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2015年12月22日 (火)

ロバート・フランク"The Americans"
オークション
歴史的名作の人気に衰えの気配なし!

1955年、スイス出身の写真家ロバート・フランクはグッゲンハイム奨学金を得て全米を縦断する写真撮影の旅を敢行した。彼は約2年の旅をとおして数千点にもおよぶ写真を撮影。その中から綿密に編集を行い83点を選びだしフォトブックを制作する。まず1958年にフランスで"Les Americins"が、1959年に米国版"The Americans"が刊行される。
彼は全米を旅することで、もはや道の先にはアメリカン・ドリームが存在しないことを暴き出す。しかし、幻想は持たないものの多様な面をもつ米国の現状をポジティブに肯定し、そこで生きる支えを家族愛に求めている。彼の当時に追求したテーマは現在にも通じるものがあり、今では最も影響力のあるフォトブックの1冊といわれている。

このロバート・フランク"The Americans"に収録されているオリジナル・プリント83点の美術館による完全コレクションは全世界に4セットしか現存しないとのことだ。今回ササビーズ・ニューヨークで12月17日に開催された"Robert Frank:The Americans(The Ruth and Jake Bloom Collection)"は、収録作のうち77点がオークションにかけられるという、フランクのコレクターには極めて重要なイベントだった。

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Sotheby's Robert Frank:The Americans

この機会に世界中の美術館やコレクションが、できるだけ多くの未保有作品の落札を試みたであろう。結果は、ササビーズのクリストファー・マホニー(Christopher Mahoney)の以下のコメントに集約されている。彼は"今回の強い落札結果は、ロバート・フランクの代表作に対する市場の長きにわたるコレクション熱を示したものだ。オークションを通して入札希望者同士が激しく競り合っていた"と語っている。
出品77点のうち69点が落札、落札率約89.6%と非常に良好な結果だった。総売り上げは約373万ドル(約4億6742万円)で、ほぼ事前の落札予想価格上限に近いものだった。オークションは、ちょうど米国の景気回復に伴う金利正常化を意図した利上げが行われたばかりのタイミングで行われた。利上げ後の金融市場の冷静な動きもコレクターを安心させて入札に参加できた面もあるだろう。
内容を見てみると、落札予想価格上限を超えたのが35、予想範囲内が30、下限以下が4だった。5万ドル越えの高額価格帯の不落札はわずか2点だった。最高額は写真集"The Americans"の最初の収録イメージの"Hoboken(Parade),1955"と、オリジナル米国版のダストジャケットに使用されている"New Orleans(Trollery),1956"だった。ともに237,500ドル(約2968万円)で落札されている。

予想を大きく超える高額落札も散見された。黒人女性が白人の赤ん坊を抱きかかえている"Charleston,S.C,1955"は、何と落札予想価格上限の2倍の162,500ドル(約2031万円)で落札。炭鉱町として知られるモンタナ州ビュートのホテルから撮影された、テーマ的には米国のダークサイドに関わる"Blutte, Montana(View from Hotel Window),1965"も、落札予想価格上限の10万ドルを大きく超える175,000ドル(約2187万円)で落札。"Public Park-An Arbor, Michigan,1955"も落札予想価格上限の2倍を超える68,750ドル(約859万円)で落札。これらは、"The Americans"のテーマ性が色濃く反映されていたが、イメージ的に不人気だった作品が評価されたという印象だ。
"The Americans"50周年版刊行以来、美術館での展覧会や関連するカタログ・フォトブックの発売で市場でのロバート・フランク作品人気は大いに盛り上がった。オークション結果は、その人気はいまだに続いていることを示しているといえるだろう。しかしすでに高価な代表作"New Orleans(Trollery),1956"が予想落札価格範囲内での落札にとどまったことから、相場にいまの取引レンジを上に抜けるほどの勢いはないと思われる。今回のオークションのレベルが今後のフランク作品の指標となるだろう。

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2015年12月15日 (火)

独りよがりが失敗を生む
すぐれたフォトブックの作り方

写真専門誌アパチャーを定期購読していると"The Photo Book Review"というフォトブック関連の情報を記載した季刊新聞がおまけに付いてくる。

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THE PHOTOBOOK REVIEW 009/FALL 2015

アパチャー財団が手掛けている"Aperture Foundation Photo Book Award"などは同紙を通じで情報が紹介される。同賞のことに少し触れておくと、私はフォトブックに対する賞はかなり無理がある試みだと考えている。アパチャーはフォトブックを紹介するカタログ本を出版しているので、現在進行形で優れたものを選んでアーカイブ化するという意図はわからないではない。 だがフォトブックがアート表現の一形態と理解すると、その範囲は広大となり、分野は非常に細分化される。限られた人数で1年間に多くの国々で刊行されたすべてをカヴァーするのはかなり難しいだろう。発売時期も評価に影響すると考えられる。結果的に、どうしても選者や出版社の好みや意向が反映されがちになってしまう。特に実績のない新人の場合はその傾向が強くなるのではないか。しかし、賞の企画・実行には大きな意義があるのは明らかである。上記のような様々な限界の上で導き出された結果だと認識すればよいだろう。これをグローバルな客観的な評価だと勘違いしないことが肝心だ。

さて2015年秋の"The Photo Book Review"第9号では、フォトブック制作プロジェクト時における写真家の心がけについて特集している。参考になる点が多い、非常に興味深い内容なので紹介しておこう。
編集はユトレヒトのデザイン・オフォイスの創業者Arthur HerrmanとJeroen Kummerの二人だ。彼らは"写真撮影は孤独な作業で、そのために写真展やフォトブックなどのプロジェクトを行うときにどうしても写真家自身がすべてをコントロールしようとする傾向がある。しかし、実際には自分以外の人の専門知識を利用すること、つまりコラボが良いプロジェクトにするためには必要だ"と提案している。ここでのコラボの相手とは、編集者、タイポグラファー、グラフィックス・デザイナー、他の写真家、ギャラリストが含まれる。同紙巻頭の編集ノートでは"共同作業と互いに影響を与えあうことがプロジェクト成功のカギを握ると信じている。特にフォトブック形式での実現にはその傾向が強い"と問題提起している。"そのためには写真家はある程度の妥協しなければならない"とし、 さらに"コラボが成立するためには、信頼、正直さ、開かれたコミュニケーション、自分好みのイメージやアイデアを解き放つ能力が求められる。写真家はプロジェクトのチームを「代表」する人であるべきで、「支配」する人であってはいけない"と主張している。

同紙14~15ページに"We Say :Team Up!"として、ポスターのように箇条書きで内容の要点がまとめられているので、簡単に意訳して紹介しておこう。
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他人に対する信用は創造過程を自由に解放してくれる重要な要素だ。
自分の心地よいところにとどまるのではなく、一緒に新しい世界を見つけよう。

いつでも新鮮な視点が必要だ、聞くことに同意し、新しいことを怖がるのを止める。
願望を明確にする、イメージが実際に描写する以上にあなた自身が超えて先をいかなければならない。
オリジナルの発想に互いを引っ張っていこう。
あなたの技量、責任、調査、動機を適応させろ。
あなたのフィーリング、疑問、希望を分かち合え。
あなたの判断を正当化しろ。あなたの視点を調整せよ。
あなたの柔軟性を試せ。
様々な視点からの頻繁な議論を心がけよ。
そして、そのことで自分が居心地悪くなるだろう。
その重大な局面(転機)を大事にしろ。
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翻って、いまの日本ではこのような協力関係構築は非常に難しい。多くの人は同紙の提案の趣旨さえ理解できないのではないだろうか?まずアーティストは、自分が感覚的に正しいと信じていることを追求するべきと思っている人が圧倒的に多い。私は新人を市場に紹介する"ジ・エマージング・フォトグラフィー・アーティスト"展などで若い写真家と接することが多い。同展はいままで4回行ってきたが、残念なことに自分の枠を通してしか世の中と対峙していない人がほとんどだ。自分の興味のない情報やアドバイスはスルーしてしまうのだ。アーティストを目指すはずの新人が、まるで趣味として写真で好きなことを追求するアマチュア写真家と同じなのだ。若くして成長が止まっているわけだから、アーティストとしての将来性はかなり厳しいのではないか。
写真家、デザイナー、編集者、ギャラリストとのコラボも機能しない。常に誰かが主導権を握るような構図になっている。まずは互いに主導権争いが行われるか、主導的な人間が自分がコントロール可能な人を集めるのだ。真の協力関係が成り立つには、関係者全員が自分の持つ枠組みをいったん忘れてニュートラルになり、よいプロジェクト実現のために協力しようという態度を持たないとだめだ。自分の枠内でしか考えることができない人間が一人でもいると混迷が深くなる。日本ではこのような上記のような"Team Up!"の実現は非常に難しいのだ。優れた創作が生まれるには天才の登場を期待するしかないわけで、この辺がいまの日本で優れたアーティストやフォトブックが生まれない理由だとみている。
同紙では、"チームによるフォトブック制作を行う理由は、人間は誰も自分自身にも他人に対しても360度を見渡せる視点を持っていない、客観性はコラボの文脈の中だけで意味がでてくるという考えによる"というRobert Salazar氏の意見を引用している。つまり、それぞれが異なる考えを持って世界を理解していて、解釈はみな違うという個人主義的な前提が西洋にはある。日本では、一蓮托生的なみな同じ考えを持っているはずだという共同体的な考えがある。 これは文化的な違いなので、致し方ないかもしれない。

同紙を読んで直感的に感じたのは、紹介されている考え方はビジネスでイノベーションを引き起こすためのアプローチに近いということ。つまり、アートで新しいテーマを見つけ出し作品を創作することは、ビジネスでイノベーションを発見するのとかなり近いものではないか直感したのだ。例えば米スタンフォード大学のジェームス・マーチ教授が提唱した「知の探索」と「知の深化」では、出来る限り意識的に自分の知らない分野の知に触れることで、新しいものが生まれる可能性が高まると指摘している。
またマサチューセッツ工科大学の上級講師であるオットー・シャーマー博士が提唱している「U理論」では、人間は自分のいままでの人生で培ったフレームワークを通して世の中を把握しがちで、それに気付くことがイノベーションを起こすために必要だと指摘している。
これらは"The Photo Book Review"の、個人が限界的な視点しか持たないから、コラボが必要であるという提案の理由を説明しているといえるだろう。

今回紹介したのはフォトブック制作時でのヒントだが、もちろんこれは作品自体にも適応可能だ。作品制作での失敗は、自分の思い込みを無理やり進めることで起こる。オリジナルな作品を作るためには、まず自らを客観視してテーマ性を検証することが重要なのだが、それがなされないのだ。自分の思い通りに写真集を制作し、写真展を開催する。しかしやがて世の中が自分のメッセージに反応しない事実に気付くことになる。そして多くの人が、日本では自分の写真を理解できるオーディエンスやコレクターがいないと作品作りに挫折していく。今回の"The Photo Book Review"の特集での指摘は、アートとビジネスでは求められる人的な素養は全く違うと思われているが、かなり重なる部分があることを示唆していると感じた。感覚重視の世界と思われがちなアートの創造世界だが、実はシステマテックなアプローチが可能ではないか。そのノウハウを学び理解した上で取り組むと、優れた作品がより効率的に生まれる可能性が高まると考えられる。チームでの共同作業も、それが創作の一部だと参加者全員が理解して取り組めば、文化的背景の違う日本でも実現可能ではないだろうか。天才でなくても、複数の才能を持つ人とコラボすることで、アーティストとして成功する可能性があるということだ。ここの部分についてはやや思いつきの部分もあるので、年末の休みにじっくりと考えて改めてまとめてみたい。 

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2015年12月 7日 (月)

アート写真市場の最前線
現代アート/欧州のオークション結果

2015年秋のニューヨーク・アート写真オークションは、リーマンショック後の2009年春以来の極めて低い売上だった。今まで順調だった高額価格帯が大きく失速し、すべての価格帯で勢いがなかった。
その後、11月上旬にはニューヨークで現代アートのオークションが開催された。こちらは写真メディアでの表現だが価格は現代アートの範疇となる。ほとんどが5万ドル超えの高額価格帯なのだが、富裕層コレクションや美術館を相手とする100万ドル(約1.25億円)超えの作品も出品される。この分野は、どの作品までを写真作品に含めるかでやや判断がわかれる。将来的にカテゴリーの再編が行われる可能性もあると考えられている。写真作品だが、狭いアート写真分野の動向というよりも、現代アート系分野の動向が反映されているといえるだろう。コレクターの顔ぶれも、アート写真分野とはかなり違っている。
今シーズンは、ササビーズ、クリスティーズ、フィリップスの大手3社で約120点の写真関連作品が出品された。全体の落札率は約65%と、まさにアート写真分野の平均落札率とほぼ同じレベルとなった。価格では予想価格上限を大きく超える落札はなく、非常に平均的な結果だったといえよう。
高額落札を見てみよう。最高額はササビーズのゲルハルド・リヒターが音楽家ジョン・ケージに触発されて制作した16点からなる"Cage Grid (Complete Set), 2011"。これらはすべてジグリー・プリントで制作されている。落札予定価格上限を大きく超えて、145万ドル(約1億8125万円)で落札された。続いたのは、これもササビーズでのアンドレアス・グルスキー作品の"Pyongyang  IV, 2007"。落札予想価格下限に近い、139万ドル(約1億7375万円)で落札。クリスティーズでは、英国人のアーティスト・デュオのギルバート&ジョージの"Dead Boards No. 5, 1976"が96.5万ドル(約1億2062万円)で落札されている。
ちなみに今シーズンの現代アートオークション全体での最高額は、ササビーズのイーブニング・セールに出品されたサイ・トゥオンブリー (1928?2011)の"UNTITLED (NEW YORK CITY),1968"で、7053万ドル(約88億1625万円)で落札された。

11月、アート写真のオークションは舞台を欧州に移して行われた。欧州中央銀行がマイナス金利を導入するなど、この地の景気状況は米国よりもはるかに悪い。予想通り、ニューヨークでの弱気トレンドがそのまま続いた。

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Phillips London "Photographs"

フィリップス・ロンドンでの"Photographs"オークションは全体の落札率自体は73%と良好だったものの高額セクターの不落札率が非常に高い47%という内容だった。
クリスティーズ・パリは優れた19世紀のJoseph-Philibert Girault de Prangey のダゲレオタイプが41点出品された。同作の落札は順調だったもののその他の作品は平均的な結果だったことから、全体では75%の落札率だった。希少性の高い作品に対する需要が根強いことが改めて印象付けられた。また話題性が高いロバート・メイプルソープの"Man in Polyester Suit, 1980"は、36.15万ユーロ(約4699万円) で落札された。
同じくクリスティーズで行われたShalom Shpilmanコレクションの単独セールは落札率約62%だった。
ササビーズ・パリでは"Back to Black"が開催された。こちらは、まさに今秋のオークションの傾向を見事に反映した結果で、落札率は約54%にとどまった。高額落札が期待されていたダイアン・アーバスの有名作 "Identical Twins, Cathleen and Colleen, Roselle, New Jersey, 1967"は不落札だった。

その後は、11月13日にパリでテロ事件が相次いだことで、アート・コレクションどころの雰囲気ではなくなってしまった。パリフォトが途中でキャンセルされ、週末に予定されていたオークションは延期されて実施された。それらは平均的な作品のオークションであり、もともとの地合いの悪さも相まって非常に厳しい結果となった。
11月に、ロンドン、パリ、ベルリン、ケルン、ウィーンで開催された8オークションでは、1382点の写真関連作品が出品され、平均の落札率は約59%だった。2015年の年間平均落札率約63%を下回る、厳しい欧州の景気状況やテロの影響が反映された結果だった。

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Sotheby's NY "Robert Frank The Americans"

実はこれで今年のアート写真市場は終わりではない。12月17日にササビーズ・ニューヨークで、ロバート・フランクの歴史的なフォトブック "The Americans"収録83点のうち77点を集中的に取り扱う"Robert Frank:The Americans(The Ruth and Jake Bloom Collection)"が開催される。ロバート・フランク作品は、近年の美術館での回顧展開催でアート性が再評価され、市場価格が上昇した代表例だ。今回の出品作のなかには最近不調気味の高額価格帯のものも含まれる。12月はアートのオフシーズンなのだが、市場がこのオークションをどのように評価し消化するか非常に楽しみだ。市場トレンドが悪化しているだけに、入札参加者が従来のアート写真の範疇のコレクターだけだとややきついのではないかと感じる。現代アート系のコレクターが現代アメリカ写真に興味を持つかがキーポイントになるだろう。 
(為替レート 1ドル/125円、1ユーロ/130円で換算)

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2015年12月 1日 (火)

テリー・オニール「All About Bond」
映画作品はアートになるのか?

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Sean Connery plays golf on the ‘moon’ set of Diamonds Are Forever, 1971
(C)Terry O'Neill

ジェームス・ボンド映画シリーズの新作「007 スペクター」の一般公開前に、メデイアで関連する広告や情報が目立つようになってきた。
新作公開にあわせて、英国ロンドン出身の写真家テリー・オニール(1938 - )の「All About Bond」(オール・アバウト・ボンド写真展)が12月4日からスタートする。
テリー・オニールは、初期のザ・ビートルズやザ・ローリング・ストーンズ、そしてハリウッド映画のスターたちの秀逸なポートレートで知られる写真家。彼の写真は、単なるポートレート専門の写真家とは違い、被写体との深い関係性の中から生まれているのが特徴。そのアート性は広く認められており、作品は世界的なオークションで頻繁に出品されて落札されている。
また彼は、約50年に渡り007・ジェームス・ボンド映画を写真撮影した唯一のカメラマンでもあるのだ。

イアン・フレミングによる1953年の原作発表と1962年の映画化以来、ジェーム・ボンドは、英国文化の最も典型的な部分を世界に紹介してきた。いままで23作の映画シリーズと6名の007俳優により、多くの忘れがたいスタントが演じられ、ボンドカーをはじめとする様々なこだわりの装備類や美しいボンド・ガールたちを世に送りだしてきた。
そして同シリーズが約50年という映画史上最長で、最高の売り上げを誇り、いまでも欧米社会で熱狂的に支持されてきた理由は、世界中のエキゾチックで魅惑的なロケ地での痛快なスパイ映画という面だけでなく、ボンドを通して特徴的な英国文化が紹介されているからだ。英国紳士のライフスタイルや立ち振る舞い、英語のアクセントにもこだわりを持って制作されている。やや無理があるかもしれないが、シリーズを通して各地の観光地を紹介しつつも日本文化の典型的な部分を紹介している渥美清の「男はつらいよ」シリーズと重なるといえなくもない。
長年シリーズを近くからみてきたテリー・オニール、彼はこの奇跡的なロングヒットの理由を以下のように語っている。
"最初のころは、シリーズは数作で終わるとみんな考えていた。こんなに長く続くとは想像していなかった。何がすごかったかといえば、そして長期間にわたっての成功の秘密は、ジェームス・ボンドが常に各時代が反映された存在だったことだろう。60年代のショーン・コネリーはクールかつ伝統的な面を持っていた。時代にぴったりだった。70年代のロジャー・ムーアでは、ユーモアが加わった。80年代のピアース・ブロスナンは、現実的なスタイルとともに現れた。そして、最新のボンドだが、誰もがダニエル・クレイグが適役かを疑った。しかし、彼は完璧な現代のボンドを演じているじゃないか、そして登場したボンドガールたちも同様だろう"

映画の写真というと、宣伝用のスティール写真を思い浮かべる人が多いだろう。しかし、テリー・オニールの写真はそれだけにとどまらない。被写体との関係性を重視する彼の写真スタイルがここでも見事に発揮されている。実際、彼はいまでも歴代の多くのボンド役の俳優と友人関係を継続させているのだ。ロジャー・ムーアが彼の写真にサインしているのはまさに親友の証しだろう。彼によると、撮影の合間も常に俳優たちと行動をともにしており、ところどころで様々な撮影のアイデアを提案して実現させてきたという。映画撮影という厳しい制約の中でも、彼は被写体とのコラボ作品実現に挑戦していたのだ。
ショーン・コネリーが映画"ダイヤモンドは永遠に"の月面のセットで行っているゴルフのバンカーショットや、"ゴールドフィンガー"での、海岸で撮影されたオナー・ブラックマンの作品などはその極みといえるだろう。
テリー・オニールは、良い写真を撮影する秘訣は被写体がカメラを意識しないようにすることだと発言している。彼は本映画シリーズでもそれを見事に実践しており、関係者でしか見ることができない数々の素晴らしいジェームス・ボンド俳優のパーソナル・ショットを撮影している。「All About Bond」展は、ボンド映画のファンが楽しめるのはもちろん、アート写真ファンもコレクションの対象となる作品と出合える写真展だ。

◎テリー・オニール「All About Bond」写真展

会期(1):インスタイル・フォトグラフィー・センター
2015年12月4日(金)~ 12月20日(日)
1:00PM~6:00PM / 休館 月曜日  / 入場無料

〒106-0047 東京都港区南麻布5-2-9 
東京メトロ日比谷線 広尾駅下車 徒歩7分
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会期(2):ブリッツ・ギャラリー
2016年1月8日(金)~ 2月6日(土)
1:00PM~6:00PM/ 休廊 日・月曜日 / 入場無料

〒153-0064  東京都目黒区下目黒6-20-29  
JR目黒駅からバス、目黒消防署下車徒歩3分 / 東急東横線学芸大学下車徒歩15分

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