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2016年6月 7日 (火)

AXISフォトマルシェ3の楽しみ方ガイド
見る、買う、参加する、そして見立てる

Axis
6月9日~12日にかけてAXISフォトマルシェ3が開催される。タイトル一部のマルシェ(市場)が意味するように、カジュアルなフォトフェアを意識したイベントだ。フォトフェアの原点である写真に特化した「蚤の市」や「フリーマーケット」再現を目指している。まだアート系の写真市場が未発達の日本では、外見の形式だけ欧米の真似をしても結局は空しい結果のイベントになってしまう。まずは応用芸術系や工芸品系など、幅広い展示作品を含めた、コレクション初心者向けの敷居の低いイベント開催が必要だというのが企画意図だと思われる。
 
色々な楽しみがあるイベントだが、ここでは「見立て」を意識したフォトマルシェ3での写真の接し方をいくつか提案したい。
まずはコレクションに興味を持つ人への、将来性があるかもしれない若手・新人や中堅のアーティスト作品の選び方だ。この分野の作品は、現代アートのマーケットが意識されている。ここでは写真家ではなくアーティストと呼ぶことにする。ここでは"テーマ性の見立て"に挑戦してみよう。写真の表面上の評価だけではなく、アーティストがどのような意図をもって作品制作しているか、それが現代社会とどのような関係性を持つかを読み解こうとするのだ。個展ではないので、展示作からだけではなかなか多くの情報が入手できないかもしれない。その時は出展者や、もしいればアーティスト本人に疑問点をぶつけてみよう。自分の理解できる時代性を持ったテーマが作品から読みとれ、何か心に響くものが感じられれば購入を検討してほしい。ただし、若手アーティストを支援するような理由付けは絶対に避けよう。見る行為に真剣さがなくなるし、彼らに対して上から目線で接することにもなりかねない。
気に入ったら、あとは販売価格をどのように判断するかだ。多くの人は適切な相場観がわからないだろう。私の経験則だが、日本人の新人の場合、小さめのA4くらいの作品は額・マット込みで3万円、大きめのA3くらいは同じく5万円以内が目安になる。キャリアが長い人ほど実績があるので相場は高くなっていく。資産価値があるアーティストの場合は、すでに国際的な相場が決まっている。販売価格もそれに合わせて設定されており、残念ながらバーゲンセールはない。自分の購入予算によって判断してほしい。
 
次は写真を見る人への提案を行いたい。多くの人は、写真をデザイン・テクニック的な視点や、自分の感覚・気分に合うかどうかで評価する。それだと写真を見る面白味はあまり続かない。直ぐに飽きてしまうだろう。ここでは再び「見立て」を紹介する。写真家が無意識の上で作品制作されているかをみてみよう。これは写真家の"作品制作意図の見立て"と呼んでいる。作品が写真家のエゴで作られたのか、それとも心を無にして作られたのかということだ。自然と同じリズムを持った写真は見ていて心が和むものだ。自分の直感を大事にして何かを感じる写真を探してみよう。写真や現代アートが専門外の人が撮った写真の中に、案外このような優れた作品が見つかることがある。当ブログを読んでいる人はもう気付いたと思うが、これは私どもが日本の新しいアート写真の価値観として提案している、民藝や限界芸術の写真版の「クール・ポップ」写真になる。

もし直感に訴える写真との出会いがあったら、「見立て」を更に進めてみよう。その写真をどのように額装して、どのような空間に展示すれば一番映えるかを問うのだ。それらを"設えの見立て"、"空間取り合わせの見立て"と呼んでいる。もし自分の現在の生活空間の中にそれがイメージできるスペースがあるのなら、そこではじめて予算を考えて作品購入を検討すればよいのだ。実際に経験豊富なコレクターはそのような見立てを無意識の上で行っている。インテリアの中で、新たにコレクションを飾る複数の場所を想定した上でギャラリーやフォトフェアにいくのだ。特に外人コレクターは、"テーマ性の見立て"を行って作品の候補を絞り、"空間取り合わせの見立て"を行って購入作品を決める場合が多い。

フォトフェアの面白さは、幅広い実力のアーティストや写真家の作品が見比べ可能なことだ。アマチュア写真家や学生には、自分の実力を推しはかる意味で非常に参考になるだろう。そのような人たちには、公開で開催されるポートフォリオ・レビューが参考になると考える。これは特に作家を目指す人に専門的なアドバイスを行うものではなく、写真家、評論家、ディーラー、ギャラリストが参加者の作品に対する感想をそれぞれの立場から発言するようなカジュアルなイベントになるようだ。公開というのが非常に面白い。専門家が他人の写真に対してどのようなコメントをするかは、写真がうまくなりたい人には興味があるところだろう。レビュー参加受付は締め切られているが、来場者は誰でも見学できる。こちらは10日(金)、11日(土)の午後5時より開催予定。

ブリッツでは、ウィリアム・ウィリー(William Wylie)の"Route 36"をメインで展示する予定だ。ルート36はアメリカを東西に走るハイウェイ、コロラドからオハイオまで距離は約2,276キロある。ウィリーは主にカンザスで撮影を行っている。この道は各町の中を貫いて通っているのが特徴だ。彼はルート36の旅に過程で、まるで時間が止まったようなコミュニティに遭遇。大草原の中に、古い映画館、小さなカフェ、美しい高いサイロが集約されて存在する場所を発見するのだ。そこで彼は場所特有の雰囲気を感じ取り、写真で表現しようと試みたのだ。今回は2010年に刊行された"Route 36"(Flood Edition刊)から銀塩モノクロ写真約12点をセレクションして展示する。ロバート・アダムスの写真に雰囲気が似ているので、アメリカの郊外シーンが好きな人に是非お勧めしたい。
なお今秋、ブリッツではウィリアム・ウィリーとテリ・ウェイフェンバックの二人展"As the Crow Flies"を開催する予定だ。
 
今回も昨年同様にJPADS(ジャパン・フォトグラフィー・アート・ディーラース・ソサエティー)も参加。若手新人の写真家を紹介する。よくどのような基準で選んでいるのかと聞かれたりする。要は作品制作を続けている人に発表の機会を提供しているだけだ。作品制作活動を続けている人は、テーマ探しのために常に自分以外の作品に興味を持っている。定期的にギャラリーに写真展や見に来たり、写真集を買いに来てくれる。ミュージシャン目指す人が、ライブに行って、CDを買うのと同じことだ。当然、その時に制作している新作に話題がおよび、色々と意見交換やアドバイスを行うことになる。単純にそのような人に声をかけているのだ。私は長年にわたり、多くのアマチュアやプロ写真家に接している。JPADSブースに推薦可能な膨大な数の写真家がいるのだが、ギャラリーに来たり、新たな作品を見せに来る人は非常に少ないのだ。作家活動はすべて自助努力が基本にある。そして作品制作の継続は、作品の評価以前の表現者の条件なのだ。
しかし、上記の例が示すように日本ではそれが非常に難しいのだ。そのような現状を分析して生まれたのが、「日本の新しいアート写真カテゴリー/クールでポップなマージナル・フォトグラフィー」になる。上記の「見立て」が関わってくる。興味ある人は過去のポストを読んでほしい。
会期中、私はだいたい会場にいる予定だ。見つけたらぜひ気軽に声をかけてください。

"AXIS Photo Marche 3"
・会期:6月9日(木)~12日(日)
 11:00~19:00 入場無料   
 オープニングレセプション 8日 18:00~
・会場:アクシスギャラリー
(港区六本木5-17-1 アクシスビル4F)    

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