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2016年10月11日 (火)

2016年秋のNYアート写真シーズン到来
最新オークション・レビュー(速報!)

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Sotheby's London
まずはニューヨークのアート写真の前に、ロンドンでの現代アート関連の出来事に触れておこう。先週はロンドンの主要アートフェアであるFriezeが開催された。それに合わせて大手3社による現代アート・オークションが行われている。
ロンドン市場は、6月24日のブレグジット以来、様々な不安要素が語られ慎重な見方が多かった。弱めに推移する相場を意識して出品数は絞られ、落札予想価格もかなり控えめに設定されていた。ところがふたを開けてみると、現代アート作品への世界中からの需要は予想以上に堅調だった。3社ともに落札率は非常に高く、価格の大きな下落傾向は見られなかった。
ササビーズ・ロンドンでは、ジャン・ミッシェル・バスキアの"Hannibal,1982" が、約1060万ポンド(@130/約13.78億円)で落札。ゲルハルド・リヒターの"Garten,1982"が、約1020万ポンド(@130/約13.26億円)で落札された。
メディアの報道によると、アートフェアのFriezeも非常に好調な売れ行きだったそうだ。
私はアート作品の好調な売れ行きには為替が大きな影響を与えていたと見ている。対ドルで31年ぶりのポンド安になったことは報道されているとおりだ。最近になったブレグジットに対する悲観的な見方が強まり、為替相場でポンドがさらに急落している。ドル資産を持つ海外コレクターには、2014年と比べて約25%、ユーロも"1ユーロ=1ポンド"が現実味を帯びてきている。対円では1年目と比べて約30%も安くなっているのだ。適正な落札予想価格とポンド安が、優れたアート作品への割安感を生み、結果的に好調な売り上げにつながったのだろう。
 
さてニューヨークで開催された大手3社のアート写真オークションを分析してみよう。
まずこれまでの経緯の復習から始める。オークションの総売り上げは、リーマンショック後の2009年に大きく落ち込み、2013年春から2014年春にかけてやっとプラス傾向に転じた。しかし2014年秋以降は再び弱含みの推移が続き、ついに2015年秋にはリーマンショック後の2009年春以来の低いレベルに大きく落ち込んだ。2016年の春も同様の傾向が続いた。すべての価格帯で低迷が続いているのが現状だ。
さて今秋のニューヨークの結果だが、大手3社の総売り上げは約1135万ドル(約11.91億円)。今春よりは約5%弱の減少だった。1年前と比較すると約12%増加しているが、いまだにリーマンショック直後の2009年春以下のレベルにとどまった。平均落札率は約65.2%と、春の67.8%より低下、昨秋の62.1%よりは多少改善している。まだ約1/3の出品作が不落札という厳しい状況に変化はない。春と秋の定例オークションの落札額の総合計をみるに、2016年は約2326万ドル(約24.42億円)と、2009年以来の低い水準。直近のピークだった2013年と比べると約48%の水準にとどまっている。

クリスティーズは"Photographs"オークションを、10月4日のイーブニング・セールと5日のデイ・セールの2日間にかけておこなった。落札率は昨秋の56%から61%へ改善、しかし春の63%からはやや低下した。総売り上げも約272万ドルから約353万ドル(約3.71億円)に改善した。しかし春の約408万ドルよりは減少した。
イーブニング・セールの目玉だった最高金額落札が見込まれていたエドワード・ウェストンの"Shells, 6S, 1927"。落札予想価格40~60万ドル(約4~6千万円)は不落札。しかし、デイ・セールのロバート・メイプルソープの"Flag, 1987"は、48.75万ドル(約5118万円)で落札された。マン・レイの"Rayograph, 1922"も、29.55万ドル(約3102万円)で落札されている。

イーブニング・セールに出品された現代アート系のトーマス・シュトゥルートの約168X215cmの巨大作品"El Capitan (Yosemite National Park), 1999"は、18.75万ドル(約1968万円)で落札。ロバート・フランクの代表作の一つ"Hoboken, New Jersey, 1955"も 12.5万ドル(約1312万円)で落札。ともに落札予想価格の範囲内だった。
個人的に興味を持って見ていたのがアイデアが重視されたダグ・リカードの"@29.942566, New Orleans, LA (2008), 2009"。約64.8 x 104cmサイズの大作で5~7千ドルの落札予想のところ、6250ドル(約65万円)で落札された。

フィリップスも"Photographs"オークションを、10月5日のイーブニング・セールと6日のデイ・セールの2日間にかけて実施。落札率は昨秋の69%とほぼ同じ68%、ちなみに春も68%だった。総売り上げは約422万ドルから約492万ドル(約5.16億円)に約16%改善。春の約449万ドルよりも増加した。結果的には、フィリップスが今シーズンの最高売り上げを記録。2014年秋以来、連続してトップを独走している。

最高額の落札予想作の、ギルバート&ジョージの"Day,1978"。16点の写真作品からなるサイズ 202.3 x 162 cmの大作は落札予想価格内の67万ドル(約7035万円)で落札された。
注目作のカタログのカヴァー作品となるリチャード・アヴェドンによるバルドーのポートレート"Brigitte Bardot, hair by Alexandre, Paris, January 27, 1959"。こちらも落札予想価格内の25万ドル(約2625万円)で落札。
ダイアン・アーバスの子供が手榴弾を持ったアイコン的な有名作"Child with a toy hand grenade in Central Park, N.Y.C.,1962"。こちらはDoon Arbusサインの、Neil Selkirkによるプリント作品に関わらず、7~9万ドルの予想を大きく上回る15万ドル(約1575万円)で落札。
個人的には、ハーブ・リッツ以外のクラシック系、コンテンポラリー系のファッション作品に落札が目立ったのが気になった。ホルストやアーヴィング・ペンなどだ。一方で、リチャード・アヴェドンのポートレート作品はすべて落札されていた。これらは、いままで比較的過小評価されていた作品群だ。この分野は全般的にもう少し作品の正当な再評価と価格帯の見直しと修正が必要なのだろう。
 
ササビーズは"Photographs"オークションを10月7日に開催。落札率は昨秋の60%から66%に改善、しかし春の74%からは低下した。総売り上げは約322万ドルから約289万ドル(約3.04億円)に約10%悪化している。春の約332万ドルよりも悪化。ササビーズにとっては、今秋も厳しい結果だった。
最高額の落札が見込まれていた、アルフレッド・スティーグリッツによるオキーフのポートレート"Georgia 'Keeffee"は、落札予想範囲の下限以下の25万ドル(約2625万円)で落札。
カメラ・ワーク誌の50号の完全セットも、落札予想範囲内の18.75万ドル(約1968万円)で落札。
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Sotheby's New York
カタログ表紙作品" Leap into the Void, 1960/late 1960s"は非常に珍しく、興味深い写真。アーティストのYves KleinとHarry Shunk、Janos Kenderとのコラボ作品。2枚のネガを重ねて空中にクラインが飛び出しているようなヴィジュアルを制作している。1960年にパロディー新聞の"Dimanche-Le Jornal d'un seoul jour"に発表されている。こちらは落札予想価格上限の約2倍を超える6.25万ドル(約656万円)で落札。
好調だったのがアンセル・アダムス。19点が出品され18点が落札。代表作の"MOONRISE, HERNANDEZ, NEW MEXICO、1941"は1969年ごろにプリントされた作品。落札予想価格の上限の20万ドル(約2100万円)で落札された。
 
今秋の結果を見るに、今の水準からの底割れ懸念はなさそうだ。しかし、年末にかけては米国の金利上昇で世界経済先行きへの不安感が高まる可能性がある。マイナス金利で苦しむ欧州銀行の信用不安、中国経済の失速や不動産バブルの崩壊リスクも囁かれている。不安要素が多く、急激な相場改善は予想しにくいだろう。これからじり貧相場が続く可能性も否定できない。しばらくは資産価値のある作品に需要が集中する相場展開は続きそうな気配だ。
とりあえず、11月3日に為替で揺れる英国で開催されるフリップス・ロンドン"Photographs"オークションには注目したい。
(為替レート 1ドル/105円で換算)

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