できない商品を、消費者は買わないだろう。これが日本で写真が売れない理由の一つだと考えている。

次回は、現状認識を踏まえて、資産価値を持つ写真作品の見分け方について説明したい。

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