2007年10月20日 (土)

ルネ・グルーブリィのサイン入り限定写真集をゲット!

セイケ氏が"Portraits of Zoe"を制作するときに影響を受けたという、ルネ・グルーブリィの写真集を入手したことは前回書いた。その後、昔にウィーリー・ロニスの写真集を購入したパリの古書店から、新品同様の本があるという別の連絡が舞い込んだ。1954年の本で新品同様?よく本の情報を見てみると、2002年刊とある。どうもオリジナルの再版らしいのだ。それも600部限定、作家のサイン入りという。早速、セイケ氏に報告したところ、ぜひ見てみたいという。オリジナル版と再版を見比べるのは結構興味深い。値段は限定本の新品同様なので、前回入手のオリジナル版より高くなったがサイン入りということもあり注文した。

Blog1

待つこと約2週間、先週末に写真集が到着した。パリからにしてはずいぶん早かった。本は同じくペーパー判だが、非常にモダンなデザインになっていた。表紙の写真は同じが、なんと半透明のダストジャケットをまとっており、それに紫色で作家名とタイトルがプリントされている。フォーマットは違うが、ブルース・ウェーバーの1988年Knopf刊の写真集と同じ感じのものだ。ページの紙質は違うものの写真印刷の感じはオリジナルに近い。イメージによっては情報量が多く感じるものも散見された。このあたりはセイケ氏に見てもらい判断を伺ってみたい。中身には、"Private re-edition"、スイスで制作と記載されているので、グルーブリィ本人が個人的に限定数だけ制作したようだ。グリーンのペンでサインと番号が記入されていた。サム・ハスキンスも同じように絶版本のプライベート版を作っている。欧州では作家品人による再版は珍しいことではないのかもしれない。
Birgit Filzmaierという人による序文には色々と興味深いトピックが書かれていた。いくつか紹介すると、本作はグルーブリィと妻のリタとの南仏、パリへのハネムーンのときに撮影されたとのこと。彼は、ドキュメントではなく、感情、喜び、雰囲気をヴィジュアルにしようと試みたらしい。本の編集は彼自身が手がけ、この旅行の写真をセレクトし並べ直して、一日の思い出の記録のようにしたかったという。1954年のオリジナルの発行部数はドイツ版が700部、英語版300部だったことも判明した。当時の状況も詳しく書かれていた。グルーブリィはスイスよりも写真先進国の米国での評判が高く、なんとU.S.カメラの1955年版の掲載作品がMoMAのエドワード・スタイケンの目に留まったそうだ。彼は1953年に「ザ・ファミリー・オブ・マン」のイメージ探しでスイスを訪れたときにグルーブリィと会って、写真集掲載作品をMoMA用に購入したそうだ。そして1955年開催の伝説の「ザ・ファミリー・オブ・マン」写真展にも、他のスイス人作家のロバート・フランク、ワーナー・ビシュフなどとともに参加したという。

実はU.S.カメラの1955年版も米国書店のオンラインショップで発見し入手した。
Blog2
これは、なんと10ドルだった。巻頭には、その後のアート写真の発展に多大な影響を与えた、ロバート・フランクやリチャード・アヴェドンなどが紹介されている。その本にルネ・グルーブリィが紹介されているのは非常に興味深い。前回も書いたが彼の"The Eye of Love"のアプローチはまさに現在のアートとしてファッション写真と同じ、彼はそのさきがけなのだ。編集したのは、U.S.カメラを創設したトム・マロニー氏。調べてみると、彼は米国のフォトジャーナリズム発展に貢献した人物ということ。当時から作家の自己表現の手段として、写真を理解していたことは明らかだ。たぶん、セイケ氏以外にもU.S.カメラを通してグルーブリィに影響された人が数多くいるのではないだろうか。

写真集の素晴らしいことは、本になった作品は世界中の人が見てくれる可能性があり、 時間が経過しても将来に再評価される場合があることだ、というようなことをマーティン・パーが書いていた。もし写真集がなかったら、スイスの若い写真家の作品が語られることはなかっただろう。作家にとって写真集出版がキャリア上、どれだけ重要か改めて感じさせられた。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2007年10月 3日 (水)

アートフォトブックスのさきがけ
ルネ・グルーブリィの写真集をゲット!

Blog

先日のトークイベントで、トミオ・セイケ氏が影響を受けた作家として紹介したのがスイス人写真家ルネ・グルーブリィ(1927生まれ)だ。現在ギャラリーで展示中のゾイ・シリーズ誕生の背景に彼の写真集「The eye of Love」があるという。これはグルーブリィが恋人と旅して、様々な状況で自然体の彼女の姿を撮影したもの。
私はどうしてもそのオリジナル写真集が見たくて、海外の複数ブックディーラーに問い合わせを行った。1954年刊の知名度が低い本なので入手はかなり困難だと覚悟していた。
それがなんとイギリスのグロセスター州の古書店から在庫があると連絡をもらった。現在、ポンド高で、航空便送料や保険を入れるとかなり高くなったが迷わず注文、昨日現物が無事送られてきた。なにせ50年以上前のペーパーバック、全体的にかなり傷んでいた。古書の評価ではFairの状態。
セイケ氏は昔この本の現物を見たことがあるが、印刷が悪く購入しなかったそうだ。たしかに、印刷の質はよくない。私は、マーティン・ムンカッチの写真集「Nude」に、紙質や印刷の感じが似ていると感じた。しかし、写真集としてのレイアウトはすごく斬新だ。 表紙には写真が文字なしで全面に使われている(上のイメージ)。僅か20数枚だが、モノクロ写真のレイアウトもシンプルですごくいい感じなのだ。これには少しばかり驚かされた。この作品がセイケ氏のゾイ・シリーズを発想する原点になっていることがよくわかる。 またその後に取り組んでいたヌード・シリーズにも影響を与えていることもまちがいないだろう。Basil Burtonという編集者の序文が時代を感じさせて興味深い。50年代は写真の価値観が大きく変化している。絵画的な表現から脱して、写真独自の表現を追及することがやっと一般化してきた。また記録ではない、作家のパーソナルな視点を表現するメディアへと展開してきた時期なのだ。この写真集はその先駆けで、ルネ・グルーブリィの作品集と意識されて制作されているのだ。

トミオ・セイケ氏のファンならこの入手困難な写真集の中身を見たいだろう。古くて非常に傷みやすいが、私がギャラリーにいるときはできる限り現物をお見せしたい。興味のある人は店頭で声をかけてください。土曜の午後ならだいたいギャラリーにいます。

トミオ・セイケ写真展"ZOE"開催案内は以下をご覧ください。
http://www.artphoto-site.com/gallery_exh_074.html

| | コメント (1) | トラックバック (0)

2007年9月 2日 (日)

夏休みに読んだ1冊
優れた写真作品の作り方

Blog
夏休みに"Image Makers, Image Takers"というインタビュー集を読んだ。アート・フォト・サイトの今週の写真集でも紹介した本だ。
英文のエッセーは文章が難解で辞書なしでは趣旨がわからくなる。その点、インタビュー形式だと英語でも比較的すんなりと読める。気になる作家の部分からピックアップして読めるのもいい。
私は外国人によるインタビュー本が好きだ。質問がシンプルであくまでも写真家が中心だ。日本人の場合、インタビューする側が自分の意見を主張したり、個性を出そうとする場合が多い。難しい仕事なので有名な専門家がインタビュアーを勤めるからかもしれない。写真集にも同じような傾向があると思う。
この本のインタビュアーはジャーナリスト、評論家のアン・セリーナ・イエガー氏。「優れた写真作品制作にはシャッターを押す以外に何が必要か」という彼女の素朴な疑問を世界的に成功している写真家に投げかけている。厳選されたイメージも約200点収録されている。
本は二部構成。第1部ではアート、ドキュメンタリー、ファッション、広告、ポートレート分野の写真家20人に、キャリアのきっかけ、作品製作の動機や発想法を訊いている。実はインタビューされている写真家セレクションがこの本を購入したきっかけでもある。 以下のように、まさに最前線で活躍しているトップ・フォトグラファーばかりなのだ。
トーマス・ディマンド、ウィリアム・エグルストン、ボリス・ミハイロフ、
スティーブン・ショアー、マリー・エレン・マーク、マーティン・パー、
ユージン・リチャード、セバスチャン・サルガド、デビッド・ラシャペル、
デビッド・シムス、マリオ・ソレンティ、エレン・ヴォン・アンワース、
ティナ・バーニー、アントン・コービン、リネケ・ダイクストラ、ランキン。

実は第2部がかなり面白い。作者は、ロベルト・ドアノーが「写真は見てくれる人のために制作されることを忘れてはいけない」と発言していることを引用して、写真家とともにそれを見せる人の重要性を主張している。編集者、キュレーター、ギャラリスト、エージェンシーディレクター、アートブック発行者がどのような価値基準で写真を評価、セレクションして仕事をするか探求している。欧米では関連分野の専門家が写真家の能力を引き出す役割を果たしている、と考えられている。彼らはタイトルの「Image Makers, Image Takers」の、
「Take」、つまり写真家のイメージを取り上げて世の中に紹介しているのだ。表舞台にあまり出てこないが、彼らの写真家との共同作業があってはじめて写真の仕事が展開する。これらの人々に注目したインタビューは非常に珍しい。作者が業界内のビジネス・システムをよく理解していることがわかる。
質問項目は、新人写真家へのアドバイス、撮影哲学が必要か、作品の発想法、などの同様な質問が写真家、キュレーターたちに投げかけられており、それらの個別の回答を読み比べてみるのも面白い。以下に面白いと思った箇所を少しだけピックアップしてみよう。
訳が下手でニュアンスが伝わらなかったらお許しください。

(アン・セリーナ・イエガー)
・彼らの多くは何かを探求したり、問いを投げかける手段として写真を使用している。
・写真を見ることは時たま見逃される。写真家と見る側の目は、筋肉のように鍛えられなければならない。
・ヨゼフ・アルバースは、見る人が能力を持っていれば、写真の中に写真家の個性を見つけだすことができる、と言っている。
・アンドレ・ケルテスは、誰でも見ることができるが、必ずしも見て知ることができるとは限らない。最高レベルの写真はただのきれいなイメージをはるかに超えている、と言っている。
・カルチェ=ブレッソンは、私にとって写真撮影は叫びであり、自分自身を自由にする行為だ。決して、個人のオリジナリティーを主張したり証明するためのものではない、と言っている。
(スティーブン・ショアー)
・若い作家に会って、彼の主要な目的がチェルシーのギャラリーでの個展開催と聞いて驚いた。私の若いときとあまりにも違うのだ。私は写真、世の中、自分自身を理解しようとしていた。そのために写真を撮影しながら常に様々な疑問点を探求していた。
・偉大な写真家の作品は、個人的な探求の結果に生まれたものだと私は信じている。
・日常の中で非日常を見つけだすには、意識的な注意が必要だ。心の状態が作品に反映されたり、カメラの選択などの制作方法に影響を与える可能性があると思う。
(カミラ・ブラウン)
・キュレーターの仕事は、人々が作品の背景のアイデアに思いを馳せるようにさせることだ。作品が見る人を考えさせ興味を持てばそれはアートとしての価値があることだ。優れた展覧会は思いや考えを呼び起こす、答えよりも多くの疑問点が湧き上がるものだ。
(インカ・グラーヴ・インゲルマン)
・写真で重要なのは、よく知られた視点を再解釈しているか、また全く新しい組み合わせをを作り出しているかだ。テーマはまねできるけれども、その見方や解釈は誰も盗むことができない。
(ルドルフ・キッケン)
・写真家がアーティストになるには、堅実さと持続が重要だ。長期的にはただ美しい、衝撃的なだけの写真は見飽きてくる。
(ダイアン・ダフォー)
・優れた写真家は、ただ撮影するのではなく、なぜ撮影しているかを認識している人だ。
(キャシー・ライアン)
・人が覚えている優れた写真は感情レベルで共鳴している。それは対象の深い理解を与えるとともに、何か新しい見方を提供してくれる。
・写真は100%問いかけだ。優れたパワーを持つ写真は言葉を超える。

様々な意見や考え方があり、新たな疑問点もわいてくるかもしない。一方で、エッセンシャルな面では共通点も数多くあることがわかるだろう。アート写真ファンはもちろん、この分野でのキャリア形成に興味ある人には格好の参考書だろう。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2006年8月11日 (金)

名古屋のレア・ブック専門店

ギャラリーの仕事は、写真展終了後のほうが忙しい。
開催時は、いつ来るか予想できない顧客に対応するためにできるだけギャラリーにいるようにするのだ。会期が終了すると、普段出来ない各種打ち合わせ、営業活動などがどうしても集中してしまうのだ。地方都市への出張も多くなる。

先日、名古屋市に出張した際に洋書中心のセレクトショップ"ONE on ONE"を訪れた。前から行きたいと考えていたがなかなか名古屋に行くチャンスがなかった。
実はオーナーのM氏は10年以上前から知っている。彼はアート写真と写真集のコレクターで、以前ギャラリーが広尾にあった時代は客としてよく顔を出してくれていた。外資系企業に勤めていたのが、昨年ついに自らの膨大なコレクションを生かして理想の専門店を地元でオープンしたというわけだ。
彼のポップでモダンな好みはよく知っている。洋書、和書、雑誌、DVDなどの幅広いが一貫した店内の品揃えを見て、まるで彼の脳の中を覗いているような印象だった。しかし、本当に好きな貴重本はどうやら店頭に出してないようだった。また在庫のネット販売も行ってないという。昔に安く買ったレアブックをネットで安く売るような安易な仕事はしない、という本を愛するブック・ディーラーのプライドを感じた。ネット時代は価格ではなく情報力で勝負しなければ生き残れない。M氏の持つ膨大な情報は、お客さん好みの本をアドバイスするソムリエやコンシェルジェのような役割をはたすだろう。

"ONE on ONE"での私の収穫は、北島敬三の"ニューヨーク"(白夜書房,1982)と洋書の"White Towers"(MIT PRESS, 1986)だ。ずっと捜していた絶版写真集で、値段も東京やネットよりかなり安い掘り出し物だった。

Blog_01_2

ショップの場所は名古屋市中区栄3-13-1 南呉服町ビル3F、プリンセスガーデンホテルの近くだった。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2006年6月22日 (木)

ニック・ワプリントンの写真集を購入

Waplington_coverニック・ワプリントン(Nick Waplington)は1965年英国生まれ。1991年にApertureから刊行された初写真集"Living Room"で一躍有名になった。イギリスの労働者階級2家族の日々の生活を自然体で撮影したものだ。被写体たちがカメラの存在を全く意識していないことが印象的だった。リチャード・アベドンが彼の仕事を評価し、写真集のためにエッセーを書いたことで注目された。現在は、レア・フォトブック扱いで古書市場ではかなり高価になっている。

今回久しぶりにワプリントンの新刊"You Love Life"を購入した。彼にとって8冊目の写真集だそうだ。 タイトルの"You Love Life"は、"You love life as much as we love death"というセンテンスから引用されているとのこと。これは、2003年のスペイン列車爆破事件に際して、アルカイダ側の目的に共感する人がウェブサイト上で行った発言だ。後日、この文章を米国大統領が、"You choose life while we choose death"のように読み替えて解釈されたということだ。
ワプリントンは、似ているようだが、様々な解釈が可能なこの二つの文章が頭から離れなかったそうだ。このことがきっかけで本書の制作を思いついたとのことだ。
約20年間の自分の人生と選択を振り返り、非常にプライベートな写真をセレクションすることで上記二つの文章の意味を自分なりに解釈したのがこの写真集なのだ。
ややコンセプチャルだが、欧米作家は時代のインサイダーであろうという強い姿勢を持っている。しかし、政治的なメッセージと個人のプライベート・ショットとをうまくかみ合わせて表現するのは非常に難しい作業なのだと思う。

ハードカバー、カラー78点が収録、限定1000部で入手した本は作家のサイン入りだった。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2006年4月 4日 (火)

再発見されたPaul Himmelの写真集を入手

Blog_002

個人的にアートとしてのファッション写真をテーマにしている。ただし、洋服が写っているだけのものには興味がない。ドキュメントの生き生きした感じがファッションに取り込まれているようなイメージが好きなのだ。関連する写真集はだいたいコレクションしている。

今回入手したのは、ポール・ヒメル(Paul Himmel)の写真集。実は彼はハーパース・バザーで活躍した女性写真家リリアン・バスマンの夫なのだ。バスマンの資料を調べているときに写真集の存在を知った。本のアートディレクションがバスマン、紹介文を書いているのはファッション写真に詳しい写真史家マーティン・ハリソンだった。伝説のアレクセイ・ブロドビッチのクラスに参加し、"教え子の中で、私の意味する動きを一番理解している。"と評価されたらしい。ブロドビッチが認めた写真を見ないわけにはいかないのですぐに購入を決定した。アマゾンで調べたら、ASSOULINE、2000年刊行で既に絶版だった。しかたなく、知り合いの海外業者に頼んで中古本を取り寄せた。本自体の価格は安いものの、航空便の送料が高いので、コストは1万円弱くらいだった。

予想どうりに彼の写真は非常に魅力的だ。生き生きと動きのあるモノクロ写真はいまみても斬新、もしかしたらバスマンが彼に影響を受けていたのではないかと思えてきた。サーカス、ヌード、シティー、ボクサーなどのテーマで撮影しているが、特に興味深いのがバレーのシリーズだ。これらはブロドビッチが撮影した"バレー"と重なって見えてくる。写真集表紙はグランド・セントラル駅でジュニア・バザール用の仕事に先んじて撮影されたもの。ラッシュアワーのコンコースの模様がぶれた映像で表現されている。

彼のキャリアがユニークだ。学校の先生だったのが、趣味の写真が忘れられず写真家に転身したそうだ。幼馴染で、当時ハーパースバザーのアートディレクターだったバスマンの影響だろう。1947年から1969年まで、ヴォーグとハーパース・バザーで活躍し、その後、写真への興味を失い、なんと精神療法医へと転じているのだ。

彼が写真をやめたのが1969年。当時は写真がアートなんて多くの人が思っていなかった。ましてファッション写真は過小評価されていた。彼の表現する舞台が整っていなかったのだろう。オークション記録を調べていたら偶然、2006年2月クリスティーズのオークションで1951年作のヌード作品の出品を発見した。約60万円で落札されていた。162.5 x 61 cmという巨大サイズ、抽象的イメージからして現代アート作品そのものだ。彼の時代感覚は30年早すぎたのだと思う。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2006年3月27日 (月)

リチャード・ミズラックの写真集を入手

仕事柄写真集をよく購入する。迷ったら買え、を信条としている。写真集に興味がなくなった時は引退だと思う。今日はアメリカ人作家リチャード・ミズラックの"Richard Misrach: Chronologies"をネットで購入した。彼の30年間の写真をコンセプトに関係なく、時代順に並べた本だ。彼の写真集は代表作"デザート・カントス"しか持っていなかった。不毛の地だったカリフォルニアとアリゾナの砂漠が文明化したことで環境が激変している様々なシーンをクールかつ美しく撮影している。彼はヴィジュアルでのつかみがうまいのだ。一瞬、きれいだなと見とれてしまう砂漠の風景には実は人間の手が入っていることを発見する。砂漠という客観的空間のなかの小さな自我のような感じだ。きれいの中に潜む違和感が魅力だった。比較的近年に刊行された"The sky book"や"Golden Gate"なども買おうとは思っていたが、他に優先して買う本があり後回しになっていた。本書は彼のキャリアを網羅しているので、ちょうどよいと思ったことがきっかけだった。あと約40X32cmの大判だったのに魅力を感じた。この手の風景写真のオリジナルプリントは非常に大きい場合が多い。小さい本だと作品の感じが伝わってこないのだ。印刷のクオリティーが非常に良いことも評判に聞いていた。出版しているのが、サンフランシスコのFraenkel Gallery であることも決め手となった。ここは過去に、アベドンやフリードランダーなどのこだわりの本をだしている。アベドンの"Made in France"などは超人気で、すぐに売り切れて、現在古書市場で非常に高値で取引されてる。

ミズラックが初めて日本に紹介されたのは、いまは閉廊してしまったギャラリーMINでだったと思う。1980年代後半に個展が開催され、作品を見た記憶がある。場所は目黒碑文谷のダイエーの裏にあった。MINはミズラック以外にもアメリカの素晴らしい写真家を紹介していた。やはり時代に先んじすぎていたから継続できなかったのかもしれない。ミズラックの個展は、その後1990年に渋谷パルコ・ギャラリーでも開催されている。

オリジナル作品の値段が気になったのでオークション資料を調べてみた。現在、80年代の代表作は100万円程度になっているが、小さめのものなら40万円くらいで買える場合もあるようだ。もう15年以上も前のことだが、パルコギャラリーでは小さめの作品が10万円代からだった記憶がある。当時欲しかったから値段を覚えているのだ、しかし何で買わなかったかは忘れてしまった。オリジナルプリントの場合、迷ってもなかなか気軽に買えないことが悩みの種だ。

アート・フォト・サイトでの本書の紹介ページ

http://www.artphoto-site.com/b_401.html

| | コメント (0) | トラックバック (0)

その他のカテゴリー

アート写真 | 写真集